第三十七話 みんなを紹介したよ!
「いらっしゃい、フローラちゃん。来てくれて嬉しいわ」
ミランダちゃんに案内されて入った離宮の部屋では王妃様が待っていてくれた。
「今日はお招きありがとうございます」
「こちらこそ来てくれてありがとう。さあ、美味しいお茶とお菓子を準備していたの。たぶんモケゾウ様も来ているのよね? モケゾウ様の分もあるから、是非召し上がって下さいね? 」
王妃様の言葉にモケゾウが姿を現した。
『モケ〜、ありがとうだモケ〜。…………主、部下も呼ぶモケか? 』
モケゾウが私に尋ねてきた。
そうね、王妃様とミランダちゃんなら会わせても大丈夫だよね?
「うん、みんなも呼ぼう。王妃様、ミランダちゃん、私、モケゾウ以外にも精霊と契約しまして………呼んでも大丈夫ですか?」
私の言葉に二人は目を輝かせ
「フローラちゃんすご〜い!」
「まあ! 是非お会いしたいわ。ここにいる使用人たちは皆口の堅いものを選んでいるから大丈夫よ。安心して呼んでちょうだい」
二人ともとても楽しみにしてくれている。
「王妃様、ミランダちゃん、ありがとうございます。では、失礼して………みんな姿現して大丈夫だよ〜」
私の言葉にみんな姿を現した。
『初めましてであります! フランソワであります! フランと呼んでほしいであります! 』
『カパーーーーー! 』
『だからなんでカパしか言わんのだ! む、俺はマサムネ、そしてこのカパはカッパだ』
「うわ〜、精霊様がモケゾウ様の他に三人もいる! 」
「あらあら、皆さま初めまして。皆さまも上級精霊様なんですか? 」
『そうであります! 』
『カパ! 』
『ああ、隊長には敵わんが上級を名乗っている』
三人は王妃様とミランダちゃんの前に浮かんで自己紹介をしていた。
………カッパはこの間は話せたのになんで今は『カパ』しか言わないんだろう?
まあ、マサムネがフォロー? しているからいいか。
「そうすると、皆さまモケゾウ様の部下にあたるのですね? 」
『ハイであります! 隊長の元でいろいろやってきたであります! 』
王妃様とフランが話している横でモケゾウとカッパとマサムネがケーキを頬張っている。
その様子をミランダちゃんがニコニコしながら見つめていた。
どうやらミランダちゃんはカッパが気に入ったようだ。
「カッパ様、ケーキ美味しいですか? 」
『カパ! 』
「そうですか、美味しいですか! まだまだいっぱいあるのでどんどん食べて下さいね」
『カパー』
何故か意思の疎通が出来ているようだ………やるねミランダちゃん。
………私がカッパとミランダちゃんのほのぼのとしたやり取りを眺めている間にマサムネが大変なことに。
お茶の入っていたカップを頭からすっぽりかぶっているではないですか!
「マサムネ大丈夫? なんでこうなっちゃったの? 」
私はマサムネに声をかけながら頭からカップをとってあげた。
『む、すまんな主殿。喉が渇いて夢中で茶を飲んでいたらすっぽりいってたようだ』
意外とドジっ子なのかな? マサムネ。
その後はモケゾウの口の周りについたケーキのクリームを拭いてあげたり、カッパがお皿を頭に乗せようとするから止めたり、フランが何故か人間に化けようと回転するから止めたり、マサムネがカップにすっぽり挟まったのを笑ったフランを「切る! 」と追いかけ回すのを止めたり、なんか凄く忙しかった。
………あ、そういえばアノこと聞くの忘れてた。
「あの、王妃様。ちょっとお聞きしたいことがあるのですが………」
「あら、フローラちゃん何かしら? 何でも聞いてちょうだい」
スゴイ良い笑顔で言われちゃった、何でもって。
「では、失礼して………今度隣国からお姫様がいらっしゃると聞いたのですが、あの………私、殿下の婚約者をしていて良いのでしょうか? 」
私の言葉に王妃様が慌てて
「え、ええ!? な、何で、フローラちゃん、リースの婚約者が嫌になっちゃったの?! た、確かにあの子ちょっと、いえ………かなり執着心が激しいけど、そ、それは何とか抑えさせるから! 」
お、おぅ。
王妃様の慌て方が尋常じゃない。
あれ? 私、婚約が嫌になっただなんて言ったかな?………うん、言っていない。
「あ、あの! 別に婚約が嫌とは言っていないです。ただ、隣国からお姫様が来るって聞いたので、婚約者を探しに来ると思って………。私と殿下の婚約は、私を守ってもらうための期間限定のものなのに、お姫様が来るときに私が婚約者の立場にあったらせっかくの出会いの邪魔になると思って。だから、もし殿下がお姫様を気に入ったら、私のことは気になさらず婚約をなかったことにしてほしいと思ったんです」
「フ、フローラちゃん………あなたそこまで考えて………。あのね、今回の隣国の方々の訪問は別に表立って婚約者探しなわけではないのよ。確かに噂が拡がってはいたようだけど………フローラちゃんにそこまで言わせてしまうなんて」
王妃様が悲しそうな顔で私を見る。
ミランダちゃんも不安そうだ。
………こんな顔をさせたいわけじゃないのに。
『モケ〜、別に何が起きても大丈夫だモケよ〜。それに守るなら僕がいるし、部下もいるモケ〜。何ならまだ部下いるモケから、主の守りは強固だモケ。婚約があっても、なくても、主のことは僕が守るモケ。主は安心してほしいモケよ〜』
モケゾウの言葉に私も王妃様もミランダちゃんも、なんだかわからないけどほんわかした空気になった。
………うん、さすが私のモケゾウだ。
ところで、モケゾウの部下って一体何人いるんだろう?




