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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第4章

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宴会


「今日は日頃よりお世話になっている皆さんに、感謝の気持ちをこめてささやかな……いや!うちのシスティナが腕を奮った料理の数々がささやかなんて言わせない!見てのとおり美食の限りを尽くしたごちそうの数々と、これでもかって程に買い込んだ美酒を準備しました!」


「「「うおぉぉぉぉぉ!!」」」

「いいぞぉ!旦那ぁぁ!男前ぇ!」

「太っ腹ぁ!!」

「挨拶がなげぇぞ!!早く飲ませろぉ」


 前庭に特別に用意した大きなテーブルに所狭しと並べられた料理、(かめ)で用意された各種の酒。その周りに集まった、俺達がお世話になっている人々。その顔はこれからの宴会への期待にみんな笑顔だ。

 

 料理はシスティナが朝から腕によりをかけて作ってくれた。メニューの中には俺からの要望で開発された異世界風からあげや、異世界風ハンバーグなどこちらの世界では見ない料理もたくさん並んでいて、そこから立ち上る暴力的な香りは列席者の胃袋を既にがっしと掴んでいるに違いない。

 特に待ちきれないのがテーブルの中央付近に陣取っている大工さん‘sであり、さっきから大声を張り上げているのも彼らである。


「ああ!わかりました!わかりました!とにかく皆さんありがとうございました!!これからもよろしくお願いします!乾杯!!!」



「「「「「「「「「「「「かんぱ~い!!!」」」」」」」」」」」」



 乾杯の風習はこの世界にもあったようで、特に説明の必要もなく全員が杯を掲げて思い思いの飲み物を口へと運んだ。俺も、お酒はあんまり得意じゃないが最初くらいはと準備した地球でいうカクテルのような甘めの酒を一気に煽る。


「ぷはぁ!では、思う存分楽しんでください!いろいろ上下関係等々あるかもしれませんが出来れば今日この時だけは無礼講でお願いします!後で温泉にもご案内しますが、今日は時間で男女を区切るのでよろしくお願いします!」


「う!うめぇ!なんだこの茶色くてカリカリした肉は!」

「このリンプルを使った料理もいつも食ってるやつとは比べ物にならねぇぞ!」

「くぅ~!この酒を浴びるほど飲める日が来るとは思わなかったぜ!」


 ……既に後半は聞いてなさそうだが、まあいいか。


「お疲れ様でした。ソウジロウ様」

「俺は別に疲れてないよ。システィナこそこれだけの料理を準備したんだから疲れたでしょ。ありがとう」


 即席で作った檀上から降りると、傍で待っていてくれたシスティナが俺の空いた杯に笑顔でお酒を注ぎ足してくれる。


「いえ、桜さんや葵さんも手伝ってくれましたから」


 刀娘達は今回はホストとして列席者達の間を回ってお酌をしている。これから俺とシスティナも来てくれた人たちの所を回る予定だ。


「みんな楽しそうだね」

「はい!」


 初めて会う人達もそれなりにいて、最初は静かな会になるかもしれないと心配していたけど、大工さん達の豪快さが良い方に作用したらしく、あっという間に打ち解けている気がする。立食形式にしたのも正解だった。


 席を作ってしまうと近くにいる人以外とは話しにくくなってしまう。はっきり言って名家の出身だった俺はそこそこパーティ的な物に出席することもあり、その時の経験が活きた形である。


 さて、俺達はどこから回ろうか。まずはあそこから行くか。

 俺はシスティナを伴って、唐揚げに舌鼓を打ちつつ会話をしている2人の下へと行く。


「今日は来ていただいてありがとうございました。ウィルさん、リュスティラさん」

「いえ、こちらこそこんな豪華な宴に招待して頂いてかえって申し訳ない気持ちです」

「あたしもびっくりしたよ。宴会なんて言ってもこんなに大掛かりだとは思ってなかったからね。しかもこのからあげとやらの美味いこと!これだけでも今日来た甲斐があったよ」


 俺の依頼で技師を探していたウィルさんに、自ら売り込みをかけたのがリュスティラさんである。俺達からの高評価を受けて以来、ベイス商会からも依頼をするようになったらしくこの2人は良き商売相手としていい関係みたいだ。


「ウィル殿、この度は本当にありがとうございました。ウィル殿がいなければ今日のこの楽しい時間はありませんでした」


 そう言うとシスティナは頭を下げる。


「システィナさん、頭をあげてください。私が好きでしたことですから。フジノミヤ殿のファン第1号としてお役に立てたなら私としても嬉しいです」

「はい。これからもソウジロウ様をお助け下さい」


 そう言ってウィルさんの杯に酒を注ぐシスティナはまさに俺の嫁!なんだか照れくさいけど悪い気分じゃない。


「リュスティラさんもどうぞ」

「ありがとよ。武器の修理の方はもう2、3日おくれよ。魔石回路の方の修復だけならすぐなんだが、うちの旦那がもう少し丈夫に出来るんじゃないかと張り切ってるからね」

「はい、ありがとうございます」

「本当にウィルマークにはいいお客を紹介してもらったよ。面白い装備の案がどんどんと出てくるし、金払いもいいし、おかげで店の知名度も急上昇中だよ」

「いえいえ、こちらこそお抱えの少ない良い技師と知り合いになれて助かってます」

「そうかい?そりゃ嬉しいね。それもこれもソウジ達と知り合ったおかげだね」


 それは俺達からも言いたいことだった。ウィルさんやリュスティラさん達と知り合えて本当に良かった。




 

「楽しんでますかルスター隊長」

「おお!フジノミヤ殿!この料理は実に美味いな!さっきからうちの従者達が顔も上げないくらいだ」

 

 赤い流星の時に共に戦った大工さん達と酒を酌み交わしながら、渋い笑みを浮かべて杯を上げるルスター隊長。


 その脇で双子のニジカ、ヨジカが唐揚げをほおばりつつミーカウ(豚と牛の中間のような味わいの肉)のソテーとサーマス(地球の鮭的な魚)の塩焼きを抱え込むようにしてキープしている。


「すいません、うちの隊の従者が…お恥ずかしい」


 ルスター隊長の後ろに控えていた見習い騎士のカレンが小さく頭を下げる。カレンはコロニ村にいた親戚を俺達が助けたことで俺達に恩義を感じているらしい女騎士だ。ルスター隊長を招待した際に何人か同行しても構いませんよと伝えておいたら、どうもこのカレンをメンバーに加えたらしい。


「いえ、食べて頂きたくて作った料理ですから。気に入って頂けて嬉しいです」

「強引にお誘いしてしまいましたがお仕事の方は大丈夫ですか?」

「何かあればすぐに連絡が来るようになっているし、ガストンとヒューイもいるからな。問題はない」


 と言いつつも強い酒は飲んでいない辺りはさすがだろう。


「後程、うちの自慢の温泉にご案内しますので日頃の疲れをゆっくり癒してください」

「おお!最近ベイス商会が取り組んでいるお湯に入るというやつだな?それは楽しみにさせてもらうとしよう」





 ルスター隊長達と別れると次に目についた親方コンビの方へと移動する。


「こんばんは、ゲントさん。ディランさん」

「おう!旦那!約束通りさっそく宴会開いて貰って感謝するぜ」

「この度は本当にありがとうございました。ゲントさん達ベイス商会の大工の方達がお骨折り下さらなかったら蛍さんや桜さんもああして笑っていることも無かったかもしれません」


 システィナが離れた所で、大工達と飲み比べをしている蛍と、リュスティラさんに二狼達を紹介してモフモフさせている桜を見て頭を下げる。


「け!桜嬢ちゃんは俺らの娘みたいなもんだ。助けるのは当たり前だ。感謝される筋合いはねぇ!」


 そう言って笑いながら杯を煽るゲントさんにシスティナが今日準備した中で一番強い酒を注ぐ。


「おおっと、わりぃな!それにしても『グリュミの火酒』をこんなに飲めるとはな、高かっただろう」

「そうですね。私にはお酒の価値は良く分からないのですが、でも酒屋の方が酒呑みにはこれが一番喜ばれると仰ってましたので。ディランさんもいかがですか?」

「…もらおう」


 言葉とは裏腹に差し出された杯のスピードはなかなかのものだ。どうやらドワーフの見た目を裏切らずに大酒呑みなのは間違いなさそうだ。


「また、明日以降各地の塔を回ってみようと思っています」

「ん……階層ごとの違いはなさそうだ」


 せっかくフレスベルクにいて全ての主塔への転送陣があるんだから、一応ザチルだけでなくその他の主塔の壁も揃えておいた方が良いだろうと思って、明日から1日1塔を目標に各地を回ってみるつもりだった。


 今日採集したザチルの壁材は既にディランさんに届けてある。それを受けてのディランさんの言葉。どうやら階層ごとに壁材の違いは無かったようだ。


「分かりました。採集出来たらまた工房へ届けます」

「また、なんかおかしなことを始めやがったな。今、ディランの奴に聞いたぜ、無理難題ばかりだってな。全く旦那は職人泣かせだよ」

「はは、すいません。でもお二人なら多少の無理難題は難題じゃないと思ってますから」

「おおっと!墓穴を掘ったか。そう言われちゃあ職人としちゃあ泣き言は言えねぇ!がはははは!」


 バンバンと俺の背中を叩くゲントさんは、もうかなり酒が回っているのか加減が出来ていないのでめちゃくちゃ痛い。


「ゲントさん。お料理の方もまだありますのでお酒だけでなく、こちらも食べて下さいね」

「おお!シス嬢ちゃん。頂かせて貰うよ、こんな美味いもん残す訳にはいかねぇからな」


 上機嫌で酒を酌み交わす2人の親方に楽しんで行って下さいと声をかけてからその場を離れ、少し離れた所でシスティナと2人で会場を見回す。


「これで大体主要なところは回ったかな?」

「そうですね。強いて言いうならトォルさん達のところがまだですね」

「そっか」


 言われてみて剣聖の弟子を探してみるが、トォルは蛍と大工さんたちの飲み比べに巻き込まれて既に意識が朦朧としてそうだった。アーリは毎日通ううちに仲良くなったのだろう、ギルドの笑う受付嬢となにやら楽しく話し込んでいる。


 …っていうか笑う受付嬢の素の笑顔を初めて見た気がする。

 

 フレイは弟のアルと料理に夢中のようで、なんとかこっそり持って帰れないかと挙動不審だったので後で折詰にして持たせてあげるようシスティナに言っておく。どうやらバルトに扱き使われて貧乏だった時の癖が抜けないらしい。


「あの3人は今日、塔で話したしいいかな。それぞれ楽しそうにやってるし」

「はい、本当に皆さん楽しそうです」


 完全に陽が沈み、暗くなってきた会場だが周囲には光魔石をふんだんに配置してあり、葵が指ぱっちん1つで全点灯させて会場を沸かせている。


 そんな宴会の様子を見てシスティナが本当に嬉しそうに笑う。


「うん。この世界に来ていつの間にかこんなにたくさんの人と仲良くなってたんだと思うと……なんだか感慨深いよ」

「ご主人様。私はご主人様がこちらの世界に来てくれて本当に良かったです。ご主人様がこちらに来てしまった経緯を考えたらそんなこと言ってはいけないと分かっているのですが、それでもご主人様をこちらの世界に導いたくれたその地球の神様に感謝してしまうんです」

「システィナ…」


 そっと俺の手を握って身体を寄せてくるシスティナ。その手を俺も握り返す。


「俺もこの世界に来れて良かった。システィナに会えて良かったよ」

「…はい」



「ソウ様~!シスもこっち来て飲もうよ~!」


 桜が会場で手を振って俺達を呼んでいる。まだ宴は始まったばかりだ。俺とシスティナは目を見合わせて同時に笑うと手を繋いだまま会場へと向かった。


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