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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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帰宅

帰宅


【前書き】

ちょっと短いです。

そして後日談的なものは4章に回して3章はここで締めたいと思います。


【本文】

「やっと着いたぁ!」

「お疲れ様でした。ご主人様」


 既に日が沈み夕日の最後の残光がかろうじて周囲を照らす頃俺達はようやく懐かしささえ感じる我が家の敷地を守る鉄門扉に到着した。

 武骨な鉄の格子に安堵し思わず叫んでしまった俺にシスティナが肩を貸したまま優しく微笑んでくれる。


「ごか~いも~ん」


 桜にとってもほぼ3日ぶりの帰宅で嬉しいのだろう黒いポニテが気持ちを表すかのように嬉しげに揺れている。


 桜が開けてくれた門扉を抜けて庭へ入る。そのまま屋敷の入り口へ向かおうとするところで後ろを振り返る。


「結局ついてきてしまったな」

「うん」


 蛍さんのどこか楽し気な声に俺は頷く。


 振り返った視線の先、屋敷の敷地と外の境界に立っていたのは……パジオンの狼達を束ねていた灰色狼だった。


「わたくしがテイムした狼達も山へ帰るつもりはないみたいですわ」


 そしてその灰色狼の後ろにも…ええと、に…し…ろ…ぱ…8頭の山狼が随行していた。こちらは葵が火の魔法から守った狼達だろう。

 門は開きっぱなしだが、狼達は許可無く屋敷の中に入るつもりはないようで境界線の向こうからは動こうとしない。


「命の恩人?だしね…人にさえ迷惑かけないようにしてくれれば山で自由に生きればいいと思うんだけど」


 そう、石切場で俺達を襲った強爪熊を倒して俺とシスティナを救ってくれたのはこの灰色狼だった。あの後狼達を安全な場所に逃がした後に近くまで戻って来ていたらしく、気配を消して成り行きを見守っていたようだ。

 どうやら火の魔法から庇って貰ったことに恩義を感じていたようで俺の窮地に飛び出してくれたらしい。この狼がいなければさすがの桜も間に合わないタイミングだった。

 

 だから俺達は葵がパジオンから奪うように支配下に置いた狼達も灰色狼も自由にしてあげようと思った。敵に回るなら殺すしかないが、そうでないなら山に帰ることを止めるつもりはなかった。


 その旨を狼達にきちんと伝えたのだが俺の言っていることの意味が分かったのか分からなかったのか、結局狼達は俺達の後ろをついてここまで来てしまったのである。


 さてどうしたものか…でもわざわざここまでついてきたということは多分そういうことなんだろうな。


「みんな、いいかな?」

「お前の好きにすればいい」

「はい、ご主人様の恩人ですから」

「桜もいいよ。忍犬とか欲しいし」

「わたくしも構いませんわ。もともとわたくしの下僕でしたし」


 うん、おかしな発言もあった気もするがとりあえずは気にしない。

 俺はシスティナから離れ、ちょっとふらつきながらも灰色狼へと近づいていく。狼達は俺が近づいても特に大きな反応は示さずただ大人しくその場に待機している。


 俺は灰色狼の前に座って目線を合わせるとゆっくりと右手を差し出す。


「お前らみんな俺達の仲間になるか?」


「「「「「「「「…………」」」」」」」」


 え?なんでそんなみんな揃って無反応なの?

 ここってなんか手…じゃなくて前脚を出してくるとかOKみたいな吠え声を上げるとかそういうシーンじゃないのか?


 えぇ!もしかして仲間になりたいとかじゃなくて助けたお礼に飯食わせろとかそいうこと?俺って勘違い野郎の赤っ恥ってやつですか?


「ご主人様」

「ん?」


 システィナがこっそりと後ろに来て指先で俺の視線を誘導する。


「…あ」


 くくくっ、顔を見るのに集中しすぎて気が付かなかった。

 俺は痙攣する脇腹を抑えながら狼たちを見て言ってやった。


「お前ら全員、めちゃくちゃ尻尾振ってるぞ。気が付いてるか?」


 ワゥ?


 狼達が慌てて自分の尻尾を見ようとして一斉にくるくると回り始める。そのコミカルな様子を見た俺達は全員が堪え切れずに笑い声を上げる。


 蛍さんはくっくっくとこらえるように、葵はほほほほと口元を抑えながら、システィナは笑っているのを気づかれまいと後ろを向きながら、桜は一匹の狼に抱きつきながらあはははは!可愛い!と叫びながら…


 うん。せっかく異世界に来たんだ。魔物な狼なんていう、こんな仲間がいてもいいじゃないか。


「よし!お前らもみんな中に入れ!そしたら一緒に風呂に入ろう。そんで綺麗になったらみんなで一緒に飯を食う。で、お腹いっぱいになったら……」


 俺の言葉を待ちながら尻尾を振る狼達に俺は笑顔で言う。


「お前らに名前を付けてやる」

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