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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第4章

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狼たちの戦いと大失態

『ツインヘッドウルフ(主) ランク:E』


 主の間に到着した俺達の前に居たのは二首(ふたくび)の狼、ツインヘッドウルフだった。黒みがかった毛皮に覆われ、不気味な雰囲気を醸し出す二首ウルフはサイズとしては地球産の大型なライオンの倍程もある。体積的に見たら一狼の4倍、いやもっとか?


 二狼に至っては体格差に加えて、ランク差もかなりある格上の相手に、ちょっとビビっているようで尻尾が股の間に隠れてしまっている。


「見てみろソウジロウ。主の間に装備が散乱している」


 蛍に促されて主の間を見まわすと、確かに剣や鎧がいくつか放置されていた。


 おそらくここで二首ウルフに敗れた冒険者達が塔に吸収された後に残したものだろう。死体以外を塔が吸収するのには3、4日はかかる。


「…3階層でEランクの主は初心者には結構きついか」


 散乱している装備品の質から考えると、犠牲者の実力はまだまだこれからだったのではないかと思える。


「階落ちか?」

「いや…Eランクくらいだったら稀に出現することもあるってシスティナが言ってたよ。平均ランクの2ランク上までは出現する可能性があると思っていてくださいって言ってたからね」


 おそらくレイトーク3階層の魔物の平均ランクはGと言ったところだろう。そうであれば、『まれに』という注釈付だがEランクまでの魔物は出る可能性があるということだ。


 これは俺の推測だけど、ここの所の塔景気で低階層の主が結構な数倒されたことで再湧出(リポップ)の機会が増えたため、何度も主をリポップしている内にレアな主を引いてしまったんだと思う。今回はそこに塔の作為は感じられない。


「さて、どうするソウジロウ。暴走はしないという約束だ、お前の判断に従おう」


 蛍が腕を組み、ナイスな双丘を押し上げつつ問い掛けてくる。思わず視線が吸い寄せられていくが、さすがに今はそれどころではないとかろうじて自制しつつ二首ウルフを見ながら考えてみる。


 二首ウルフは今現在、絶賛お昼寝中のようで2つの頭を右と左に傾けながら自分の足を枕代わりに目を閉じている。主の間に立ち入らない限りは起きてくることはないだろう。


 確か敵が魔法とかを使ってくるのは、基本的にもっと上からだったはず。レイトークだと10層以上だったっけ?まあ、とにかく階落ちじゃない以上はあいつもブレスとかはない可能性が高い。


 あの巨体だから力はありそうだし、ウルフ系の上位種っぽい感じからすると速さもそれなりにありそうだ。でも、多分だけど速さだけなら一狼に分がある気がするな。二狼はちょっとこの状態だと怖いから見学してもらって…一狼に撹乱してもらって、正面に蛍、サイドから俺。


 うん……多分行ける。そこまでの怖さは感じない。


「リーダーとして蛍の意見を聞くけど、この面子で危なげなく勝てると思う?」


 多少の苦戦くらいならまだしも、誰かが大怪我するような事態になるくらいなら壁だけ剥いで帰ればいい。


「そうだな……ただ勝つだけなら余裕だな。寝ている間に魔法をぶち込めばいい」


 おお、そうか!蛍の光魔法なら貫通力もあるし、速さも申し分ない。主が寝ている今ならここから魔法を一方的に打ち込むだけでほぼ勝負ありだ。


 でも、それじゃあ戦闘経験は積めないんだよな。別に倒すことが最終的な目的じゃなくて、手応えのある敵と実践経験を積むことが今の俺達には必要なんだから。


「魔法抜きなら?」

「一狼がさっきまでの動きが出来るなら、良い勝負をしつつも私たちが勝つだろうな」


 つまり、危なくなれば蛍がなんとかするってことか。それなら戦ってみてもいいか……一応回復薬系も持ち込んではいるけどシスティナの回復術に比べたら気休め程度。システィナさえいてくれるのならば、本心では戦ってみたいというのが正直なところなんだけどな。


 くいっ


「ん?」


 それでも、大きな戦いを終えたばかりで無理する必要はないかと撤退を指示しようとした俺のコートの裾を誰かが引っ張る。


『ガウ!』

 

 引っ張られたところへ視線を落とすと、一狼が俺を真剣な目で見つめていた。


「え?…まさか……戦いたいの?」


『ウォウ!』


 俺の問いかけに一狼はノータイムで頷く。


 ん~、思いがけないところから待ったがかかったな。


 蛍から戦わないことについて冗談混じりの挑発を受けるかもくらいは思っていたけど、今まで聞き分けの良かった一狼が戦闘継続を主張してくるとは思わなかった。


 さて…これはどうしようか。一狼が戦い足りないってことならもう少し3階層で戦っていけばいいだけなんだけど…


あいつ(・・・)と戦いたいの?」


 二首ウルフを指さす俺に一狼がはっきりと頷く。狼と見つめあった経験はそうある訳じゃないけど、その眼には真摯な想いが宿っている気がする。一狼なりに何か想うところがあるのだろう。


「蛍」

「うむ、やるのだな」

「うん、でも安全策も兼ねて折衷案で行こう」


 俺は作戦を頭に思い浮かべて蛍に送る。


「…そんなことせずとも勝てると思うが、まあいいだろう」


 慎重な俺に苦笑しつつも、蛍が作戦を了承してくれたのでうまく行けば戦闘自体は楽になるだろう。後は…


「一狼。俺が合図したら一緒に奴に向かう。先に行ってあいつの注意を引け。多分お前の方が速いと思うけど、最初は距離を広めに取って相手の動きに慣れるんだ」


『ガウ!』


「二狼!勝てない相手にただ向かっていくのは、勇猛でもなんでもない。よく、自分の力を見定めて判断した。偉いぞ。今はそれでいい!今回は俺達の戦いを目を離さずにしっかりと見るんだ」


『…オン』


 俺はしょんぼりとする二狼の頭を優しく撫でてやる。


「無理をして怪我したり、死んでしまう方がお前のご主人様、葵は激怒すると思うぞ」

『オゥ?……ガウ!』


 ツンで高飛車な葵が、実は自分たち従魔をとても大切にしてくれていることを二狼はよく理解している。だから俺の言っていることが事実だとすぐに分かったのだろう。目に力が戻っている。


「いい子だ。二狼は戦いから離れたところで散乱している装備品を集めておいてくれ。戦ってる最中に踏んだりしたら怖いからね」

『オン!』


 戦わなくていいと言われて落ち込み気味だった二狼も、役割を与えられたことで完全に持ち直したようである。


「よし!やろう。蛍、頼む」

「任せておけ」


 俺の言葉に鷹揚に頷いた蛍は太ももに巻いたベルトから鏡面式クナイを一本取り出すと、僅かに腰を落として投擲する。しかし、その狙いはこちらに頭を向けて寝ている二首ウルフではなくウルフからやや離れて右後方の位置に刺さる。


「よし、行くぞ。ソウジロウ」

「うん。いいよ」


 蛍は右手に刀を出すと、突きの構えを取り刀に光を纏わせる。うん、いつ見ても蛍の魔法は綺麗だ。


【蛍刀流:光刺突】




「一狼!GO!」

『ガウ!』


 蛍の魔法の発動と同時に俺と一狼が走り出す。蛍の光の魔法は光速だ。発動した時には鏡面式クナイを経由して二首ウルフに命中している。


【グルァァァァァぁぁぁ!!】


 攻撃を加えられた上に、主の間への侵入者。半ば強制的に眠りから叩き起こされた二首ウルフが怒りの咆哮を上げている。


 俺の作戦は簡単で、魔法で勝負を決めてしまうのでは訓練にならない。しかし、正面からぶつかるには戦力に不安がある。ならば、間を取って初撃を蛍に頼み、その一撃でこちらにハンデを貰うというものだ。


 そして繰り出された蛍の光刺突のレーザーは、狙い通りクナイの鏡面部分に命中し、反射したレーザーが後方から二首ウルフの後ろ足を貫いたのである。さすがは蛍、完璧な仕事だ。


「一狼、敵の機動力は削いだ!落ち着いていけ」


 同時に走り出しても一狼の足にはもちろんついていけない。俺を引き離して前方を走る一狼の背中に向かって声をかける。既に敵に対して集中しているのか声による返事は無かったが、僅かに尻尾が左右に振られたような気がするのでちゃんとわかっているだろう。


 二首ウルフの4つの目は既に俺達を捕捉して、怒りに染まった目を向けている。だが、立ち上がったはいいものの貫かれた後ろ足は思い通りに動かないらしく、足を引きずるような感じが見られる。


 よし。これなら相手に動き回られることはなさそうだ。あんなでかい相手にウルフ系の俊敏さを発揮されたら戦いづらいことこの上ない。足を止めての打ち合いなら、俺と蛍と一狼それぞれが自由な位置取りを出来るから有利に戦えるはずだ。こっちは2人と1頭だが、相手の首は二つしかないからな。


 既に一狼は二首ウルフの下に到着し、威嚇の唸りを上げながら挑発してタゲを取っている。二首ウルフは煩わしげに噛みつきと前脚での攻撃を繰り出しているが、一狼は言いつけをよく守り距離を取って攻撃をかわしている。

 それを見る限りでは蛍の先制攻撃がなくともやっぱり一狼の方が速かったな。


「ソウジロウ」

「蛍、左を頼む。右は俺がやる」

「分かった」


 魔法を放った分一拍遅れて俺に追いついた蛍にそう伝えると、俺は僅かに進路を右に変えてこっちから見て右側の頭を狙う。もちろん蛍は左の頭を狙うべく進路は左だ。


 俺と蛍が二つの首を相手にするように動くと、自然と一狼は一旦下がり、相手の視界をわざと掠めるように動きながら横腹や後ろ足を狙うように動く。今日一日培ってきた連携の練習が活きている。


 右の頭、右頭(うとう)を前にしてみると、結構怖い。普通のライオンだって頭は一抱えくらいありそうなのに、こいつは更に倍。俺の上半身くらいのサイズがある。幸い、蛍と2人で距離を取って戦っているため、互いの首同志で引っ張り合ってしまっているのでさほど威圧感は感じない。


 ていうかそれ使えるな。


 俺は右頭に雪をチラつかせながら近づき、右頭が噛みついてくるタイミングに合わせて下がってみる。


【グガッ!】


「やっぱりだ!」


 噛みついてこようと首を伸ばそうとした右頭が、急に動きを止めて表情を歪めるのを見て逆に俺はにやりと笑みをこぼしつつ、間合いをつめ閃斬で横っ面に斬りつける。思ったより毛が硬いのかすっぱりとはいかなかったが浅くない傷をつける。


 右頭は痛みに顔を()()らせるが、その動きが左の頭、左頭(さとう)の動きを阻害してしまう。そして、その隙を蛍は見逃さないだろう。


 その証拠にすぐに向こう側からも左頭の悲鳴代わりの咆哮が聞こえてくる。そして、蛍もこいつの対処の仕方に気が付いたはずだ。


 左頭の動きに引っ張られた右頭を俺が攻撃し、右頭の動きに引っ張られた左頭を蛍が攻撃する。そして頭に意識が集中しているところで一狼が腹部に噛みつく。

 これが面白いように完全にハマ(・・)った。


 程なくして二首ウルフは力尽きて、どうっ と倒れ伏した。



 結果として作戦勝ちで楽勝になってしまったが、Eランクでも攻撃は落ち着いて捌けたと思えるし、これなら意外と戦えそうだと分かったことは大きな収穫だった。


 多分本来の二首ウルフの戦い方は機動力を活かして動き回って1対1の状態を作り出し、1人に対して2つの頭で攻撃するというものだったのだろう。だが、今回は戦闘開始前にその機動力を奪われてしまったために俺達に囲まれてしまった。


 そして、囲まれてしまった以上は複数に対処するしかない訳で、そうすると自分には頭が2つあるんだから分業すればいいんじゃね?と思った(かどうかは分からないが)のが敗因だろう。


「お疲れ様、蛍」

「うむ、なかなか良い連携だったな。こういう戦いも悪くない」


 離れて戦っていたけど、お互いに何を意図して動いているかを『共感』を使わなくても理解して動いていたような気がする今の戦いは、確かにちょっと楽しかったかもしれない。


『クゥン』


「お?一狼、お前もいい動きだったぞ。よしよし」


 魔石を咥えてきた一狼を褒めてあげながら、頭を撫でモフしてあげる。結果として楽勝だったが、一狼の動きは常に相手の視界を掠めて注意を引き、隙を見て防御の薄い腹部に攻撃を加えるという相手が嫌がる行動を的確にしていた。これは褒めてやらねばなるまい。



 なでなでなで  モフモフモフ  なでなで  モフモフ  なでモフ



 はっ!いかん。あんまりにも一狼が気持ちよさそうなのでつい夢中になってしまった。


 一狼はまだ魔石を咥えたままだって言うのに悪いことしたな。持って来た魔石は二首ウルフの物で、Eランクの魔石だ。稼ぎに来た訳じゃないけど、いろいろ入用で支出は増えるし、雪の錬成にも必要なので魔石はあればあるだけいい。


「ありがとうな一狼」


 持ってきてもらったお礼を言って魔石を受け取ろうと手を伸ばす。


 ぶんぶん


「え?」


 ところが一狼は魔石を渡そうとはせず、咥えたまま首を振り一歩下がった。


 はて…これは一体。別に狼はカラスと違って光物を集める習性とかは無かったと思うんだけど…


 あぁ、そういえばツインヘッドウルフと戦いたいと強く主張したのは一狼だったな。もしかして魔石が欲しかったのか?


「一狼…その魔石が欲しいの?」


 まさかと思いつつ念のため聞いてみると一狼はこくこくと顔を上下させる。


 ふむ…まあ、今日の一狼の働きを考えればそのくらいのご褒美はあってもいい。Eランク魔石の売却益くらいは稼ごうと思えばすぐ稼げる。


「わかった。いいよ、今日の一狼はそれぐらい頑張ったと思う。その魔石は一狼に進呈する」


『バウッ♪』 ごきゅ っくん

「へ?」


 え?……ちょっと待って?


 今、一狼の頭をモフしながら俺が魔石をあげるよって伝えたら、一狼が嬉しそうにひと吠えして……


 え?魔石飲み込まなかった?今!


「馬鹿!一狼!窒息するぞ!嬉しいからって魔石咥えたまま大きく吠えるなんて!早く出せ!」


 ヤバいヤバい!一狼が死んじゃう!取り合えず逆さまにして背中を叩いて、口に指突っ込んで吐かせる?人間の場合だけど狼だって変わらないだろう。人間が相手なら掃除機で吸い出すって方法もある……ってこの世界に掃除機ないし!じゃあ風の魔法!葵!葵がいれば風魔術でっていうか間に合わないだろう!そんなの!


「蛍!一狼を持ち上げて!俺が口から引っ張り出すから!」

「待て!ソウジロウ!…どうやら一狼は自分で飲み込んだようだ」

「え?」


 蛍に言われてようやく気が付く。一狼の全身が淡い光に包まれている。なんだ?なにが起こってるんだ?


 少なくとも一狼が苦しそうな動きをしていないことは分かるので、窒息と言う結末がなさそうだということでなんとか冷静さが戻ってきた。命に別状がないならとりあえず様子を見てみよう。


「これは、魔力の光だな。おそらく魔石の魔力を身体に取り込んでいる」

「…そのために魔石を?」


 一狼から発する光は徐々に輝きを増し、一郎の姿はもはやうっすらとしたシルエットでしか確認できない。そのシルエットがもゆらゆらと揺らめいているように見えるのは俺の目の錯覚だろうか。


 やがて…


 光が収まった場所には今までよりも二回り程大きくなった、真っ白な毛が眩しい大層立派な立ち姿の狼が堂々とそこに立っていた。



「え?…い、ち…ろう?」


 あまりの変化に目を疑い、条件反射的に『簡易鑑定』を使う。




『 一狼 (従魔)

  ランク:D

  種族:ホワイトナイトウルフ 』



 間違いなく一狼だった…………………えっと…これって、ようは進化したってこと?


「どういうことだ?ソウジロウ」

「えと…多分、進化したらしい」


『その通りです』


「え?誰……雪?今、雪喋った?」

『……』

 

 突如聞こえて来た鈴のような清らかな声に慌てて腰にいる雪を見るが、雪からはいつも通り静かな気配が伝わってくるだけだった。


「まさか……一狼?」

『はい、わたしです』


 白い狼に問いかけると、妙に人間臭い表情をするようになった一狼がはにかんだように見える。

 うん、なんかいろいろ混乱してるな…


『急にこんなことになり混乱していると思いますが、ここは塔です。ひとまず予定を済ませ屋敷へもどりましょう。詳しい話はそちらで』


 確かにいつまでもここで話し込んでいる訳にはいかないか…さっさと4階層に上がって壁を剥いで撤収しよう。そんなことを狼に指摘されてしまうとは…賢いとは思ってたけど進化して更に賢くなった気がするな一狼は。


「一狼の声は私にも聞こえるのだな」

『はい、これは私の【念話】という技能です。わたしの声を届けたいと思った人に話しかけることができます』

「なるほどのう。それは便利だな。我らの【共感】はソウジロウと刀達の間だけだからな」

「蛍は、あんまり驚いてないね」

「何を言っているソウジロウ。刀が人化することを思えば魔物が進化するくらい大したことはなかろう」


 なるほど!言われてみればその通りだ。無機物の刀が人になることに比べれば狼が成長して大きな狼になるくらい全然普通だ。


『我が主、今回はわたしの我儘で貴重な魔石を使ってしまいました。代替にはならないでしょうが二狼が集めた武具は私が運びますので持ち帰りましょう』

「あ、そっか。塔での遺品はギルドが買い取ってくれるんだった。レイトークにも出張所が出来てるから持って行くか。じゃあ一狼頼むね」

『お任せください、我が主』


 戦闘中に二狼が集めてくれていた武具を一まとめにすると、大きくなった一狼の背に固定する。ただでさえ大型の狼だった一狼は進化して、それこそライオンレベルに大きくなっている。1人くらいなら背中に乗れそうだ。


『主なら背に乗せることも構いません』


 それを聞いてみたらにこやかにそう言ってくれたので後日試乗させて貰おう。楽しみが出来た。

 それはそれとして……さっきから気になっていることが2つばかり。


「えっと、一狼?確かお前だけは従魔になってなかったと思うんだけど……」

『はい。主に助けて頂いた時より、わたしは主と共にいたいと思っていました。ですが、パジオンに使われるだけだったわたしをわたしは許せなかったのです。

 だから、主に仕える時はわたしが自分自身で納得できる力を身に付けてからと決めていました』


 そっか…だから、強敵との戦いにこだわって、進化に必要だと思われる魔石に固執したのか。それもこれも俺の従魔に相応しいと思える自分になりたかったから。


「一狼、ありがとうな」


 一狼がそこまで俺を買ってくれていたことに、ちょっと感動してしまった。


『富士宮 総司狼  業:-10 年齢:17

 職 :魔剣師 

 技能:言語

    読解

    簡易鑑定

    武具鑑定

    手入れ

     添加錬成+

    精気錬成

    夜目  

     友誼

    魔剣召喚(0)

 特殊技能:魔精変換』


 ふと思いついて窓を確認したら【友誼】というスキルが増えていた。おそらくこれもテイム系のスキルなんだろう。


 だが、問題はそこではない。さっきから嫌な予感が止まらない。進化後の一狼の物腰、念話の声、話し方……まさかとは思う。まさかとは思うが…


「あの…一狼?」

『なんでしょう、我が主』

「一狼は…えっと……その、女…?」

『…?もちろん私は雌ですが、それが何か?』




 やっちまったぁぁぁぁぁぁ!


 

 これは完全に俺のミスだった。性別も考えずに一狼とか名付けてしまって…ゴメン一狼。

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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ 小説1巻~3巻 モーニングスターブックスより発売中 コミックガンマ+ にてコミカライズ版も公開中
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