ブルーノの息子視点2 天使様の弟子にしてもらいました
この人形、絶対に変だ。
朱と白の変なコスチュームしているし、顔は虫の面なんて被っていやがる。挙げ句は白いマントって葬式か何かのつもりか。ピエロか何かか?
完全に逝っているおばちゃんって感じだった。
なのに、なのにだ。こいつは何をトチ狂ったか
「こんなとっちゃん坊やに負けるなんて! まだまだね」
と俺を見下しやがったのだ。こんな変人に見下された・・・・俺はショックのあまり唖然とした。
なんとかお前は誰かと誰何すれば
「私はエム78星雲から帰ってきたアントラマンよ」
と、なんか変なことを言ってきたのだ。青雲ってなんだ? 貴様は青ではなくて変態色ではないか。
変人の国から帰ってきたと言っているのか。いや、お前なんか周りのみんなは絶対に帰ってきてほしくないだろう。
でも、何故か妹はとても喜んでいた。
良かった、こんな妹と血が繋がっていなくて。俺には変態趣味はない。
俺は馬鹿に構っていずに、適当に誤魔化してさっさと片をつけようと思ったのだ。
「アントラマン? そんなの知るか」
「知らないの? だから無知無能は仕方がないのよ!」
そこまで堂々と言われたら知らない俺が悪いみたいではないか。
「えっ、お前、そんなに有名なのか?」
思わず聞いてしまったのだ。
「そうよ! あんたの馬鹿親父よりも余程ね!」
「親父を馬鹿にするな!」
父には良い思い出はないが、それでも父だ。魔術師としては最強の魔術師だったのだ。それをこんな変態に馬鹿にされるのは許せなかった。
「食らえ!」
俺は爆裂魔術を変態に浴びせた。
しかし、変態はそれをあろう事か跳ね返したのだ。
俺は慌てて転移して逃げた。
なるほど、変態の格好をして周りに認められるほど、一応力はあるということか。
でも、これで終わりだ。馬鹿はほっておいて、俺は妹に止めを刺そうと真上に転移したのだ。
そして、爆裂魔術を放とうとした時だ。
俺は一瞬で燃やされていたのだ。変態の放った爆裂魔術によって・・・・
俺はかろうじて障壁を張ってなんとか致命傷は避けた。
信じられなかった。
俺は転移する間もなく、吹っ飛ばされて城壁に叩きつけられていた。
「貴様!何故、俺の動きが予測できたのだ?」
俺は驚いて、聞いていた。
「ふんっ、あなたが単純だからよ!」
「な、何だと!」
もう許せなかった。今のは油断した俺が悪かったのだ。本来こんな変態にやられるわけはない。
しかし、俺が転移した先にいきなり爆裂魔術が飛んできたのだ。慌てて避ける。
「なっ!」
さすがの俺も慌てて転移する。
でも、そこにも爆裂魔術が飛んできた。
俺は何回も転移で逃げたが、変態は必ず追ってきたのだ。
俺はコテンパンに変態の赤毛の小人にやられてしまったのだった。
な、なんでだ。なんでこんな変態に負けるんだ。
俺は黒焦げになってピクピク震えながら、プライドも何もかもすべてを叩き折られていたのだ。
気付いたら俺は牢獄の中だった。
手足を魔道具の魔術防止用の手錠をかけられていた。
母も父も殺されてしまった。
俺も処刑されるんだろう。
生き恥を晒すくらいならば俺は死のうと思った。
自分に向けて爆裂魔術を放とうと思ったが、手錠の魔道具の前に完全に無効化されていたのだ。
何て事だ。死ぬことすら出来ないなんて。
でも、俺の前にはもう何も無いのだ。
あるのは妹に対して敵対したという事実のみ。
もう1人で処刑されるしか無い。
俺は絶望した。
でも、待てよ。この手錠を使えば死ぬことくらい出来るのではないか。
俺は手錠で首をくくろうと思った。
何とか首をつろうとしていた時だ。
「何をしているの?」
その声はあの変態だ。
「ほっておいてくれ。俺はもう生きていても仕方がないんだ」
俺はそう言うと首をくくろうとした。
手錠がその瞬間、切られたのだ。
俺は地面に落ちていた。
「何しやがる」
そう言って振り返ると
「馬鹿言っているんじゃないわよ」
変態に思いっきり張られたのだ。
「あんたまだ生きているのよ。死んでしまったら何も出来ないのが判っているの!」
俺は生まれて初めて頬を張られた。
母にさえ手を上げられたことはないのに。
当然王子に手を挙げる者などいなかった。
そして、変態・・・・いや、そこにはなんと赤髪のとても美しい天使が立っていたのだ。
俺は初めて天使が仮面をしていた理由が判った。
それはあまりに美しすぎて周りを魅了し尽くしてしまうからだと。
「どうしたの? 私の顔に何かついている?」
天使が俺に声をかけてきた。
俺は天にも昇る気持ちだった。
「いえ、あまりにも美しくて」
「えっ」
天使様は俺の声に唖然としていた。
「天使様。どうか、俺を貴方様の弟子にしてください」
「えっ、いや私は天使じゃないし」
「いえ、その身からにじみ出る美しさ。高貴な佇まい。どうみても天使様以外には考えられません」
「えっ、そおう?」
天使様はいきなりトーンダウンした。
「お願いします。何でもします。俺をお側においてください」
「?」
天使様は戸惑ったみたいだった。
「お願いします」
俺は土下座線ばかりの勢いでたのみこんだ。
「でも、あなたね」
天使様はつれなかった。
「そうですか。私は妹に歯向かいましたし、やはり天使様も私に死ねと言われのですね」
そう言うと俺は再び首をつろうとした。
「ちょっと待ちなさいよ」
「じゃあ、弟子にしてくれますか」
「えっ、いやでも」
「もう、俺は父も母もいません。天涯孤独な身なんです。もう死ぬしか無いんです。
でも、ここで、天使様にお目にかかれたのが天命なのです。天使様にお仕えしろと神様が命じておられるのです」
「そんな事言っても」
「生まれて初めて自分からやりたいことが見つかったのに、天使様は何て冷たい。やはり俺は死ぬしか無いんです」
「いや、ちょっと待ちなさいよ」
天使様は困った顔をした。
俺はここぞとばかりに頼みに頼み込んで、最後は土下座してなんとか天使様の弟子にしてもらったのだった。
「まあ、仕方がないわね。私の修行は辛いわよ」
「はい、天使様と一緒にいられるなら本望です」
俺は天使様に許してもらって天にも昇る気持ちだった。




