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第18話:判明

「?? おい、梅ちゃん? 黙り込んでどうした?」


 コッソリートの向こう側でモニターを確認している梅が、予想外の事態を前に絶句した事を知らないため、田井中は眉をひそめながら問いかけた。


『…………ッ! ああ、すまない田井中』

 すると梅は、すぐに調子を取り戻した。


『フッ! 驚きの映像が映っただけだから気にするな。追跡の方は順調だ。それはそうと田井中、今すぐに他の局員のもとに向かってくれ』


「!? 何があった?」

『今私は、モニタールームで普津沢先輩と共に、全局員から送られてきたUMAの目撃情報の整理をしているのだが……お前だけでなく外に出ている局員のほとんどが、お前が先ほど倒した翼竜などの未確認生物に襲撃されているッ』

「なんだと?」


『もしかすると、シャドーピープルと同じく……連中は黒幕に、尾行などの怪しい行動をする者を襲うよう、学習させられているのかもしれん。そしてもしもそうであれば、小牧が襲撃された理由にも一応説明がつく』


 彼女にしては珍しく、重々しい声で言った。

 もうすぐ勤める事になる高校の生徒が襲撃され動揺しているのか。


『一部で撃退または退散させる事に成功しているらしいが……苦戦している場所がほとんどだ。田井中、お前にはすぐに他の局員の所に向かってほしい。助けを必要としている局員の位置情報は、(あと)で「コッソリート」に送る』


「分かった。すぐに向かう」

 田井中は一方的にコッソリートによる通話を切ると、椎名へと視線を向けた。


「椎名、他の場所で同僚が一大事だ。俺はすぐに現場に向かう。お前はその女性を救急車に乗せてそのまま付き()え。片付けた(あと)で迎えに行く」


「ッ! は、はいっス!」

 今度は携帯電話を操作し、119番通報をする師に言われ、椎名は慌てて、翼竜に襲撃されて血だらけになった女性に駆け寄った。


「大丈夫っスか!? え、えーと……英語で(なん)て言えばいいんスか!?」

 相手が外国人であった事を視線を向けた直後に思い出し、椎名は混乱した。


 すると、その叫びが届いたのだろうか。


「…………ん……んんっ……」

 翼竜に襲われていた女性が目を覚ました。


「ッ!! あ、目が覚めたっスか!? え、ええと……ナイスチューミーチュー、だったっスかね?」

 女性が目を覚ました事は確かに嬉しいのだが、言葉が(つう)じない問題は解決できていないので、椎名は再び混乱した。


 ちなみに言語的に、確かに「初めまして」であるがこの場面で言う事ではない。


「…………You……Did you help me?」


 しかし女性は、椎名の英語力など()(さい)な事だと思ったのだろうか。

 彼女は、目覚めたばかりで(しょう)(てん)が合っていないその瞳を、目の前にいる椎名へと向け……かすかに震える右手を伸ばした。


「だ、大丈夫っス! あなたは……助かるっス!」


 すると反射的に、椎名は女性の伸ばした右手を掴んでいた。

 翼竜により重傷を()わされ、今にも消え入りそうな彼女の存在を、少しでも長くこの世に(とど)めようとせんばかりに、強く、強く――。


     ※


「フッ、ようやく翼竜を始めとするUMA共の帰還場所を特定したぞッ」


 翼竜に襲われていた女性が救急車で病院に搬送(はんそう)され、田井中を始めとする戦闘力が高い局員がUMAに襲撃され苦戦していた局員に加勢し、さらには無事な局員が休憩を三十分ばかり取った(あと)の事。IGA肘川支部の会議室で、改めて作戦会議が始められた。


「わざと逃がした内の二匹がちょっとトラブルに見舞われたりしたが……とにかくUMA共の帰還場所は、ここだッ」


 例によっておっぷぁいより取り出したリモコンで、梅はスクリーンを操作した。天井から白いスクリーンが降り、そこに映像が映し出される。


「……なに?」

「……まさか」

「おほー! こ、これはー!」

「さすがの拙者も目が点でござる~!」


 するとその瞬間。

 会議に参加している者の内、あらかじめ映像を確認していた、梅や堕理雄などの局員以外の局員が瞠目(どうもく)した。


 なぜならば、UMAが出入りしていたのは。


 肘川市地下に存在する『地下放水路』だったのだから。


「もしもこのUMA達が、肘川市内の動物の数の変動と関係があるというなら……納得の結果だよね」

 梅の隣に立っている堕理雄は、重々しい口調で言った。


()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「フッ! 動物の数を変動させた犯人が、普通に地上をトコトコ歩いてやってきたという先入観が、我々の調査を邪魔していたという事だなッ」

 悔しそうな顔で、梅は言った。


「とにかく黒幕の居場所が判明した以上、俺達はこれから守りから攻めに転じる事になる」


 会議に参加できた局員達を見回しながら、堕理雄は言った。


「だが相手が地下のいかなる場所に(ひそ)んでて、どの程度の戦力を抱えているかは、現時点ではまだ不明だ。弐課局員が先行して調べてはいるけど、まだまだ情報不足だ。本来ならばもっと情報を集めてから向かうべきだけど……敵が迎撃態勢を完全に整える前に突入しようと思うッ」

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