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悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く  作者: ひよこ1号


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模擬戦?と愛弟子

もう1人は背を向けていて顔は見えないが、緑色の短い髪をしていて、手には杖を握っている。

だが、マントから見えている腕は、ジェレイドに劣らないくらいの筋肉量だ。


(魔法……使い?)


マリアローゼはこてん、と首を傾げた。


そんな魔法使い聞いた事無い。

魔法は物理とか言い出さないだろうか?


魔法使い(仮)と魔法剣士の戦いは、凄まじい物だった。

魔法使いの放った魔法を盾で受け、受け切れない箇所は魔法障壁で受けながら、距離をつめて剣を叩き込む。

が、魔法使いもそれを障壁で止めつつ、足止めの魔法を足元へと延ばし、ジェレイドはそれを剣で薙ぎ払う。


「あの……魔法を斬るのって普通ですの?」

「普通じゃありません」


素早くカンナが応える。


(じゃあ、あれは何なのかしら……?)


「ハハッ、ジェレイド!鈍ったかと思ったが、中々やるな」


「お前もいつまで強くなるつもりなんだ」


「「化物め」」


最後は息ピッタリにお互いを罵り合っている。


動体視力を鍛え始めたお陰か、前よりは何となく動きが分かるようにはなっているが、どうやら普通の戦いではないらしい。

でも横で見ているカンナとユリアはとても楽しそうに、爛々とした目を向けている。


「あー嫌だなマジックキャスターって」

「近づくの大変そうですよね」

「押し切れるかなー力で」


と普通じゃない、と言った戦いの攻略法を話し合い始めてる。


「これは魔力が尽きた方が負けるのでしょうか?」


一番詳しそうなノウェムを見上げると、スッと会釈して応える。


「普通ならばそうだと存じますが、まず同格の者でないとその前に殲滅されますね。お二人に関しましても、装備にも色々と気を配っておられるので、魔力切れになる事もそうそうないかと」


「じゃあ、いつ終るのかしら……?」


不思議そうに言いながら戦いを見詰めるマリアローゼに、ノウェムが諦観を込めて静かに言った。


「お二人が飽きたら終わりになります」


(飽きたら、て)


攻撃の度に衝撃音や地響きも発していて、周囲で防壁を強化している人々の方が余程大変そうなのである。

金持ちの道楽に付き合わされる一般社員、というところだろうか。


(中々に世知辛いですわね)


マリアローゼはスン、と遠い目になった。


いつの間にか観客も増え、遠目に兄達を見つけたのだが、シルヴァインは5分もしない内に踵を返して、ノアークも後に続いて出て行った。

双子の兄は最前線で、キャッキャしながら楽しそうに観戦し、キースは何事かを熱心に手帳に書き込んでいる。

兄達も色々な反応をするなあ、などとマリアローゼが余所見している内に、いつの間にか静かになっていた。

そして、視線を闘技場に戻すと、緑色の頭の魔術師もどきがこちらを見ている。


(いや、本当に魔術師です……?)


魔術と格闘を組み合わせた何か新しい職業だったりしそうな、筋骨隆々としたその人がいきなり猛ダッシュで距離を詰めてきた。


「おい!止まれ!」


とジェレイドの声はするが、一目散に近づいてくる男に警戒したユリアとカンナ、ウルススとグランス、ノウェムまでもが間に入ったが、とんでもない跳躍力でぴょーいと飛び越えて、背後からマリアローゼを掴みあげた。


「俺の愛弟子だーーーー!」


向かい合わせに抱きなおされてぎゅうっと筋肉に埋もれさせられる。


(至福……)


ではない!

喜んでいる場合じゃないし、周囲の皆は固まったまま動かない。


「はーちびこい!可愛い!柔らかい!良い匂いがするなァ!」


「あの…あの…もしかして、ウィスクム様?」


愛弟子というからには、魔術の先生なのだろうし、ジェレイドの旧友と聞いていたので、思い当たる名前を口にすると、ウィスクムはニイッと笑った。


「そうだよ、愛しいマリアローゼ!ずっと君を待ってたんだ!」


ブンブンぐるぐると振り回され、マリアローゼは三半規管がやられてリバースしそうになっていた。


「もう、降ろして下さい。気分が悪うございます」


「ああ、すまない。少々はしゃぎすぎたようだ」


降ろしてはくれなかったが、ぎゅっと抱きしめられて、とりあえず振り回されることはなくなったので、マリアローゼは改めて周囲の様子を見た。


ユリアがギギギ…と凄い角度で振り返っている。


「え、何あの子、怖い。停止魔法破りそう」


怖いというのは同意するが、更に向こうから闘気を纏ってやってくるジェレイドも怖い、とマリアローゼは思った。


「ジェレイド、檻壊すの早くない?特別製だったのに」


「いいから、ローゼを離せ」


パキン、と音がして一番最初に魔法から逃れたのはグランスだった。

とはいえ、関係者だというのは分かっているので、敵意は向けずに静かに言う。


「ジェレイド殿の仰るとおりに」


「やだよ。絶対全力で襲い掛かってくるだろ」


子供みたいな言い草で、ウィスクムはマリアローゼを更にぎゅっと抱きしめた。


「まずは腕から切り落としましょう」


物騒な声がジェレイドの背後から聞こえた。

そう。

ユリアである。


「悪かったって。ちょっと試しただけなんだって。あと愛弟子にやっと会えたんだぞ?」


(そういえば、ずっと待ってた等と言い出したのは何故かしら?)


マリアローゼは疑問を口にして、見上げた。

やはり、魔術師には見えない精悍な顔立ちと筋肉である。


「あの、初対面だと思うのですけれど」

「うん、初めましてだね、マリアローゼ。コイツに学生時代からずーっと話を聞いてたから、俺ももう10年以上君を待ってた事になるんだ。ずっと一緒に魔術の探求しようね」


(そういう事でしたのね……)


「いえ、魔術はそこそこで大丈夫なので、そろそろお放しあそばして?レイ様も、ユリア様も今放してくれたらきっと広い心でお許しくださいますから」


「そうかな?ローゼがそう言うなら、分かったよ」


漸く地面に下ろされたマリアローゼを、スッとグランスが抱き上げて、その瞬間ジェレイドとユリアがウィスクムに飛びかかった。


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