表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インナーヒットマン  作者: 太田
第5章 真実と雛

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/83

第66話 あ…

「僕たちの目的は──インナーヒットマン、だっけ? それを手に入れること」


 店長は珍しく真剣な声で続ける。


「多分、その薬のありかを知ってるのは、この研究所の所長・星文雄。だから、まずは星を見つけて薬の場所を吐かせる。それが最優先」


 ふざけた調子を完全に封じた眼差しに、部屋の空気が少しだけ締まった。


「この研究所は地上1階から地下4階までの五層構造。星はどこかにいるはず。みんなには手分けして探してもらいたい。……できればノアちゃんのママも見つけようね」


 店長がノアちゃんへやわらかく笑いかけると、ノアちゃんは小さくうなずいた。


「確認できてるのはB3とB2だけ。だから──B4はセッカくん、B1はスズメちゃん。1階は僕と初くん、それにノアちゃんで行こう」


 全員が短くうなずき、覚悟を決めるように呼吸を整えた。


「ただね〜、さっき僕がちょっと暴れちゃったから、警備は多分め〜っちゃ厳しくなってると思うの。ま、正面突破で行こうか〜」


「……ん??」


 スズメさんとセッカさんが同時に眉を寄せる。


「あんた暴れたの?」


「うん!」


 店長が無邪気に笑った瞬間──。


 バチィッ!


「いった〜い!」


 スズメさんの拳が店長の顔面に直撃し、店長の体が後ろへ大きく吹き飛ぶ。


 ノアちゃんが小さく身を縮めた。


「ばっっかじゃないの!? 余計なことしてくれたわね!!」


「まぁまぁ……スズメさん、落ち着いて……」


 セッカさんが慌ててなだめる。


 店長は床に転がったまま呻き、しかし数秒後にはケロッと立ち上がり、壁に立てかけてあったアタッシュケースを拾い上げた。


「もう起きちゃったことはしょうがないじゃ〜ん。はい、みんな着替えて〜」


 店長が順にアタッシュケースを手渡す。セッカさんは、アタッシュケースの他に少し大きな袋を受け取っていた。


 カチリと留め金を外すと──スーツ、革靴、銃、手袋、靴下、ナイフ、そしてオナガの面。いつもの一式が揃っていた。


 全員が急ぎ着替えに取りかかる。


──スズメさんも……ここで着替えるのかな?


 つい視線がそちらへ向かった瞬間。


「見てんじゃないわよ!!」


 鋭いナイフが飛んできて僕の頬をかすめ、ひやりとした痛みが走る。


───目をつぶって着替えよう。


 僕は慌てて目をつぶり、感覚だけで着替えた。案外何とかなるものだ。


 目を開けると、もう全員が身支度を整えていた。


 僕はネクタイをポケットから出して首に当てる。


「ちょっと」


 スズメさんが手のひらを前に出してくる。


「ネクタイ」


「あ……はい」


 渡すと、彼女は流れるような手つきで結び、きゅっと締める。


「す、すみません……ありがとうございます」


 顔を上げると、スズメさんの瞳がまっすぐに僕を射抜いた。


「……死ぬんじゃないわよ」


「……はい」


 全員の準備が整う。


 最後に手袋をつけ、僕はノアちゃんの前にしゃがみ込んだ。


「ママは絶対に僕が見つける。ノアちゃんは、僕が守る。……だから大丈夫」


 慣れない笑顔を向けると、少女は小さく頷いた。


「何かあったらデバイスで連絡してね〜」


 店長が小さな通信デバイスを配る。


「じゃ、出発するよ〜」


 全員がオナガの面をつける。


 店長が監視室のドアへ手をかけ──


「そういえば、この奥の部屋って何があるんですか?」


「ん〜?奥は電気室──」


 店長が片手で廊下を指した瞬間。


 そこに立っていた。


 影の薄いの男──ニトラ。


「「「あ」」」


 ニトラは表情一つ変えず、滑らかな動きでトランシーバーを取り出す。


「…侵入者地下2階で発見しました」


 研究所全体にアラート音が鳴り響く。


──なんでこうなるの……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ