第四十話 みんな頑張るよ!
「さて、じゃあお守り作っていきましょうか」
王妃様達とのお茶会も終わり、家に帰って来てすぐに私はそう言った。
『もう始めるモケか〜? 疲れてないモケ〜? 』
モケゾウが私の近くに来て、円らな瞳でそう問いかける。
同様にフラン、カッパ、マサムネも心配そうに近づいてきた。
「うん? 心配してくれてありがとう。でも、そんなに疲れてないから大丈夫だよ。それより頼まれた事は早めに終わらせたいからやっちゃおうと思って。今回は小さめの袋を用意したらまとめて魔力を込めていこうと思うの。みんなもちょっと手伝ってくれる? 」
私の言葉にみんながもちろんと答えてくれた。
さてと、三日とは言ったけど今日中に終わらせますか。
「それじゃあ、今日中に終わらせるからよろしくね! 」
『モケ〜、わかったモケ〜』
モケゾウは軽く返事を返してくれたけど他の子達が
『え!? 今日中でありますか! 』
『カ、カパーーー!? 』
『やっぱり隊長の主殿だ…………鬼だ、鬼がいる………』
そんなに大変じゃないよ、心配しないで。
モケゾウ以外がなんだか怯えているけど、そんなにおかしい事言ってないんだけどな〜。
そういえば前世、「今日中に魔物百体狩るよ〜! 」と軽く言った時の部下達もこんな怯え方だったような? 不思議だな〜。
とりあえず、小袋作りますか!
みんなには生地を切ってもらう。
それを私が片っ端から縫う!
うなれ私の両手! 今こそ力を発揮する時!
『ヒョエーーー! 私たち四人が切る作業より主様が縫うスピードの方が早いであります!? 』
『カ、カパ?』
『おい、嘘だろ、あんまり早すぎて残像が見えるんだが………』
『モケ、主が本気になったモケ。モケ! お前達も死ぬ気でやるモケよ、このままだと僕たちまで縫われるモケ………』
私がひたすら縫っている横でモケゾウ達も頑張って切ってくれている。
何でかわからんけどみんなの顔色が悪いような気もするけど………。
ーーー三時間後
「ふう、ようやく小袋縫い終わったね〜。みんなお疲れ様でしたー………って、アレ? ど、どうしたの? え、大丈夫? 」
フラン、カッパ、マサムネが大の字でひっくり返っている、モケゾウも珍しく疲れている様子。
「お、お〜い、魔力いる? 」
私の声にみんなが無言で手を挙げた。
うん、なんかゴメンね、これで許して下さい。
私はみんなに魔力を渡した。
『モケ〜、なかなかハードな訓練だったモケ。さすが主だモケ』
『主様、やっぱり主様は凄かったであります! 』
『カパ、カパカパ! 』
『いつも隊長の無茶振りが酷いと思っていたが上には上がいたな………』
「あ〜、なんか本当にゴメンね。ちょっと楽しくなっちゃってハイになっちゃったよ。こんなにいっぱい作って誰かに堂々とあげれる機会って今までなかったから嬉しくなっちゃって。ついでと言ってはなんだけど、モケゾウにはあげていたけどみんなにはまだだったから、これ。小袋とは違ってもう術式込めているからこのまま使ってちょうだい。みんなを守ってくれるように作ったから」
そう言って私はフラン、カッパ、マサムネにそれぞれハンカチを渡した。
『う、うっわーーー!なんでありますかーーー! このとんでもない量の加護!』
『カ、カパーーー?!』
『う、嘘だろ、この短期間になんでこんなの作れるんだよ』
みんなが混乱している間にモケゾウは、普段大事に収納している自分の赤いハンカチを私のところに持ってきて結んでと言ってきた。
私はこの間のようにモケゾウの首に優しくつけてあげる、やっぱり大きくてマントみたい。
『モケモケ〜、僕が一番に貰ったモケよ〜。やっぱり主は最高モケ! 』
モケゾウを見たみんなも私のところにやって来て、同じようにつけてとねだった。
私はみんなにも優しく首のところで結んであげた。
みんな揃ってハンカチをマントのようになびかせて部屋を走り回っている。
ふふ、みんな可愛い!
『主様、ありがとうであります! 』
『カパカパ! 』
『主殿、感謝する! 』
みんなが喜んでくれて良かった。
んじゃ、このまま小袋に魅了無効つけていきましょうか!
と言ってもやる事は簡単、小袋をまとめて置きまして、私が魅了無効の魔法をぶち込む。
別に刺繍じゃなくても大丈夫、アレはあくまでハンカチに可愛さを求めた結果だから。
やろうと思えば縫わなくても大丈夫なのです。
『相変わらずスゴイ魔力だモケ〜、普通に使っているモケど普通は上級精霊でもこの量は出来ないモケよ〜。まあ、主がやりたい事やるのが一番だから良いモケど』
モケゾウはいつもの事って感じで流してくれてたけど、他の子達はお目目まん丸にして固まっていた。
ありゃりゃ、やり過ぎた?
ーーー王城にて
「ミランダ、そのハンカチって………」
妹のミランダが何処からか帰って来てから妙にご機嫌にハンカチを眺めている。
妙に気になったのでミランダにハンカチを見せてもらおうと思ったら
「ダメ! これは私の宝物だから誰にも渡さないの! 」
そう言ってハンカチを隠した。
…………なんか、フローラ嬢の気配がするような気が。
…………!!
「今日、やたら機嫌が良いと思ったらもしかしてフローラ嬢に会ったのか!? 」
俺の言葉にミランダが猛ダッシュで逃げた。
確か、今日は母上と一緒に出かけていたはず………やられた。
なんで、婚約者なのに俺は会えないんだよ!!
フローラ嬢が足りない、もっと会いたいのに………。




