閑話 モケゾウ
モケモケ〜、僕はモケゾウ、主の精霊モケ〜。
主は、見た目は変わったモケど、中身は………あんま変わってないモケ。
主は、あの頃のように僕と一緒にいてくれるモケ。
僕は主の近くにいるだけで魔力が回復するから、睡眠は基本必要ないモケ。
だから主が寝ている時は、主の周りに二重三重に結界を張って守っているモケ。
もう、主を失うのはごめんだモケ。
だから、主が寝ている時、心配になって何回も息をしているか確認しているモケ。
最初、それのせいで主をビックリさせたモケから、それからはちゃんとバレないようにやってるモケ。
今日も主は元気に生きているモケ〜。
昔、まだ主がムッキムキだった頃、僕はただ主に守られるだけのただの毛玉だったモケ。
主は、まだ全然力を発揮出来ない僕をずっと可愛がってくれてたモケ。
主は、英雄と呼ばれその力はただの人間とは思えないレベルだったモケ。
主は、超が付くほどの鈍感だったから、人の好意には全く気づいていなかったモケ。
その頃の僕は『モキュ〜』しか言えなかったから主にそのことを伝えることも出来なかったモケ。
主は本当に全く気づいていなかったけど、主は意外とモテモテだったモケ〜。
そんな主が本当に、ほんとう〜に僕は大好きだったんだモケ………。
なのに、あの時、どうして僕は主を守れなかったモケ?
僕は………どうしてあの時、主に守られるだけの存在だったモケ?
僕に………僕に守れる力があったら………あんな悲しいお別れなんてなかったモケ。
僕は主を失ってからがむしゃらに修行したモケ。
何年、何十年経ったかなんてわからなかったモケ。
いつの間にか、僕は中級、上級と位が上がり、そんじょそこらの精霊に負けない力を手に入れたモケ。
『ねえ、フィルウィルデルフィ』
『…………』
『お〜〜い、聴こえているんでしょう? フィルウィルデルフィ』
『………僕の名前はモケゾウだモケ、それ以外の名前で呼ばないでほしいモケ』
『もう〜〜、せっかくこの私が付けてあげた名前なのに〜。よっぽど前の主が気に入っているのね? 』
『主は今も僕の主だモケ。だから名前はモケゾウのままだモケ』
『もう、本当に頑固なんだから。………まあ、イイわ。じゃあ、モケゾウ、あなたにお願いがあるの、この私、精霊王からの……ね。 最近ちょっとヤンチャな子が増えているのよね〜。元気なのは良いんだけど、お痛が過ぎるのがいるのよ。ちょっと行ってきて指導してきてちょうだい』
『なんで僕がそんな事するモケ? 』
『そりゃ、あなたが一番適任だからよ。 「蒼き鬼神」だっけ? あなた面白い名前付けられているのね〜。確か、あなたに返り討ちにあった精霊が広めたんだっけ? その拳はあまりの速さで目に見えず、一瞬にして意識を刈り取る………ふふ、いや、なんで精霊が拳で戦っているのよ?! もう、本当に信じられない。あなた、絶対主の影響受けまくりじゃない』
『………別に実際に拳でやっつけたわけじゃないモケ。僕は主程の威力は出せないモケ………。僕はただ、拳に魔力を集めて飛ばしただけモケ』
『まあ、この際方法は何であれあなたほどの実力があれば安心して任せられるわ。………何よ、その顔。断る気満々じゃない。もう〜〜しょうがないわね〜、良いわ、特別にあなたが喜ぶご褒美をあげる。私の力であなたの運を最大限に引き上げるわ。きっと、とびっきりのラッキーがあなたを包むわ』
そんなこともあって僕は上級に上がってからは、各地の悪ガキ精霊をしつけ直し続けたモケ。
時には逆恨みする奴もいたモケど、僕も暇じゃないからそういう奴は相手に二度とせず、黙ってグルグル巻きにして精霊王様の目の前に差し出したモケ。
そいつらのその後は知らないモケ………。
そんな日々を過ごしていたある日僕の前に召喚陣が現れたモケ。
たまに何かの偶然で僕を召喚しようとする奴がいるモケど、その全てを無視してきたモケ。
だけど、この時僕は懐かしい魔力を感じたモケ。
もう二度と会うことが出来ない人………僕の大好きな主の魔力を。
僕は勇気を出してその召喚陣に飛び込んだモケ。
そして、召喚陣の先にいたのは…………可愛い女の子だったモケ。
でも、僕にはすぐにわかったモケ、だって魔力の質が主とすっかり一緒だったモケ。
僕はまた大好きな主に出会えたモケ。
悔しいけど、たぶん精霊王様の力が働いているモケね。
「モケゾウ! おはよう! 」
『モケモケ〜、主おはようモケ〜』
今日も主は元気だモケ。
これからは僕が主をどんなモノからでも守るモケ。
だから主は、何にも気にすることなく我が道をいってほしいモケ。
たまに僕を、昔のように撫でてくれれば僕はいくらでも頑張れるモケ。
主、僕にまた会ってくれてありがとうモケ!




