表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/48

第36話:黒幕

 田井中達を圧力が襲う直前。

 (じつ)は彼らは、脳のかすかな違和感を覚えていた。

 まるで二日酔いにでもなったかのように、唐突(とうとつ)に頭に痛みが走り、さらには平衡(へいこう)感覚が失われ、視界が(ゆが)むという……戦闘中であれば致命的な違和感だ。


 そしてその正体を掴む前に、追い打ちとばかりに……まるで金縛りに()ったかのように、そのままの姿勢で、体を上から押さえつけられるような、謎の圧力が襲いかかり……さらなる異変が起きた。


 堕理雄、クロダイ、ウニ、椎名、そして浅井兄。

 彼らの双眸(そうぼう)が、ギョロリと、またしても唐突(とうとつ)に……立ったまま白目になった。

 それを目撃した田井中と如月は、まさかの事態であるため思わず顔を(こわ)()らせたが、次の瞬間には、改めて気を引き締める。


 ――敵の攻撃だ。


 現在起きている現象の詳細から考えて、そう、すぐに結論を出したのだ。

 だが脳の違和感と謎の圧力、そして仲間の双眸(そうぼう)が白目に変わる、その原因の正体までは、さすがの二人にも想像がつかない。敵の攻撃の正体の手がかりがまだ足りない。


 ――もしや自分達も、いずれは白目をむく事になるのだろうか。


 攻撃を浴びる中で、田井中と如月の脳裏をその可能性が(よぎ)る。

 思わず二人は顔をしかめた。格好をつけたいとか、そんなくだらない事を考えての行動ではない。もしもそうなれば、白目をむいた他の仲間のように、敵に無力化させられると分かったからだ。


「…………田、井中……」


 頭に走る激痛と謎の圧力に耐えつつ、如月は残った仲間に問いかける。


「そこから、何か……見える、か?」


「いや……ピラミッド、以外……何も……」


 田井中も、如月が味わっているのと同じ苦しみに必死に耐えながら答える。


「と、いうか……あの、ピラミッドが……みんなが、こうなった……原因じゃあ、ねぇのか?」


《ビークックックッ。ご明察》


 するとその時だった。

 なんと驚くべき事……いや、肘川市の一部住民からすれば、そこまで珍しい現象ではないかもしれないが。とにかく平凡な一般人の目線からすれば驚くべき事に、突然頭の中に初めて聞く声が響き渡った。


 すると……さすがの二人も、理解した。


 この状況下で、方法はどうあれ自分達に声をかける存在など……今回の事件の黒幕くらいであると。


《まさか、我の【精神波動】から(のが)れられるほど、ハードボイルドレヴェルが高い者がいるとは思わなかったぞ。大した愚民ぞ》


「……ハードボイルドレヴェル?」


 敵の口から初耳の言葉が出たため……田井中は(まゆ)()を寄せる。

 相手を攪乱(かくらん)させるための言葉かもしれない。だけど、もしかすると重要な言葉である可能性もないか。ふとそう思い、彼は己より肘川の事を知っている如月へ視線を向けた。


 ――いや、俺も知らん。


 如月はすぐに頭を軽く横に振り、その声なき声を伝えてきた。

 どうやら敵による攪乱(かくらん)、もしくは敵にしか分からないような言葉だったらしい。


「……いったい何を言っている?」

 改めて、如月は……ハタから聞けばおかしな状況ではあるが、とにかく頭に響き渡る声に訊ねた。


 ちなみに……精神波動、という言葉については分かる。

 異能力者と日々相対している二人にとっては、聞き覚えがありすぎる……念力や精神感応を使う能力者が発しているとされる波動である。


 そして、その言葉が相手の口から出てきたという事は。

 おそらく、自分達の同僚が白目をむいた状態で無力化させられた……その原因であろうとも。


 ちなみに、ハードボイルドについても……分かる。

 第一次世界大戦後のアメリカで生まれた、固ゆで卵を語源とする文学のジャンルの一つ。


 簡潔な文体で、非情なる現実を写実された物語の事である。


 しかし時代を()れば、意味合いが変わるのが世の摂理。

 その言葉はいつしかジャンルだけに(とど)まらず、ハードボイルド要素のある物語の主人公の生き(ざま)――感傷や恐怖などの感情に流されず、自分の信念に従い行動する……そんな生き方ついても差し始めるようになった。


 いやそれはそれとして、いったいなぜ相手は、今になってそんなハードボイルドという言葉を出したのだろう。


《ビークックックッ……そうだな。

 どうせ貴様らは最後、我の精神波動の(もと)(くっ)し……そして我が帝国再建のための手駒と成り果てるのだ。その前に我の正体を教える事が、せめてもの温情か》


 田井中達が考察していると、黒幕は変な(わら)い声を上げて、そう告げた。

 まるで自分が、田井中達よりも立場が遥かに上の存在であるかのように。彼は、田井中達の心情などを気にしていないようだ。


 ――もしや相手は、王侯貴族の(たぐい)なのだろうか。


 ふと、田井中達が同時にそう思ってしまうくらいに。

 すると敵は《ビークックックッ。察しがいい愚民だ》と、嬉しそうに、(わら)い声を上げた。精神波動を使っているためか。田井中達の思考は、()()()()、丸わかりのようである。


《では教えてやろう。

 我の正体は……一億二千万年もの昔にこの宇宙を統一した大帝国『アガルタ』の最後の皇帝であるッッッッ》

 ハードボイルドレヴェルの元ネタは十九作目ライダーのハザードレベルです(ぇ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ラスボスキターーー!!!!(大歓喜) こいつはとんでもない大物だぜ!!w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ