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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第4章

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決闘の条件

「待っていたぞフジミヤ!」


 いや、フジ()ミヤだから。


「逃げずにここまで来たことは褒めてやる。さあ決闘を始めよう!」


 白銀の装備に身を包み、うっすらと白く輝く長剣を俺へと向けている。場所は冒険者ギルドの裏に建設中の訓練場。まあ訓練場と言っても壁とかを補強した大きなホールで特に変わった物があるわけじゃない。


「お待ちください、シャフナー様。フジノミヤ様がお受けした以上、決闘の理由については聞きません。ですが同じようなことを何度も繰り返されると困ります。きちんとこの決闘の勝利条件などを決めた上で今後このようなことがないように双方約束してください。発足したばかりの冒険者ギルドにとって優秀な冒険者は貴重です。冒険者同士の些細な(いさか)いで失う訳には参りません」


 ああ……そうだった。シャフナーとかって名前だった。なんかめんどくさいから改めて鑑定する気持ちすらおきなかったわ。


「ふん、いいだろう。俺の条件は手紙に書いた通りだがそれを我が侍祭の『契約』でしっかりと約束しよう」


 決闘に随行してきていたウィルさんが今にも襲い掛かってきそうなシャフナーに決闘の詳細についてちゃんと取り決めるようにと釘を刺す。これは俺達からウィルさんに事前にお願いしていた行動である。


 こっちから話を切り出すとあの手のタイプは勢いで『必要ない!』とか言いかねない。だから、第三者であり中立(に見える)立場のウィルさんに相手を立てつつ条件を交渉できるような流れを作って貰った。


「手紙の内容では話になりません。そもそも私たちにはあなたの決闘に応じる理由は全くありませんから。ただ、あなたが私たちのことを調べているという情報を入手したために、今後も付きまとわれるくらいなら一度ちゃんと話を付けた方がいいと思ったまでです」

「理由がないだと!お前は俺に自分の奴隷達を奪われるのを恐れ、可愛そうな奴隷に手が出せない俺へ奴隷に命じて暴行を加えたではないか!」


 あぁ……俺の大事な嫁達をさっきから奴隷、奴隷と……マジでこいつ【ちょんぱ】してやろうか。


『だから桜に任せておけば良かったのに。桜なら後腐れなくちょんぱ出来たよ』

『まあ、そう言うな。ソウジロウもしばらく血生臭いことが続いていたからなるべく平穏に済ませたかったのだろうよ』

『それに、せっかくここまで我慢してお膳立てしたのですから、もう少しの辛抱ですわ』


 桜は後ろから、蛍と葵は既に刀に戻っているので俺の腰から思念を飛ばしてくる。


『はぁ……分かってる。むかつくけど我慢するよ』


「まず1つ言っておきます。2人は今日連れて来ていませんが彼女たちは、その2人も含めて自分たちの意思で俺と一緒にいてくれている大切な人達で俺の奴隷ではありません」

「う、嘘を吐くな!お前がそう強制しているだけだろう」

「……では、そちらの侍祭と契約をしましょう。『次にウィルマーク殿からされた質問に嘘を述べない』これで私が先日の4人は私の奴隷ではないと答えることが出来れば証明になるでしょう」

「くっ……」


 ここまで言えば認めざる得ないだろう。この世界において侍祭の契約は絶対だ。その契約を破ればどうなるかなどこの世界の人達は良く知っている。それを承知の上で俺がこういう申し出をするということは本当に嘘を吐いていないということになる。ここでじゃあやって見ろと言うのは簡単だが、それで本当に奴隷ではなかった時にはシャフナーは恥の上塗りをすることになる。


「……いいだろう。だが、お前が弱みを握って彼女たちを支配下に置いている可能性はある!これは洗脳でもされていたら侍祭の契約でも看破出来ないだろう」


 次から次へとよくも屁理屈を思いつくものだ。まあいい。ここまでは嫁達を奴隷呼ばわりされた俺の私憤みたいなものだ。


「いいでしょう。あなたが指定していた5つの条件のうち、1番の侍祭契約を用いた決闘。5番のギルド訓練場で行うという場所の指定についてはお受けします。2番については私が彼女たちを縛っている訳ではないので、あなたが勝った場合は彼女たちに本心を述べるという契約をして勧誘をすることを認めます」

「ふん!いいだろう」

「3番について、私が勝った場合はいくつか私たちの質問に正直に答えてもらった後、そちらの侍祭共々今後一切私たちにかかわらないと約束してもらいます」

「私が負けることはない。好きにすればいい」


 自信満々だな……俺、ちゃんと勝てるんだろうか。


『弱気になるなソウジロウ。お前は十分強くなっていると言っただろう』


 分かってるけど、不安は不安で仕方がない。


「4番について、そちらに暴行を加えたのはしつこくナンパしてくる男性に対する女性の反撃にすぎませんので、こちらからは謝罪すべきことはありませんので今回の決闘の条件としては飲めません」


 きっぱりと言ってやるとシャフナーは擬音で『ぐぬぬ』と聞こえてきそうな顔を一瞬したが、横目で侍祭と視線を交わすといやらしく笑う。


「いいだろう。その条件で構わない」

「わかりました。あと、決闘方法についてこちらから1つ条件を出させてもらいます」


 シャフナーが俺の申し出に怪訝な顔を見せる。自分に不利になるような決闘方法を提示されることを嫌がっているのだろう。


「今回の決闘は、4人同時の決闘にしてもらいます」

「4人?」

「はい、そちらはあなたと侍祭である彼女。こちらは私とここにいる戦斧を持った彼女の4人です。相手を殺すのはなし、気絶するか降参したらその人は決闘から抜けます。最後に残っていた側が勝ちということでお願いします」

「待て!俺は綺麗なお嬢さんに向ける剣は持っていない!そちらのお嬢さんだけが残ったらどうするんだ」

「……わかりました。彼女は私が戦闘を離脱してしまったら降参してもらうことにします。それなら構いませんね」


 シャフナーの普通にしていれば整ったイケメン顔が醜く歪む。どうやら頭の中でいい結果が導き出せたらしい。まあ、自分に自信があるなら受けられない条件ではないだろう。むしろ俺だけ倒せばいいのなら侍祭にシスティナを抑えさせておいて自分が勝てば1対1で戦っているのと変わらないし、システィナを放っておいて2人がかりという作戦もあるだろう。そして自分の侍祭が勝ってくれれば回復魔法のフォローも受けられる。


「よし!分かった。この聖戦士シャフナーと侍祭であるステイシアがその決闘を受けてやろう」


 なんでこっちが決闘申し込んだみたいになっているんだか分からないが、納得してくれたのならそれでいい。後はちゃんと『契約』をしておけば約束を反故には出来ない。


「では『契約』をお願いします」

「ああ、もちろんだ。わかったな(・・・・・)ステイシア、今言った条件で契約書を頼む」

「もちろんわかっています(・・・・・・・)シャフナー様」


 シャフナーの後ろに控えていた侍祭ステイシアがなにやらもにゅもにゅと呟いて虚空に透き通った契約書を出した。


「それではシャフナー様、署名をお願いします!」

「うむ」


 まず、率先してシャフナーが契約書に署名をする。ステイシアがその姿に見惚れ、書かれた署名を絶賛している。イタイ子なのだろう。昨日桜から聞いたシャフナーの性癖から考えるとどうしてそこまでシャフナーに入れ込んでいるのか全く分からない。


「ほら、次はお前の番だ」


 シャフナーが空中の契約書をタップして俺の方へと移動させてくる。その顔が正直明らかに悪だくみをしている顔だ。まあ、想定内だから別にいいんだけどね。


 回ってきた契約書を隣のシスティナと一緒に黙読していくと……やっぱりさっき言った条件は全く反映されていなかった。


 うちの女性陣の隷属化、俺が往来で裸で土下座する、俺だけスキルの使用禁止、財産の没収……などなど。よくもまあ、これだけ卑怯なことを……これだけのことをアイコンタクトで仕込めるということは最初から計画されていたのだろう。


 さらに、極めつけはシャフナーの合図で俺が降伏を宣言する。とまで書かれていたことだ。もし、侍祭の契約だということで信頼してサインしてしまっていたらシャフナーの合図で降伏を宣言しないと俺には契約違反の罰が下されていたことになる。

 恐らく、降伏を宣言しない俺に『その痛みは俺のスキルによるものだ。負けを認めれば解除してやる』とか言うつもりだったのだろう。

 俺達以前に同じような詐欺にあって財産や女性としての尊厳や命を失った人達がいないこと願わずにはいられない。こんな詐欺まがいのことが出来てしまうからこそ侍祭は特別な職業であり、侍祭たる人間は自らが高潔であることに加えて契約相手をしっかりと選ばなければならない。


 ……そう考えると俺とシスティナとの契約も軽率じゃなかったのかと思わなくもないが、システィナはいつもそんなことはありませんと首を振ってくれる。最初に言っていた、いくつかの理由のほかにも業がマイナスだったとか、侍祭になんとなく備わっている直感的なものに従ってとかいろいろ細かい理由があるらしい。


 ただどんな理由があるにしろ、システィナが俺を選んだことを後悔しないように生きようと言うのがこの世界での生活の指針になっていたりもするのでシスティナの選択は間違っていなかったと思いたい。


「システィナ……」

「……はい、これは酷すぎますね」


 俺はシスティナとアイコンタクトをするとシスティナの陰で署名をする振りをしつつ俺の『読解』スキルで契約書を書き換えていく。正直ここまで卑劣なことをしてくるならこちらも躊躇う必要はない。やりたいようにやらせてもらおう。


「何をしている!どうせ侍祭の契約書文字なんて普通の人間には読めないんだからさっさと署名しろ。侍祭が作る契約書なんだぞ。疑う必要などないだろう!」


 シャフナーがぬけぬけと叫んでいるが、決闘が始まっても同じことが言えるのかが楽しみだ。俺はシャフナー達が決めた不公平なルールをまるっと全削除して、本来の条件に近いものと、2、3の条件を付けくわえて署名をした。侍祭の契約書の書き換えは内容を念じながら指で撫でるだけで書き換わるのでそんなに時間はかからない。唯一署名だけはきちんと指で書く必要がある。というか普通は書き換えとか出来ないからそんな区別に意味は無い。


 俺の署名と同時に契約書が光を放って弾け飛ぶ。これで今の契約は成立したことになる。後は、あいつらを叩きのめすだけだ。

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