清廉潔白な伯爵の母を王宮から助け出しました
私が転移したのは、真っ暗なところだった。
目が慣れてくると鉄格子が見える。そこはなんと地下の牢獄だったのだ。
私が周りを見ると簡単なベッドが見える。そして、その上にはやつれきった年配の御婦人が寝込んでいた。
その年老いた姿は姿絵とは似ても似ていなかった。ここまでするなんて酷い。
「だ、大丈夫ですか?」
私は、はっと気づいてその寝ていた老婆に声をかけた。
「あ、あなたは」
伯爵の母と思われる人は驚愕して私を見ていた。
「あ、貴方様はアンネ様。・・・・天国からお迎えに来て頂いたのですか・・・・」
女性は驚愕して言ってくれるんだけど
「私はアンネローゼ、アンネの娘です」
「えっ、貴方様がアンネローゼ様」
女性は驚いた。
「あなたはロヴァミエ伯爵のお母様ですよね」
「たしかにそうですが、このような所にどうやって」
私の言葉に伯爵のお母様が答えてくれた。
「転移できました。ここは王宮の地下牢ですか?」
「そうですが、何故このような所に?」
「あなたを助けに来ました」
「私を助けに来ていただいたのですか。王女殿下ともあろうお方が・・・・」
お母様は絶句していた。
「でも、それは無理です。ここは一番警備の厳しいところです。すぐにお逃げてください」
「このような劣悪な環境に15年も閉じ込められておられたのですか」
私が聞くと
「私が死にそうになとブルーノ様が来てヒールをかけてくれるのです。さっさと死んで息子の足かせを解きたかったのですが」
お母様の言葉に私は唖然とした。
「こんな体になって、今まで苦しかったでしょう」
私はそう言いながらお母さんの体を撫でた。
「もう、ブルーノは許しません」
あいつなんてことをするのだ。私にも色々やってくれたけど、伯爵の母を閉じ込めて伯爵を意のように使うなど、人間のすることではない。
「アンネローゼ様。私のことは良いので早くお逃げください」
お母様が言ってくれた時だ。
「おい、そこの女、何者だ」
牢の外で警備していた兵が気付いて、慌てて声をかけてきた。
「そこのあなた、お年寄りをこのような、環境の悪い所に閉じ込めていて、恥ずかしくないの」
私は怒りで震えていた。
「貴様どこの手のものだ。どうやって中に入った」
兵士は叫んでいる。
「おい、どうした」
兵士たちが次々に駆けてきた。
「この女が中にいるのを見つけたんだ」
「牢の中だろう。どうやって入ったんだ」
兵士たちが槍を構えて言う。
「あなた達、この方を外に出しなさい」
「そんな事ができるわけ無いだろう」
「それよりもお前はどこから入ったのだ」
「抜け道があるのか」
「そんなわけないだろう」
兵士が中を光で照らすが転移できたのだ。他に道があるはずはない。
「でも、この女結構いい女だぞ」
「影か何か知らないが、どうやって入ったか、拷問で吐かせてやろうぜ」
「可哀想に、助けるためかしらんがこの王宮の最奥まで忍び込んだのに、捕まるとはな」
「素っ裸に剥いてその体に聞いてやろうか」
「そらあ良いぜ」
男たちが盛大に笑った。
私はもう下卑た兵士たちも許せなくなっていた。
せっかく、ここまで来たのだ。ついでにこの城を破壊すれば良いだろう。老人を捕虜にして言うことを聞かせているブルーノに私は完全に切れていたのだ。
「出でよ、火の玉」
馬鹿笑いしている男たちに向けて私は火の玉を出した。
ポヨンポヨンポヨンポヨン
いつもの如くファイヤーボールがゆっくり飛んでいく。
「おい、こいつ魔術師だぞ」
「すぐに魔術師を呼べ」
「でも、こんなちゃちな火の玉じゃ、何も出来ないぞ」
「下手したら、タバコの火もつかないんじゃないか」
「それは言えているな」
男たちはどっと笑った。
私は伯爵のお母様抱きしめた。
「こんなちゃちなファイヤーボール、怖くもなんにもないぜ」
にやけた笑いをした兵士の1人が火の玉に触れようとした。
その時だ。私はフィル様の姿を思い描いた。
残してきたフィル様は憤怒の形相で怒りまくっているみたいだ。
後が怖そう。ちょっと反省したが、今はそんな事を気にしている時ではない。
私はお母様と転移しようとした。
馬鹿な男が手で火の玉に触れるのが見えた。
私の渾身の怒りを纏った火の玉はその瞬間、閃光を放っていたのだ。
その光の中、私は転移した。
「絶対にアンは許さな・・・・」
叫んでいるフィル様の真上に私達は転移したのだ。
フィル様を次の瞬間には押しつぶしていたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ブックマーク、評価頂けたら幸いです。
王宮がどうなったかは明日夜に!
明日はなろうのメンテナンスがあるそうで、更新は夜一回になります。
その代わり他の話も更新しようと思います。




