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婚約破棄されたので全員殺しますわよ ~素敵な結婚を夢見る最強の淑女、2度目の人生~  作者: とうもろこし@灰色のアッシュ書籍版&コミカライズ版配信中
本編

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27 束ねる淑女 2


 トゲ付きオフロード魔導車3台に先導されながら荒野を走るキャンピングカー。


 目指すは北にある傭兵団の拠点だ。


 先導していた魔導車が停車して、リーダーの男が車から降りるとリーズレットの乗る魔導車に近寄った。


「姉御、あれが拠点ですが……」


 彼が指差す先にはいかにも『拠点』といった具合に整備された場所があった。


 前時代の町に残骸で作ったトゲだらけの門と壁。入り口の前には魔獣除けのトゲ付きバリケードがいくつも設置されている。


「軍や魔獣除けにスパイクバリケードがありやす。あのトゲは魔導車の装甲も貫くヤベェやつですぜ」


 前時代の特殊合金を削って作ったトゲは下手な剣や槍よりも殺傷力が強い。魔導車で突っ込めば装甲を貫通して運転席にいる人間などひとたまりもない。


 軍も迂闊に近寄れない最高の防御装置。さすがは大規模傭兵団の拠点と言うべきか。


「なので、まずは俺が――」


 話をつけて、中に入れるようにしますよ。リーダーの男はそう言おうとしたが……。


「問題ございませんわよ。サリィ、やりますわよ」


「はいですぅ」


 リーズレットとサリィは車から降りると、ロビィが持ってきたケースを開ける。中身は勿論、2人が大好きなロケットランチャー。


 準備を終えて肩に担ぐ2人を見て、リーダーの男はものすごく嫌な予感がした。


「ちょ、ちょっと待って――!」 


 必死に止めようとするが間に合わず。ボシュッと音を立てて2発の弾が拠点へと向かっていき、門と壁に着弾した弾は大爆発を起こした。


 壁と門はぶっ壊れ、爆風で設置してあったバリケードも吹き飛ばす。


「あああああッ!?」


 これじゃあ宣戦布告と変わらないじゃん! と頭を抱えながら叫ぶリーダー。


 相手は大規模な傭兵団だ。自分達も関わっているとバレたら報復されてしまうだろう。出来るだけ穏便に済ませたかった彼の考えは門と壁同様に木っ端微塵に吹き飛んだ。


「なんじゃあ、こりゃああ!!」


「襲撃だ! 軍か!? どこかの傭兵団か!?」


 拠点の中からは悲鳴と怒号が聞こえて来た。

 

 当然だ。いきなり門と壁は爆発して吹っ飛んだのだから。


「これで入れますわね」


 再び魔導車に乗り込んでハンドルを握るリーズレット。


「野郎共、着いてきなさい!」


 そう叫んだ彼女はドア・ノッカーを起動するとアクセル全開で拠点へと突っ込んで行く。


「あ、アネゴォォォ!? ちくしょぉぉぉぉ!!」


 着いて来なさいと言われ、素直に着いて行ったら相手には敵であると認識されるに違いない。


 だが、拒否すればリーズレットに殺されるかもしれない。そっちの方が恐ろしいと思った男達は仕方なく後に続く。


「魔導車でバリケードを作れええ!」 


 拠点の中にいた傭兵団は魔導車を並べて即席バリケードを作ったようだ。恐らく向こうは軍が攻めて来たと思っているのだろう。


 だが、違う。攻めて来たのは軍よりも遥かにヤバイ奴だ。


「サリィ、おやりなさい!」


「はいですぅ!」


 助手席にいたサリィは窓から身を乗り出してロケットランチャーを構えた。


 狙うは壊れた門の代わりにバリケードとなっている魔導車。容赦無くトリガーを引くと並べられていた魔導車が爆発しながら宙を舞う。


「うわあああッ!」


 巻き込まれた傭兵団のメンバーも空を舞い、落下すると壁にあったトゲに突き刺さって死亡した。


「おーっほっほっほっ! 汚ねぇ花火ですことォー!」


 しかし、彼等の災難はそれで終わりじゃない。


 今度はリーズレットが運転する魔導車が主人公をぶっ殺して異世界に送る転生トラックの如く男達を襲う。


 ドア・ノッカーで体を粉砕され、シンプルに撥ねられて、転んだところを踏み潰されて……最低でも4人は異世界転生送りである。


「何なんだァー!? 一体何が起きてやがるんだよォー!?」


 傭兵団――紅蓮の鷹のリーダーは魔法銃を構えながら暴走キャンピングカーを見た。


 運転席と助手席にいるのは若い女だ。それが余計に彼を混乱させる。


 どういう事だ、どういう奴等なんだ、と困惑していると奥から向かって来る別の魔導車に気付く。


「あれは血濡れの刃か!?」


 独特のフォルムに改造された魔導車に見覚えがあった。あれは協定を結んでいる傭兵団じゃないか。


 しかも相手のリーダーらしき男が身を晒して手を振り上げている。


「大人しくしておけえええ! 抵抗するんじゃねえええ!!」


 血濡れの刃リーダーはそう叫んでいた。だが、リーズレットという存在を知らない事で悲しい誤解が生まれた。


「協定を破って攻めて来やがったのかァァ!!」


 リーズレットを相手にするな。大人しくしておけ、抵抗すれば殺される。


 協定を結んだ相手を思う血濡れの刃リーダーは、無駄な血が流れないように叫んでいたのだが……紅蓮の鷹のリーダーは「大人しく投降すれば殺さない」といった意味に捉えてしまったのだ。


「殺せえええ! 全員撃てえええ!」 


 激昂した紅蓮の鷹のリーダーは仲間に叫ぶ。軍も恐れる大規模傭兵団『紅蓮の鷹』は伊達じゃねえ!


 まずは向かって来るリーズレットの魔導車を蜂の巣にしてやろうと魔法銃を構えて指をトリガーに当てた。


 だが、何度も言うが相手は軍よりも遥かに厄介だ。


「おせええええですわよォォォッ!!」


 窓から身を乗り出したリーズレットとサリィがロケットランチャーを構え、トリガーを引く。


 シュボッと射出した弾が紅蓮の鷹へと迫る! 


「あぁ――?」 


 放たれた後、紅蓮の鷹リーダーが次に見た光景は真っ白な閃光だった。

 

 光の向こう側で数十年前に死んだ婆ちゃんが笑っているではないか。


 ニコリと笑った彼の婆ちゃんはゆっくりと手を首元まで動かして、親指で首を斬るモーションを見せた。


(ええ? 婆ちゃんなんで――)   


 そこで彼の思考は終わる。いや、人生が終わった。


 爆発に飲み込まれた紅蓮の鷹メンバーは100人以上。リーダーを含む半数以上を一撃で殺害されてしまったのだ。


 そこからはもう阿鼻叫喚。悲鳴で奏でられるゲリラライブの始まりだった。


「待ってくれえええ! 抵抗しないでくれえええ!!」


 泣きながら叫ぶ血濡れの刃リーダーが悲鳴を上げる紅蓮の鷹メンバーに駆け寄って、何とか場を収める事でこの地獄は終わるのであった……。



-----



「風が温いですわね」


「へい! すいやせん!」


 紅蓮の鷹拠点にあった装飾品でデコレーションされた豪華な椅子に足を組みながら座り、男に扇ぐよう言うリーズレット。


 彼女の前には紅蓮の鷹の生き残りである男達の一部が揃って額を地面に擦り付けていた。


 どうして彼等がこうしているのかは簡単な話だ。血濡れの刃同様に命乞いして彼女に屈服したからである。


「まだ見つかりませんの?」


「へい! もうしばらくお待ちを! 全力で探していますので!」


 紅蓮の鷹で生き残った人数は90人程度。それら全てが命欲しさにセーフハウスを探し回っている。


 サリィの淹れたお茶を丁度飲み終わった頃、見つかったという報告がなされたのだが……。


「姉御、やはりここも荒らされていやす」 


 血濡れの刃拠点にあった場所と同じく、こちらも荒らされているとの事。


 現場を見に行けば前回同様に荒らされてから時間が経っている状態の室内があっただけであった。


「このような場所がもう1ヵ所あります。何か知っておりまして?」


 ロビィの頭部に表示された最後のポイント。それを全員に見せると、紅蓮の鷹に所属していた男が挙手した。


「この辺りですが、最近マギアクラフトの連中が作業している辺りですぜ」


 挙手した男は表示された円の中――ここから西のポイントを指で示した。


「マギアクラフトと言えば、魔導具生産企業の大手ですわよね?」


「へい。作業していたのはマギアクラフト・ベレイア連邦支部の連中ですぜ」


 マギアクラフト――それは前時代の技術を一部再生利用して現代でも使える魔導具を生産する大手企業である。


 世界市場に出回っている生活用魔導具などはマギアクラフトが生産する物が8割を占めており、現代社会においての超大企業といえばここであると皆が口を揃えて言うだろう。


「マギアクラフトは大陸中央の遺跡を探し回ってるみたいなんで、もしかしたら奴らがいた場所が姉御の探している場所かもしれやせん」


 何でも数か月前に、紅蓮の鷹はマギアクラフトの派遣団に護衛の仕事を依頼された事があるらしい。


 彼は護衛中にマギアクラフトのメンバーとの雑談の中で、マギアクラフトには前時代の痕跡を探したり遺跡からレリックも回収する部門も存在するのだと聞いたそうだ。


 その時は遺跡の収穫を得られずにベレイア連邦首都へ帰還したそうだが、最近になってまた別の傭兵団を引き連れているのを指し示すポイント付近で見たという。


「マギアクラフトはベレイア連邦内で遺跡を探しておりますの?」


「連邦内というよりは、影響力が及ぶ範囲内全てじゃないですかね?」


 彼が言うにはベレイア連邦内だけじゃないようだ。支部が存在する国では遺跡探索を行っているんじゃないか、と推測を付け加えた。 


「もしかして、ラインハルト王国でも遺跡を探していたのかしら……?」


 ラインハルト王国内の遺跡を探し当てて、王国に情報を齎したのはマギアクラフトなんじゃ? とリーズレットは首を傾げた。


「大陸中央から東側はマギアクラフトの手が入ってない場所は無いんじゃないですかね? 各国とベッタリ癒着しているって噂もありやすし」


 確かにラインハルト王国でもマギアクラフト産の魔導具は販売されていた。という事は、国を相手にツテやコネを構築していてもおかしくはない。


 リーズレットが知らないだけで、国と協力しながら活動しているかもしれない。


「まぁ、それに関しては一旦置いておきますわ。とにかく、次に目指す場所はその目撃現場ですわね」


 次に参りますわよ、と言うリーズレットの目は獰猛さが窺える。明らかに今回のような手法で『お話』する気だとこの場にいる誰もが察した。

    

「えっ……? 大企業を敵に回すのはマズイんじゃ? さっきも言いやしたが、マギアクラフトはベレイア連邦政府とベッタリだって噂ですぜ?」


 ベレイア連邦政府はマギアクラフトに資金援助されている、という噂は国内で有名らしい。


 資金援助してもらう代わりに商売に関してはかなり優遇しているとか。そんな相手を敵に回せば国と戦争するようなものだ。


 さすがにそれは紅蓮の鷹ですらも避ける行為である。

 

「私には関係ございませんわよ。国だろうが企業だろうが、私の行く道を阻むのであれば等しく敵ですわ。ぶっ殺しますわよ」


「あ、ハイ」


 こうしてリーズレットは100名以上の男達を率いて現場へ向かうのであった。



読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] まだ途中ですが、すごーく面白くて読書が止まらず寝不足です(;つД`)今までにない爽快感で今後の展開が楽しみです。淑女と侍女のイメージ図があればうれしいですね(゜∇^d)!! コミック化やアニ…
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