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王楽記―おうがくきー  作者: 上平英
幼少期
10/21

第9話 チート能力の制御と俺の生活の一旦

剣術の稽古が始まってから二ヶ月後。


俺は、眼鏡メイドさんに再び連れられて、有名な魔導師に魔法を習いに行くことになった。


魔導師は、まるで童話に出てくるようなヒゲ爺で、城の一室を教室にして授業をしている。


だが授業は魔法の教科書を読むだけという座学のみで退屈だ・・・。


そんな退屈な授業の唯一の楽しみは、一緒に授業を受ける魔女っ娘の卵を口説くぐらいしかない。





そう言えば、俺が貰ったチート能力を説明していなかったな。


俺が貰った能力は、全部で6つ



・最強の身体能力


・膨大な魔力


・魔法を使う才能


・武術の才能


・外的要因では死なない能力


あと、オマケに寿命2倍化だ。



我ながらひねりの無い単純なチート能力だと思う。


俺は、周りに気づかれないように細心の注意を払いながら、いろいろと試した。


瞑想し、体内の力を調べ、力を体の外に出さないように時間をかけてゆっくりとコントロールを覚えた。


魔法の本を読み始めた時に最初にしたことは、魔力の封印だ。


今は、弱いが歳を重ねるごとに魔力が増えていっているのが分かったから、その辺にいる人間と変わらないぐらいの魔力まで落とした。


もちろん、俺が封印の魔法を使った事がバレないように細工することも忘れず行う。


身体能力にも魔法で封印を施し、一般的な大人の身体能力まで落としている。


魔法の才能は、かなり便利だ。


魔法の知識が在れば、どんな魔法も思いのままだったからね。


武術の才能にしても、武器を握るだけで使い方が分かるし、相手の動きも完璧に捉えることが出来る。


魔法と組み合わせれば、俺は誰にも負けることはないだろう。


それに俺は、試していないから詳しく分からないけど、外的要因では死なない体になっているはずだしね。


しかも、おまけに寿命二倍化!!


俺ってマジで無敵じゃねえっ!!?






「トール様、どうかなさいましたか?」


ヒゲ爺がいつの間にか俺のところまでやってきていた。


ヤバイヤバイ、今は授業中だったんだ。


「すみません。なんでもありません」


俺はヒゲ爺に謝る。


「そうですか・・・だったらいいのです」


ヒゲ爺は、そう言って教壇に向かいいつものように延々と魔法について語り、また魔法を使うことなく授業が終わる。


さてと、そろそろ眼鏡メイドさんが迎えに来るから、魔女っ娘達でも口説いてますか。


ヒゲ爺はマジで有名な魔術師らしく、俺以外にも多くの生徒がいた。


全員が貴族など、かなり身分が高い子供達でパーティで知り合ったも、魔法を学びに来ていたりするから、すんなりと女生徒の心に入り込めた。




「トール様。お迎えに参りました」


いつものように、眼鏡メイドさんが迎えに来てくれた。


俺は、他の生徒に挨拶をしてから眼鏡メイドさんの元へ駆け寄り、今日の授業の内容を話しながら部屋に帰る。


今の俺は、魔法を使う気なんてさらさら無いので詳しい魔法の説明は省略しよう。


とりあえず、魔法の属性は大きく分けて、火、風、水、土、雷、光、闇、無の八属性が存在してる。


だけど、今は使わないよっ! 今の俺は凡人なんだからねっ!







部屋に戻り、魔法の授業の復習を行い、家族と夕食を食べ、風呂に入って就寝する。


夕食まで終えたので黒髪メイドさんを連れて、城の大浴場に向う。


「トール様。今日も一人で入浴されないんですか?」


黒髪メイドさんが赤い顔で聞いてきた。


「どうして? 一緒に入った方が楽しいよ?」


無邪気な少年を装い、黒髪メイドさんを困らせる。


俺は、5歳のときから大浴場を使っていて、王族ということで世話を焼かれ、数々のメイドさんに体を洗ってもらい、その後一緒に入浴していた。


当然本来なら、使用人が王子の俺と湯を共にすることは許されないが、俺がそれを拒否し、体を洗いにきたメイドさんに、お願いして一緒に入浴してもらっている。


5歳児の時は彼女達も子供と一緒に風呂に入るだけだと思い、王様に許可を貰って、普通に一緒に入浴していたが、3年が経ち俺が男に成長しだすと、少しためらいが生まれ始めた。


そう、今の黒髪メイドさんのように赤面して、俺に裸体をさらすのが恥ずかしくなってきたのだ。


「ですが、そろそろ使用人と湯を共にするのは控えた方が・・・」


さとしてくる黒髪メイドさんに無邪気な少年を装い上目使いですがりつき。


「使用人なんて関係ないよ? 僕と一緒に入るのが嫌なの?」


今にも泣きそうな顔で黒髪メイドさんを見る。


「とっとんでもありませんっ! 嫌なはずないですよっ!!」


黒髪メイドさんは真っ赤になりながら、大声で否定する。


「じゃあ! いいんだねっ!!」


笑顔で黒髪メイドさんにそう言い、喜んでいることをアピールするように、黒髪メイドさんに抱きつく。


「えっ!? ・・・うっ・・・・あっ・・・・わっ、わかりました・・・ご一緒させていただきます・・・」


黒髪メイドさんは、毎回このパターンで堕ちる。







黒髪メイドさんとの楽しい入浴を終えて、部屋に戻り大きなベッドに寝転がる。


王族のベッドだけあって大きくてふかふかだ。


「お休みなさいませトール様」


入浴後の火照りかそれ以外かで、ほんのり赤色の入った顔をした黒髪メイドさんが、挨拶を終えて部屋から出て行こうとドアを開ける瞬間を見計らい再び声をかける。


「今日は添い寝してくれないの?」


とっ、夜の闇が怖い少年を装って・・・。


「まったく・・・王子様は仕方がないですねー・・・」


黒髪メイドさんは大浴場でのことで抵抗するのを諦めたらしい。


「ごめんね・・・」


「少し待っていてください。着替えを持ってきますので」


「うんっ!」


黒髪メイドさんは、呆れたように見せていたが、唇の端が持ち上がっていて、喜んでいるのがモロバレだ。






しばらくして、寝巻きと代えのメイド服を持ってきて、寝巻きに着替えて布団にゆっくりと入ってきた。


黒髪メイドさんの寝巻きは日本の浴衣のようなつくりで、三つ編みを解きストレートヘアになっているメイドさんはまさに大和撫子のようだ。


布団に入った黒髪メイドさんに抱き、さらさらとした黒髪を指で弄る。


「まったく・・・王子様は甘えん坊なんですから」


黒髪メイドさんは、顔を赤くしながらも、いつも頭を撫ぜてくれて俺が寝るまで起きて待っていてくれる。


そんな美味しい状況でも、俺はあくまで子供らしく振る舞い、抱きつく以外のことはやらなかった。


まあ、今の俺は抱きつくだけでも充分満たされるからねっ!






現在、城内での俺の評価はさまざまだ。


メイドやなど使用人の女性からは、甘えん坊の可愛らしい子供。


社交界や魔法教室での女の子達からは、優しくてよく気が利く王子様。


社交界の美女達からも、愛想のよい可愛らしい子供ということで気に入られている。


まあ、今まで言ったのが城内でのいい方(・・・)の評価だ。


見事に女性ばかりだけど、そうなるように仕組んだので計画通りと言えるな。


悪い方の評価は全部男達で・・・たぶんというか絶対嫉妬も混じっているだろうが、俺の評判はすごく悪い。


総括すると、甘えん坊で、王族の癖に秀でたところが無く凡人。いつも、女に囲まれているなどがあった。


まあ、男からの評価がどれだけ下がろうと関係ないので、改善する気はないっ!!

本当に幼少期が長いな・・・。


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