ブルーノ視点1 隣国のエスカール軍を撃破しました
私はブルーノ・カッチェイア、このスカンディーナ王国の摂政で女王の夫だ。
そして、この国最強の魔術師でもある。
前国王夫妻を殺して政権を奪取してから15年。この国を支配してきた。
元々、国王の側妃で俺と愛人関係にあったあるドロテーア・エスカールからそそのかされて、弑逆したのだ。
国王を殺せば、アンネが手に入ると。
でも、そのアンネは国王に殉じたのだ。娘をオースティン王国に逃して。
恐らく、ドロテーアはこの大魔術師の俺の弱みをついて、多少なりとも魅了をかけたのだろう。俺としたことが、本当に馬鹿だったのだ。
夫を殺されたアンネが俺のものになる筈はなかったのだ。
俺は俺を使嗾した、ドロテーアを殺そうとしたが、エスカールからの魔術師達は優秀で、魔術師達の屍を盾にドロテーアは逃げ切ったのだ。
以来、我が国のエスカールとの国境に、エスカールの支援を受けた新スカンディーナ王国が細々と生き残っていた。
アンネを失った俺は荒れまくり、アンネ派の貴族たちを次々に粛清し、アンネと親しかったロヴァミエ伯爵の母を人質に、ロヴァミエ伯爵本人にはその婚約者と別れさせたのだ。俺1人が不幸せになるのは許せなかったのだ。
自分で言うのも何だが、本当に人間のクズだった。
アンネのいない人生は、本当に色の無い白黒映画みたいに味気ない人生だった。
俺は逆らう奴らは尽く殺した。そして、今や、この国には俺に逆らう奴らはいなくなったはずだった。
しかし、何をトチ狂ったのか、アンネの娘が我が国に進出してきたのだ。せっかく俺が静かに見逃してやろうと思ったのに。
俺は愛する女の娘だからって容赦する気はなかった。この世から抹殺して両親の元へ返してやろうと思ったのだ。しかし、そこに何故かアンネに似た人形が現れて俺の邪魔をしたのだ。
その人形の御蔭で、アンネの娘のちっぽけな国が出来たのだ。まあ、我軍が一捻りすれば消滅するくらいの。
そう俺は思った。
それに何をトチ狂ったのか、お情けで生きながらえさせてやった新スカンディーナ王国がエスカール王国の5万の援兵を得て、侵攻してきたのだ。新スカンディーナ王国のドロテーア、あの女、どのみち、ちっぽけなアンネローゼ王国が出来たので、チャンスだと思ったのだろう。愚かな女だ。貴様を逃したのが、俺様のただ一つの心残りなのに。
俺は直ちに5万の軍を招集して、それに当たった。
最初は勢いのあったエスカール軍も、我軍5万が出てくると膠着状態になった。
俺はそこに魔術部隊の精鋭を自ら率いて叩きつけたのだ。
この15年間、俺が育て上げた、40名の精鋭だ。
俺は敵の本陣をその40名で襲わせたのだ。
俺は2回めの転移で、敵の司令部の前に現れた。
そこには、エスカールの将軍がいた。たしか、侯爵か何かだったと思う。
ドロテーアが居なくて残念だったが、俺はその男にめがけて爆裂魔術を仕掛けたのだ。
魔術師達が防ごうとしたが、三流の魔術師に防げるわけはない。
俺の爆裂魔術は次の瞬間司令部の真ん中で爆発し、魔術師諸共、将軍を肉片に変えていた。
いきなり司令部が消滅したエスカール軍はパニックに陥っていた。
そこに我軍全軍5万が突撃に移った。
俺は突撃の合図の花火を上げると共に、当たるを幸いに次々に兵士たちを殺していった。
作戦指揮をする人間がいなくなったのだ。エスカール軍はほうほうの体で逃げ出した。
それを我軍は次々に刈っていった。一方的な虐殺だった。
エスカール軍5万のうち、新スカンディーナ王国に逃げ帰れたのは、2万にも満たなかった。
完全な我が方の勝利だった。
俺はこれを機に、一気に新スカンディーナ王国を消滅させようと決意したのだ。
アンネローゼ王国など、所詮寄せ集めの小国。オースティン王国内も、好戦派と不戦派の争いで、オースティンとしては大っぴらに手を出せないみたいだから問題ないだろうと俺は踏んでいた。
5万の兵で攻め込む気勢を上げると急遽エスカール本国から3万の増援が送られてきたのだ。
俺はこの地で決戦するつもり満々だった。
まさか、アンネーゼなんて小国があそこまで勢力を伸ばすとは思ってもいなかったのだ。




