6.5 右腕
翌日、戻って来ない仲間に何かあったと悟った傭兵達がホープタウンにやって来た。
そこで見たのは衝撃的な光景。
なんとホープタウンの入り口に仲間の死体が縄で逆さ吊りにされているじゃないか。
「ふざけやがってッ!」
ブチギレた傭兵達――4台の魔導車に乗った合計10人の傭兵は町の中に車ごと乗り込んだ。
町民の姿は外にない。家の中に引き籠っているのだろうと思い、リーダーの男は仲間と共に魔導車から降りて怒声を上げる。
「俺達の仲間を殺しやがってッ! タダで済むと思ってねえだろうなァ!」
すると、雑貨店からドワーフの親父が慌てて出て来る。銃口を向けられながらも両手を上げてリーダーの男に駆け寄った。
「待ってくれ! 俺達の仕業じゃない!」
「なにィ!?」
「本当だ! そうだろう、みんな!」
ドワーフの親父がそう叫ぶと、家からは恐る恐る出て来る町民達。
彼等は傭兵達を囲むと怯える様子を見せて首を縦に振った。
「そ、そうです。昨日、変な女が来ました。彼女が皆さんの仲間を殺して……」
オドオドとしながら怯える町民達の言葉を傭兵達は信じた。
それも当然だろう。今まで無抵抗、成されるがままだった彼等だ。今更自分達に対して反抗するとは思えなかった。
「その女はどこにいる!? まだ町にいるのか!」
「は、はい……。あ、あの女です!」
そこに、リーズレットが姿を晒した。
赤いドレスを着た淑女が、町民が指差す300メートル程度離れた先に現れたのだ。
彼女はゆっくりと傭兵団に体を向けて微笑む。そして、手を銃の形にして「バン」と撃つジェスチャーをした。
「なめやがってッ! ころ――」
リーダーの男が言い切る前にパン、と銃声が響く。
「あ?」
リーダーの男は首に熱を感じた。首に手を当てるとヌルッとした感触。手を見れば赤く染まっていた。
「な、なんじゃあこりゃああ……」
首を撃たれたリーダーが最後に見たのは、ハンドガン型の魔法銃を両手で構えるココの姿だった。
リーダーが地面に倒れると、それを合図に町民達は一斉に隠していた魔法銃を取り出して傭兵へ向ける。
「私達はもう屈しない!」
「娘の仇! 死ね! 死ね!」
騙され、囲まれていた傭兵達は町民の一斉射を浴びた。
リーズレットの思惑通り。
彼女は町民達に銃の撃ち方だけを教えた。どうせ1日だけじゃ兵士にはなれない。
だったら、今まで屈していた事実を利用して騙し討ちしろと策を授けたのだ。
オドオドして、いつも通り怯えながら傭兵団に対して射線上に仲間が立たないよう包囲する。
魔法銃はリコイルが緩い。至近距離でトリガーを引けば素人でも当たる。
結果は大成功。10人中、8人は撃たれて死んだ。
残り2人となった傭兵の行動は二通りに分かれた。
驚愕しながらも銃を抜いた1人。
「私は、人だ!」
銃を抜いた男は、ココのこれからの決意と今までの自分と決別する為の1撃を浴びて死んだ。
「く、くそ、ちくしょう!」
もう1人は逃げ出した。
町民の包囲を抜けて、リーズレットの方へ駆ける。
しかし、リーズレットと傭兵の間に小さな影が飛び込んで来た。飛び込んで来たのは銃を持ったサリィだった。
「ファッキューですぅ!」
パン、と撃った弾が傭兵の額にクリーンヒット。傭兵はぐるんと宙を回転して地面に倒れた。
「お嬢様~! 当たりましたぁ~!」
「まぁ。さすが淑女見習いですわね」
尻尾をふりふりしながらパタパタ駆けて来るサリィを抱きしめて、リーズレットは彼女の頭を撫でる。
侍女サリィ。淑女の右腕として正式デビュー。
読んで下さりありがとうございます。
面白いと思ったら下の☆を押して応援して下さると作者の自信と励みになります。




