清廉潔白伯爵が忠誠を誓ってくれました。
すいません。本日2話目です。
「何をされていらっしゃるのです。閣下」
土下座をしているロヴァミエ伯爵にルンド先生が驚いて聞いた。
「ノーラ、申し訳なかった」
伯爵が土下座しながら叫んでいた。
「おやめください、閣下。このようなところで」
ルンド先生が慌てたが伯爵は止めようとしなかった。
「本当に申し訳なかった。ノーラいやエレオノーラ・ルンド嬢。あなたのその優しい心を殺したのは私だ。本当に申し訳なかった」
頭を地面につけて伯爵が謝っている。
「閣下、もう、過ぎた話です」
「いや、俺の中では終わっていない。あの時の君の傷ついたような顔を俺は未だに忘れられない! 本当に申し訳なかった」
「そこまで言われるならば、なぜその時に理由を少しでも教えて頂けなかったのですか。貴方様は氷のように冷たい声で、二度と自分の前には現れるなと。次に私の顔を見たら殺すとおっしゃられたのですよ」
ルンド先生が少し感情的になって言った。そんな事を言ったのならば伯爵が悪いのだろう。私がフィル様にそんな事を言われたらショックのあまり死んでしまう。
「申し訳なかった」
言い訳するでもなくて、土下座したまま、伯爵は動かなかった。
「もう終わったことです。失礼します」
そう言うとルンド先生は部屋を飛び出していた。
「先生」
私は追いかけようとしたが、
「アン、まだここは危険だ」
フィル様にガッチリと捕えられたままだった。
「ルンド先生も少しは考える時間が必要だろう」
フィル様の言うことも一理あるので、私は護衛の一部にルンド先生についてもらうことにした。
そして、入り口には固まったままの伯爵がいた。
私が伯爵を見ると
「アンネローゼ王女殿下。私事を先にしてしまい申し訳ありません」
まず伯爵が今の件を謝ってきたんだけど。
まあ、今のは仕方がないだろう。私が首を振ると
「此度のこと、御身自らを危険にさらして、我が母を救っていただいたこと、本当に感謝の言葉もございません」
伯爵はそのまま土下座して頭を下げてくれたのだ。
「ロヴァミエ伯爵。私に土下座は不要です。私は王女とししてやることをしただけですから」
私はそう言うと、伯爵の前まで行ってその手を取った。
「何をおっしゃるのですか、殿下。私、この15年間、本当に母を助けようと色々画策いたしましたが、結局何も出来ませんでした。本当に不甲斐ない伯爵で・・・・この度のこと、なんとお礼を申していいか判りません」
「伯爵。私は転移してあなたのお母様を連れてきただけです」
「何をおっしゃるのですか。私自身、やろうとしても全く出来なかったことを殿下はさらりとして頂けたのです。その能力たるやブルーノにも匹敵するお方だと改めて理解させていただきました」
「いえいえ、私はたまたま転移が出来ただけです。あなたの方が、15年間もお母様を人質に取られて耐え忍ばれたのです。さぞやお辛かったでしょう」
「殿下。普通はできても殿下自らのそのお力を、一伯爵の母風情にお使いいただけないのです。そのお力を高々一介の伯爵の母にお使いいただいたこと、このロヴァミエ、一生忘れません。終生殿下の忠実な僕であることをここに誓います」
ロヴァミエ伯爵は改めて跪いてくれた。
そして、私の手を取ると忠誠の誓いのキスをしてくれたのだ。
「オスキャル・ロヴァミエ伯爵、あなたの忠誠受けましょう。そして、共にブルーノに対する恨み晴らそうではありませんか」
この日、私は4人目の伯爵を傘下に収めた。これでアンネローゼ王国はスカンディーナ王国の4%を占めるに至ったのだった。
戦力的には1万人弱の兵士を動かせるようになったが、20万のブルーノ軍にとっては微々たる戦力だったが。
更には、ロヴァミエ伯爵が我が国の傘下に入ったと聞いて、ドクラス王国との間に横たわっていたヴァルミエの東方6伯爵家が我が国に忠誠を誓ってきたのだ。これでアンネローゼ王国は10%を占めることになり、戦力で2万人。多少なりとも戦えるようになってきたのだ。
しかし、喜んだのは束の間の事で、戦力の増強は逆に巨大な敵を呼び寄せることになったのだった。




