高熱を出した王太子に癒やし魔術を全開でかけて、王太子の上で魔力切れで気絶してしまいました。
戦いは終わった。
なんとか勝てたって感じだった。
私は最後は魔力を使いすぎて、と言うか体もボロボロで完全に気絶していた。
わたしは気付いたら野戦病院のベッドで寝ていた。
聞いた所によると、あれからすぐにリーナ達、救護班が駆けつけてくれて、みんなの治療にあたってくれたそうだ。
あれだけの戦いで死人が1万人も出なかったのはすべて彼女たちのおかげだ。
敵の多くはやられて敗走した。敵の被害の多くは私がブルーノ目掛けて闇雲に放った火の玉が命中したかららしい。
うーん、どこで効果が出るか判らないよね。
「あなたね。たまたま敵に当たっていたからいいものの、味方に当たっていたらどうするつもりだったのよ」
「そうよ、アン、それでなくてもあなたはノーコンなんだから」
エルダとイングリッドが言ってくれるんだけど、なんか言っていることが酷くない!
世界最強の魔術師を倒したのだ。そんなことに構っていられるはずないじゃない。
と私はそう思ったが、そんなこと言える雰囲気ではなかった。
でも本当に最後はやばかった。
よくブルーノに勝てたと思う。
でも、最後はブルーノは私を見ていたんじゃないような気がしていた。
私の後ろにいる誰かを気にしていたような気がする。誰かはわからないけれど。天国から母が助けてくれたのかもしれない。
最後の攻撃は未だに何が何だか良く判らなかった。
巷では私が大聖女様になって魔王のブルーノを光魔術で倒したのだという噂まで流れているらしいけれど。あの金ピカの魔術がなんの魔術かもよく判っていないのだ。
「いやあ、本当に金ぴかに光っていて、あのアンが神様になったのかと思っちゃったよ」
フィル様の側近のアルフまでが言ってくれるんだけど。
「そんな訳ないでしょ」
私は否定した。
そう言えばフィル様はどうしたんだろう?
いつもなら私のそばに張り付いていてくれているはずなのに。今頃うるさいくらい私にまとわりついて来るはずなのに!
何故ここにいない?
ひょっとしてブルーノの攻撃でどうにかなってしまった?
私はとても不安になってしまった。
「あのー、フィル様は?」
その私の声に皆微妙な表情をした。
私の心臓がドキンとなった!
何! その反応! 何かあったの?
「えっ、フィル様がどうかしたの?」
私は側のエルダに聞いた。
「いや、少し、熱が下がらなくて」
ガバッと私はベッドから起き上がった。
「どこにいらっしゃっるの?」
「アン、そこまで心配する事はないわよ」
「そうよ。ちょっと傷からバイ菌が入っただけで、すぐ良くなるわよ」
「ちょっとイングリッド、何言うのよ!」
「どういう事、バイ菌が入ったって大変じゃない!」
私はイングリッドの言葉に更に慌てた。
「ちょっとアン、あなたまだ怪我が完全に治っていなんだから今は安静にしてなさいよ」
「フィル様が熱で苦しんでいるのにおいそれと寝てられないわよ。どこにいるの?」
私はエルダに掴みかかったが、
「いや、だからアン、あなた絶対に安静なんだから」
「私なんかどうなっても良いのよ」
「いやだからアン、ちょっと冷静に」
私はフィル様の部屋に行きたかったが、このままでは周りに行かせてもらえそうにない。
こうなったら強引に行くまでだ。
私はフィル様を思い描いた。
フィル様は熱でうなされているようだった。何故か聖女のリーナの手を握っているんだけど、なんで! 許せない!
私は瞬時にフィル様の元に転移した。
そしてうなされているフィル様の真上に転移したのだ。
「キャッ」
フィル様の手を握っていたリーナもろとも押し潰していたのだ。
「ちょっとあなた、何、私のフィル様の手を握っているのよ」
私はフィル様の上に乗ってしまったリーナに叫んでいた。そして、リーナを引き剥がした。
私は本当に冷静で無かったのだ。
「えっ、いや、これは」
「アン、リーナはフィルに聖魔術で治療をしてくれていたんだ」
リーナが言い訳しようとして、後ろからルーカスが言い訳してくれるが、興奮した私は聞かなかった。
フィル様が苦しそうに呻いている。
「フィル様」
私はいても立ってもいられなくて、
「ヒール!」
と、フィル様に癒やし魔術を最大にしてかけていたのだ。
そして、そんな事したらどうなるかも考えずに。
私の最大出力のヒールはフィル様の傷を全て塞ぎ熱も下げたんだけど・・・・。
私は魔力切れで、そのままフィル様の上に気絶して倒れ込んでしまったのだ。




