表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

旦那様は男性がお好き

不定期更新になります。

亀の歩み程度にゆっくりかと思われますが、ご了承ください。


その日、王妃は旦那の口から衝撃的な発言をされた。


「私は……女性に興味が無いんだ…」


その言葉に、王妃はよろめい――たりはせず、片足を前に踏み出し、自身の旦那に詰め寄った。


「そういうことはもっと早くに仰ってくださいませ!それで旦那様、どのような男性がお好みなのですか!?ああ、もっと早くに仰ってくださっていればいろいろと準備できたのに…あ、もう既にお好きな方が?」


いつの間にか王妃は紙とペンを持っており、いまかいまかと旦那の言葉を待っていた。

旦那である国王は、そんな王妃の勢いに押され、恐る恐る口を開いた。


「……せ、線が細いほうが好きだ」

「なるほど。線が細い方ですか…あ、最近騎士団に入った伯爵家の方とか?あぁ、でも、科学技術研究棟のあの方も線が細い方でしたわね。それに神官長様も…」


王妃はスラスラと旦那の好みに合うであろう人物をあげていく。彼女のなかでは既にどのようにして外堀を埋めていくか、緻密な計画書が出来上がっていた。さらに、旦那の言葉を一字一句逃さないようにとペンを動かしている。


さて、何故このようになったのか、という説明をするには、少々時間を遡る。

もとは、国王が王妃と閨を共にしないことから始まった。

結婚してから数カ月。

一度も王妃は閨を共にしたことがなかったのである。


とはいえ、それについては事情があるのだが、王妃は知らない。なにより、王は仕事が終われば王妃の顔を見に来ているのだが、深夜であり、王妃はいつも本を持ったまま眠ってしまっているのである。


(好きではなかったけれど、良いパートナーになれると思っていたのは(わたくし)だけだったのかしら…)


王妃は自身の存在価値をわかっていた。次代の王を産まなければならない。

しかし、このままではそれは難しいだろう。

何か自分に問題があるのだろうか、と王妃は考えたが、自身ではわからなかったので、王妃は旦那に直接聞く覚悟を決めたのである。

そして、王妃は旦那の執務室を訪れたのであった。




「ところで、アシュリー、君は何故そのような物を持っている?」


王妃アシュリーの手元に視線を向けた王は、いったいいつから持っていたのだろうかと首をかしげ…どうやってメモを取るのを辞めさせようかと考えた。


一方王妃は、旦那に問われ自身の手元へ視線を落とし…輝くような笑顔を旦那に向けた。


「私の親友がその手の小説を書いているのですが、以前借りを作ってしまいまして…そのとき、いいネタがあったら教えてほしいと。それに、旦那様の好みがわからないと私、手を打ちようがありませんもの」


王妃は楽しそうにあの方が旦那様の隣に立っていれば私が並ぶより見栄えが良いかもしれないわ、と想像を膨らませ、旦那に言い切った。


「旦那様、役目は果たさねばなりませんの。けれど、旦那様が男性をお好きだと言うのなら、側室はどんな方でも構わないと思っていますの」


王妃としては、子をなさねばならないので、そのあたりは我慢して頂きたいが、後は公務をしっかり行ってくださればそれで良いと思っていた。


王は王妃の言葉が理解できず、困惑の表情を浮かべる。

それをどう受け取ったのか、王妃は微笑むと旦那にゆっくりと、落ち着いた様子で語りかけた。


「心配しなくても大丈夫ですわ、旦那様。側室の方に肩身の狭い思いはさせませんわ。私では旦那様の心を癒やすのは難しいでしょうが、側室の方であれば心や身体を癒やすことができるのですから、尊敬致しますわ。私は公務で支えていこうと思いますの」


王は思わず王妃の額に手をあて、次に自身の額に手をあてる。

どうやら平熱のようで、熱はないらしい。

では彼女は何を言っているのだろうか、幼い頃から婚約者として隣にいた王は、王妃の考えを大抵は理解出来ていたのだが、今回ばかりは理解出来なかった。



「そうだわ!旦那様、お好きな方はいらっしゃらないのでしょうか?」

「いない」

「まぁ、それは残念ですわ。我ながら良い計画書が出来ましたのに…これなら確実に囲い込めますのよ?旦那様、気になる方でも良いのです!本当にいらっしゃりませんか?」


王妃が瞳を輝かせ、さらに強烈な一撃を放った。

王妃が旦那に側室を取るように迫るという、なんとも不思議な光景が王の執務室では繰り広げられていた。

そして、王は思い出したのである。幼い頃にも同じようなことがあったことを。こうなった王妃はとまらないと言うことを。



「アシュリー、私は側室を取るつもりは無いんだ…」

「…?あら、遠慮しなくて良いのですよ、そうですねぇ、旦那様は昔から…いえ、ある時から線が細くて色素の薄い方のことをよく目で追っていらっしゃいましたから、やはり神官長様が良いでしょうか?あ、そういえば学生時代に親しくしていらっしゃったあの方も…」


候補が纏まりませんわ…と王妃が呟き、王は遠い目をしながら、この時期の庭は薔薇が咲き誇って綺麗なんだよな、と現実逃避をした。



こうして、数カ月続く、王妃と王の攻防戦は始まったのである。



王様と王妃の攻防戦。

優勢なのは王妃です。だって王妃様、反論を許さないマシンガントークで押せ押せです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ