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インナーヒットマン  作者: 太田
第5章 真実と雛

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第68話 爆弾

 ニトラが銃を構え引き金を引いた。


バンッ、バンッ!


 スズメは滑るように身を翻し、弾丸を紙一重で回避する。


 そのまま手首を返してナイフを投げ放った──が、


 刃はニトラの目前で灰のように崩れ消え、柄だけが虚しく回転して床に転がった。次の瞬間、逆にニトラの銃撃が襲いかかる。スズメは壁を蹴って、それらをなんとか避け切った。


「ったく!めんどくさい能力だわね!」


 二人は睨み合う。


「スペアも話してましたけど……僕の能力はね、鉄を“塵”に変えるんですよ」


 ニトラは淡々と言いながら、懐へと手を入れた。スズメの背筋に嫌な予感が走り、無意識に後退する。


 ニトラの手から現れたのは──黒い球体。


「……爆弾!?」


 ニトラはそれを軽く放り投げた。スズメも同時にナイフを投げる。


 ボンッ!!


 爆弾が空中で破裂した。しかし──問題はそこからだった。


「ッ!?」


 爆煙を裂いて飛び出したのは、無数の弾丸。


 散弾のように四方へ広がり、とんでもない速度でスズメへ向かった。


 防弾のコートもスーツも意味をなさない。銃弾は彼女の体を容赦なく貫き、赤い飛沫が散った。


「ぐ……っ……!」


 スズメはその場に膝をつく。呼吸が乱れ、視界が揺らぐ。


「こういう能力の使い方もできるんですよねぇ」


 ニトラだけは傷一つない。飛んでくる弾丸をすべて能力で塵に変えていたからだ。


 彼女は床を転がり、被っていた面がカラカラと転がっていく。血に濡れたスズメの顔を、ニトラは覗き込んだ。


「ああ……こんなに可愛い顔なのに。台無しですね。僕、女性を痛めつける趣味はないんですけど?」


 スズメは苦痛に歪んだ表情のまま、しかし鋭く睨みつけた。


「……キモ」


 彼女は震える手でナイフを投げた。だが刃はまた塵となり、柄だけが軽く弾かれるように飛んだだけだった。


 ニトラは面倒そうにそれを避けると、ゆっくりと銃を構える。


「残念ですけど──これで最後ですね」


 乾いた音とともに、引き金を引いた。

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