我を失う
「ここが,いいと思います。沐浴場が隣にありますし一泊一部屋520マール。食事は一食50マール程度で摂れます」
そう言ってシスティナが案内してくれた宿は三階建ての大きな建物だった。
520マールってことは5200円位か…結構良さそうな宿だから日本よりは安いのか。
「料金設定って1人いくらじゃないの?」
俺の質問にシスティナは小首を傾げながらも頷く。
「はい。宿側にしてみればお部屋を一晩貸す訳ですから…人数はあまり関係ないということだと思うのですが」
「そうか…食事代が別なら一部屋に何人泊まったって宿には関係ないのか」
そんな話をしながら扉を開けると正面にカウンターがあり恰幅のいいおばちゃんが座っている。
カウンターの左側は食堂になっているらしく、いくつもの円卓がおかれ何人もの客が食事を摂りながら酒を飲み談笑し,奥の厨房が慌ただしく動き回っている。そういやお腹すいたな…いままでは馬車に積んであった保存食のようなものをシスティナが出来る限りの調理でおいしくしてくれてたんだよな。
草狼の肉は新鮮じゃなきゃとても食べられないらしいからあの朝しか食ってないし,そろそろこっちの料理をがっつりと食べてみたい。
カウンターの右側には階段と扉があり,扉には101から103と書いてあるので扉の先は各部屋に続く廊下があるのだろう。
「はいよ!いらっしゃい。食事かい?泊かい?」
「1泊でお願いします」
おばちゃんはシスティナを見て,蛍さんを見て最後に俺を見た。
「部屋は二部屋用意するかい?」
普通に考えれば男女混合で3人以上いれば男女別で部屋を取ると思うだろうし俺も当然そのつもりである。まあ蛍さんは嫌がらないだろうし最悪刀に戻ってもらえば問題の起きようもないし,システィナだってお願いすれば最終的には断れないはずだけど。
「いえ,一部屋で結構です」
「ほう」
俺の想定を裏切りきっぱりと一部屋を申告したシスティナに言葉も出ない俺と妙に得心がいった風の蛍さん。
「そうかい。じゃあ520マールになるね。食事の方はうちで摂ってくれるんなら沐浴場の方は3名分つけとくけどどうする」
「はい。それでお願いします」
システィナはそう言うと銀貨6枚を払う。
「部屋の方は303。鍵はこれだよ。最低限の防犯はしているつもりだけど,盗ら
れちゃ困るもんは自分たちでなんとかしておくれ」
おばちゃんは銀貨を受け取ると、鍵とお釣りの大銅貨8枚と何かの券3枚をシスティナに手渡す。
「わかりました。明日もこちらで部屋を取ることになると思いますが継続は可能ですか」
「特に予約は入ってないね。なんなら予約しておくかい?」
「そうですね…明日は大丈夫でしょうからお願いします。明後日からは塔に入ることになるので…」
ん~ちょいちょいシスティナの言葉の端々から今後の予定の既定路線として塔に行くという言葉が出てくるんだがいいのだろうか。
俺としては会って数日のシスティナをこの上もなく信頼しきっているので別に構わないんだが、もうちょっと事前に説明があってもいいかなぁと寂しく思ってたりもする。
「そうかい。じゃあ明日までの分にしといた方がいいね」
システィナは頷くと再び銀貨5枚と大銅貨2枚を支払う。
「まいど,ごゆっくり」
おばちゃんに丁寧に頭を下げたシスティナが振り返る。
「では先に食事にしましょう」
にっこり微笑むシスティナを見たら結局どうでもよくなった。
食堂に移動した俺たちはそれぞれ今日の定食を注文。蛍さんはどうしても酒が飲んでみたいと駄々を捏ねるのが可愛かったので、この世界で定番らしい発酵酒を注文した。何種類かあったみたいだったがとりあえずと言いながら端っこを指さしていた。
絶対に全種類制覇を目指す気だろう。
今日の定食はサラダにスープにサイコロステーキ的な物に微妙に固いパンで50マール。発酵酒は1杯で20マールだった。
味の方はと言えば米が無いのが残念で、パンも固くてスープで柔らかくしないと食べれた物じゃなかったけど不味くはなかった。この程度の食事が日々摂れるなら今後生きていく上でもさほど問題にはならないと思う。
ただ,ここにくるまでに食べてたシスティナの料理の方がおいしく感じたのは俺のひいき目なのかどうか…いずれシスティナに全力で腕を振るう機会を設けてみようと心に決める。
「さて,人心地着いたところでいろいろご説明させて頂きますね。ちょっと街を入る際にうっかりしてたことがあってなし崩し的に決まってしまったこととかありまして…」
久しぶりに落ち着いて食事をしてまったりしたところでシスティナが申し訳なさそうに話を切り出してきた。
「ふむ…塔とやらの話だな」
食事もそっちのけで既に3杯目(3種類目)をぐびぐびと呷っている蛍さんが核心を突く。
「はい。この街に塔への転送陣があることは承知していたのですが,無一文で中町に入ることにばかり気を取られていたのでうっかり失念していたのです」
「えっと…何を?」
相変わらず塔やら転送陣やら全く分からないが、とりあえずはシスティナが何を忘れていたのかを聞いてみる。
「はい。契約侍祭とその主は身分を明かせば基本的に全ての街の入街税が免除されます。但し,その街が塔を管理する街である場合や塔へと繋がる転送陣を持っている街の場合は塔へと赴く義務が発生するのです」
システィナの話に寄ればこの世界には主塔と呼ばれる大きな塔が10塔あるらしい。但し,その内3つは先人達の功績により打倒され滅びているため残存する主塔は現在は7つ。
この塔自体は誰がいつ建てたのかは全くの不明で、現存する一番古い書物の中には既に登場していることから、誰かが建てた物ではなく『自然発生』した物という考え方が一般的だそうだ。建築物が自然発生というのもおかしな話だが,魔法があるような世界だからそういうこともあるのかもしれない。
この説の裏付けとしては、稀に副塔と呼ばれる野良の塔がランダムで発生することがあるらしい。この副塔は主塔と比べるとかなり劣化版のようだが、いつどこに発生するのか分からないというのは想像以上に嫌なものらしい。
ではそもそもこの塔というのはなんなのか…この世界の学者達が導き出した答えは『魔物を産む装置』だった。
なぜなら魔物の発生方法が未だに解明されていないからである。繁殖の方法や発生する場所等の魔物が産まれる為に必要な情報が全くない。但し,塔内を除いて。
塔の中だけは魔物が無限に湧いてくるのことが確認されている。そこで学者達が立てた仮説の一つ。
『塔は魔物を産み続け,塔内の許容量を超えると外へ転送する』
この説は今まで不可解だった魔物の発生についての疑問点をほぼ完全に解消出来るものだった。そしてこの説が更に有力性を増す事件が起こる。
主塔の一つが討伐されたのである。
そして主塔が討伐された付近では新たな魔物の発見報告が減り,長い時を経る間に残っていた魔物達もほぼ駆逐され現在はかなり安全な区域として栄えているらしい。
このことからも塔の討伐というのは人類の至上命題と言っても良い。仮に塔の最奥にいるボスを倒せなくても,恒常的に塔内の魔物を狩り続ければ塔外の危険が減る。
逆に危険を伴う塔探索を誰も行わなくなれば日々の生活が脅かされる危険が徐々に上がっていってしまう。そのために侍祭と契約をするような人材は様々な優遇を得られる代わりに塔探索という義務を負わなくてはならないらしい。
他にもいろいろ優遇措置や義務があるそうだが,そのうちの1つが入街税の無料化と塔探索への参加義務になるのだそうだ。
本来なら街が塔を有していなかったり,塔への移動手段を持っていなければただ無料になるだけだった。
強制ではないので塔に入りたくなければ普通に税を払って街に入れば済む。
だが,少しでも馬車を高く売りたかったシスティナは中町での売買にこだわりこの街が塔への転送陣という移動手段を持っていることは知っていたが塔に入らなければいけないという義務を失念したまま契約侍祭としての権利を行使してしまったらしい。
「塔は危険な所です。ある程度難易度は選べるはずですが、常に命の危険があると思ってください。そんなところに否応なく行かざる得ないことにしてしまうなんて…なんとお詫びをすればいいか、本当にすいませんでした」
謝罪と共に頭を下げるシスティナ。
もちろん俺は怒るつもりはない。なんと言っても自分の為ではなく、ちょっと関わっただけの人達や俺達の為に一生懸命していたことの結果について責めるようなことが出来る訳ない。
「律儀な娘よのう」
刀なのに酔えるのか?随分と機嫌が良さそうな蛍さんが楽しげな笑いを漏らす。
「いいから顔をあげなよシスティナ。どうせ俺達はやることなかったんだし、その塔とやらに行ってみるのも悪くない」
せっかく蛍さんが刀術を教えてくれるんだし発揮出来る場があってもいい。
もちろん魔物との戦闘というのがどの程度のものなのかというのが全く想像がつかないのが怖くはある。
でもそんなに都合よく盗賊に襲われる訳でもないだろうし,なんかしらで生活の糧は得なきゃならない。ならば無限に魔物が湧く場所で魔物を狩って、ドロップ?的な物を売って生活費を稼ぐというのは意外と俺達にはあってそうな気がする。
「そうじゃな,そんなところがあるならソウジロウの修行にもちょうどよい。危険云々については気にするな。お前ら2人は実戦でしっかりみっちりこってりと、これでもかってくらい鍛えてやるぞ」
手に持った酒をおいしそうにぐいっと飲み干す蛍さんの胸元の白い肌がほんのり桜色になってきている気がする。実に色っぽい。大人の女の魅力が凝縮されているようだ。人化すると刀も酔えるのかもしれない。もしそうだったら今の物騒な発言も酔った勢いってことで明日には忘れててくれるといいんだけど。
「本当に迂闊でした,すいません。でも…正直言えばソウジロウ様と蛍さんならそう言ってくれそうな気もしてたので、あまり心配はしていなかったんですけど」
そう言って顔を上げたシスティナの浮かべたいたずらな笑みは、照れ臭そうだが俺達に対する信頼も見えた気がする。なんだか良い感じだ。
そんなこんなでややゆっくりとした食事が終わり、沐浴場へ行く前に一旦荷物を整理するために部屋へと向かった。
ちなみに蛍さんは沐浴場に行くときに声をかけてくれと言ってまだ下で呑んでいる。
既に銀貨1枚以上は呑んでいるのだが,明日の朝食も昼食もいらんからその分を寄こせと言って更に銀貨を1枚確保しているのでよっぽどお酒が気に入ったのだろう。
いつも持ち主達だけが酒盛りをしているのを羨ましく眺めていたらしいので箍が外れているのだろう。
なんだか俺よりも蛍さんの方がよっぽど自分らしく生きている気がする。
「おお!ベッドだ」
案内された部屋に白いシーツに包まれたベッドがあるのを見て一気にテンションが上がったので、反射的にダイブしてみた。
日本にいた時も基本は畳に布団敷きだったからベッド自体が新鮮だ。
こんな異世界ではベッドの柔らかさにはあまり期待はしていなかったけど、ダイブを受け止めたベッドは想像していたよりも快適な感触だった。
システィナがそれなりにいい宿を選択したからだろうか。
「ご主人様ったら…まだ着替えもしてないのに」
入り口からその様子を見ていたシスティナが笑っている。うん可愛い。
「それにしても…本当にいいの?システィナ」
「あ…はい。私が無理を言ったせいで節約するところも必要ですから」
わずかに頬を染めるシスティナもやや緊張気味のようだ。
まあ,緊張してるのは俺も同じなんだけどね…
部屋は一部屋,ベッドも一つ。床に寝るなんて却下だし,この部屋にはベッド代わりになるようなソファー的な物もない。ということは!皆同じベッドで寝るしかない。
「ご主人様。まだ寝ちゃわないでくださいね」
ベッドにダイブしたまま物思いに耽っていた俺を心配してかシスティナが声をかけてくれる。
「は~い。なんか手伝うことある?」
「ふふふ…大丈夫ですよ。荷物の整理と言っても私たちには大したものはありませんしね」
言われてみりゃそうか。馬車に荷物があったから結構いろいろあるように思ってたけど、結局のところ俺が持ってる物なんて短ランボンタンと桜ちゃんと蛍さんくらいしかない。
あぁでも蛍さんが人化して独り立ち?しちゃったから更に減ったか。
まあ馬車に積んであった背負い袋とか護衛の人とか貴族の人とかの着替えとかで今後使えそうなものとか肌着やら下着の未使用のやつとかタオル的な物はいろいろゲットしたけど。
「さて,ではご主人様。こちらの服に着替えてください。そちらの服は沐浴場で軽く洗っておきますので」
綺麗に折りたたんだ着替えを手に持ったシスティナが近づいてくる。
着替えるのはやぶさかではないけど,クリーニング屋もないようなこの世界で学生服を迂闊に水洗いとか大丈夫なんだろうか。
なんだかんだで元の世界のものはもう蛍さん達を除けばこれだけだし、いずれ着られなくなる時がくるとしてもそれはもうちょい後にしたい。
「えっと…着替えはするけど洗濯はいいや。後で埃をはたいて汚れが目立つ所だけ濡れたタオルとかで拭いておいてくれる?
後のTシャツとか靴下とか下着は自分で洗濯するし」
そう言って寝返りを打つ俺をおとがいに手をあてながら眺めるシスティナ。
「…そちらの学生服?ですか。それに関しては確かに私も見たことがないような素材で出来てますしちょっと慎重に扱った方がいいかもしれませんね。
ではひとまずこちらのクローゼットにかけておきますから脱いでください」
「は~い…でももうちょっと」
ベッドの上がこんなにも気持ちいいものだとは思わなかった。部屋の中は壁に掛けられたいくつかの燭台の灯りと丸テーブルの上のランタンだけでいい感じに薄暗いし、日々の疲れもありこのまま一気に眠りに落ちそうである。
「駄目ですよご主人様。これから沐浴場に行くんですから起きてください。学生服も大切なものなのでしょう?ちゃんとしておかないと傷みが早くなりますよ」
う~ん確かに。唯一の地球の衣服だしもうちょい大事にしてやるか。
このまま寝てしまいたい衝動を無理やり抑えつけて起き上がると短ランのボタンに手をかける。
「お手伝いいたします。ご主人様」
「うん,ありがとう」
ボタンを外した短ランを袖から抜くのを手伝ってもらい,システィナが短ランをクローゼットに掛けている間にTシャツを脱ぐ。
これだけ肌触りのいい肌着も無いだろうからこれも貴重と言えば貴重だ。きちんと洗濯して大事にする必要がある。
「ではお履き物も」
「え?」
さも当然のようにボンタンに手をかけてくるシスティナに慌てる俺。
「いやいやズボンは自分で脱げるし」
「いえいえ遠慮なさらずに、私侍祭ですし」
く,ひかねぇ女だぜシスティナ。マジ最高。もういいかと思わないでもないがこんなシチュエーションに俺の息子はすでにパーリナイ状態である。
これをいきなりシスティナに晒すのはちょっと恥ずかしい。
「あ,あのシスティナ。本当に大丈夫だから」
「もうご主人様ったら,遠慮はいりませんよ」
「ちょ,ちょ,だからちょっと待って」
「きゃ!」
ズボンを脱ぎかけの状態でそんなやり取りをしてれば当然バランスを崩す訳で…
仰向けにベッドに倒れた俺は幸いベッドの弾力のおかげでダメージは受けていない。
だがお腹の上に感じるこの弾力はベッドの弾力を遥かに上回る!!
「だ,大丈夫ですか。ご主人様」
胸の上から申し訳なさそうにシスティナが覗き込んでいる。あえて言わせてもらおう、身体は大丈夫だと。だが一部分は大丈夫どころか暴発寸前だと。
「う,うん。大丈夫だから早くどいてくれる?ちょっと,ほら,あれが…」
「あの…私とこうしているのは…迷惑…ですか?」
く!迷惑ではない!むしろ内心は嬉しい。嬉しいが苦しい。もういっそこのままいっちゃうか。
「あ…」
と思った瞬間システィナの顔が朱に染まる。薄暗い部屋の中でも分かる劇的な変化である。俺のエクスカリバーに気が付いたのだろう。
「迷惑じゃない。わかる…よね」
「…はい,ありがとうございます」
頬を染めつつも俺の上から降りる気はないのか、下から見上げる目は俺の目を離さない。
なんとか冷静に対処しようとしているが、冷静さを失っているマイサンとバックバクしているマイハートを体感しているシスティナにはばればれだろう。
男としてはみっともないことかもしれないが、こんな可愛くて胸の大きい子にのしかかられた状態では童貞男に抵抗出来る訳はなかった。
「あの…システィナ?」
「ご主人様…」
潤んだ瞳を向けてくるシスティナがずりずりとゆっくり上ってくる。なんかエロい。眼がエロい!明らかに正気を失ってないかこれ。もともとシスティナは房中術スキルを身に付けるくらい知識が豊富である。そこにこんなスケベな男が隙さえあればエロい視線を向けてくるとなれば、否応なく妄想も溢れていくのではないだろうか。
妄想の相手として不足はないくらいに好かれているということは喜ぶべきことなんだろう。
ていうかシスティナがいいなら俺に断る理由などない。
俺は緊張で硬直したままだった両腕を解禁し、システィナの背中に回す。初めて会った時から俺を釘付けにしていた双子山が俺の胸に押し付けられて柔らかな感触を伝えてくる。
もうなんだか脳内が痺れる様な幸福感の中……生まれて初めて俺は女の子とキスをした。
「ん…」
生まれて二度目のキスをした。三度目のキスをした。四度目のキスをした。
「あ,あの…ん…ご…主…人…さ…ま…」
五度目のキスをした。六度目のキスをした。七度目のキスをした。八度目のキスをした。九度目のキスをした。
「ま……て,くる…し」
十度目のキスをした。十一度目のキスをした。十二度目のキスをした。十三度目の…
「ええい!やめんか!」
ゴン!
「は!」
脳天に走った衝撃に我に返ると、蛍丸を手にした蛍さんが見下ろしていた。
「しょうもないのう…いくらなんでも接吻くらいで我を失うとは。相手のことを考えられないようでは男として失格だぞソウジロウ」
「…くっ,面目ない」
全く蛍さんの言う通りである。
「システィナも大丈夫かの?なかなか来ないと思って来てみたらいい雰囲気だったので様子を見ていたんじゃが…」
「は,はい…大丈夫です。あの!嫌だった訳ではありませんので」
「ソウジロウはまだ童貞じゃからな…がっつき加減は半端ではない。気持ちはわかるがもうちょっと待っておけ。今夜にでも儂が筆おろししておいてやろう。
儂ならソウジロウがどんなに乱暴に扱っても壊れることはないからな」
そう言って舌で唇を湿らせる蛍さんは妖艶過ぎてちょっと怖い。っていうか今さらっととんでもないこと言わなかったか蛍さん。
「ほれ,ソウジロウ。きちんとシスティナに謝らんか」
「あ!そうだった。ごめんシスティナ。あまりにも気持ちよくておかしくなっちゃって」
「い,いえ!私が迫ったようなものですし,先ほども言いましたが嫌ではなかったですので…むしろ私であんなに…嬉しかったです」
顔を赤くしながらもじもじするシスティナが可愛い。
「よし,ではさっさと着替えて行くぞ」
「え?どこへ」
ゴン!
「目を覚ませと言ったろうソウジロウ。水浴びにいくのじゃろう」
そうでした。




