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第四十一話 寸法合わせはコスプレで?

 衣装の寸法をあわせると言うから、コスプレみたいなものを連想していたんだ。

 だけど、連れてこられたところはどう見てもオーダーメイドの洋服屋。


「ブランド物の服を売っているところでは……」


「ええ、その通り」


 舞香が当然のように頷いた。


「こういうところで戦隊ものの服を作っちゃっていいの?」


「大丈夫。詳しいことはうちの法務部がやってくれたから。何の問題もないって。ただ、残念だけどこのイベントが終わった後、衣装は提出しなくちゃいけないって」


 どういう交渉が行なわれたんだろう。

 そもそも、どこと交渉してOKが出たんだ?

 恐ろしいな米倉グループ。


 これも、男子グループと女子グループで分かれて寸法を取る……と思っていたら。


「何してんのあんた。こっちこっち!」


 麦野に腕を掴まれて引っ張られた。

 パワーは無いがすごい迫力だ。


「ええ? だってこっちは女子のところじゃ?」


「何いってんの」


 きょとんとする麦野。

 その後ろで、舞香が微笑んだ。


「私達がライスジャー組でしょ? 一緒に寸法取らなくちゃ」


「ああ、そういう……!!」


 隣を行き過ぎる男子組から、嫉妬の視線を感じるぞ……!!


「どうして、稲垣ィ」


 佃が亡霊のような声を上げたので、俺は端的に説明してやった。


「ライスジャーを知ってるのが男子では俺だけだからだ」


 これで、布田と掛布は納得したようだ。

 佃は悲しそうにオロロンオロロンと嘆いていた。


「こんなことならニチアサの番組を見ておくんだったぁ……!」


 後悔先に立たずだぞ。

 そもそも、佃ほど戦闘員としての適性がある男を戦隊側にしておくなんて惜しい。


 ということで、俺達は店の奥へと通された。

 このブランドショップ、採寸専用の部屋があり、専門のスタッフが控えているのだ。


 スタッフは女性で、舞香達と一言二言話すと、すぐに道具を取り出した。


 ええっ!?

 ま、まさかこの場で一緒に寸法を……!?


 俺は衝撃を受けた。

 見るなと言われても、目が舞香の方を向いてしまう。


 ああ、いかん!

 ヨコシマな目で彼女を見たらダメだ!

 いや見ちゃうけど!

 毎日見てるけど!


 そうしたら、俺と女子達の間にシャッとカーテンが引かれた。


 ……。

 あー、部屋の中を分けられるようになってるのね。

 それは安心ですわ。


 俺は急に賢者モードになった。

 何もかも許せる気持ちになって、寸法を測られる。


「稲垣様は今後、もう少しパンプアップさせると言う話でしたので、若干余裕をもたせて作りますね」


 いきなり聞き捨てならない言葉が出てきたぞ!!


「ねえ何ですかそれ俺今初めて聞いたんだけど」


 思わず尋ねると、寸法のお姉さんがハッとした。

 今、しまった!って顔したな!


「芹沢さんかあ……。これから猛特訓が待ってるわけだな」


 この先に何があるかを想像すると、ゾッとしないでもない。

 あの人の課してくる訓練、なかなかガチだからなあ。


 ちなみに芹沢さん曰く、舞香も体作りのために同じようなことをしてるらしい。

 ただ、彼女は日舞で体幹が鍛え上げられているので、仕上がりの速度がとにかく早いのだとか。


 そう言えば、我が戦隊で問題がいるとしたら、麦野なのでは?


「アイタタタタタ! そこ! そこ筋肉痛です!」


 彼女のことを考えたら、すぐに麦野の悲鳴が聞こえてきた。


「あーっ、そこも! そこも筋肉痛で! ぎゃー!」


 どう寸法を取られたらあんな悲鳴が出るんだ。


「大丈夫だよ春ちゃん。その筋肉痛で、筋肉ができるの。希望のある痛みだよ」


 舞香が不思議な慰め方をしている。


「うえーん、筋肉が大事なのは分かるけど、春菜はムキムキになりたくないよう。ほどほどでいいのにー」


「そう簡単に筋肉がつくと思わないで」


 あっ、いきなり舞香の声がマジモードになった!


「春ちゃんはちょっと筋肉が少ないもの。もう少し練習の負荷をあげて体を苛めた方がいいと思うな。そうだ、私が行ってるジムに今度一緒に行こう? 肩こりひどいって言ってたじゃない。筋肉が足りないからだよ! 筋肉つけよう!」


「ひいー」


 麦野の悲鳴が聞こえた。

 舞香の圧倒的な筋肉押し……!


 舞香の場合、実践で身につけた筋肉が全身にバランス良くついているんだろうな。

 だからこそ、創作ダンスでのあのキレッキレの動きとか、他の体育の授業でも本職の運動部と互角の動きをできるのだ。


 舞香、スポーツにおいて隙が全くないからな。

 勉学でもないんだけど。


 ともかく、実際に筋肉をつけてその力を存分に発揮している舞香の言葉には、強烈な説得力がある。

 うん、筋肉は大事だな。

 俺もこう、釣り合い的に筋肉が必要な気がしてきたから、芹沢さんの鬼の特訓を受け入れることにしよう……。


 ちょっと悲痛な思いで決意を固める。

 だが、そんな気持ちもすぐに切り替わる。

 なぜなら……。


「稲垣くんも、一緒に行こう、ジム!」


「はい!」


 いきなりの舞香からの呼びかけに、俺は即答してしまったからだ。

 素晴らしいな、筋肉を育てるの!

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― 新着の感想 ―
[一言]  これで、布田と掛布は納得したようだ。 ↑ 『布』が入る名字が二人もグループに居るのは珍しいですね(´ω`)『ぬのぬのかけた』で覚えられるかな。  佃は悲しそうにオロロンオロロンと嘆いてい…
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