表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インナーヒットマン  作者: 太田
第1章 外と雛

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/82

第5話 拷問

「おい、起きろ!」


──乾いた音が頬に走った。


 皮膚の下で、何かが軋むような痛みが弾けた。意識が、暗闇の底から泡のように浮かび上がる。目隠しをされ、何も見えなかった。


 目隠しの布の内側に、呼吸の熱がこもる。手首には縄。汗で湿り、指先が痺れてる。


「………」


 喉がひりつく。恐怖で声が出ない。全身が冷たく震えていた。ここはどこなのだろう?何故、こんな事になっているのだろう?


「目隠しとって」


「へい」


 布が外れると、視界がぼやけて、滲む光が工場のような空間を照らした。


 剥き出しの鉄骨、油の匂い。


 裸電球の小さな光が揺れていた。


 目の前には、あのメガネの男が椅子に座っていた。


「やぁ、また会ったね。こんばんは」


 声は妙に柔らかかった。


「………」


ドンッ!


 膝に衝撃が走った。足先までしびれ、痛みが骨の形をなぞる。


「『こんばんは』って言われたら、『こんばんは』って返すのが礼儀だろ?」


「こん……ばんは」


 泣き出しそうな声。その声を、男の笑みが飲み込む。


──バキッ!


 顔を殴られ、鉄の味が口内に広がった。


「君、名前は?」


「……あ、(はじめ)です……」


「初くんって言うのか!いい名前だねぇ!」


 男は、まるで友人の話でもしているような声だった


「あ………の、ここは、どこですか?あなた達なんなんですか?」


 男は小首をかしげて笑う。


「んー?ここ?ここは、ねぇー。森の中にある廃工場だよぉー」


「は…廃工場?」


「そ!ここだと、どんなに叫ばれても人が来ないからさぁ…重宝してるんだよねぇー。」


 男は、立ち上がり、ポケットから何かを折りだす。男の拳に、銀色の金具が光った


──メリケンサック。


 棘のような突起が、蛍光の白に鈍く光る。


「や……やめ──」


ゴッ。


 空気が震えた。頬を突き抜ける痛み。男は、ゆっくりと僕の周りを歩き出す。


「いやー。悪いんだけどぉ。君に“仕事”してとこを見られちゃったからさぁ、君の事、処分しなきゃいけなくなっちゃった!」


 呼吸が薄くなる。耳の奥で何かがざわつく。


 男は、僕の後ろで立ち止まる。


「……。よし!次は爪だ!」と言い、聞こえてきたのは、


──カチッ、カチッ。という金属の音。背後で、ペンチの歯が噛み合う音が聞こえた。


「や、やめ────」


ベリッ!


 音が耳の奥に響いた。


 鋭い痛みが指先から脳天まで駆け抜け、息をするのも忘れる。目の前がチカチカと明滅し、胃の奥が反

転するような感覚に襲われた。喉の奥で何かが引っかかる。叫び声にならない悲鳴が漏れた。露出した皮膚が空気に触れ、焼けるように熱い。


「次は、どの指にして欲しい?」


「な……んで……こ……こん……な事を………。」


 問いは祈りのように小さかった


「んー?趣味ぃ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ