失礼なクズ伯爵の軍使を暴虐令嬢が叩き斬りました
ハウキプタス伯爵を中心とした軍の進軍は中々ゆっくりで、ロヴァミエの南のオウルの町に集結したのは10日後だった。敵は約2万の兵が集結したとのことだった。大軍だ。
対する私達は、その間に総動員令をかけて、新たに加わった6伯爵家も入れて各伯爵家中心に各地区1000名、10伯爵家、合計1万の軍勢をロヴァミエに集結した。ドクラスからも傭兵部隊1000名が到着した。もともとクリスティーン様の率いる軍勢が2000と、何故か増えているんだけど。オースティンからは続々と今も越境してきているらしい。それに私の周りに魔術師50名とフィル様はじめ近衛兵が100名いるんだけど。魔術師はともかく、近衛兵は元々農民だ。戦力にはなるまい。
総勢13000名強だ。ここまで、大きくなったんだ。私は感動した。1万越えって、私から見たら大戦力だった。
しかし、まあ、各伯爵家を中心とした戦力は恐らくハリボテだ。嫌々ながら来ているに違いない。戦力的には殆ど無いに等しい。
もっともハウキプダスの集めた2万も大半がハリボテだろう。
ここはクリスティーン様の2千の突撃で勝敗は決まると私は思っていた。
私自身は何もする必要はないかなと。
それでも一応軍議は開かれた。
各伯爵とその補佐の子爵クラスがロヴァミエ郊外のテントに集まった。
「各伯爵家の諸君並びに傭兵の諸君。私が総司令官のクリスティーンだ」
壇上に立ったクリスティーン様が自己紹介した。
「敵は悪逆非道の行いをしてきたクズ豚伯爵だ」
「閣下、ハウキプダス伯爵です」
ベーンが冷静にツッコミを入れる。
「ふんっ、要するにクズ豚だろうが。奴はブルーノの自慢の拷問部隊の地位を笠に着て、泣き叫ぶ子女を暴行して来た男だ。男の風下にもおけないクズ豚だ。
戦女神の戦神シャラザール様も私の枕元に現れて、そのクズ豚伯爵を生贄にせよと私にご命じになられた。見つけ次第クズ豚は宮刑に処して、引き回しの上シャラザール様に生贄として捧げる。シャラザール様は地獄の門にて手ぐすね引いて待っておられるそうだ」
クリスティーン様が峻烈な言葉で全員を見渡した。
「当然、我軍の中で、このクズ豚のような事をした者は、私自ら処刑してやる。それだけは各軍に徹底させろ」
そう言うとクリステイーン様は宝剣を地面に突き刺された。
古の戦神もかくやという凛々しさだった。
いやいや来た伯爵達はそれを見て唖然としていた。
「閣下、敵より軍使が来たようです」
そこへバックマンが報告してきた。
「軍使が来ただと、我らの勢いを見て、降伏してきたのか」
クリスティーン様が言われるが、そんな訳はないだろう。何しろ敵の方が多いのだから。
「クズ豚が降伏してきても決して聞かぬぞ」
「その心配は無いと思いますよ」
ベーンの冷静な言葉に一同頷く。
そこへ軍使が現れた。
少し小太りの男だった。
「ムホス男爵と申す」
男は名乗った。
平民ではなくて一応男爵が軍使に来たみたいだ。中々ふてぶてしい面構えの男だった。
男は書面を懐から取り出した。
そして、威張ったように腹を突き出して、書面を広げたのだ。
「反乱軍に継ぐ」
そう、大声で言い放ったとたんだ。
その顔面にクリスティーン様が宝剣の鞘を投げつけていたのだ。
バシーーーーンという音ともとに軍使はテントの外にふっ飛んでいた。
伯爵達は空いた口が塞がらなかった。唖然とクリスティーン様を見ている。
「な、何をするのだ」
男爵は怒ってテントの中に入ってきた。
「煩い。我ら正統な王家の軍に貴様ら弑逆軍が何を言うのか」
クリスティーン様が叫ばれた。
「何を言う、貴様らが反逆・・・・」
その顔の横を今度は投げナイフが飛んでいっていた。
頬に一筋、剣の掠った赤い線が出来ている。
「貴様、言葉は気をつけよ。次はないぞ」
クリスティーン様の言葉に今度は男もコクコクと頷くしか無かった。
何しろクリスティーン様は抜き身の宝剣エクスカリバーを男の方に向けているのだ。
男はその紙をベーンに渡した。自分が読む愚を悟ったのだろう。
「なになに、愚かな反乱軍に継ぐ。我は偉大なる摂政殿下の忠実な僕、ハスキプダス伯爵である。
直ちに、降伏せよ。
さむなくば、貴様らの愛する妻や娘がどうなっても知らぬぞ。
反逆者の妻や娘がどうなるか判らぬ貴様らではあるまい。我は泣き叫ぶ貴様らの妻や娘をいたぶってやっても良いが。
今回は粋がっておる、クリスティーンとか言う小娘と首謀者のアンネローゼとかいう小娘を差し出せば許してやろう。その二人をいたぶるのが・・・・アチッ」
ボッ という音とともにベーンが持っていた紙が一瞬で炎となった。
慌ててベンが紙を落とす。
「な、何するん・・・・」
ベーンは慌てて文句を言うがクリスティーン様の怒り顔をみて、言葉を途中で切る。
「おのれくず豚め、よくもここまで、下衆な文章を寄越したものよ」
そう言うと怒り狂ったクリスティーン様は使者に向かって剣を振りかざした。
「ヒェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
使者は悲鳴を上げるが、その死者に向かってクリスティーン様は剣を一閃させたのだった。
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