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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第4章

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2本の魔剣

『武具鑑定』


 俺は手の中の感触の正体を確かめる為にすぐに武具鑑定をしなおしてみた。

『巨神の大剣 : 封印状態(微)

 ランク : C++ 

 錬成値 : MAX 

 吸精値 : 0

 技能  : 頑丈(極)

       豪力+

       重量軽減

       共感(微) 

 所有者 : 富士宮総司狼 』


 やっぱりか。この剣から感じたものは弱いながらも『共感』によるものだった。だが、共感のスキルの効果はごく小さいらしく、巨神の大剣からは思念的なものはほんの僅かしか伝わってこない。例えていうなら『遠くから見られている視線を感じる』程度。残念ながら現状では感情を読み取るまでは無理っぽい。


 そして、理由は分からないがおそらく俺が装備したことで吸精値の項目が追加されている。つまりこの剣は魔剣師である俺が育てることが出来る武器だということだ。封印が弱くなっているのは多分ランクが上がったから…だと思う。もしその予測が正しければ次にランクが上がりBランクになった時には封印が完全に解けるかもしれない。


 ただ、問題は…


「錬成値がカンストしてるんだよな…」


 そうこれが問題だった。錬成値がカンストしている以上は桜や葵の時のように魔石で育てることは出来ない。さらに、擬人化スキルが無いため裸の錬成作業も出来ない。


 ちなみに余談だが、俺のマイサンから排出された魔力は一度外の空気に触れると錬成の為には使用できないが、俺の血液は体外に出ても錬成に使用することが出来る。理由については全く分からないが、異世界の不思議ジョブに理屈を求めても仕方がないのでそういうものだと思って納得している。

 

 となると、必然的にこの剣を錬成するためには俺が流血するしかない。

 その辺を刀娘とシスティナに説明する。


「それならば急いで錬成をする必要はないと思います。ご主人様がいちいち血を流されるのはちょっと…」

「そうですわ!私達の同胞ならともかく、外様(とざま)の武器に主殿の尊いお血をお与えになる必要はありませんわ!」

「うん。心配してくれてありがとうシスティナ、葵。でもこの子も今ここにいる以上は俺達と縁があったんだと思う。自傷行為をしてまで錬成をする気は今のところないけど、塔で探索中に怪我をしたときなんかに少しずつ錬成するくらいはしてあげたいと思う」

「ソウジロウ。怪我をする前提では困るぞ。しっかりと修行してもらわんとな」

「そうだよ、ソウ様。それに桜達がついてるんだから、もう簡単にソウ様に怪我なんかさせないよ」

「おお、了解。修行もするし、怪我もしないようにする。心配してくれて有難う蛍、桜」


 4人とも心配の仕方が見事に違うが掛け値無く本心から俺のことを心配してくれているのが分かる。この大剣もなんとかしてあげたい気はするけど、あまりみんなに心配をかける訳にもいかないだろう。こいつに関しては時間をかけてなんとかしていく方針にする。

 それに、育てなきゃいけなくなるだろう武器がもう一本増えるのは確実だしね。


「あと、もう1つみんなに伝えておくことがあるんだ」

「なんですの?主殿」

「俺の【魔剣召喚】スキルの使用回数が1になったんだ」

「ほう…やはり、この世界でソウジロウが何かを成し遂げると回数が増えるのやもしれぬな」


 俺の報告に蛍が顎に手をあて何かしら考えている。確かに【魔剣召喚】スキルを覚えたのは階落ち事件を乗り越えた後。そして、今回は赤い流星を殲滅した後…なるほど、蛍の言う通りかもしれない。

 きっと、屋敷でのんびりとしているだけじゃこの回数は増えないのだろう。

 もしかしたらこの【魔剣召喚】というスキルは、この世界を積極的に動きまわって何かを成したり、何かを乗り越えたりして得た経験や情報を俺の魂に刻むことで地球の神から与えられるご褒美のようなものなのかも知れない。


「そっかぁ、じゃあまた蔵の仲間が1人増えるんだね。今度は誰が来るんだろう。わくわくするね!」

「ご主人様、スキルは今すぐ使われますか?確か前回の召喚後は大分お疲れのようでしたが…」


 確かに前回の召喚の時も魔力をごっそりと持って行かれていた。葵の登場にテンションが上がりまくってその時は気が付かなかったが、その後は結構な脱力感を感じていた。俺達がこの後に出かける予定があるので、システィナはその辺を心配してくれているのだろう。


「そうなんだけどね。でも、召喚した刀次第じゃリュスティラさんの所で新しい剣を発注しなくちゃいけないかもしれないから」


 蔵の中には脇差よりも短い、短刀のような物も多数あった。それらが召喚されても気持ちとしては嬉しいので構わないけど、戦闘で使うことを考えるとせめて桜くらいの刀身が欲しい。なので短刀を召喚した場合は短刀は懐中に忍ばせることにして、普段使い出来る剣をもう1本発注するつもりだった。


「わかりました。もし外で体調が優れなくなったらすぐに言ってくださいね」

「大丈夫、大丈夫。前回も新しい刀が来てテンション上がったからあんまり気にならなかったし」

「おそらく心配いりませんわ。主殿の体内魔力はわたくしが召喚された時と比べて大分増えているようですから、わたくしを召喚した時ほどの疲労は感じないと思いますわ」


 おお…そうなのか。自分の魔力すらざっくりとしか感じられない俺は全く気が付かなかったけど魔力操作に長けた葵が言うなら間違いないだろう。異世界系のラノベによくある『魔力は使えば使うほど増える』という法則がこの世界でも適用されているのかもしれない。

 まあ、俺の場合は魔法とか使って消費している訳じゃなくて精力に変換してるだけだけど…


「ねぇ、ソウ様。早く呼んであげて。桜も早く会いたいよ」

「ごめんごめん、じゃあ行くよ」


 俺は目を閉じて深呼吸をしながら、心を落ち着かせるとゆっくりと目を開け口を開く。



『魔剣召喚』


 前回と同様俺の意思に従ってスキルが発動する。

やはり魔力がごっそりと減っていくが、確かに前回よりは気分が楽な気がするので葵の言うとおり俺の最大MPは増えているのだろう。

 そんなことを考えている間に俺の目の前の空間から溢れ出ていた光が次第に凝縮していく。


 …そして限界まで凝縮されたその光が弾けた時、俺の目の前に浮いていた刀は暗赤色の鞘に納まった1メートル程の刀身の刀だった。


「珍しい色の鞘だな…」


 蔵の刀達は皆抜き身でケースに入っていて鞘は本体の後ろに飾られていた。俺はいつも刀身に目を奪われていたのでそれぞれの刀がどんな鞘に入っていたのかまでは覚えていない。

 でも、どこか血の色を思わせるその鞘の色は普通なら不気味に感じそうなのに逆に引き寄せられるような魅力を感じる。

 左手を伸ばして鞘の中程を握ると、ゆっくりと右手で刀を抜いていく。


「綺麗な刀ですね」

「うん……覚えてる。確か蔵の一番奥に3本並んで置いてあったうちの1本だ」


 蔵の奥にスペースを作り、わざわざ3本並べて置いてあったので、多分何か意味があったのだろう。そうなると、いつか残りの2本も召喚して揃えたいところだけどそれは後々の話か。


『武具鑑定』


『加州清光 ランク:C+

 錬成値 46

 吸精値  0

 技能:共感

    気配察知(微)

    殺気放出

    柔術

    刀術

    敏捷補正+

    突補正++』

    

 おおおおおぉぉぉぉぉぉ!


「加州清光来たぁぁ!」


 マイ グランパよ!もはや細かいことは何も言うまい。ただひたすら貴方に最大の謝意を!ありがとう!おじいちゃん達!


「ほう、また面白いところを引っ張ってきたのう」

「徳川の為に尽くしてくれた刀ですからわたくしは嬉しいですわ」


 蛍は刀の持つ冷たい雰囲気を指しての意見だろうが、葵はこの刀が誰に使われていたのかを知っての意見だろう。なぜなら俺の記憶が確かなら加州清光は幕末で沖田総司が使っていたとされる刀のうちの1本だからだ。

 これも縁というものだろうか。俺の名前がたまたま沖田総司にかすってたからパーティ名を新撰組にした。そうしたら今度は沖田総司が使っていたとされる刀が召喚されてくるなんて…

 地球にいたころは新撰組のことなんかテレビドラマで見た程度の知識しかなかったが、パーティ名を新撰組にしてからはちょっと興味が出てきたので、システィナの叡智の書庫を使って新撰組の情報を引き出したりもしていた。


 その情報で沖田総司が使っていた刀は3本。大和守安定、菊一文字、そして加州清光だ。蔵に3本がセットで並べられていたことから考えると、うちのお爺様はこの3本をコンプしている可能性すらある。もしそうならその功績は個人的に神レベルと認定してあげたい。

 

 スキル構成はなんとなく沖田総司のイメージに近い構成な気がする。技とスピード重視の構成だ。


 刀なのに柔術スキルがあるのは沖田総司が新撰組局長、近藤勇の流派である天然理心流(てんねんりしんりゅう)だったせいだろうか。

 確か天然理心流は剣術、居合術、小太刀術に柔術や棒術までをも含めた総合武術だったはず。


 そして、突きの補正が高い。メイザ戦で突きでの攻撃に課題を残していたので丁度いい。この刀を使って戦えば威力のある突き技の出し方を身体で学ぶこと出来る。


「ソウジロウ。そやつには共感スキルなどはついていないのか。何も伝わって来ぬが?」

「いや、共感スキルは付いてるんだけど…」


『……』


「…無口なのかな?敢えて伝えて来ていない感じがする」

「なんとなくだけど、桜に近い雰囲気を感じるかな」

「え?桜はいつも元気一杯だと思うけど?」

「あはは!確かにそうだけど、そっちじゃなくて役割って言ったらいいかな?」

「役割……?」

「あ、分かる気がします。桜さんが忍者だとしたら…この刀は……そうですね。殺し屋?でしょうか」


 ああ、なるほどそれなら分かるかも。殺し屋までは言い過ぎかもしれないけど殺気とかガンガン放出しちゃうくらいだし、『悪・即・斬』の新撰組で一番隊の隊長だった人の刀だからそのイメージはあながち間違いじゃないか。そうするとあんまり感情を表に出さないというのも性格的なものか。


「無口でもいいよ。これからは一緒にやっていくんだから少しずつ打ち解けていけばいいんじゃないかな」

「よし、ならばソウジロウ。お前が名をつけてやれ」


 名前か、名づけはあんまり得意じゃないんだけど。


 ……………よし!


「お前の名前は…『雪』だ。これからよろしく頼むな、雪」


『……』


 お任せください。ほんの少しだけ雪のそんな想いが伝わってきた気がした。

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