後輩視点によるプロローグ
「よお」
「お疲れ様です!」
先日営業に行った取引先で、偶然大学時代に仲良くしていた先輩と会った。
すぐに飲もうという話になったけど、その時は丁度締日が近くて忙しかったのでLINE交換だけして、今に至る。
就職してからは自ら飲みに行きたいと思えるほど仲良くなった相手はいなかったから、誰かと飲むのは久しぶりだ。
待ち合わせた駅構内から居酒屋に移動しつつ、昔話に花を咲かす。
「普段は『下戸なんです~』って言ってます。 そうすれば誘われない今の時代に生まれて良かった、とつくづく思いますね」
「『愛想のいい内弁慶』ぶりは相変わらずだな~」
「出会ってすぐ先輩にそのアダ名をつけられたせいで、大学時代は散々な環境でしたよ」
「皆でわいわいも悪くなかっただ、ろ……」
急に先輩は黙り、足を止めた。
視線の先には、中性的で華奢な男性。
彼の方も先輩に気付いたようで、にこやかに会釈する。
釣られたように頭を下げた先輩の会釈は、彼らしくないとてもぎこちないものだった。
「いやービビった……」
居酒屋の半個室の座席にだらしなく座ると、ようやく口を開けた先輩は溜息のようにそう言った。
暫く無言の早足で目的地に進んだせいか、汗でワイシャツがべっとりと張り付いている。
「さっきの人とはどんな関係です?」
「関係もクソもねぇわ。 前住んでたトコの隣人、だったんだけどさ……う~ん、もう話してもいいかな。 お前だし」
「なんか内緒の話なんですか?」
口から先に産まれたような先輩には珍しい。
さっきの会釈もだけど。
「別にそうじゃないけど……長くなるから先頼もう」
この歯に物が挟まったような感じもそう。
先輩で歯なら、歯に衣着せぬ、の方の人なのに。




