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第四十話 女子チームも結成!

『ウグワー!』


 動画の中で麦野が足をもつれさせて転がった。


『大丈夫、春ちゃん!?』


『ううっく、春菜、運動は苦手なんだけど……!! 体が動かないんだけどーっ』


 だが立ち上がる麦野。


『春ちゃん、無理しなくても……』


『だめ、舞ちゃんがやりたかったことでしょ! あいつも舞ちゃんのためにめっちゃ頑張ったんだから。親友の春菜が頑張らないのはなしでしょ!』


『春ちゃん……!』


『麗しき女の友情!!』


 水戸ちゃんが茶々を入れたので台無しになった。

 まあ、この動画を撮影して見せてくれているわけだから、水戸ちゃんには頭が上がらないんだけど。


「どうよー」


 水戸ちゃんがドヤ顔をする。


「南海はかゆいところに手が届くサービスぶりだ。さすがだ……」


「唐人はいつもあたしを褒めてくれるので気分がいい!」


 バカップルがちょっと変わったラブラブの仕方をしている。

 この二人、いやみがないんだよな。


 さて、水戸ちゃんが撮影してきた動画によると、女子達もアクションの練習をしていた。

 舞香、麦野、水戸ちゃんの三人なんだが、水戸ちゃんは司会のお姉さんなのであまり動く必要がない。

 どうして麦野がアクション練習を?


「麦野ん、あれなのよ。セキハンジャー役なんだってさ」


「麦野がセキハンジャー!?」


 俺は衝撃を受けた。

 そうか、そう言えば、ライスジャーの基本メンバーは三名だ。

 三人いないとアクションができない。


 舞香がハクマイジャーとして、俺がクロマイジャーなら……なるほど、麦野がセキハンジャーか。


「麦野ん、がんばってるよー。この動画も二人の許可をもらって撮ったものです。なんか、男達に見せて戒めにするんだって。自分でハードル上げてるの。麦野ん熱血だねえ」


「麦野さんが熱血なのは知ってる」


 俺の言葉に、男どもが目を剥いた。


「なんでや!?」


「春菜ちゃん、ほんわか癒やし系なんじゃないの!?」


 あれが癒やし系なものか。

 友情バリバリの熱血女子だぞ。


 親しくなってから、麦野に対する印象は180度変わった。

 今は俺、彼女のことをちょっと尊敬してるのだ。


 動画の中の麦野、ちょっと時間が飛んだ後ではさっきまでできなかった事がやれるようになっていた。

 動きは舞香と比べるとぎこちないが、それでも運動が苦手だと自他ともに認める麦野が、根性でやれるようになっていっているのだ。

 手に汗握る。


「がんばれ、麦野……!!」


 そうだ、俺とあいつは戦友なのだ。

 舞香を救うために一緒に戦った、仲間なのだ。


「俺達も負けちゃいられないな……」


 俺が鼻息荒く立ち上がる。


「春菜ちゃん可愛いのに頑張り屋でキュンキュン来るな……おっぱい大きいし」


 佃もやる気を充填されたようだ。

 こいつは基本的にヨコシマな気持ちでエネルギーを得る。


 布田は水戸ちゃんといちゃいちゃしてやる気十分。

 掛布はなんか分からないけど頑張るようだ。


「俺の人生はさ、常に脇役だったんだよな。こう……回りのみんなが起伏のある人生を送ってるのを横目に、平坦でなにもない道をとぼとぼ歩いてるんだわ。だけど、これってクラス一の美少女二人とボランティアするんだろ?」


「三人だ三人! 南海は美少女だぞ!」


「うひひ、唐人、あんまゆうと照れちゃうよー」


「おい静かにしていたまえバカップル。掛布にもたまには喋らせてあげろ」


 俺は二人を静かにさせて、掛布に続きどうぞ、と促した。

 基本、このカップルは心が広いので、ちょっと雑な言い方でも納得してくれる。


「サンキューな、稲垣。ってことでさ、俺もやる気なんだ。しかもなんか、俺は戦闘員やるんだろ? 派手にやられてやるぜ」


 掛布がサムズアップしたので、俺も佃も布田も水戸ちゃんもサムズアップした。


 ちなみに敵のボス、サバクトビバッタ将軍は長身の布田が担当する。

 実に見栄えのするサバクトビバッタ将軍になりそうだ。


 今日の練習を一通り終えた後、ヒーロショーをする俺達が作ったグループチャットに、舞香からのメッセージがあった。


おこめ『これからみんな、少しだけ時間をください。外にマイクロバスが用意してあるので』


佃煮『なんやなんや』(佃)


お麩田『なにか素敵なお礼とか?』(布田)


フリカケ『なんでもうれしい』(掛布)


稲穂『落ち着けきみら』


佃煮『(´・ω・`)』


お麩田『(´・ω・`)』


フリカケ『(´・ω・`)』


なっとう『実際なんなの? おこめちゃん詳しい説明はよ!』(水戸)


おこめ『ふふふー。これから、コスチュームの採寸をしに行きます!私に続けー』


むぎゅ『おー! どくをくらわばさらまでー!』


しゅんぎく『ほらほらさっさとバスに乗りたまえキミタチ』


えのき『あのー運転するのはわたしなんですが先輩』


 !?

 新しい人が一人いるぞ……!?

 そう言えば、俺達の男子チームの教官は芹沢さんだった。

 舞香達に教えてるのは誰だったんだ?


 芹沢さんを先輩と呼ぶということは……。


 マイクロバスの前には、ポニーテールの女の人が立っていた。

 芹沢さんよりも小柄だけど、目つきは鋭い。


「ああ、彼女は榎木。私達が舞香さんを連れ出した時、出し抜いたうちの後輩だよ」


 榎木さんが警戒心バリバリで俺を見ている。


「あ、あの時はどうもご迷惑を……!!」


「本当にね……!」


 ということで!

 ヒーローショーの衣装の採寸に行くぞー!

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― 新着の感想 ―
[一言] おこめ『これからみんな、少しだけ時間をください。外にマイクロバスが用意してあるので』 ↑ 『少しだけ時間をください』はもう稲垣くん専用のフレーズではなくなったんやなぁ(´・ω・`) それはそ…
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