ブルーノ視点4 最後はアンネにとどめを刺されました
すみません! 昨日は仕事で遅くなって更新できませんでした。
アンネの娘の勢力拡大は俺の思っている以上だった。
それをとにかく何とかすべく、近隣諸侯の軍と我が領地の軍を集めた。それと俺が力をいれてきた魔術部隊を。
魔術師達の数は連戦で結構少なくなっており、40名くらいだった。
特に、ここ最近アンネの娘関連で半減していた。ここまで15年かけてエスカールと戦えるまでに充実していた魔術部隊が、アンネの娘のために大打撃を受けていたのだ。
我軍をムホスの地に集めたかったが、敵の動きは早く、陥落したあとだった。
俺は仕方なしに、その隣のホスに進軍した。
戦力の総数は何とか6万の軍勢になった。敵よりも2割増しだ。
まあ、アンネの娘の軍勢も寄せ集めだ。やりようによっては互角以上の戦いにもっていけるだろう。
後は俺とアンネの娘の勝負だ。
大魔術師と言われたガーブリエルはもう耄碌している。なんとかなるだろう。
俺は虎の子の魔術師のうち20名を騎乗させて、中央部に集めていた。
決戦が始まった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
雄たけびを上げて両軍が激突した。
前衛がぶつかるが互角だ。
アンネの娘が火の玉を出しているみたいだ。
途中で警戒していた魔術師の別働隊が止めようとするが、それが次々に我軍の前衛の上部で爆発。敵の前進を許すことになった。いつもいつもアンネの娘は忌々しい行動をする。
本陣に敵の前衛が押し寄せてきた。
中心で魔術師の攻撃を防いでいるのは俺の元同僚ヴィルマルだ。懐かしさが思わず頭の中を過ったが、無視して爆裂魔術を見舞う。
ヴィルマルが倒れた。
これを好機に俺は魔術師部隊の突撃を命じた。
俺が先頭で突撃する。
「出たな。ブルーノ!」
叫んでいるあれは俺が派遣した勇者ではないか。裏切ったのか?
「ふんっ、裏切り者の勇者か」
馬鹿にしたように俺が言う。
「ふんっ、俺は正しい方についただけだ」
勇者は剣を抜き放っていた。
「そう言う戯言は強くなってから言え」
そう言うと俺は爆裂魔術を放っていた。
勇者はぼろ雑巾のように弾き飛ばされていた。
そして、アンネの娘の本陣めがけて突撃する。
「来たぞ」
クリスティーンとか言う女が叫んでいた。
騎士が斬りつけてきたが、一瞬で弾き飛ばす。
ガーブリエルの爺さんが、衝撃波を次々に突撃してくる魔術師に浴びせかけてきた。
「前を開けろ。私がやる」
クリスティーンが馬車を突っ込ませてきた。
そこに俺たちが激突する。
「皆、退いて」
アンネの娘が叫んで火の玉を出した。
周りの兵士たちが逃げていく。
それは、真ん中で爆発した。
その爆発の中、俺は突入した。
クリスティーンが剣で斬りかかろうとする。それを爆裂魔術で正面から俺は攻撃する。
前にある障壁ごと俺は爆裂魔術を浴びせていた。
大爆発が起こって馬車が木端微塵になる。
俺の目の前に弾き飛ばされたアンネの娘が転がってきた。
チャンスだと思ったのだが、アンネの娘はここで火の玉を出してきたのだ。これには碌な思い出がない。
しかし、火の玉は遅い。俺は余裕で避けた。
まずは爺さんからだ。
俺は爺さんに集中して爆裂魔術を放った。
ガーブリエルは俺の攻撃をモロに喰らって吹っ飛んでいた。
あと2人だ。
しかし、あのアンネの娘の遅い火の玉は、何故か我が方の魔術師に命中していくのだ。
20騎の魔術師はいつの間にか俺だけになっていたのだ。
「ブルーノ、覚悟」
叫ぶクリスティーンを爆裂魔術の3連射で仕留める。
そして、俺はアンネの娘に対して爆裂魔術を連射した。
ドカーーーーン
凄まじい爆発とともに、アンネの娘はボロ雑巾のように弾き飛ばされて地面に叩きつけられていた。
アンネの娘の火の玉は全て虚空に飛んでいく。
「ふんっ、愚かなやつだな。アンネローゼ」
俺はアンネの娘の前に立ったのだ。
アンネの娘はもう血だらけで、立上がるのも難しかしいようだった。
やっとだ。やっとこいつを仕留められる。しかし、こいつのせいで育てた大半の魔術師がやられてしまった。
ムカついた俺はアンネの娘の腹を蹴り飛ばした。
しかし、そこにアンネの娘は火の玉を押し付けてきたのだ。
強化魔術で足を強化したが、爆発までは防げなかった。
ピカッ
ズドーーーーーン
火球が俺を飲み込んだ。
俺は障壁で何とかその熱から身を守る。
そして、アンネの娘を探した。
娘は地べたに這いつくばっていた。
「小娘。よくも俺様にここまでやってくれたな」
俺はこんどこそ、アンネの娘を思いっきり蹴り飛ばしていた。
アンネの娘は何故か顔が笑っていたようだ。
俺は手を上げて爆裂魔術でアンネの娘に引導を渡そうとしていた。
「アン!」
その俺に騎士が斬り付けてきた。
「貴様、よくもアンを」
こいつはオースティンの王太子か。しかし、俺には剣はきかん。
次の瞬間、王太子は俺の爆裂魔術で弾き飛ばされていた。ボロ布のように。
「フィル様!」
アンネの娘の絶叫が聞こえた。
「よ、よくも、私のフィル様を!」
どこにそんな力があったのか、なんと半死半生のアンネの娘が立ち上ったのだ。
そして、そのアンネの娘の顔にアンネの姿が重なったのだ。
「あ、アンネ!」
俺は驚いてアンネを見た。
俺が間違って殺してしまった初恋の女だ。
その女が俺に対して手を上げたのだ。
光の奔流がアンネを包んだ。
「あなたには娘は渡さない。さっさと地獄に落ちろ」
アンネが叫んで攻撃してきたのだ。
もう俺には娘など見えていなかった。
そこには怒り狂ったアンネがいたのだ。
そう、俺が殺してしまったアンネが。
何度アンネを殺してしまった悪夢を見たことか。
ボロ雑巾のように飛んでいくアンネの姿が。
それ以来、俺が安眠したことはなかった。
そのアンネから光の奔流が迸り出て俺に襲いかかったのだ。
慌てて俺はミラーを張ったようだが、
パリンッ
一瞬でそのミラーは弾け飛んでいた。
「ギャーーーーー」
俺は大量の光に包まれたのだ。聖なる力に。
俺の対極の力だった。
俺の頭の中に今までのことが走馬灯のように蘇った。
「ブルーノ、よく出来たわ」
そしてその中には笑顔で俺を褒めてくれるアンネがいたのだ。
その笑顔はその時は俺にだけ向けられていたのだ。
「アンネ!」
俺は最後の瞬間、心の底から叫んでいたのだった。




