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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第1章

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6/203

「じゃあ,そろそろ寝ようか」


 思いがけない展開で想像以上に夜更かししてしまった気がする。時間が分からないので実際にはどうだが分からないが。


 でも明日からはまた馬車に揺られての旅が始まる訳で休めるときに休んでおかないと身体がもたないだろう。


「はい。ではご主人様は馬車でお休みになってください。私は見張りをしていますので」


「え!あぁそうか。見張りは必要か…じゃあ俺が見張りをするからシスティナは休んでいいよ」


 さすがに女の子1人を残して俺がぐーぐー寝ている訳にはいかないだろう。途中で交代するにしてもシスティナが先に見張りをすると俺に気を使って起こしてくれない気がするし,交代制にするなら俺が先番だろう。


「ソウジロウ。見張りは私がやってやろう。今日はお前ももう休め。


 おそらく自分が思っている以上に疲労しているはずだ。そこの娘も一緒でいい。どうせ我らには睡眠は必ずしも必要なものではないからな」


「そっか…確かに蛍さんが見張ってくれるなら安心だよね。じゃあお言葉に甘えようかな」


 正直蛍さんの申し出はありがたい。実は大分身体が重く感じてきていた。

 重力が弱いこの世界ですら身体が重く感じるということはかなり限界が近いと考えた方がいいだろう。


「ご主人様よろしいですか」

「なに?システィナ。見張りの件だったら蛍さんが代わってくれるみたいだから俺たちは休もう」


 欠伸を噛み殺しつつ馬車に向かう俺にシスティナは不審な眼を向ける。


「ご主人様。今日出会ってから度々耳にするのですが蛍という方はどこにいらっしゃるのですか?」


「え?」


 システィナは何を言ってるんだろう。蛍さんはいつだって俺の腰にいたのに…

 ああそっか。まさか刀がしゃべるとは思ってないから声はすれども姿は見えずって感じなのか。


「ごめんごめんまだ紹介してなかったよね。俺の腰にあるこの大太刀が名刀蛍丸。蛍さん。

 で,こっちの小太刀が桜ちゃん。俺の家族みたいなもんかな」


「…はい。それはわかりました。ですがそれと見張りをしなくて良いというのはちょっと」


 え…ちょっと待って。もしかして…


「もしかしてシスティナには蛍さんの声が聞こえてないの?」

「あの…武器は普通喋らないと思うのですが…」


「蛍さん!聞こえてる?」

「ああ,聞こえている。?どうやら私の声はソウジロウにしか聞こえていないようだな」

「どういうことだと思う?」

「どうもこうもあるまい。この世界の知識に詳しいこの娘が知らないと言っているのだから,理由があるとすればこの娘も知らないというお前の職業が関係しているのではないか」

「なるほど…≪顕出≫」


 もう一度自分の窓を出して自分のステータスを確認してみる。


『富士宮 総司狼   業 -3

 年齢: 17

 職 : 魔剣師 

 技能: 言語  読解  簡易鑑定

     武具鑑定  手入れ  添加錬成  精気錬成  

 特殊技能: 魔精変換』 


 言語と読解は分かった。次は『簡易鑑定』…指定を求められた気がする。じゃあとりあえず『馬車』。


牽引車ラーマ 定員8名 耐久34』


 なるほど…窓と違って脳内に浮かんでくるのか。そして馬車は広義では牽引車か。


 じゃあ今度は蛍さんを『簡易鑑定』『蛍丸』


『蛍丸 ランクS+』


 さすが蛍さんすげぇ!S+ランクとか!何段階評価か分からないけどかなりの高

品質ってことは間違いないでしょこれ。


「あの…ご主人様?なんで急に窓をお出しに?」

「あぁごめん。システィナには聞こえないみたいだけど俺は蛍さんと会話が出来るんだ。それがもしかしたらなんかの技能のせいなんじゃないかって思って」

「喋るんですか?武器が」


 システィナがおとがいに手をあてながら考え込む。


「…あり得るかもしれませんね。魔剣師…魔剣・師ですか。

 普通なら魔・剣士ですが魔剣士は魔法と剣を使う者の複合職…ご主人様の技能はそちらよりもむしろ鍛冶師等の職に見られる技能と名前が似ています」

「あ!確かに。錬成とか鑑定とかそれっぽい」

「ご主人様,武具鑑定は使用してみましたか?」

「まだかな。簡易鑑定はしてみたけど」

「ではお願いします。私の仮説が正しければそれで謎が解けると思います」

「了解」


 うん,システィナも頼りになるなぁ。ていうか蛍さんもシスティナも平凡な俺に比べてスペック高すぎてちょっとへこむ。


『武具鑑定』『蛍丸』


『蛍丸  

 ランク: S+  錬成値(最大) 吸精値 0

 技能 : 共感  意思疎通  擬人化  気配察知  殺気感知

      刀術  身体強化(人化時) 攻撃補正  武具修復  光魔法』


「あ!」

「すいません読み上げて貰えますか」


 鑑定結果を見られないシスティナのために蛍さんのステータスを読み上げていく。

 それにしても蛍さんのスペックたけぇ~!魔法まで使えるとか。


「S+!…神器級ですか。しかも叡智の書に反応がないとは…世に全く出ていなかったということでしょうか?…とりあえず今はそのことは脇に置いておきましょう。

 ご主人様の武器の鑑定結果を見て確信しました…ご主人様の職は特殊な武器達と意思を交わし,その武器をさらに強く鍛えることのできる職だと思われます」


 ほほう…それはまさしく俺にぴったりな職だな。神の言ったとおりだった。

 ついでに


『武具鑑定』『桜』


『桜  

 ランク: D+  錬成値 33  吸精値 47

 技能 : 共感  気配察知  敏捷補正  命中補正  魔力補正』 


 うん,桜ちゃんもなかなか。技能も能力補正がたくさんついててかなり使い勝手が良さそうだ。でも意思疎通の技能がまだないのか…だから桜ちゃんとはまだ話せないんだな…残念。


「魔剣師の職にある人は『共感』や『意思疎通』の技能を持つ武器と会話することができるようですね」  

   

 システィナの言葉はどこか興奮しているようだった。おそらく『叡智の書』が発現してからのシスティナにとって知識と言うのは全て自分の内にあるもので外から得られる新しい知識はなくなっていたのだろう。

 知らないことを知ることが出来るというのは嬉しいことだと思う。システィナが俺と契約したいと言った理由の中に俺と一緒にいれば叡智の書では分からないような新しいことを知ることが出来るかもしれないという願望もあったのかもしれない。


 ならばシスティナのためにも俺のためにも更なる知識を追求すべきだろう…ただしこれは諸刃の剣だ。

 俺はこの2分の1の賭けに負けたとき正気を保てるかどうか自信がない。だが俺の大いなる野望のためにも試さなければなるまい。


「蛍さん。蛍さんの技能の中に『擬人化』っていうのがあるんだけど…使ってみてくれませんか」

「ほう,それはなにか?この私が人のような姿になれるということか?」

「た…多分」


 言ってしまった!今までの雰囲気や口調から大丈夫だとは思うがこれで擬人化した蛍さんがむっさいおっさんだったり,700歳相当のお婆さんだったりしたらそれでも俺は蛍さんを愛せるだろうか…


「ようは先ほどソウジロウが窓とやらを出した時のように,己の内に意識を向け唱えればよいのだろう?

 ソウジロウ,私を抜いてそこへ置け」


 あ,そうか腰で擬人化されたらなんか訳わからないことになりそうだしな。


「よし。いくぞ…『擬人化』」


 こくり…俺の喉が緊張で音を立てる。システィナも好奇心満々でガン見している。

 そして俺の目の前で見慣れた蛍丸のフォルムが一瞬歪んだように見えた瞬間,そこに蛍さんが立っていた。


「ほう…これは面白い。これが人か」


 自分の五指を握り,開き,顔に触れ,腰に触れ,脚を上げる。その度に腰まで伸びたスーパーストレートロングヘアの黒髪がふわりふわりと揺れる。

 そしてそれ以上に二つのダイナマイツなものがたぷんたぷんと…そして魅惑の三角地帯までも!


「よっしゃぁぁぁぁあぁ!俺は賭けに勝った。勝ったぞぉぉ!」


 力いっぱいガッツポーズをする俺。これで俺は一生蛍さんを愛せる!


「な…凄い…本当に武器が人になるなんて。今日だけで私の知らないことがこんなに…」


 呆然と蛍さんを見ていたシスティナがふと何かに気づきこほんと咳払いをする。


「ご主人様。とりあえず着るものを」

「…はい」


 システィナの目が怖い。すぐさま馬車の中に何か探しに行こうとすると蛍さんに肩を掴まれた。


「いらん。ソウジロウ,私の鞘をよこせ」

「鞘?はい,どうぞ」


 俺から鞘を受け取った蛍さんは鞘を握って目を閉じる。すると鞘がふっと消えてなくなり,次の瞬間蛍さんが着物に包まれていた。

 

 着物と言ってもごついものではなく薄手の長い物で胸元を大きく開き肩の端っこに引っ掛けるように着こなしているため胸がかなり大胆にはみ出している。足元も動きやすいようになのか真ん中が広めに開いていてすべすべそうなふとももが半分以上見えている。


「ま,こんなものかの。さて…ソウジロウ」


 自分の姿を見下ろし頷くと蛍さんが俺を見て手招きする。

 俺は魅入られるようにふらふらと蛍さんの近くに吸い寄せられていく。


「うぶ!」


 ふぅおおおおおおおおおお!こ,これが桃源郷か。や,やわらけぇ!


「ふむ…これがソウジロウなのだな…暖かい,柔らかい…うん。人の身体と言うのは良いものだな」


 二つの爆乳に埋もれるように抱きしめられたまま聞こえてきた蛍さんの言葉になんとも言えない嬉しさが湧き上がってくる。


「俺も…こうして蛍さんと触れ合えて凄い嬉しいよ」


 それにしても蛍さんは大きいな。いやいや胸じゃなくて,いや胸も大きいけどまず背丈が大きい。

 普通に立ったまま抱きしめられて俺の顔が胸に埋まるんだから,多少わざと埋められてる感はあるけど190㎝近いんじゃないだろうか。

 でも全体的には細身で普通に立ってても威圧感はなく綺麗な印象だけが残る。その印象としてはまさに抜身の大太刀蛍丸を見ている時の感じに近い。


「さて,と…」


 ひとしきり俺を抱きしめ,いろんな場所を撫で回した蛍さんは満足したのか俺を解放した。


「さっきも言ったが今日は私が見張りをしておいてやる。ソウジロウとそこの娘はもう休め」

「…む~。わかりました。ではお願いいたします。蛍様」


 蛍さんをどこか羨ましげに眺めていたシスティナも限界が近いのだろう。素直に蛍さんの提案を受け入れる。


「蛍さん,本当に1人で大丈夫?桜ちゃん渡しておこうか」


 人化してしまったことで武器がなくなってしまったのではと思っての提案だったが蛍さんは笑って首を振る。


「いらんよ。ほら」

「おお!アメージング!」

「若干硬度は落ちるようだがその程度はなんでもない。私の使い方は私が一番よく知っているからな」


 蛍さんが手を振るとその手に確かに蛍丸が握られていた。握られているというのとはちょっと違うか…手と刀は一体化していて刀だけを外すことは出来ないっぽい。

 つまり人の身体と刀まで全て合わせて一本の蛍丸なのだろう。


「分かった。本当はもっと…いやいい。これからはずっと一緒だしな,焦ることもないよね」

「その通りだ。焦る必要はない。お前がしたいと思っていることはまた落ち着いてからでいいだろうよ」

「え!いいの!」

「せっかく人の身体を得たのだ。私も興味があるしな。ただ私とて女じゃ,それなりの時と場所を準備してくれ」

「ごくり…りょ,了解!」

「うむ,ゆっくり休め」

「ありがとう蛍さん。システィナ行こう」


 システィナの背を押して馬車へと向かう。頭の中は既にピンク色だ。あの蛍さんの細くて豊満という我儘な…いかん!今はまだ早い。ここで暴発する訳にはいかない。

 煩悩退散!


 このままじゃ興奮して眠れないんじゃないかと思っていたが馬車に潜り込んで床に敷いた布の上に横になり薄い毛布を掛けるとすぐに眠気が襲ってくる。やはり疲れているのだろう。


「ご主人様。隣へ行きましょうか?」


 システィナが控えめに聞いてくる。俺がスケベそうな顔をしていたのを気にしてくれたのだろう。そしてシスティナは房中術持ちだ!そして俺はご主人様。一言システィナに命じれば術の粋を尽くしたご奉仕が…

 いか~ん!いきなりそんなことしたらシスティナに嫌われてしまう。

 ここは大人の余裕を見せるべきだろう。今でなくてもいい今でなくても。大事なことだから2回言った。もちろん今じゃないけどいつかは…


「あぁ,無理しなくていいよ。今日は1人でゆっくり休んで」

「…嫌です」


 拒否権発動された。

 システィナがゆっくりと隣に潜り込んでくる。何故だ!風呂に入った訳でもないのにかぐわしいシスティナの香り。

 理性の箍ががたがたと音を立てて緩んでいくのがわかる。


「ご主人様」

「え?」

「あの…わ,私も!ご主人様と従属契約を交わした以上覚悟は出来てます。

 蛍様だけじゃないですから…忘れないでください」


 嫉妬…してくれてたのか。なんて可愛い!

 俺はシスティナの首の下に手を回すと自分の懐へと引き寄せて抱きしめる。


「あ,あの!ご主人様が見たぼ,房中術ですけど…あ,あくまで知識を学んだだけで実践はまだ一度も…

 だからあの!私もそれなりの時と場所を用意していただけると嬉しいです」


 ぐは!もうなんかリア充が溢れてる!ビバ異世界!俺の人生は今日から始まった!

 よし!ちょっとだけ双子山関を…


「…ってもう寝てる」


 安心しきった顔でくうくうと可愛らしい寝息を立てるシスティナのおでこに軽く唇を這わせると俺は満ち足りた気分で睡魔に全てを委ねた。



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