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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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フレスベルク領主

「おお!君は確か新撰組の!……すまん、名前は何と言ったかな」

「そう言えばパーティ名しか名乗ってませんでしたね。失礼しました。私は新撰組でリーダーをしている。フジノミヤ ソウジロウと言います。

 その節はお疲れさまでした。いつお戻りになられたのですか」

「いや、問題ない。私も名乗っていなかったからな。私は領主軍で遊撃部隊の隊長をしているルスターだ。よろしく頼む。

 引継があったので私が戻ったのは昨日だな。君たちのおかげでいろいろ助かった。改めて礼を言う」


 ウィルさんに連れられて訪れた領主館の中庭で出会ったのはコロニ村への討伐隊を率いていた隊長だった。あの時は鎧などの装備に包まれていてよく分からなかったが私服のルスターは細身のナイスミドルでくすんだ金髪を短く刈りそろえたイケメンである。


「いえ、あくまで依頼に基づく仕事ですから」

「ふむ、フジノミヤ殿は随分と奥ゆかしいのだな。探索者は富と名誉を追い求める職だと思っていたが」


 貧しない程度に暮らしていけるだけのお金は欲しいが別に地位や名誉はいらない。だがそれを敢えて伝える必要もないので曖昧に笑って誤魔化しておく。


「ルスター様。本日はこれから赤い流星の件についてセイラ様との面会の予定があるのですが、話しの内容によっては3部隊の隊長全てに招集が掛かるかも知れません。

 出来れば今しばらく領主館にいて頂ければ」

「なんと!あの外道共の件で何か進展があったのか!ならば招集を待つまでもあるまい。私も同席させてもらおう。

 ウィルマーク殿がそこまで言うならば遅かれ速かれ招集もかかるだろうし、近衛隊長と強襲隊長にも呼び出しをかけておこう。ニジカ、ヨジカ2人で手分けして2人を呼んできてくれ」


 ルスターが自分の後ろに控えていた少年2人に声をかけると年の頃13、4のよく似た顔立ち、というか似過ぎているから双子かな。その双子が「はい!」と元気のいい返事をして走り去っていく。


「ルスター様の今の従者ですか?」

「ああ、この前までの従者はなんとか見れるようになったからな近衛と強襲に配置換えだ」

 

 ウィルの問いにルスターは微笑みながら答え、走り去っていく2人を見送る。


「彼らのところはなんと兄弟が9人もいてな…あの2人も口減らしの為に売られようとしていたところを私が預かった形だ。

 だが、双子故に連携して戦うとなかなかいい戦いをする。情に任せて引き受けてしまったが結果として良い判断だったと思っている。あと1、2年鍛えればいい戦士になるだろう」


 フレスベルク領主軍は現在大きく分けて3隊で構成されている。


 領主館と街の警護を主とする近衛隊。

 外敵や魔獣などに積極的に攻撃をする強襲隊。

 そして、臨機応変に支援や攻撃を行う遊撃隊。

 これとは別に領主を護衛する親衛隊が数十名いる。


 親衛隊を覗くそれぞれに隊長が付いており、その3隊と親衛隊全てを統べるのが領主である。そして3隊の隊長は各自数名の従者を付けることになっていて行動を共にしながら兵士としての心構えや敵を打ち倒すための武術を教えていく。

 そしてある程度成長したらその隊以外の隊へと配置換えがされる。そうすることで若手の育成と3隊の間で確執が産まれない様に工夫がされているらしい。


 同じような力のある団体が複数あればだいたい行き過ぎた競争心や功名心から仲が悪くなりそうなものだが、こうして各隊長が育てた兵士が他の隊に行くことで3隊間の繋ぎになり3隊で1つの軍だという認識が出来ているようだ。


 先ほどのルスターの対応を見てもそのシステムはどうやらうまく機能しているようである。


「さぁ、フジノミヤ殿にウィルマーク殿。私がセイラ様のところまで案内しよう」


 そう言って歩き出すルスターの後ろに俺達はついていく。


「フジノミヤ殿、もし良ければパーティメンバーの方達に部屋を用意させるが?」

「いえ、今回の件には彼女達も大きく関わってますから一緒の方がいいと思います」

「そうか、コロニ村の時といい優秀な仲間のようだな」

「はい、かけがえのない仲間で家族のようなものですから」


 ルスターは俺の言葉を聞いて破顔一笑すると「我が隊も同じだ」と言っていた。さっきの双子の話といいきっといい隊なんだろう。


「さ、ここだ」


 ルスターは2階の奥にあった大きめの扉の前で立ち止まるとなんの躊躇もなく扉を開ける。


「遊撃隊隊長のルスターだ。冒険者ギルドのウィルマーク殿とフジノミヤ殿をお連れした」

「ルスター殿!あなたはまた!セイラ様の執務室に入るときはまずノック!しかるのち許可があってから扉を開ける様にと何度も言っているではないですか!」


 おお…ドアが開くと同時に物凄い剣幕で綺麗なおねいさんが飛んできた。どうやらリュスティラさんと同じ長耳族らしく尖った耳が淡い緑がかった線の細い長髪の隙間から覗いている。

 館の中のせいか防具は身に付けていないが腰に細剣レイピアを下げておりこの世界にエルフという種族はいないらしいが、いたとすればまさにエルフの女騎士という言葉が相応しいだろう。


「ミランダ。構いませんよ。急を要する報告の場合もあるでしょう。形式にこだわって大事なことがおろそかになってはそれこそ愚かなことです」

「ですが!……いえ、仰る通りです。失礼いたしました」


 ミランダと呼ばれた女騎士が脇に下がるとようやく開けた視界の奥、執務机に座っていたフレスベルク領主が金色の髪をふわりとなびかせながら立ち上がった。


 執務室はなんか校長室のような感じで、正面奥に大きな執務机があってその後ろは壁一面本棚になっている。執務室の前には応接セットが置いて有り来客に対応出来るようになっている。


「フレスベルク領主セイラ・マスクライドです。ようやくお会いすることが出来ました」

「初めてお目にかかります。冒険者のフジノミヤ ソウジロウです」

「はい、優秀な冒険者だとウィルマークから聞いています。

それにコロニ村への偵察という緊急依頼をこなしてくれた上に賊の殲滅、生存者の救出までしてくれたことも報告を受けています。

 あなたがたに領主として深い感謝を。本当にありがとうございました」


 年齢は20代前半だろうか、領主というには随分と若い領主であるセイラは執務机を回り込み俺の正面に立つと頭を下げた。かがんだおかげで僅かに空いた胸元に視線を送るとそこには深い谷間が垣間見え、領主が女であるとがわかる。

 名前からそうかなぁとは思ってたけどやっぱり領主は女だった。


「いえいえ先ほどルスター隊長にも言いましたが私達は冒険者として仕事をしただけです」

「はい。私も領主として感謝をしただけです」


 おう、こりゃ一本取られた。伊達に女の身で領主なんかやってる訳じゃないってことか。細くてグラマーな金髪美女ってだけじゃ領主がは務まらないか。ただ惜しむらくは服装が男物の騎士服みたいな物を着ていることか。女性らしい服を着ていればさぞ眼福だったろうに。もちろん男装が似合っていないということではないんだけどね。


「あぁ、すいません。そんなところに立たせたままで。こちらへおかけください。何か重要な話があるということで既に連絡を受けています。ルスターが一緒なのもその辺の事情なのでしょう。

 ミランダ。エマに言って何か飲み物を」

「承知しました」


 ミランダが一旦部屋を出ていき、俺達は領主に勧められるまま応接セットに座る。セイラとルスターは領主側ということで並んで俺達の対面に座っている。

 う~ん俺の地球での厨二知識的には普通部下の人ととかって隣に座らないんじゃないだろうか。


「さて、まずはお話の前に先日の緊急依頼の件に関しまして依頼以上の働きに対して追加の報酬を支払いたいと思っているのですが何か希望などありますか?」


 ああ、そう言えばウィルさんも追加で報酬出るかもって言ってたっけ。最近はお金にもあんまり困ってないしすっかり忘れてた。


「何か?と言いますと金銭以外にも選択肢があるということですか」

「そうですね。金銭以外にお渡しできるようなものですと食器や絵画などの芸術品の類や私の方で保管している武器や防具、魔道具、魔石、様々な素材などでも構いません」


 おぉ…ウエストは細いくせに太っ腹だなセイラさん。そうなるとさてどうしようか。確かにお金は今のところそんなに困っていない。まだ今日渡した盗賊の武器分の賞金もまだだし。

 あ!そうだ。システィナの叡智の書庫で無いと言われてるから無理だと思うが領主という立場なら知ってることもあるかもしれないからあれ聞いてみるか。


「例えばなんですが手持ちの道具とかを謎空間に収納できるような魔道具とかってないですか?」

「謎空間…ですか?確かにそんな物があれば便利ですね。でも残念ですがそのような物は聞いたことがないですね。すいません」

「いえ、構いません。無いのは分かってましたから。それではローブ的な防具で良い奴はありませんか?」


 この前の塔での戦いでシスティナが血塗れになっていた姿を思い出してもう少し全身の防御力を上げてあげたいと思っていたので聞いてみる。リュスティラさんの作ってくれた胸当ては優秀な装備だけど部分的だからね。


「わかりました。確かいくつかあった気がしますのでお帰りになるまでに確認しておきます」

「ありがとうございます」


 俺が頭を下げたところでミランダとお盆に飲み物を乗せた侍女が入って来てテーブルにグラスを置いていく。そのついでにミランダがルスターの足を蹴飛ばしてセイラの斜め後ろに立つ。

 やっぱり本来は隣に座ったりはしないらしい。


「それではまずは私の方から概要を説明させていただきます」


 メンバーが揃ったのを見計らったウィルさんが話を切り出した。


「なんと…夜襲を撃退しただけならず、わざと賊を逃がしてアジトまで案内させるとは。新撰組の技量の高さももちろんのことだが、そちらの斥候スカウトの技量が素晴らしいな。我が隊の斥候に是非欲しいところだ」


 ウィルさんから改めて塔での情報と昨晩の夜襲からアジトの発見までの報告を受けてまず反応したのがルスター遊撃隊隊長だった。


 桜の場合は斥候というよりは忍者なので微妙に意味合いが違うのだがこの世界の人でその違いが分かるのはシスティナだけなので敢えて訂正する必要はないだろう。

 ちなみに1人逃がすためにわざとクナイを外して壁に突き立て、盗賊達の足場にしたのも桜の判断だ。


「お褒め頂いてありがとうございます。ですが桜もうちには欠かせないメンバーですので」


 誉められて「えへへ」と照れている桜の頭を撫でながらルスターの言葉にやんわりと釘を刺しておく。引き抜きなんて無いとは思うし強権を使って奪いにくるようなら徹底抗戦してやるが面倒ごとは出来れば避けたいので引き抜きは無理だということをはっきりと示しておく。


「なに、心配するな。もちろん分かっている。だが何かの機会にうちの斥候達に指導をお願いするくらいは構わぬだろう?」

「そのくらいであれば。ただ、今は屋敷の警備等で人手が足りていませんのでこの件がうまく片付いたらで良ければ」

「ありがたい!我が遊撃隊は斥候次第なところも多い。優秀な斥候の育成は常に急務でな」


 確かに遊撃隊の役割からすれば素早い周囲の索敵と情報収集は必須能力だろう。刀補正のかかった桜に指導を受けても普通の人間が真似できるとは思わないが気配の消し方や音を立てずに素早く動くための歩法などのさわりを教えて貰うだけでも知らなかった時とは全く違う世界が広がるはずなので後は本人達の努力次第だろう。


「となれば後は赤い流星を討伐するだけだな。フジノミヤ殿達のおかげで山中のアジトが発覚したのならば討伐隊を編成して攻め込めば良かろう」


 討伐に前向きなルスターがうんうんと頷きつつやる気を漲らせているいるが、俺はこの話が始まって以降考え込んだまま言葉を発しない領主セイラが気になっている。とてもルスターと同じように討伐に前向きな雰囲気ではないと思えたからだ。


「フジノミヤ様達が入手して下さった情報があれば大盗賊団である赤い流星を殲滅もしくは壊滅的な打撃を与えることが出来ると思います。そのためには領主軍の協力が必要です」


 考え込んだまま反応を返さないセイラにウィルさんが再度協力を要請する。ウィルさんにしてみればどうしても盗賊団を倒す必要性が有る訳ではないだろう。

 フレスベルクが襲われでもすればここにはベイス商会の本店があり、場合によっては被害を受けるかもしれないがベイス商会本店は街の中心近くにあり100名程度の盗賊が襲ってきたところでそこまで到達することはないだろう。


 盗賊が来た混乱に乗じて暴徒と化した一般人が商会を襲うと言う可能性も無い訳ではないがベイス商会が雇っている私兵を一般人がどうこうできるとは思えないし、なによりベイス商会の大工さんたちはゲントさんを筆頭にほとんどが戦える大工さん達である。


 迂闊に手を出せば痛い目を見るのは襲った方になる。そう考えればウィルさんは多少街の外周部が襲われたところで自分自身は全く痛くない。それなのに討伐に前向きなのは自分が精魂こめて作り上げた冒険者ギルドに今の段階でケチを付けたくないのが1つ。

 もう1つは自分たちが売った屋敷に住む俺達が今盗賊達の標的にされつつあることを憂う気持ちがあるのが1つ。

 後は、ガチ推ししてる俺達なら討伐戦においても活躍してくれるのではないかという期待。俺達の熱烈なファンであるウィルさんは俺達が活躍する話が大好物なのだ。


 だが裏を返せばウィルさんの動機はそれだけ。むしろ外周部だろうがなんだろうがほんの1部でも襲われたら大きな被害を被るのは領主であるセイラの方で積極的に盗賊団を討伐したいはずなのだが。


「お話はよく分かりました。まず赤い流星の小隊とそれを統率する幹部を討伐して頂いたこと、アジトを突き止めてくださったことに重ねて感謝いたします」


 再びお礼と共にセイラが頭を下げる。しかし下げた頭が戻ってきたときそこにあった眼はとても厳しいものだった。


「ですが、フレスベルクとしては赤い流星討伐のための兵を出すことは出来ません」

「え…」


 きっと良い返事を貰えると思っていたウィルさんが固まっている。俺も驚いてはいるが可能性としては半々かと思っていたのでそれほど驚愕している訳ではない。


「一応、盗賊団に襲われるかもしれないという今の状態を維持するという理由をお伺いしてもよろしいですか?」


 なんとなく理由の方は分かってはいるが領主として出兵を見送った理由を本人から聞いておきたい。


「……そうですね。わかりました。

 まず第一にまだ街が攻められると決まった訳ではないことです。これはあなた方の功績ですが、幹部を2人とその部下であった者達が倒され相手の戦力は目に見えて減っています」

「セイラ様。コロニ村の盗賊たちを忘れてはいけません。あそこでも30名近い盗賊達をフジノミヤ達は倒していますな」


 いつのまにか俺を呼び捨てにしているルスターが自分も関わったコロニ村の件をセイラに伝える。


「そうでしたね。それも合わせて赤い流星は当初噂されていた200と言う構成員が半減しています。フレスベルクの街の規模から考えれば100名程度で襲撃をしてくるとは考えにくい。

 それでも念のため近衛隊と強襲隊から人員を割き、足りない部分には冒険者ギルドに依頼をして冒険者達にも協力してもらって外周警備をしています。

 こうして油断はしていないという姿勢を見せることで襲撃の危険性を更に下げられていると考えます」


 確かにその通りだろう。そもそもフレスベルクの街には多分何万、何十万という人がいる。それだけの規模の街を100名程度で襲うのは普通に考えれば無謀以外のなにものでもないだろう。

 ただ、それをやるからこそ赤い流星の悪名はこれほどまでに鳴り響いているのだろうが。


「2つ目はアジトの場所です。

 斥候役として優秀なそちらの方が山に入ってからアジトへと辿り着いたまでの道のりから考えるとかなり奥深いところにあるようです。

 盗賊達がこの山に入ったのは最近ではありますが、自分たちのアジト周辺の地理を把握しないままということはないでしょう。

 そんなところへ山の中の行軍などしたこともない領主軍がのこのこ入っていったところで力を発揮できずに大きな被害を出す可能性が高いと思います。

 極論を言えば私はアジトに辿り着くまでに全滅する可能性すら想定しています」


 やはりそうか…桜から話を聞いて考えてはいた。アジトというだけあって大勢で攻めるに適した立地じゃないと。それに加えて領主軍が山での戦い想定した訓練をしていないとなると…

 奇襲というアドバンテージはまず活かせないだろうな。移動中にまず100%盗賊に発見される。発見されてしまえば何らかの罠が仕掛けられている可能性もあるし、数の利が活かせないなら森での戦闘にも慣れているだろう盗賊達には適わない。

 それならばいっそ蛍さんが言うように俺達だけで奇襲を仕掛けた方がまだ可能性がある。


「すまんフジノミヤ。あの光景を見た俺としては犯人である赤い流星をボロボロにしてやりたかったのだが…」

「いえ、領主様が仰っていることは間違っていませんから」


 ルスターへの返答は本心だが、ちょっと意外だったのはあれだけ討伐に前向きだった遊撃隊隊長がセイラの見解を聞いてなんの反論もしなかったことだ。

 これはルスターがセイラの判断に信を置いている証拠である。まだ若い上に女の領主ということでお飾りの領主という可能性も考えていたがどうやら領主としてまた指揮官としての能力も充分なものがあるらしい。


 コンコン


「強襲隊隊長ガストン、近衛隊隊長ヒューイです」


 結局討伐隊は出せないと結論が出されたと同時に執務室のドアがノックされルスターが呼んでいた残りの隊長が到着したらしい。

 セイラは当然来ることを知らないので目線でルスターに問いかけるとルスターは自分が呼んだと頷きを返す。


「なるほど…確かに知っておいて貰った方が良いかもしれませんね。2人とも入って下さい」


「失礼します」

「……………」


 扉が開いて入ってきたのは凄まじく体格の良いまさに巨漢と言った感じの強面の男と、もう1人は対照的に病的な程に細い体格をして長い髪を顔の前まで垂らした柳のような男だった。


「ガストン、ヒューイ。先日から懸案になっている盗賊団の関係で進展がありましたので簡単に説明します」


 セイラはそういうと先ほどまでの話を要点をまとめて説明し、やはり討伐隊は出さないという結論を2人へと伝えた。


「いつ襲われるかも知れないという状況が続くと部下達に精神的な負担がいずれ出てくると思います。現状維持という方策自体に反対はしませんが長引くようならばそういった事態に対する対処もよろしくお願いしたい」

「分かりましたガストン。明日からは遊撃隊の休暇も終わりますので警護に出る兵士達のシフトを組み直して負担を減らして下さい」

「はっ!」


 大きな方がガストンか。セイラの指示に頭を下げるその姿勢や言葉遣いから大きな身体の割に几帳面で真面目な男らしい。


「ヒューイは何かありますか?」

「…………………」

「外周部の警護だけでなく領主館内の警備をもう少し強化させて欲しいそうです」

 

 ぱっと見で某テレビから出てくる○子のような雰囲気のヒューイは無口なのではなく声が小さいだけらしい。すぐ近くでそれを聞き取ったガストンがヒューイの言葉を代弁している。


「盗賊達による領主暗殺、そしてその混乱に乗じての襲撃を警戒しているのですね。わかりました。


 ミランダ、私の傍付きの親衛隊を常時2名に増やして下さい。親衛隊は全員解除の命あるまで領主館での生活を命じます。親衛隊は館内で侍女か親衛隊に案内されていない見知らぬ顔を見つけた場合問答無用で拘束を許可します。


 ヒューイ、近衛隊から選抜し敷地内と敷地周辺の警護にあたってください。しばらくは庭師等の出入りも禁止しますので同じように不審者は拘束して構いません」


「………」

 

 ヒューイの髪がゆらゆらと揺れる。どうやら了解の意を示したらしい。っていうか怖いから!


「ルスター。各隊の支援を頼みましたよ。詳細はこの後3人で詰めて下さい。ガストンはその結果を要点だけで構いませんので簡単な報告書にして私まで提出。

 では、3人はこれで退出して構いませんのですぐ取りかかって下さい」


「分かった」

「はっ!」

「………」


 セイラに言われ席を立ったルスターは「すまんなフジノミヤ。おちついたら一杯奢らせてくれ」と笑顔で言い残し2人の隊長の背中を押しながら執務室を出て行った。






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