女王戴冠式1 戴冠式で胸に槍が突き刺さりました
エルダの父である公爵への怒りは全然収まらなかった。結局エルダの父は、エルダから許してもらえずに、すごすごと帰ることになるのだが・・・・。
それからも、私のクラスメートでオースティンの親元から勘当した、あるいはこちらから縁切りした貴族の親たちの私参りが続いたんだけど。皆、クラスメートから相手にされないから、最後の頼みの綱って感じで私のところに来るんだけど・・・・。それはとても困る。何しろ彼らは本当に戦力なっているんだから。
その筆頭のイングリッドは怒って会いもしなかったし、クリスティーン様は親に対して完全にあかの他人に対する態度だった。
元々1000もの大軍を率いて最初から支援してくれたのが、クリスティーン様だし、その戦費もドラゴン退治したお金をそのまま当ててくれていて、完全に自腹だったのだ。
この王国がここまでこれたのは一重にクリスティーン様のおかげとも言えた。私はまだ領地は分けていないが、この国で公爵位のにつけると約束したのだ。
クリスティーン様のお父様には申し訳ないが、このアンネローゼ王国が存続していくには大将軍であるクリスティーン様がこのままスカンディーナに滞在してくれる方が好ましかったのだ。
大切な領地のことだが、イェルド様の策で、私は最初から味方してくれていた貴族にも次々に陞爵を約束していた。
ニクラスとロヴァミエ伯爵には侯爵位を、ヴァルドネルで最初から味方してくれた子爵、男爵にはそれぞれ伯爵位と子爵位を約束。侯爵はまだだったが、伯爵や子爵はそれぞれ領主が亡くなった領地に既に入れていた。
それを見て、このままでは爵位が取り上げられるのではないかと、危機感をもった貴族たちが、我が陣営に雪崩を打ったように大量に流れ込んできたのだ。
淫乱側妃の方はもう全貴族の2割も残っていないだろう。
戦う前から我が方は圧倒していたのだ。
腹黒イェルド様は、領地をそのままにしてほしけば、スカンディーナ王国に仇なした淫乱側妃とエスカール国王を捕まえて差し出せと淫乱側妃側の貴族に大量に機密文書をばら撒いたとかばら撒いていないとか・・・・。
私としてはイェルド様は絶対に敵に回したくない。
私はイェルド様を捕まえておくために、公爵位の位を用意しようと言ったのだが、
「いえいえ、殿下。私はまだ何もお役に立てておりませんからな。領地など、治めるものがいないのならば、伯爵位くらいで十分です」
その一言で、ハウキプダス伯爵領がイェルド様のものになった。
何しろ、スカンディーナ側の人材はブルーノが粛清したせいで、殆ど残っていないのだ。
「まあ、無能な者に広大な領土を任せても、反乱の温床になるだけですからな。治めるものがおりませんでしたらしばらく女王領直轄にして、代官にフィルを充てればよろしかろう」
自国の王太子も顎で使う勢いなのは流石に腹黒宰相だ。
私はそれやこれやで考える暇も殆どなく、戴冠式当日を迎えた。
私はスカンディーナ女王の正装と言うか私の母のよく着ていたという青い色のドレスを急遽設えて、急造された大階段に向かって大勢の貴族の参列者の前を歩いていた。
私の前は私の騎士のフィル様がその側近3人とメルケルが先導してくれていた。
大国の王太子に先導させるのはどうかとも思ったが、
「何、アンネローゼ様の婚約者ですから問題ありません」
イェルド様の一言で決まった。
私の後ろは大将軍のクリスティーン様達が歩いてくれた。
そして、急遽作られた階段を上り祭壇の前で私は立ち止まった。
そこは小高い丘の上になっており、ムホスの街が一望できた。背後から多くの民に見られているのを感じる。
ついに両親の跡を継ぐのだ。
戦神シャラザールを祀った祭壇の前に、私は跪いたのだ。
その私の前、その祭壇の前に転移で二人の人物が現れた。
1人はヴィルマル魔術師団長だった。そして、その前にはなんとオースティン国王陛下が現れたのだ。
その姿を見て、貴族達は皆どよめいた。
まさか、ここに大国オースティンの国王陛下が現れるとは思ってもいなかったのだ。
「アンネローゼ・スカンディーナよ。正統な王位を簒奪したブルーノ一味を征伐した功により、ここにそなたをスカンディーナ王国女王と認める。よくやったな」
最後は私へのねぎらいの言葉だった。
そして、そう言うと陛下が私の頭に王冠を授けてくれたのだ。
「はっ」
私は頭を垂れた。
私の目からは期せずして涙がこぼれ落ちた。
ここまで来れるとはとても思っていなかったのだ。近衛に殺されそうになった事。疫病にかかったフィル様にヒールして治したこと。ブルーノとの長く苦しい戦い。いろんなことが思い出された。
多くの者がブルーノとの戦いで死んでいったが、やっとここまで来たのだ。
私は感無量だった。
「さっ、陛下。立たれよ」
オースティン国王陛下が私に手を添えてくれた。
そして、その反対側にはフィル様が手を差し伸べてくれた。
私はその両方の手を掴んで立ち上ったのだ。
そして、皆に振り向いた。下からみんな私を見てくれていた。
私が皆に手を振ろうとした時だ。
ズブっといきなり私に槍が突き刺さったのだ。
淫乱側妃の襲撃です。果たしてアンの未来は。
今夜更新予定です。




