表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/203

暴走

「へぇ、じゃあソウ様も暗闇でも見えるようになったんだ」

「それほどはっきり見える訳じゃないけどね。普通に動くのは問題ないよ」

「じゃあさ、じゃあさ!今度桜と夜のお散歩行こうよソウ様。同じ山でもこんな所じゃなくて夜だからこそ綺麗な場所とかあるし、夜の河原とかも月が出てる時はすっごい綺麗なんだよ」

「へぇそうなんだ。それは是非案内して欲しいな」

「うん!約束だからね、ソウ様!」


 俺との約束を取り付けて桜は嬉しそうに頷く。桜は気がつくといろんな所に行っていろいろしているので夜中にいなくなっている時間があることもある。

 俺が起きるまでには必ず戻ってきて布団の中にいるのであまりうるさくは言っていないが、今思えば屋敷の防衛などの為に屋敷の周囲を調べてくれていたのだろう。

 昼と夜では景色の見え方や出没する魔物も変わる可能性もあるのでその辺の調査をしている最中にいろんなものを発見したのか。桜が見つけたものを俺も見てみたいしその約束で桜がこれだけ喜んでくれるんだから行かないなんていう選択肢は存在しない。


 まあ、強いて欠点というかデメリットを上げるとすればその約束をした場所、つまりここだろうか。


「ソウ様、こっちの方は大体拾ったよ」

「了解」


 今俺と桜は2人で洞窟内の確認と始末した盗賊達の装備の回収をしている。当然足下には死屍累々の屍がある訳で、とても夜の逢い引きデートの約束をするようなシチュエーションではない。

 ちなみに夜目の効かないシスティナは蛍さんと一緒に入り口付近で外の警戒中である。


 俺は身につけたばかりの夜目のスキルを使ってまた1つ足下の盗賊が持っていた武器を回収する。就寝中だったため防具は身につけていなかったようで近くに置きっぱなしになっているがどれも質が悪そうで苦労して持って帰っても高くは売れなそうだった。そう言えば武器も妙に質が悪い気がする。まあ、盗賊団の下っ端がそんないい武器を持っている訳もないか。


「そう言えば寝込みを襲ったせいかもしれないけど盗賊達も弱かったかも」

「まあ、この暗闇で桜に寝込みを襲われたら普通の人は瞬殺されて当たり前だと思うよ」


 ぽろりと漏らした俺の感想に頷いて首をかしげる桜に思わず苦笑する。確かに凄腕のリアルくノ一にどんどん成長していってる桜にしてみればさぞ簡単過ぎる任務だっただろう。


 その後もそこら中を簡易鑑定しながら掘り出し物がないかを探ってみたが結局特にめぼしい物はなかった。盗賊のアジトと言えば集めた財宝みたいな物があるんじゃないかとちょっと期待もしてたのにそれらしい物も全くない。


 一応小部屋にいた盗賊達も調べてみたがこっちも似たり寄ったりだった。念のために4人共身ぐるみ剥がしてみたが身体の何処にも刺青は無かったのでシャアズ、シャドゥラ、パジオンの残った幹部のうちの誰かということはなさそうだった。


「桜、とりあえず集めた物は部屋の入り口辺りに置いておこう。どっちにしろ今は持って帰れないし、日を改めて取りに来ることにしよう」

「うん。……でも死体をこのままにしておくのは良くないと思う」

「え?」

「多分血の臭いを嗅ぎつけて魔物が寄ってくる。ここは距離的には屋敷とさほど離れてる訳じゃないから面倒なことになるかも」

「魔物が下まで降りてくる可能性が増す…か」


 確かにむせかえるような血の臭いが充満している。放っておけばいずれ洞窟から漏れ出した臭いは周囲に広がるだろう。そして魔物が集まり屍肉を漁る。綺麗に食べてくれるだけならそれでもいいが充分な餌を得て魔物が強くなっても困るし、中途半端に食べ残した物が腐って変な病気をまき散らされるのも嫌だ。


 加えて魔物が屋敷まで来る可能性の上昇…これは桜の言うとおり放っておくのは危険過ぎる。


「燃やすか」

「うん、それがいいと思う。幸い篝火用の油はそこに置いてあったから集めてぶっかければ洞窟内でもなんとかなると思う」

「分かった。じゃあ俺は通路の死体を持ってくるから桜はこっちの準備をよろしく。集めた物はもういっそ洞窟の外まで出しちゃおっか」

「だね。じゃあもう一頑張りしちゃおう!」



 


「ちょっと明るくなってきたね」

「はい。思ったより後始末に時間がかかってしまいました」


 洞窟から漏れる煙を横目に明るくなってきた空を眺める。


「火をかけるのはやむを得なかったとは言え夜が明ければこの煙は残りの盗賊達の眼につくだろうな」

「そうだよね。煙までは考えてなかったよ。ごめんねソウ様」

「いや。火をかけるのは間違ってないよ。本当は土系の魔法が使えれば埋めちゃえば良かったんだろうけど俺達は使えないし、死体をそのままにするデメリットの方が大きい以上は次善の策を取るしかない。むしろそのままにすることが危険だってことに気づかせてくれたんだから逆にお礼を言いたいくらいだよ」


 どうせ遅かれ早かれこの洞窟が全滅したことは赤い流星に知れてしまうからそれはさほど問題ではない。ただここを潰した相手が誰かということを考えた時に俺達の事が早い段階で犯人候補に挙がると推測されるのが問題だった。

 多分赤い流星が考える犯人候補は 1.領主軍、2.俺達、3.その他 って感じのほぼ2択だろう。


 そうなるといよいよ屋敷は危ない。本当に街への避難を考える時期かもしれない。今回の夜襲までがぎりぎり許容出来たリスクだと思う。悔しいけどこれ以上は危険を犯せない。


「ねぇ…」

「し!」『声を出すなソウジロウ!』


 蛍さんの厳しい制止。何かあったか?とりあえず座り込んでいた体勢からすぐに動ける体勢にゆっくりと変える。

 ほんのり明るくなってきた周囲を夜目スキルも駆使して見回すが俺の眼には何処にもおかしいところはないように見える。


『まずいな、見つかった。2、3…4人か。ん?1人が…

 …となると、むしろ好都合か?』「ソウジロウ!システィナ!走るぞ!ついてこい!」


 ちょ!ちょっといきなりだな!と思いつつも即座に反応して動き出せる自分がちょっと怖い。

 突然走り出した蛍さんの後ろをほぼ同時に動き出したシスティナと並んで走る。方角としては俺達が洞窟を見下ろしていた場所とは反対側の方角で更に山に登っていいくような方向だ。


 少しは明るくなってきたとは言っても周囲はまだちょっと薄暗い。システィナの足元には注意してあげる必要があるがなんとか夜目がなくても動けるくらいにはなってきているのでなんとかついていくことが出来そうで良かった。


 そしていつの間にか桜は蛍さんよりもずっと前を走っている。本当にいつの間に!と言いたくなるような機動力である。

 


「蛍さん!どういう状況!」

「気配を4つ感知した。そして1つはおそらく洞窟からの煙を見て既にこの場から離れつつある」

「洞窟の状況を他の盗賊達に報せに走ったということですか?」

「おそらくな。残りの3つは様子を見るためかこの場に残りそうな感じだったが、儂らが走り出したのを見て今は最初の1つと同じ方向に走っているようだ」

「なるほど…って状況は分かったけどどうするつもりなの!」

「うまく行けば一気に片がつく。まず逃げる3人を討ち、報告に走った1人を追う。そいつがうまく残りの盗賊達の所へ案内してくれればやることは先刻と同じだ」


 いやいや同じじゃないでしょ。今回のことは相手にこちらの存在が発覚していないということに加えて一方的に奇襲がかけられるからこそ踏み切った作戦だ。

 既に明るくなり始めたこの時間帯。盗賊達が目覚め始めていてもおかしくない。仮に初撃こそうまく奇襲出来たとしてもせいぜい倒せるのは魔法を駆使しても30人前後がいいところだろう。

 その後目覚めて態勢を整えた盗賊50名以上相手に正面からぶつかるというのは作戦でもなんでもない。


「蛍さん!それは無茶だ!姿を見られた4人を追って仕留めるのはいいけどその先は駄目だ!」

「なぁに任せておけ。儂と桜がいればなんとでもなる」

『山猿!主殿の言うことを聞くのですわ!いくらあなたと桜が強くても主殿とシスティナさんは人間なんですのよ!流れ矢がうっかり一本当たるだけでも取り返しのつかないことになりかねませんわ!』

「ふん!そういうのを年寄りの冷や水というのじゃぞ葵。盗賊ごとき何人いようともソウジロウ達を傷つけさせなどせぬ。自由に動けぬお前はしっかりとソウジロウを守っておけばよい」

『く!あなたは!だからこそ!わたくしが自由に動けぬ身だからこそ動けるあなたが主殿の盾にならなければならないのですわ!わたくし達にとっては主殿が全て!それに優先するものものなどありませんのよ!どうしてそれが』

「ええい!うるさい!わかっておる。だからこそソウジロウに仇なす盗賊共を一掃する必要があると言っておる」



 くっ!駄目だ!蛍さんが止まらない。とにかく今は逃げている4人を始末するのが先だ。4人を始末した後なら少しは話し合う余裕があるはず。

 場合によっては身体を張ってでも蛍さんを止めないと…

 

 仮に今回、蛍さんの言うとおりにうまくことが運んで盗賊達を殲滅出来たとしても毎回そんなことがうまく行く筈がない。刀娘達自身が刀としての闘争心をコントロール出来るようになって貰わなきゃ困る。とりわけ刀達のリーダー格である蛍さんがこれではまずい。今後刀娘達が増えたとしても蛍さんの一声で全員が無謀な行動を取りかねない。

 幸いというかなんというか飾られている期間が長かった葵はその辺りのことが良く分かっているようで助かったけど、いかんせんまだ人化が出来ない状態だと口だけで蛍さんを止めることは出来ないらしい。


「システィナ。今の蛍さんは止まらない。追いかけてる賊達をうまく倒す事が出来たら2人を力尽くでも止める」

「…はい」


 隣を走るシスティナに小声で話しかけるとシスティナが固い表情で頷く。

 俺達2人がかりでも蛍さんにはかなわないというのはシスティナも分かっている上に、暴走気味の蛍さんにちょっと怯えているのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ 小説1巻~3巻 モーニングスターブックスより発売中 コミックガンマ+ にてコミカライズ版も公開中
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ