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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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報告(ウィルマーク・ベイス)


「それじゃ行ってくる。後はよろしく」

「はい、わかりました。お気をつけて」

「ソウ様~。どうしても桜は一緒に行っちゃダメ?」


 屋敷の外門まで見送りに来たシスティナに声をかけると、隣にいた桜が人差し指を口元に当てながらあざとく甘えた声を出す。


「だ~め!今回の件に関するお仕置きの一つだからね。しばらく外出は禁止。後は窓の修理とシスティナの監視下での掃除!庭の手入れ!狼達のトイレのしつけと小屋の制作もよろしくね」

「うへぇ……わかったけど、蛍ねぇのお仕置きのが簡単そうでずるい」

「そんなことないと思うよ。蛍さんにとっては圧倒的に掃除や外出禁止よりきついお仕置きじゃないかな」


 むっつりとした顔で黙り込んで俺の後ろに控える蛍さんの表情は、不機嫌さが全く隠せていないからその予想は間違っていないはずだ。


「主殿、そろそろ行きましょう。ただでさえわたくしたちは2日も寝込んでいたのですから、ウィルマーク殿も心配なされているはずですわ」


 不機嫌な蛍さんとは対照的にご機嫌で今にも浮かび上がりそうなのが葵だ。俺の肘を抱きかかえるようにしてひっぱり早く早くと急かしている。


 赤い流星との戦闘が終わったその日の夜、俺とシスティナは激戦の疲れからか体調を崩し2日程寝込んでいた。葵も魔力枯渇寸前だったせいかあまり本調子ではなく、2日間を刀の状態で過ごしていた。

 そのため報告やお礼に行かなくてはならない人達に会いに行けなかったのである。当然そんな状態だったので夜のお楽しみもずっとご無沙汰だし、せっかく擬人化した葵とも『まだ』である。


「わかった、わかったから引っ張らないで葵。じゃあ行ってくる。一狼(いちろう)も屋敷の警備よろしくな」


 グルゥ!


 小さく喉を鳴らし返事をする一狼の頭を撫でると今度こそフレスベルクに向けて歩き出す。


「それにしても主殿、狼達の名前はもう少し何とかなりませんでしたの?」

「あぁ…うん。名前ね」

「せっかく『名前を付けてやる』なんて格好よくお決めになられていたのに…台無しですわ」


 葵からの容赦のないダメ出しに俺は全く言い返せない。なぜなら既に予測はついているだろうが、俺が付けた名前は灰色狼(アッシュウルフ)が【一狼】で以後大きい順に【二狼】【三狼】【四狼】【五狼】【六狼】【七狼】【八狼】【九狼】だったから。


「だって、いきなり9頭分も名前とか浮かばないしカッコいい名前付けても見分けとかつかなくない?」

「それはそうかもしれませんが…」

「まあでも。一応狼たちは喜んでたしいいじゃん」

「主殿がそれでいいのならわたくしはもう何も言いませんわ」


 葵が苦笑しながら掴んだ腕に胸を押し付けてくるので最近ご無沙汰な俺には刺激が強い。

 ちなみに狼たちが喜んでいたというのは別に嘘じゃない。今まで名前なんてもちろん付けて貰ったことなんか無い狼たちは自分を示す言葉があると言うことにことのほか興奮した。だから速攻で自分の名前を覚え、今では呼べば必ずその狼がすぐに反応して寄ってくるようになっている。

 

「でも、結果として一狼達が来てくれて助かったよ。これで留守中の屋敷の警備とかもあんまり気にしなくてよくなったからね」

「過信は禁物ですわ主殿。魔物とは言っても一狼はともかく二狼達はそんなに強い魔物ではありませんわ。ですからちょっと強い賊が攻め込んで来たら…」

「…確かにね。屋敷で訓練したり塔とかに行くときに何頭か連れてったりしたら強くなるかな?」


 俺の問いかけに葵はちょっと首をかしげて考える。


「多分ですが…魔物達も鍛えれば強くなるような気がしますわ。いずれにしてもあの子たちも鈍らせる訳には行きませんから、ある程度の訓練は必要だと思いますわ」

「それはそうか。その辺はちょっと検討しようか。俺の訓練に付き合って貰うだけでも大分違うだろうしね」


 そんなことを話しながらのんびりと歩いて冒険者ギルドへ向かい、ギルドのドアを開けると今日も探索者改め冒険者達で賑わっていた。

 まだ昼前だというのにバーカウンターもテーブル席も冒険者達で埋まり、受付カウンターにも登録希望者の列、依頼受注の列、素材や魔石の買取の列、共にそこそこ長い列が出来ている。

 また二階のアイテムショップとの行き来も盛んなようでどこもかしこも『ザ・繁盛』って感じだった。

 

「フジノミヤ様!」


 冒険者ギルドの喧騒を感慨深く眺めていると俺達に気が付いたらしいウィルさんが人混みを掻き分けて近寄って来る。


「おはようございます。ウィルさん。この度は…」

「あぁ!ちょっと待ってくださいフジノミヤ様。ここでは他人の耳もありますので…」


 そう言ってウィルさんはいつものように俺達を応接室へと案内してくれた。


「今日は珍しい顔ぶれですね。システィナ様も桜様もいらっしゃらないなんて。まさかまだお身体の具合がよろしくないのですか?」

「いえ、大丈夫ですよ。2人共もうぴんぴんしてます。例の件やシスティナが寝込んでた関係で屋敷の方がいろいろと荒れてまして…今日はその辺をなんとかして貰ってます。生活用の魔石も理由(わけ)あって全部使ってしまったので明るい内にやらないといけないもんですから」

「そうでしたか…私の準備した魔石が足りなかったせいでご迷惑を…」

「ちょ、ちょっと待ってください!ウィルさん!今回の件は本当にウィルさんがいなければどうにもならないことばかりだったんです。感謝してもしたりません。本当にありがとうございました」


 魔石の斡旋、大工さん達への救援依頼、ルスター隊長への裏工作、どれか1つ欠けただけでも俺達は全員で生き残れなかっただろう。


「ウィルマーク殿。わたくしは葵と申します。今回の件、本当に感謝いたしますわ」

 

 葵が擬人化を覚えるまでランクを上げられたのもウィルさんが集めてくれた魔石のおかげである。あれだけの種類の属性魔石、さらに上質の魔石をよくも短時間で集めてくれたものだ。葵がウィルさんに感謝しているのは至極当然である。


「いえ。とんでもありません。フジノミヤ様のお役に立ったのならそれで構いません。それに…お仲間が1人増えられたのですね」

「はい。それでまたパーティリングを更新したいと思いまして持ってきてるんですが…その前に。蛍さん、蛍さんからもお礼を言って。ウィルさんが大工さん達を説得してくれなかったら俺達はここにいないよ」

「………」


 俺は右隣に座っていた蛍さんに視線を向けてお礼を言うように促す。


「う、うむ…………こ、今回は本当にた、助かった………にゃん」

「は?」


 ぷ…やヴぁい。やヴぁ過ぎる!首まで赤くなって語尾に『にゃん』を付ける蛍さんとか超サイコー!ギャップ萌える!


「今回は本当に助かった!いろいろとすまんかったな!…にゃん」

「は、はい。お気になさらず」


 ウィルさんが俺に疑問の視線を向けてくる。あの威厳のある蛍さんが顔を赤くして語尾ににゃんをつけて喋るなんて異常事態だから当然だろう。


「くく…あぁ、いや別になんかあった訳じゃないですよウィルさん。蛍さんと桜は今回の暴走行動を反省して自ら罰を受けてるだけですから」


 実はようやく体調が回復してきていた昨晩、今回暴走したことを反省した刀娘達から何か罰を与えてほしいと言われたため2人にとって何が一番お仕置きになりうるかを考えた結果、蛍さんに対してはしばらく語尾に『にゃん』を付けることと…


「くっ!お前もいつまで笑っておる!葵……さん」


 表向き仲の悪い葵を『さん』づけで呼ぶことだった。

 思いつきのようなお仕置きだったが意外とこれは当たりだったかもしれない。 蛍さんのキャラからすれば『語尾にゃん』なんて恥ずかしくて仕方ないだろうし、いつも喧嘩ばかりの葵に『さん』を付けるのも屈辱的に感じるはず。


 そして俺は普通にお願いしても絶対聞けないだろう『語尾にゃん』を堪能し、口喧嘩ではいささか分の悪くストレスを溜めがちな葵の溜飲も下げられる。

 ここに来るまで蛍さんが全くしゃべろうとしなかったのは、しゃべりさえしなければ『にゃん』も『さん』も言わないで済むからなのだが、それを許したらお仕置きにならないので今回の挨拶回りに無理やり連れ出した。


 さすがにお礼を言うべき相手にだんまりでは失礼にあたるので嫌でもしゃべらざるえないという理由で。


 ただ、このお仕置きは桜には意味がない。あの娘はむしろ面白がってにゃんにゃん連呼するのが確実である。

 ならば何が桜にとって罰になり得るかと考えると、これが意外と思いつかない。あ、もちろん体罰系の痛いやつとかは除外ね。見るのもやるのも趣味じゃないから。


 そして、うんうんと唸りながらようやく思いついたのが外出禁止。これは外に出るのが禁止というより、実態としては俺にくっついて出かけるのを禁止するということだ。

 これが思ったよりも桜には効いたみたいで、かなりしょんぼりとした桜を見るのは心苦しかったが、お仕置きなので仕方がない。で、どうせ屋敷に残るならとシスティナの手伝いを強制的にするようにさせた。

 強制はしたくないけど何も言わないと桜は趣味に走るからやむなくではあるけどね。


「…それでは今の蛍様は語尾ににゃんが付くと?」

「そ、そうだにゃん!」

「ふぉ!」


 半ばやけくそになりつつある蛍さんの一撃にさしものウィルさんも一瞬顔を背けて肩を震わせている。喜んでもらえて何よりだ、もう今回のお礼はこの蛍さんの姿を見せただけで充分な気がするくらいだ。





―――――――



「ではパーティリングの代金と生活用の魔石の代金は後程お支払します。今、手持ちがほとんど無くなってしまって…すいません」

「いえ、構いませんよ。フジノミヤ様がお買いになられた魔石や魔法薬でギルドは大分潤っていますし」

「なるほど。確かに大分買い物しましたね」


 その後今回の件のあらましを報告した後、葵の分も含めた5個セットのパーティリングと屋敷で使う火魔石、水魔石、光魔石などの生活魔石を購入した。決戦前に有り金を全部使い切ってしまったので実際に買うのは後でも良かったんだけど、ウィルさんはあっさりと現物を先渡ししてくれた。


 しかも、支払が出来なくて恐縮する俺達にウィルさんは冗談混じりに笑顔を返してくれるイケメンぶりだ。


「それに領主館からは壊滅報酬について支払う用意があると既に連絡が来ていますし支払い能力に関しては全く心配していませんよ」


 そっか、盗賊達の武器こそ全部大工さん達にあげてしまったが、赤い流星が壊滅したことは領主軍のルスター隊長のお墨付きな訳で、壊滅させたのが俺達だってことはすでに証明さているから大金貨50枚という金額の割に支払いまでのプロセスが早いのか。


「わかりました。では報酬を頂いたらお支払いに来ます」

「はい、お待ちしております。ご招待頂いた宴の際には是非もう少し詳しくソウジロウ様の戦いをお聞かせ下さい」

「はは、照れくさいのでシスティナにお願いしておきます。その方が客観的な話になると思いますから」

「おお!そうですか!是非よろしくお伝えください」


 俺の話の何がそんなに楽しいのか分からないが、喜んでもらえるなら少しは恩返しになるだろう。



◇ ◇ ◇

  


「それにしてもまさか追い抜かれるとはなぁ」

「仕方あるまい。奴らは自分たちのペースでやるべきことをやったのだろ…にゃん」


 冒険者ギルドを出て、報酬を貰いに行きがてらルスターさんにお礼を言いに行く道すがら、出がけにウィルさんから伝えられた内容を思い出す。




 




「フジノミヤ様、赤い流星団の壊滅が確定して報酬を受け取りましたらフジノミヤ様達のランクを『E』に上げることになっていますので先にご報告しておきます」

「お、やった。まだ俺達がトップランカーですか?」


 悪目立ちをするつもりはないが自分が冒険者になってみたくて、わざわざウィルさんに冒険者ギルドを作って貰った。

 だったらギルドランクは上げたい!これぞ異世界ライフというものではないだろうか。まあ、別にトップである必要はないので順番はどうでもいいんだが、なまじFランク入りが一番だっただけに気になってしまう。


 しかし、問い返した俺にウィルさんは意味深な笑みを浮かべて首を横に振った。


「っと、誰かに抜かれちゃいましたか。でも最初はみんなGランクですから、差別化を図るためにギルドも実力者は早くランクを上げておきたいですよね」

「そうですね。確かにその通りですが、最速でEランクに上がったのは『剣聖の弟子』の皆さんですよ」

「え!」


 いつの間に!アーリとフレイはともかくトォルに抜かれていたのはちょっとむかつく。


「彼らは依頼の達成数がずば抜けて多いんです。ほかの冒険者がやりたがらないような地味でめんどくさい依頼も、それぞれの得意分野を活かして手分けしてこなしてくれるのでギルドとしてもかなり重宝しています。それに5階層までの探索を毎日しっかりこなしていて、魔石の安定供給という面でも貢献度が高いんです。Fランクには早々に上がっていたのですが、それらの功績を考慮して昨日Eランクへと昇格されました」


 なるほど。確かに立ち上げ当初から塩漬けになるような依頼が出ては困ると思って、依頼をなるべくこなしてくれるようにお願いしてたっけ。

 それを3人は律儀にこなしてくれていたってことか。しかも塔探索も言いつけを守って5階層までをしっかりと探索できるように努力していた……か。


 これは確かに認めざるえないな。俺たちみたいに特殊な事情でポンポンと上がっていくのはどちらかというと邪道だ。


 本来はトォル達がしているように小さな依頼や安全マージンを取った戦闘を積み重ねていくのが正しい。そうして得た冒険者としての経験も、高ランクの冒険者に求められる資質の1つだろう。

 




「今度の宴には弟子たちも呼んでやるか。塔にいたシシオウ達の情報を教えてもらったりしたし」

「うむ。そうじゃにゃん。できれば早めに来てもらって手合せもしたい…にゃん」

「ぷっ…くくく…『にゃん』はもういいよ蛍さん。その様子なら充分懲りただろうし」


 可愛いし、面白いがさすがに違和感がハンパない。とりあえずウィルさん相手に『にゃん』で通したんだから良しとしてあげよう。


「本当か!……助かった。まさか、ただ語尾を変えるだけでこんなにもダメージを受けるとは思わなかったぞ。ソウジロウは恐ろしい罰を考えるな」

「俺もそんなにダメージを受けるとは思わなかったよ。あ!でももう一つの方はまだ継続中だから、そっちは忘れないように」

「ふん、そっちは問題ない。名を呼ばなければよいだけじゃからな」

「う~ん、それはずるい気がするけどまあいいか。とりあずそっちは葵が解除するまでだからよろしく」


 っと、そういえば葵は?こういう話をしてたらいつも突っ込んでくるのに…と思って隣を見てみたら自分のギルドカードとパーティリングを見てにこにこしていた。

 そうだった。今回はめでたく葵も擬人化を覚えたことでギルドに登録することが出来るようになったんだった。


 刀の時にギルドカードやパーティリングのことを大分うらやましそうにしてたから、実際に自分の物が出来て嬉しさもひとしおなのだろう。


「ふん。わたくしは今とても機嫌がいいんですの。だから山猿のことなんてどうでもいいですわ。好きにお呼びなさいな」

「むぅ…」


 葵から『さん』付けも解除された蛍さんだが、あっさり解除されるのもなんとなく癪に障るらしくなんだか不満そうだ。


「まあ、葵が良いって言ってくれてるんだから素直に受け取ればいいよ。蛍さん」

「むぅ……わかった。……ところでソウジロウ」

「ん、何?」

「お前も戦闘中の時のように『蛍』と呼んでくれて構わんのだぞ」


 蛍さんがからかうような笑みを向けている。確かに言われてみればその通りだな。蛍さんは俺の刀術の師匠で俺よりずっと長生き?で経験も豊富で……なんとなく『さん』付けだったけど蛍さんより長生きの葵は葵のままだ。

 なんだかんだで俺が1番リスペクトしてるのが蛍さんなんだから『さん』付けでも構わない気はするけど…


「蛍さんはその方が嬉しい?」

「そうだな、その方が私も嬉しい。お前は常に私達と対等でいようとしてくれるが、私達全員を最後のところでまとめられるのはやはりお前しかいない。ならばほんの少しで構わないから私達の前を歩く者でいてほしい。ま、呼び方などは些細なことだがな」

「たまには山猿も良いことを言いますわね。わたくしも賛成ですわ」


 んっと、つまりは俺にもっと頼れる男になって欲しいということ……か。確かに今の感じだとちょっと蛍さんに頼ってるように聞こえるかもしれない。実際問題かなり頼ってるし。


「うん、蛍の言いたいことは分かった。これからは個人の戦闘だけじゃなく新撰組のリーダーとしても成長できるように頑張るよ」

「うむ、もちろん我らも今まで通り言いたいことは言うし、やりたいことをやる。助言だってする。だがリーダーとしてそれがパーティの為にならないと判断したら……ソウジロウ、お前が力ずくでも止めるんだ」

「ふん。主殿の生活を少しでも早く安全にしたいという想いがあったにせよ、刀としての本能を抑えきれずに暴走したあなたが言うようなことではありませんわ」

「くっ……」


 せっかく格好良く決めた蛍の言葉を葵が台無しにする。だが事実を指摘されているだけに蛍は何も言い返せない。

 結局はあの時、俺が蛍や桜を止められるだけの力があれば、もしくは力に変わるだけのリーダーシップを俺が発揮できていればあの事態は避けられたのかもしれない。とも思うが…


「ほらほら、もうその話はやめよう。それぞれ反省はあるけど引きずるのは良くない。今後同じミスをしなきゃいいんだからさ。ほら領主館に着くよ」



 2人の背中を手で押しながら領主館前まで着くと警護をしている兵士へ、報酬の受け取りに来たということを伝える。

 警護の兵士にはあらかじめ話が通っていたらしく、兵士の1人が館の中へと俺の来訪を知らせに走った。

 そのまましばらく待っていると館の方から遊撃隊隊長ルスターと双子の従者ニジカ、ヨジカが歩いてくる。


「お待たせして申し訳ないなフジノミヤ殿。しばらく体調を崩していたと聞いたがもう大丈夫なのか?」

「ええ、おかげさまで。疲れが出たのかもしれません。久しぶりにゆっくり休むことが出来たので、今はむしろ調子が良い位ですね」

「それは良かった。確かに住まいのすぐ近くに盗賊団がいると分かっていたらゆっくり休むこともできないな」

「はい」


 そんな状況にあった俺達を慮ったのかルスターは苦笑を浮かべる。


「さて、報酬の件だが準備は出来ている。だが、まあ金額が金額でもあるしな。一応うちの領主から手渡すという形になるんだが構わないか?」


 ルスターの苦笑には俺が先日嫌な別れ方をした領主と再び顔を合わせるということに対するものも含まれていたようだ。


「構いませんよ。ルスター隊長には命をたまたま(・・・・)救ってもらった恩がありますから。その節は本当にありがとうございました。今日はそのお礼を言おうと思ってたのもあったんです」

「その件についてはたまたま(・・・・)演習中だっただけだと言ったんだがな」

「それでも。…ですよ。ほら、蛍と葵も」

「ルスター殿、危ないところを助けて頂き感謝いたしますわ」

「私からも礼を言う。領主の意向に逆らってまで動いてくれたこと、決して忘れずにおく」

「お、おう。わかった。じゃあ行くぞ」


 俺達からの立て続けのお礼を受けて居心地が悪くなったのかルスターは鼻の頭を掻きながら頷いて(きびす)を返す。耳がちょっと赤く見えるのはもしかしたら照れているのかもしれない。



 コロニ村の件といい今回の件といい、今後も仲良くしたい人材だと思う。

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