海の城の所以
まさかのルーナの才女発言に、マリアローゼはうきうきと部屋を出て応接間に向かった。
応接間の中で合流したユリア、カンナ、パーウェルを連れて、一同はミルリーリウムの部屋を目指す。
中庭に面した扉から出ると、右の扉を抜け真っ直ぐ突き当りまで行き、次は左へまっすぐと進む。
途中で正面の玄関ホールと、ホールへ降りる大きな階段を右に見て、そこを通り過ぎた。
廊下の突き当りには大きな両扉が付いており、そこにも騎士が両側に立っている。
そして、騎士の1人が中へ声をかけたのか中から扉が開かれて、出てきた従僕が扉を押さえた。
「皆さまご苦労様です」
膝を屈するだけの簡単なお辞儀をして、小さい令嬢が通り過ぎるのを、騎士と従僕は驚きと微笑ましさをもって見送る。
部屋に入るとそこは豪奢な応接間になっていて、ミルリーリウムは長椅子にゆったりと座っていた。
「まあ、わたくしの天使ちゃん」
母の伸ばす両腕の中に飛び込むように抱きついて、マリアローゼは微笑んだ。
「お母様、今日のデザートは特別製ですのよ」
「ふふ、何かしら?楽しみですわね」
暫く母娘の他愛ない歓談が続き、やがてシスネがそこに到着した。
二人の会話が一段落した所で、そっと声をかける。
「ご歓談中失礼致します。お食事のご用意が整いましたので、テラスに運ばせますが、宜しいでしょうか?」
「ええ、そうして頂戴。さあ、ローゼ。貴方の見たがっていた海が見られますわよ」
「嬉しゅうございます、お母様」
母の手に引かれて立ち上がったマリアローゼは、応接間の扉からまっすぐに続く廊下の先に、白いテラスとその先の青に目を奪われた。
前世の記憶では知っていたものの、マリアローゼが生まれて初めて目にする海なのである。
「わあ……」
どんどん近づいてくる景色に圧倒される。
視界を邪魔しないように刈り揃えられている木が、柵の下に見えるが、マリアローゼの視界には一面の海が広がっている。
此処は、海の中に突出した世界の先端なのだ。
右を見ても屋敷越しに海があり、左を見ても海、海の向こうに少しだけ岬の先端が見えるだけで、まるで孤島の上に建てられたように錯覚する立地だった。
「本当に、海の城ですのね、お母様。まるで海の上に建っているようですわ」
頬を撫でる風にも、微かな潮の匂いが入り混じり、何とも懐かしく胸を締め付ける。
遥か昔、それは前世の記憶なのかもっと前なのか、わからないけれど。
郷愁を呼び起こすような香りだ。
「さあ、ローゼ。景色を愉しみながら頂きましょう」
母の声に促されて、マリアローゼは名残惜しげに柵から離れてテラスに用意された椅子に座った。
マリアローゼが従僕の引いた椅子に座ると、給仕が始まる。
次々と運ばれてくる料理は、屋敷で食べた物と遜色が無い。
違いがあるとすれば、海の幸がふんだんに使われている事だろうか。
パスタも美味しい。
生クリームとうにの爽やかで濃厚なクリームが……
はたとマリアローゼは気が付いた。
(この世界にパスタがあるのだとしたら、ほかの麺類は?
ゼリーも公爵邸でしか食べた事がないと、ユリアさんも仰ってなかったかしら?)
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