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インナーヒットマン  作者: 太田
第4章 化け物と雛

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第50話 指名

「お前の部下と戦う?」


 六田は、楽しげな声で言った。


「うん!そこにいる奴ら!」


 彼が親指で後ろを指すと、廊下の奥に腕を組んだ男たちがずらりと並んでいた。どいつも目が据わり、獲物を待つ猛獣のような気配を漂わせている。


「……何のために?」


「いやー。薬のデータを集めてきて欲しくてさぁー」


 六田は子供のように頬を緩め、説明を始める。


「この薬はねぇ、投与して“適合”すれば──超人的な力が手に入るんだぁ。例えば、そこのニトラくんみたいにね?」


 影の薄い男と目が合う。


「で、そこにいる彼らは、薬に適合した優秀な“部下”たち。君が彼らと戦ってくれるとねぇ、そのデータがとっても役に立つんだぁー」


 六田が指をさす。


「んー、じゃあ……石下ぁー」


「ハイッ!」


 前に出てきたのは、ガラの悪いオールバックの男だった。口角には嘲りが貼りつき、目は獲物を前にした肉食獣のようにギラついている。


 僕はゆっくりと立ち上がり、床に転がっていた銃を拾い上げた。


 六田が笑う。


「あー、僕に銃撃たないでよー? まぁ、ニトラくんいるから無駄だけど?」


 ニトラは無言のまま腕を組み、こちらを射抜くような視線を向けてくる。


 オールバックの男と僕は向かい合った。


 六田の後ろの男たちは、観客席のように好き放題言い合って笑っていた。


「石下、勝てよ!」


「そんな雑魚に負けたら笑いもんだぞ!」


 影の薄い青年は、ポケットからビデオカメラを取り出し、こちらへ向ける。収集する“データ”とは、つまりこれか。


 オールバックの男は鼻で笑い、僕を睨み据える。


「お前ぇ……六田の兄貴に迷惑なんだよ。早く死んでくれねぇかなぁ?」


「……知るかよ」


 僕は銃を構えた。


ピュッ!


 乾いた発砲音が庭に響き、戦いが幕を開けた。


 薬の情報を奪うための、避けられない闘いが。


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