ポーション豆知識
「あ~、美味しい」
「生き返る」
少々乱暴ながらもカトレアによって日常に戻された10数名は、シシーから振る舞われたお茶で一息ついているところだっだ。
「なんだか痛みがひいていく気がします」
「ホントっすね。なんかタンコブが気にならなくなってきたっす」
「ああ、このお茶、魔力と体力を回復して軽い怪我なら治る効能あるから」
しれっとシシーが言った言葉におもわず固まる周囲。
「……シシー。こいつらあんたの言動に免疫ないんだから、そういう事さらっと言うんじゃないよ」
「? ポーション飲み水替わりにするなっていうからこれ作ったのに」
「あんたね……」
カトレアは呆れて言葉が出てこなかった。カトレアの呆れが分かったのか、シシーは早口で弁明する。
「いや、だって、ミカを回復させとく必要があったんですもん!」
「ミカを?」
3級ポーションを使ったのにまだ回復が必要なのかとカトレアは首を傾げる。たしかにミカの腹部には魔物によって大きな風穴を開けられており、他にも大小さまざまな怪我を負っていたが、全部綺麗に治っていたはずである。
「3級ポーションは欠損部位を再生させてくれる代物ですけど、再生するのに結構な体力をもっていかれるんですよ」
「そうなのかい? ミカ」
カトレアの問いにミカは微苦笑を浮かべながら答える。
「はい。自分では上手く隠せていると思ったんですが、先輩は気付いておいででしたか」
「そりゃあね、作ったの私だし。良い点、悪い点は把握しているよ、だから姐さんには3級ポーションを使わないで縫合したんだもん」
あれだけの大怪我を負っていながら剣を手放さず、魔物と戦い続けていたミカなら大丈夫だと判断したのだという。カトレアはあの時点でかなり体力を消耗しているようだったから使うのは避けたとも。
「そういう事だったのかい」
「フリージア教官の扱きを受けていて、本当に良かったです」
「うん、ほんとだね。普通なら下級ポーションいっとく所だけど、そこまでじゃないみたいだったし。だからこれにしたの」
ポーションは瞬時に怪我などを直してくれる便利な回復アイテムではあるが、乱用していると効き目が悪くなる欠点がある。そうなると1つ上の等級、下級ポーションで例えるなら7~9級が該当し、効能にそこまでの差は無いが、今まで9級で済んでいたのに効き目が悪いと8級のポーションを使わなければならなくなるのだ。値段も相応にするので他の回復アイテムを上手く活用する必要性があるのだった。
「お気遣いありがとうございます。……しかし、また固まってしまいましたね……」
「錬金術のアイテムって、基本的に高価なイメージあるからこんな風に気軽に飲めるもんじゃないからねぇ。貴族とかの富裕層は別だけど」
「うちの店じゃ試飲をかねて1杯無料で提供してるんだけどな……」
「先輩のお店に大物の顧客が複数いらっしゃるのは有名ですから、敷居が高いと思っている生徒が多いので気後れするんですよね。かくいう僕もそうでしたし」
「! だから生徒の来店率が低かったのか……学生なんだからぼったくりとかしてないのに、って今まで悩んでたよ」
「あんたの場合、逃げる時によく言ってる『うちは危険物の宝庫』っていうセリフも悪いだろ。それで余計に臆してるんじゃないのかい?」
「一理あります」
意外なところで来店率の悪さに拍車をかけていた事にうなだれるシシー。
「うぅ……防犯っていう意味でいろいろ仕掛けてるけどさ、普通に買い物する分には危険な事なんてないのに」
「ま、まあ、今知る事が出来ましたし、帰ったら知り合いにも説明しておきますので」
悄然としているシシーを懸命に励ますミカに「絶対だよ、頼んだからね!」と食いついているシシーを見る限り、生徒の来店率の悪さを結構気にしていたようだ。そんな二人をしり目にしながらカトレアは、固まってしまった集団をどうしようか悩んでいた。
(もう1回殴るべきかねぇ?)
不穏な空気を感じ取ったのか、集団の何人かが再起動して手近な者の肩を掴んで揺さぶって我に返したので、カトレアの右手が再び振るわれる事は無かった。
「大丈夫です! 大丈夫ですから!」
「すぐ元に戻しますから! だから少しだけ待って下さいぃぃぃ!」
「おい! さっさと戻れ! カトレアさんを煩わせるんじゃねぇ!」
お目を通して下さいました皆様、初めまして。作者のサディラと申します。
このような拙作を読んで下さる方々がいらっしゃいます事に、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございます。
皆様にお伺いしたいのですが、登場人物の台詞の際、前後に行間を空けた方が皆様は読みやすいのでしょうか?
その辺の所を何も考えずに書き連ねておりまして、今になって「もしかして読みにくいんじゃ……?」と不安に思っております。
よろしければ感想にてご意見を頂ければ嬉しく思います。
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ご意見を頂きましたので行間は空ける事に決めました。




