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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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72/203

システィナの戦い

 葵と視線を交わし互いに頷くと俺はシスティナだけを連れて前線へと向かう。

 戦闘の方は既に大勢は決し、十数名の盗賊達とパジオンが下でフレスベルク軍に囲まれていて高台の上でシャアズとシャドゥラがその様子を見下ろしていた。

 シャドゥラの方は明らかに取り乱しつつあり逃げることをシャアズに進言しているようだがシャアズはニヤニヤと笑いを浮かべながら近づいてくる俺をまっすぐに見ている。


 そんな気はしていたがやはりシャアズはこの状況でも逃げるつもりはないらしい。理由なんて知りたくもないがなぜか俺と戦うことをあいつも決めているということだ。


「おう、来たな。フジノミヤ殿」

「はい。援軍ありがとうございましたルスター隊長。おかげで命拾いしました」


 両軍が睨み合っているのを良いことにフレスベルク軍の中を悠々と通り抜けて遊撃隊隊長ルスターの所まで辿り着く。


「フジノミヤ殿には大層な借りがあったからな。返せて良かった」

「領主は兵を派遣しない方針だったのでは?」

「勘違いしては困るなフジノミヤ殿。我々は郊外に演習に来たところで偶然(・・)赤い流星がフレスベルク領民(・・・・・・・・)を襲っているところを発見し、やむを得ず戦闘になっただけだ」

「……ちょっと苦しくないですか?」

「構わん。所詮は建前だからな。

 私達は危険を侵してでもコロニ村の住民を助けてくれたことを深く感謝している。私の隊にはあの村の出身者がいる。……残念ながらそのほとんどが亡くなってしまったがコロニ村に親戚がいた者もいるのだ…彼女のようにな」

「遊撃隊所属のカレンと申します。私の叔母と姪を助けて頂きありがとうございました!」


 いつの間にかルスターの隣に来ていた若干あどけなさの残るショートヘアの女兵士が目に涙を浮かべながら深々と頭を下げる。


 システィナはたくさんの人を救えなかったことを悔やんでいたがこうして感謝してくれる人達もたくさんいる。それはきっと俺達が村人を救うために全力を尽くしたということを認めてくれているからだ。


「頭を上げて下さい。俺達新撰組は冒険者ギルドの依頼を受けた冒険者として普通に依頼をこなしただけです」

「ふ…ウィルマーク殿が入れ込むのも分かるな。確かに何かを期待させる」

「え?」

「フジノミヤ殿、今回の我々の行動を後押ししたのはウィルマーク殿だ」

「えぇ!!」

「フジノミヤ殿が領主館を去った後、私の所に来て『もしもの場合は兵を動かせるようにしておいて欲しい』と頼まれた。そして、いざという時に動けるように郊外演習の申請を出しておくというのも彼の入れ知恵だ」


 1人残った領主館でそんなことまで…

 ウィルさんには本当に足を向けて寝られないな。俺はウィルさんが思っているほど凄い人間じゃないんだけどな。期待が重い…


「でも、悪い気分じゃない」

「ん?何か言ったか?」

「いえ、なにも」


 だったらほんの少しだけウィルさんの為にも頑張ってみるのもいいかもな。嫁のためが8割で自分のためが1割5分、ウィルさんのためが5分ってとこかね。


「ルスター隊長お願いがあります」









「シャアズ!降りてこい。俺と勝負をしよう」

「ほう?この期に及んで勝負だと?

 このまま押し包んで攻めれば赤い流星はめでたく壊滅だぜ」


 高台の上で1人椅子に座っていたシャアズが立ち上がって俺を見下ろす。


「確かにな。まとめて降伏してくれるならそれが一番ありがたいんだがパジオンやシャドゥラはともかくお前は降伏する気はないんだろう?」

「ふん!良く分かってるじゃねぇか。俺にとっては赤い流星も単なる暇つぶしみたいなもんだ。潰れるなら潰れてくれても構わねぇからな」


 背中の大剣を抜き放ち肩に乗せながらしゃあしゃあとのたまうシャアズにパジオンとシャドゥラは信じられないという顔をしている。2人にとっては赤い流星という組織は大事なものだったのにその頭領たるシャアズがその組織になんの思い入れも無かったことがショックなのだろう。


「なるほどな。お前にとっては世間から恐れられた大盗賊団赤い流星すら暇つぶしのおもちゃだったってことか。

 ディアゴも似たような考え方だったが、間違いなくお前の方が狂ってるな」

「ほう……ということはディアゴをやったのもお前だな?

 スゲェじゃねぇか!ディアゴ、メイザ、そしてシャドゥラにパジオン。お前らだけで赤い流星潰したようなもんじゃねぇか!」


 どうやらあいつの中では既にパジオンもシャドゥラも死んだ者扱いらしい。


「それはどうでもいい。ようはお前に抵抗されると無駄な死人が増えるってことだ。だから俺から提案だ。

 まず下っ端共、今すぐ武器を捨てて降れ。そうすれば殺しはしない。『契約』で縛って強制労働くらいはさせるが死にはしない。死ぬ気で働けば何千日か後には自由になれる可能性も与えてやる。

 だが、ここで降らなかったら今ここで確実に処分させてもらう。降る奴は武器を捨てて両手を上げたままフレスベルク軍まで来て縄につけ」


 俺の提案に生き残った下っ端共は互いに顔を見合わせると1人、また1人と武器を投げ捨てた。シャアズのあのセリフを聞いた後では団に対する忠誠心はもう既にないだろう。

 まずは十数名の盗賊達を無力化することに成功か…本番はこっからだな。


「次にパジオン、シャドゥラ、そしてシャアズ。お前らは何をどうしたって死刑以外の道はない。だが今この場で俺の指定する者と1対1で戦って勝てばこの場は見逃すことを約束する」


 これに向こうが乗ってきてくれれば確実にシャアズと戦える。数で奴らを殲滅しようとすればおそらく少なくない数の兵士が犠牲になる。それではシャアズを討てても素直には喜べない。


 形勢が逆転して圧倒的に追い込まれたこの状況ならやつらもこの話を受けざるを得ないはずで、受けさせさえすれば後は蛍さんと桜にパジオンとシャドゥラをそれぞれ相手にして貰えばいい。


 あの2人はどちらも武力ではなくパジオンは策とテイムした魔物で、シャドゥラは魔法を主体としている。ハマれば無類の強さを発揮するかもしれないが、蛍さんと桜が面と向かって戦うタイマンで負けるなんてことはまずない。

 これなら兵士や大工さん達に犠牲が出ることはない。



「いいぜ。受けてやるよ。俺達の攻撃を凌いだら相手をしてやる約束だったからな」

「決まりだな。お前の相手は俺がする。

 それからシャドゥラの相手は…蛍、頼めるか?」

「任せておけ」


 俺の隣に立っていた蛍さんが口角をあげ物騒な笑みを浮かべる。俺に指名されたことが嬉しいらしい。


「パジオン。お前の相手は」

「待て!待て…待ってくれ!お前らの話は受ける。受けてやるがせめて俺の相手くらいは自分で決めさせてくれ!」

「話にならないな。傷ついた兵士や、兵士に成り立ての者を指名されたら困る。 こっちだって負ければ見逃すというリスクを負っているんだ。お前もリスクを負え」


 桜を指名しようとした俺に向かって土下座をしかねない程の勢いでパジオンが頭を下げているが奴の要望を聞いてやる必要などない。そもそも俺達は3人で100人からの猛攻を凌いでいたんだぞ。それに比べれば甘すぎる条件だろうが!


「分かった!分かっている!だから俺の相手はそこの侍祭でいい。それなら構わないだろう?」


 ていうかこいつもう殺しちゃうか?

 そもそもシスティナはお前のせいで深手を負ったから今日は前線に出ないように命令したのにここでまた無理させられる訳ないだろうが!


「その戦、お受けします」

「な!」


 俺の後ろに控えていたはずのシスティナがいつの間にか前に出てパジオンと正対していた。


「何言ってるのシスティナ!そんな話、受ける必要ない!桜に!ここは桜に任せれば…」

 

 俺の抗議の声は黙って首を振るシスティナに止められた。


「やらせてください」

「でも!」



「やらせてください」

「…………」



「やらせてください」

「……はぁ、わかった。システィナに任せる」


 主の言いなりになりがちな侍祭という職にあってもシスティナには自分の意志を大事にしてもらいたいと常々言って聞かせていたがなんだか良い感じに一皮剥けてきた気がする。

 今回のように俺の言うことに従わないこともままある。もちろんそれはシスティナの我が儘ではない。俺達の為に絶対必要だと思ったことや、どうしても守りたいものがあるときだけだ。

 だから今回もシスティナの中では大事なことだということは分かっている。分かっていてそれでも止めたいのはただ単に俺が心配性なだけなんだが…


「ありがとうございます。ソウジロウ様」


 システィナは意地の張り合いに折れた俺に向かって優しく微笑むと魔断を手にし更に前へと出る。


「くくく…よし!


 い、一応確認しておくぞ!1対1の戦いってことは俺がこの侍祭と戦っている最中は誰も手を出さないってことでいいんだな!」

「ん?…ああ構わない」


 何を気にしているのかは知らないがタイマンというのはそういうものだろう。


 と言いつつも実際システィナが危なくなったら余裕でそんな取り決め無視するけどな!え、卑怯?いやいや盗賊相手に卑怯とかないでしょ。あいつらが今までやってきたことに比べれば可愛いもんだ。


「よし!じゃあ、すぐにやろう。俺と侍祭の戦いからだ!」


 う~ん、何か企んでるっぽいんだけど今のあいつの状況で有効的な策が打てるとは思えないんだけどな。


『蛍、あいつがなんか変なことしてシスティナが危なくなりそうになったらルール無用で介入しろ』

『任せておけ。言われるまでもない』



 システィナに変なことしてみろ。文字通り八つ裂きにしてやる。



◇ ◇ ◇



 ほんの少し前まで雄叫びと悲鳴と剣戟、爆音に満ちていた戦場は先ほどまでとは打って変わり静かな空気が流れていた。

 フレスベルク軍の方では投降した盗賊達を縛り上げたり移動させたりするための指示が飛んでいたりするが、基本的には俺達6人だけを見守るという雰囲気が出来上がっている。

 

 シャアズは相変わらず高台の上から楽しげに俺達を見下ろしている。弟のシャドゥラは高台の真下まで移動して座り込んだまま目を閉じたまま動かない。諦めたのか集中しているのかは分からないが、魔法でも使おうとしようものならすぐに葵から警告が来るはずなのでとりあえず今は放置でいい。


 そして俺と蛍さんはシスティナの邪魔にならないようにやや距離を開けて観戦態勢に入っている。


「それでは始めましょうか」


 パジオンと5メートル程の距離を置いて向かい合ったシスティナが魔断を構えて告げる。


「くくっ…ああ、今からが戦闘開始だ。そしてこれで俺達の決着がつくまで誰も俺達の邪魔が出来なくなった」

「…それがどうかしましたか?あなたを倒すのに誰かの手を借りる必要はありません」


 冷たく言い返すシスティナにパジオンは余裕を崩さぬまま笑いを漏らすと空を舞っていたニードルホークを呼び寄せた。

 テイマーとしてのパジオンが今、唯一使役できる魔物である。


「俺はずっと戦場をこいつの目を通して見ていた」


 確かにニードルホークは俺に襲い掛かってきた1回を除いて常に上空を旋回していた。そのニードルホークの視界を共有していたからこそ俺達を囲むパジオンの対応が早かったのかもしれない。


「それが何か?」

「確認済みだということだ」

「……」


 パジオンの自信の根拠が分からずシスティナが怪訝な表情を浮かべる。


「くくく…ずっと絶え間ない我らの怒濤の攻めに晒されていたからな。気づいていないのも無理はない」

「何を言っているのか分かりませんが、戦闘が開始しているというのならこちらから行きます」

「出来るものか!なぜならお前はあの男と新たなる侍祭契約をしていない!」


「「あ!!」」


「そうである以上、侍祭であるお前は攻撃されれば反撃することは出来るが自分からその力を奮うことは出来ない。それが過分なる力を与えられし侍祭の枷!絶対の法だ!」

「……」


 なるほど…パジオンの自信はそんなところから来ていたのか。侍祭契約を解除したままのシスティナなら自分から攻撃を仕掛けない限り反撃を受けることはない。

 そして戦闘中は外の者は手を出せない。つまりその間にすたこらさっさと逃げ出すことが出来る。そういうことか………うん、なんというかせこいな。

 

「ソウジロウ様…」


 パジオンの自信満々の説明を聞いたシスティナが困惑の表情を向けてくるが、俺としては肩をすくめつつ苦笑するしかない。

 まさか、こんなところで時間稼ぎのために打っていた布石がまた活きるとは思わなかった。


 俺はシスティナに目線だけで『お好きにどうぞ』と伝えるといつでもシスティナの助けに入れるように準備していた身体のギアを1段下げる。パジオンの企みがそれだけのことならばシスティナが不覚を取ることはもうない。


 そんな俺の様子に僅かに微笑みながらシスティナは頷くとすたすたとパジオンへと近づいていく。


「ふはは!隙だらけで近づいてきて俺に手を出させようとしても無駄だ!俺からは絶対に手は出さんからな!

 もちろんこいつにも手は出させない!」


 ニードルホークに攻撃をしないように指示を出しながらゆっくりと後ずさるパジオンとの距離を詰めるシスティナにはなんの躊躇もない。


「ちょ…ま、待て!まさか!…いや!確かにあれは侍祭の主従契約書だった!侍祭の『契約』スキルで現れる契約書で色が付いているのは侍祭契約書の証。 


 確かにお前は黄色い契約書を破棄したはずだ!」


 そう言えばシスティナが今まで出した契約書は俺と契約した時のもの以外は全部半透明の白だった気がする。そんな法則性があったのか……侍祭を欲しがっているだけあって侍祭というものをよく調べているらしい。


「はい。確かにあなたたちの指示に従い私はソウジロウ様との『主従契約』を解除させられました」

「そそそそ、そうだ!だから今お前は契約者がいない状態のはずだろう!だだだからお前から力を使う訳には行かないはははずだ!」

「いえ…問題ありません」

「はぁ…?」

「私とソウジロウ様との本契約は『従属契約』ですので」


 そうそう赤い(・・)契約書ね。


「ば…馬鹿な…じゃ、じゃああの黄色い契約書は?」


 うんうん、主従契約書だね。


「そ、んあ……2重契約なんて聞いたことも」


 だろうね。契約書にも2重契約禁止の項が明記されてたからな。あ、もちろん適当に書き換えておきました。


「私の主は素晴らしい方なんです。あなたたちのような輩が傷つけていいような方ではありません!そんな最高の主との尊い契約を1つとは言え無理矢理解除させられた私の気持ちがあなたにわかりますか?」


 あぁ…そこが今回のシスティナの逆鱗だったのか。確かに疑われずに時間稼ぎをするためにした謂わば仮初めの契約だったけど、俺でさえ解除した時は言いようのない寂しさがあった。となれば契約を重んじる侍祭は俺よりも強い喪失感を感じていたのかも知れない。


「ひっ!じゃ…じゃあ」

「ええ、私は初めてソウジロウ様と契約をした時から一時も欠かさず、もちろん今もソウジロウ様の恩恵を受け続けています。


 …ですので問題なく力を奮えます」


 システィナの剣幕に腰が抜けて地面に腰を落としたパジオンがずりずりと後ずさるのを見下ろしながら目前まで間合いを詰めたシスティナがゆっくりと魔断を振り上げた。


「くくくくそ!やれ!ホーク!この女を殺せ!」


 ヒュドン!!  キュピ!


「あなたの下僕は今潰れましたよ」


 俺でも一瞬見失うような速度で振り下ろされた魔断の槌が再び持ち上げられるとそこには上半身部分をぺったりと地面に張り付かされたニードルホークがまだ無事な両足をぴくぴくとさせていた。


「ひぃ!」


 股間を濡らし、涙と鼻水を垂れ流しながら半分白目を剥いたパジオンには、もう完全に大盗賊団の幹部兼参謀という姿は見る影もない。


「さあ、最後です。あなた方には懺悔の時間すら不要です」

「あ……あ、あが…」


 システィナが魔断を大きく振りかぶる。そしてもういっそ事務的に槌部分を振り下ろす。


 ドォォォォン!!!
















「すいません、ご主人様。あまりにも見苦しかったもので…」

「うん。システィナがそれでいいならいいよ。俺とのダミーの契約1つでそんなに怒ってくれたことだけで嬉しいしね」

「ご主人様…はい!」


 結局システィナはパジオンを殺さなかった。パジオンのすぐ脇に振り下ろされた魔断により小さなクレーターが出来ていたりもするがとどめは刺さなかった。

 パジオンは恐怖極まり、既に泡を吹いて気絶しシスティナの魔断にローブを引っ掛けられて引きずられている。


「取りあえず…それはさっさとルスター隊長に渡してきなよ。どうせ殺されるだろうけどフレスベルクにしてみれば幹部の1人くらいは生け捕りにした方が多分都合がいいだろうから喜ばれるよ。

 一応幹部とのタイマンと殺害の許可は取ってあるんだけどね」

「はい。行ってきます」


 ずるずるとパジオンを引き摺って去っていくシスティナを苦笑と共に見送ると隣にいる蛍に視線を向ける。


「私は生かしておくつもりはないぞ」

「俺にもないよ…まぁシスティナにも無かったと思うけどね」

「ふ、確かにな。あれでは戦う気も失せる」

「今度は大丈夫じゃないかな」


 パジオンの戦いなど全く目もくれずにひたすら目を閉じて座っているシャドゥラを見た。



「さっき葵が教えてくれたんだけど、どうもあれをやってる間は魔力の回復速度が上がるらしい。普通の人はそんなことないらしいからあいつが持ってるスキルなんだろうね」

「ほぉ…ならば魔法が使えずに一方的終わるということはなさそうだ。

 それに本格的な魔法使いと戦うのは初めてじゃな。

 ふむ、ならばちょっと試してみるか。この戦い、私も魔法主体で戦うとしよう」

「ちょっと!過信して油断しないって約束覚えてるよね?」

「分かっておる。我の場合は魔法主体と言っても刀術と組み合わせてあるからな。攻撃方法の主体が魔法だというだけだ。ようやく形になり始めている技も使ってみたいしな」

「ならいいけど…」

「ソウジロウ…我らは本当に後悔して反省している。その気持ちに嘘はない、我らを信じろ」

「…馬鹿だな。言われなくても俺が何よりも、誰よりも信用しているのは蛍だよ」


 それだけは間違いない。もちろんシスティナや桜、葵も信用しているが蛍より僅かに劣る。と言っても嫁達と一般人の間には超えられない壁があるんだけどね。

 俺のそんな言葉を聞いた蛍は一瞬きょとんとした顔をした後、とびきりの笑顔を見せ俺の頭をくしゃくしゃと撫で回した。


「ありがとうよ。ソウジロウ。

 ならば私の心配はいらぬ。自分の戦いに備えて気持ちを整えておけ。あの男はなかなか強いぞ」

「うん、分かった。気を付けて」


「うむ。ではさくっと行ってこよう」


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