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王楽記―おうがくきー  作者: 上平英
幼少期
12/21

第11話 苦痛に勝る幸福を

ぐあぁぁぁっ・・・・!!


マジでいてぇ!!


俺は、あの悪魔からの一撃で大怪我を負い王宮専属の医者である老婆に背中を診てもらっていた。


このババアっ! バッカじぁねぇのっ!?


もう少し丁寧に扱えよ!!


ババアは、ベッドにうつぶせに寝かされた俺の背中に酒をぶっかけたんだ!!


消毒だろうけど、俺少年だぜっ!?


傷口に酒がみてマジで気絶しかけた・・・。


ババアには俺が気絶しているように見えてるから、ためらい無く消毒したんだろうけど、俺は目え閉じてるだけで起きているんだよ!!


クッソ!! ババアの性別が男だったら殺しているところだ・・・・てめぇが女だったことに感謝するんだな!!


ああ、マジでいてぇ・・・。







ババアが俺の背中に向けて、なんか呪文みたいなことをつぶやいてる。


回復魔法だな! 回復魔法!!


早く俺からこの痛みを取り除いてくれよ!!


・・・おおっ!


背中の傷が温かくなってきて、激痛も・・・・?


あれっ!? 全然痛みがひかないぞ?


「どういうことじゃ? キズが塞がっておるのに・・・?」


老婆が俺の様子に気づいたらしい。


「熱がひかない・・・! それに苦しそうだ・・・」


なに? なにが起きたの!?


「まっ、まさか!!」


老婆が試験管に俺の血を入れて、なにやら調べている。


「こ、これは・・・!?」


老婆が、驚いた声をあげて、部屋から出て行った。


体のあちこちがいてぇし、薄目で様子をうかがうのは面倒だな。


それから、すぐに老婆は戻ってきた。


しかも、両親・・・王様と王妃様連れで。


老婆は、重い口調で話し出す。


「国王様・・・王妃様・・・落ち着いて聞いてください」


「トールはっ!? トールは大丈夫なの!!」


母上が老婆の話を遮り、俺に駆け寄ってきた。


「王妃様・・・落ち着いて聞いてください・・・。トール様の今の容態を説明しますから」


母上はうつ伏せで苦しがる俺の頬に手をそえて泣き出す。


「トール様の傷自体は塞がりましたが・・・トール様を傷つけた武器に強力な毒が仕込んであったようで・・・」


老婆の言葉に両親は息を呑み、老婆は淡々と言葉をつむいでいく。


「私達の今の技術ではどうしようもなく・・・・」


息子の死亡宣告を受けた両親は絶望したように虚ろな表情をしている。


「では・・・では・・・トールは死ぬのか・・・?」


父上が老婆にすがりつく。


「傷は完全に治りました・・・すぐに死ぬことは無いでしょう・・・」


「だったら! どうにかして毒を消せば・・・」


母上が、小さな希望にすがりつくように老婆に聞く。


「ここまで強力な毒を消すのには数年の時間がかかります・・・それまで、トール様の体が持たないでしょう・・・」


老婆の言葉に部屋中にお通夜ムードに染まる。


「ああっ、なんて苦しそうなんでしょう・・・」


母上が頬を撫ぜてくる・・・スベスベで冷たくて気持ちいい・・・。


「国王様・・・トール様はこのまま衰弱しながら死んでしまうでしょう・・・延命できるとしても・・・」


なに言ってんの老婆っ!? どうせ死ぬなら苦しまず一思いに・・・ってことか!!?


「うう・・・・」


父上もなんで否定しないの!? 何で泣いたままなのっ!!?


ヤバイ・・・! 悪魔には殺されなかったけど、身内に殺されそうだ・・・!!


「はは・・・うえ・・。ちち・・・うえ・・・」


かすれた声で両親を呼ぶ。


「「トールっ!」」


すぐさま、両親は俺の声を聞こうと耳を近づける。


「ぼ・・・くは・・・だい・・じょう・・・ぶ・・・どく・・なん・・かに・・・まけない・・・!」


「「トール・・・・!!」」


両親は俺の痛みに苦しみながらも発した言葉に感動したようだ。


「ああっ! 毒なんかに負けるんじゃない・・・!」


父上が俺の手を強く握りながら言い。


母上が声を殺して泣く。


・・・・ふぅ、なんとか殺されないで済みそうだな。







それから、闘病のために自室に移された。


体はまだ熱く呼吸がし辛い。


治癒系の魔法は全部、本を読んで覚えているから体を治せないこともないし、俺自身の身体強化の封印を解くだけで、毒なんか治るだろう。


でも、今はそれをするべき時期ではない。


時間をかけて治癒魔法を使い自然回復したように見せないと・・・。


「トール様・・・早く良くなってください」


黒髪メイドさんが、熱にうなされ大量の汗をかいた俺の肌をタオルで清めてくれている。


ベッドの上での生活になってから、さまざまな世話を24時間体勢で、メイドさんたちがやってくれるようになった。


しかも、かなり好感度を上げていたから、みんな恋人みたいに嫌な顔一つせずに甲斐甲斐かいがいしく世話をしてくれる。


夜中も、1人はそばにいてくれて熱にうなされる少年を演じながら「さっ・・・寒いっ・・・!」とか震えれば一緒のベッドに入って暖めてくれるし、しかも定番の裸で・・・マジサイコー!!


毒のせいで熱が出たり、意識が飛びそうな激痛を感じたこともあったけど、これだけ役得があればいいかっ!


ていうか、悪魔が武器に毒を仕込んでくれてよかったとも思えてくる。


黒髪メイドさんや眼鏡メイドさんをはじめ、たくさんの使用人に甘えられるのはいいことだ。


闘病生活で弱った少年のフリをすれば、みんな自分の胸で泣いてくださいとか言って胸を触らせてくれる・・・最初は1ヶ月程度の予定で治すつもりだったが、結果的に半年もかけてしまった。






俺は、完全に病気が治ると世話をしてくれたメイドさん一人ひとりに感謝の言葉を述べて抱きしめた。


治らないし、すぐに死ぬと言われていた病気を治したのは、メイドさんたちの献身的けんしんてきな介護による奇跡と処理したかったからだ。


けっして、ただ単に抱きしめたかったからという理由ではないっ! ・・・・本当だよっ?


あと、俺の病気が治ると、一人の美少女の心に大きな変化が生まれたようだ。


そう、俺が助けた美少女。アリシア・ウェリス・アルアドネ・・・俺の実の姉だ。


今までは、家族であっても食事をするだけだったが、姉上は俺の病気が完治すると、償いをするかのように俺を可愛がった。


勉強の合間に様子を見に着たり、その日の出来事を話してくるようになった。


たまにだけど、一緒の布団で寝たりしている。


俺が身を挺して姉上を守ったことで、姉上が俺のことを姉弟きょうだいではなく一人の男として意識したんだろう。


姉上が俺に向ける視線は、恋する乙女のそれだしね。


俺はそんな姉に気づかない鈍感な弟を装い過激なスキンシップを行い。


姉上を禁断の道へ引き込んでいく・・・。


姉上は、母上とは違うタイプの、クールなお姉さま系の美人に成長しそうなので将来が楽しみだ。


悪魔が姉さんを襲ってくれてよかった・・・・!


接点自体が少なく、一番攻略が難しいと思えた、クールな外見に対して内気系というギッャプ萌えの実姉の攻略の糸口が見えたのだから・・・悪魔様様である!


さあて、今日も姉上の部屋に遊びに行きますかぁ!

悪魔が天使に・・・?


主人公が悪魔に・・・いや元からか・・・?



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