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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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メイザ

「まさかこんな辺鄙な場所にある屋敷に暇つぶしに来て、あたしの部隊が全滅するとは思わなかったねぇ」

「屋敷の住人を皆殺しにして金目の物を根こそぎ奪うつもりの行動が暇つぶしですか?」

「趣味と実益を兼ねた立派な暇つぶしだと思うがねぇ。あんたがこの屋敷の主人かい?」


 右手に持った長目の細剣で自らの肩を叩きながらいやらしい笑みを向けてくるメイザ。年はまだ20代後半ってところだろう。そこそこ整った顔立ちはすれ違う男性の半分くらいは振り向かせることが出来るかもしれない。


 スタイルの方は上半身は鱗甲冑スケイルアーマーで隠されて分からないが甲冑のふくらみからなかなかのサイズがあるっぽい。ウエストは引き締まっているし甲冑からぶら下がる草摺から伸びる白い太ももはむっちりとしていて大変おいしそうに見える。


「そうですね。一応名目上は私がこの屋敷の主ということになりますね」


 一番偉いのは蛍さんで屋敷内を掌握してるのはシスティナで屋敷を本当の意味で守っているのは桜だが対外的には俺の屋敷ということになっているから間違いではないだろう。


「へぇ…若く見えるのに対したもんだ。で…」

「くっ!」


 言葉を切ったメイザから突然叩きつけるような殺気が飛んできて思わず苦鳴を漏らす。なんて殺気……人を真っ二つに出来る技量といいやはりこいつも強い。


「ディアゴを殺ったのはあんただね」

「!………」

「とぼけたって無駄だよ。あんたが持ってるのは獅子哮だろ。さっき気弾も使ってたしね。

 それは戦うコトにしか興味が無かったディアゴが唯一大切にしていたもんだ。手放す訳がないんだよ。それをあんたが持っているってことはディアゴはあんたに殺されたってことさ」


 いやいや、あいつ生きてるし。まあ窓を書き換えたからディアゴという名前の人間を消したのは俺になるのかもしれないが。


 それにしても…やっぱり獅子哮は売っておくべきだったか?すくなくとも赤い流星との決着が着くまでは装備を控えた方が良かったかもしれない。兄姉達にディアゴの仇討ちとか言って興奮されてもぶっちゃけ良い迷惑だ。


 そもそも、そんだけ大事にしてたもんをほいほい寄越すんじゃねぇって話だが、リアルなカメ○メ波に目がくらんで装備をしていた俺にも責任はあると言えばある。

 だってせっかく異世界に来たのに魔法とか使えないって悲しすぎるだろ!魔法を込めた魔道具ですら魔力が外に出せない俺には使えない。ちょっとくらい不思議力を使った遠距離攻撃に憧れを抱いても許されるはずだ!


「意外ですね。仇討ちでもしたいとかですか?」

「はっ!笑わせんじゃないよ。あたしら兄弟にそんな絆はありゃしないさ。その獅子哮はいい武器だろ?売れば良い稼ぎになると思ってたんだよ」

「は?」

「だがディアゴの奴がなかなか隙を見せなくてねぇ…

 本当なら力尽くで奪っちまうのが一番手っ取り早いんだが、あの戦闘馬鹿が相手じゃこっちも無傷じゃすまないからね。

 搦め手から攻めようとして毒や女を使ってもうまいこと部下を盾にされてねぇ…」


 そう言えばシシオウが言ってたな…


『俺の兄姉たちは筋金入りの悪だから気をつけな』


 弟が1人で戦って手に入れ、大事にしていた物を高く売れそうだからという理由で実の姉が殺してでも奪おうとするとか確かにいろいろ終わってるな。


 ま、元家族の家に強盗に入って息子を殺害する父がいてそれを躊躇いなく殺害した俺が言えることでもないが。


 それにしてもよくこれで盗賊団としての体裁を保てるもんだ。いや……保ててないから部隊ごとに勝手に動いて各個撃破されてるのか?


 多分今までは各部隊ごとの統率が取れていたことと部隊のトップであったディアゴやメイザの実力が抜きんでていたから好き勝手に動いても問題なかったってことか。


「悪いですが渡すつもりはありませんよ。そもそもあなたのような人を逃がすつもりもありませんし」

「確かにねぇ…あんたらはそこそこ強いみたいだし3対1じゃ勝ち目はなさそうだよ」

「じゃあ降伏しますか?もちろん領主軍に突き出しますのでその後どうなるかの保障はありませんが」

「それは勘弁して欲しいねぇ。そこでちょっと賭けをしないかい?」

「賭け…ですか?」

「ああ、あたしとあんたとで1対1で勝負しようじゃないか。あたしが勝てばこの場は見逃しておくれよ」

「私が勝ったら?」


 俺の問いかけにメイザはニヤリと口角を上げると空いている左手で鱗甲冑の胸の部分を下から押し上げる。どうやら鱗甲冑は柔軟性もあるらしくその動作に合わせてなかなかなサイズの肉の塊が持ち上げられている。


「あたしはあんたのモノになるよ。好きにしてくれていい。性奴隷として扱うならどんな行為も受け入れるしやれと言われたことは何でもする。

 あんたも綺麗どころを3人も手元に置いているくらいだそっちもイケるくちだろ。あんたの取り巻きに比べりゃあたしなんか足元にも及ばないが好きなように使える肉便器が一個くらいあってもいいだろ?」

「ちょっと待ってください!そんなのこちらにはほとんど利がありません!そもそも勝ったからと言ってあなたのような盗賊が言葉通りに言うことを聞く訳がないでしょう!」


 俺が何か返す前に魔断を構えたシスティナが一歩前に出る。言っていることはまさに俺の代弁だ。

 メイザの要求は俺が肉欲魔人であることが前提だ。だが俺は決して肉欲魔人では……ないよな?


「ふん、あんた侍祭だろ?」

「な!」


 意表を突くメイザの指摘にシスティナの勢いが止まる。侍祭とその契約者であることはこの世界ではかなり意味のあることで恩恵も大きいが面倒ごとを背負い込む可能性も高いため基本的に周囲には明かさない様にしている。

 おそらく他の侍祭や契約者も同じようにしているんだと思う。なぜならこれまで俺達以外のコンビに出会ったことがない。もともと数も多い訳ではないとシスティナは言っていたがそんなに希少でもないと言っていたからやはり悪目立ちをしないように気を付けていると考えられる。


「そんなに驚くようなことじゃないさ。だいたいあんたら侍祭ってのは契約者に依存する傾向があるからね。見てればなんとなく分かるのさ。 

 まぁ確かにあんたはちょっと分かりづらい感じだったけどねぇ」


 それはシスティナが他の侍祭とは契約の内容が違うせいだろう。他の侍祭のように力の行使の条件に『契約者のためのみ』という制限がなく、絶対服従を強いられてもいない。


「だから、勝負がついたらあたしを『契約』でがっちがちに縛ればいい。そうしたらあたしはあんたらに逆らえばどっちにしろ死ぬことになる。

 いつでも殺せるなら楽しんでから殺しても同じことだろ?」

「私達にはそんなもの必要ありませ「いいですよ」ん!…え?」


 システィナが振り返って俺の顔を見る。


「その賭けを受けてもいいですよ。あなたが私に勝ったらこの場は見逃します。だけど私が勝ったら私の好きなようにさせて貰います」

「ようし!決まった。あんたは侍祭じゃないみたいだが主の言うことには従うんだろ?」


 メイザは俺の言質を取ったと思ったのか即座に話をまとめにかかる。侍祭であるシスティナは契約者である俺には逆らえないと思っているからシスティナに確認を取った訳ではない。

 メイザの右手側でことの成り行きを見守っていた蛍さんへの確認だ。


「そうじゃな。我が主がそう決たのなら儂も否応はない」


 そう答えた蛍さんは刀を消して腕を組むと近くにあった木に寄りかかって傍観を決め込む。口元が楽しげに弧を描いているのは俺の良い修行になるとでも思っているのだろうか。


「後でもう1人が戻って来た時にはそっちから説明しておくれよ。勝負の最中に後ろからバッサリは嫌だからねぇ」

「ええもちろん。勝負が着くまでは手出しをさせません。まあ、私が殺されるようなことがあればどうなるか分かりませんが」

「ああ、わかってるわかってる。この場でそんな無茶はしないよ。ただ真剣を使った勝負だからね多少の怪我は覚悟して貰うよ」

「それはそうでしょうね。構いません」


 俺は改めて閃斬と葵を構え直すとゆっくりと息を整える。相手は女と言えどディアゴまでもが悪党と言い切った相手である上に腕も立つ。全力で戦わなければ死んでもおかしくない。


 静かにゆっくりとだが戦いへと集中していく。それに伴い頭の中が冷えていく……そうか!光圀モードっていうのは極度の集中で精神が研ぎ澄まれ感情や意識が完全に戦闘のみに向かった状態なのか。


 集中の過程で急に理解した。今までは非道な奴らに対しての怒りを収めるために無理やり心を落ち着けようとして自然と光圀モードへ移行していたから良く分からなかったが今ならなんとなく分かる。


「はん!さっそくやる気だねぇ。男はそうでなきゃ」


 視界の中でメイザが淫蕩な笑みを浮かべつつ長細剣ロングレイピアの先端を俺へと向ける。突きが主体かのような構えだがさっき人1人を上段から断ち割っている。突き技だけを警戒する訳にはいかないだろう。


「では行きますよ」

「ふん、おいで。ぼ・う・や」



 メイザの挑発にかぶせるように間合いを詰めた俺はまずは右手の葵を振り下ろす。メイザは細身の剣で受け止めることを嫌い一歩下がってそれを避けるが俺は更に踏み込んで左の閃斬を横薙ぎに振るう。

 この流れは俺が両手で武器を扱う練習をしていくうちにもっとも動き安かった動きである。同じ相手に何度も使うと動きが読まれる可能性はあるが初見の相手との立ち上がりには一番動き安い動きで入りたい。


 メイザは俺の動きが思ったよりも速かったのか僅かに表情を強張らせたが閃斬の軌道の下に伏せるようにしゃがんで攻撃をかわすと俺の足元から長細剣を身体の中心にめがけて突き出してきた。


 くっ!一番避けづらいところにそんな角度から…


 俺は振りぬいた状態の左手を獅子哮ごと長細剣に上にから叩き付けつつ後ろに下がったが通常の武器よりも長い武器である長細剣の剣先が僅かに胴をかすめる。幸い勢いは削がれていたため俺の魔鋼製の鎖帷子を抜くことは出来なかったがちょっと肝が冷えた。

 メイザはその流れに乗って俺に対して突きを主体とした連続攻撃に入った。たまに隙を見てこちらからも反撃をするのだが苦し紛れの一撃はいとも容易く受け流されてしまう。


 今までのメイザの態度から戦い方も大雑把なものをイメージしていたが実際の戦い方はどうもちがうようだ。攻撃に関しては力技も持っているみたいだが長細剣という耐久性が低そうな武器を使っているせいか、受けに対しては驚くほど繊細で無理に打ち合うことをせず回避や受け流しを使用する傾向が強そうだ。


 突き主体の速い攻撃が残像を伴って襲ってくるのを俺は必死になって凌ぐ。だが全てを凌ぐことは難しくメイザの長細剣は俺の防御をすり抜け二の腕や太ももの肉を裂いていく。


 くそ!俺も毎日のように蛍さん達と修行してそこそこ動けるようになってきたと思っていたのに、そこはやはり平和な地球の日本育ち。中学を卒業するまで武器を持つことも無かった俺と生活のために武器を持ち戦い続けてきたこの世界の人達ではもともとのスタート地点が違う。

 自前の身体能力と強い武器があるからこそなんとか戦えているに過ぎない。メイザの絶え間ない猛攻に晒されながら思わず脳内で愚痴をこぼす。


『そんなことありませんわ主殿。主殿の武技は戦国の世の武将達にも決して劣るものではありません!もっと自信をお持ちになってください!

 あなたは3年もの間、あの無駄に長いだけの山猿を振り続けていたではありませんか。こちらに来てからも乱暴な山猿にどれだけ打たれても折れなかったではありませんか。その身体に残る幾多の痣とこの固くなった手の平は主殿を裏切りませんわ!』

「葵…」


 思わず伝わってしまった俺の愚痴に葵が逆ギレ気味に励ましの声を掛けてくれる。葵もまた蔵の中から俺のことを気にかけてくれていた。そしていつか俺に使って欲しいと思っていてくれたのかもしれない。

 そして少なくとも刀を振り続け、何度も豆が破れ、いつのまにか固くなってしまった手の平を葵は認めてくれている。嘘か真か過去の持ち主やその周りにいた武人達に俺は負けてないと言ってくれる。

 さすがに女にそこまで持ち上げられてしまったら男として弱音なんて吐いていられない。この勝負結果は分かっているがどんな形でもいい。葵に格好いい所を見せてやりたい。


『主殿なら勝てますわ。わたくしも協力致します。2人であのいけ好かない女をぶちのめしましょう!ですわ』


 サンキュー葵!


 葵に強く背中を押された俺はメイザの怒濤の連突きをなんとか2本の武器で捌ききったタイミングで反撃に出る。これまで攻め続けて息が切れかけていたメイザは無理にとどまろうとせず一度間合いを取り直すべく下がる。そのメイザを追いかけるように前に出ながらまずは…


「はっ!」

「ぐ!…ちぃ!」


 獅子哮による気弾でメイザの胴体を撃つ。至近からの一撃に加えて下がる途中だったメイザはそれを避けることが出来ず腹部に命中する。

 鱗甲冑があるため大きなダメージは入らないだろうが衝撃は伝わる。その衝撃は下がるために後ろに傾いていた重心を更に押し込んで助長することになり俺との距離は開いたが体勢を大きく崩している。


 好機!メイザが体勢を立て直すまでに間合いを詰め切れば俺の勝ちだ!葵の間合いまでは後3歩ほど。メイザが体勢を立て直すよりも俺の方が速い。


 1歩 メイザはまだよろめいている。

 

 2歩 ようやくメイザの右足が地面を掴んだ。思ったより立ち直りが速い。


 3歩 葵を振り下ろそうとして視界の先のメイザが突きの体勢にあるのを見て失敗に気付く。


 しまった!俺も振り下ろしではなく突きでいくべきだった。どうしても刀は『斬る』武器だという意識が強すぎて俺の動きのパターンの中には突きに関する動きが少ない。だが何が起こるか分からない戦いの中ではやはりそういった偏りがあるのはよろしくない。

 『斬る』を主眼においた戦い方を追求していくのは問題ないが、だからと言って突きを覚えなくて良いという訳ではない。


 くそ!間に合わない!どうする?避けるか?ええい!行ってしまえ!!


 俺は半ばやけくそな気分で葵を振り下ろすことに集中する。集中力は切れていない。不十分な体勢から放ったメイザの突きは俺の正中線からは逸れている。首から上にさえ刺さらなければなんとかなる!そしてそこへの攻撃はまずない!


 あつっ!


 右の脇腹付近に熱を感じたと思った瞬間、『貫通したな』と漠然と理解したが今は後回しにして右手に持った葵をしっかりと振り下ろし…


 ギャリン!


 耳障りな音をたて葵が鱗甲冑を斬り裂いた。


「ソウジロウ様!」


 後ろからシスティナの声が聞こえて一瞬遠のきかけた意識を食い止める。

 視線を落して俺の腹を見ると半ば程まで貫通した長細剣が見える。そこを通り越し地面を見ると鱗甲冑からはがれた鱗を周辺にばら撒き、見事な胸を白い肌と赤い血のコントラストに染めたメイザが仰向けに倒れている。


「く……まさか、全く引かないとはね…」


 メイザが薄ら笑いを浮かべつつ1人呟く。


「ソウジロウ様!今治療します。まずは剣を抜きます」

「がっ!」


 俺が躊躇う隙すら与えてくれずにシスティナが長細剣を抜く。抜いた剣はその辺に置いておくと怖いのでこちらに近づいてくる蛍さんに向けて投げたようだ。

 剣が抜かれるとそれに釣られるように体内の血があふれ出ていく。それを見て思わずふらついてしまった俺をシスティナは抱き止めつつ回復術を行使していく。

 現状システィナの肩を借りてようやく立っている状態な俺だがシスティナが回復術を使いだすと出血はすぐに止まり痛みも引いて来たのでようやくメイザと話す余裕が出来た。


「や…くそくだ。あたしの身体は好きにしな。まぁ…弱った女を犯すのが好きだとか言うんじゃなければあたしも傷だけは塞いで欲しいんだけどねぇ」

 

 メイザは冗談めかしつつ妖艶な笑みを浮かべてはいるが傷は浅くない。治療をして欲しいというのは本心だろう。


「ソウジロウ様?」


 俺の治療を終えたシスティナがメイザを治療するかどうかを目線で問いかけてくる。メイザの身体を賭けて勝負したのだから死んでしまっては意味がないと思っているのだろう。

 だがそれはシスティナのはやとちり、早合点、勘違いというものである。俺はシスティナに対して小さく首を振って治療は必要ない旨を伝える。

 システィナは小首をかしげて不可解な顔を見せたが頷いて了承の意を返してくれた。


「まだまだだなソウジロウ」


 そこへ離れて様子を見ていた蛍さんが到着する。もちろんシスティナが投げた長細剣もちゃんと持ってきている。


「うん、結構戦う前から押されてた部分もあるし実際に戦ってみて相手の技量の高さにまだまだ及ばない自分にテンション下がったりもしたしね。

 葵が発破かけてくれなかったらちょっとやばかったかも」

「精神面もちょっと鍛えなくてはならんな。戦い方もあれでは先が思いやられるぞ」

「だよね…まず突き技を後回しにしてたことと焦って勝負を急いだことは反省かな…」

「後は気弾を多用するのもやめておけ。あくまで切り札にしておく方がいい。あれに頼りすぎると他の技術が伸びなくなるやしれん。

 気弾を混ぜた戦い方の修練は必要だが実戦で使うかどうかはまた別だと心得よ」

「ん、分かった。気をつける」


「ちょ…ちょっと待ちなよ…あんたら一体なに…を」


 傷ついたメイザをほったらかしに反省会を始めた俺達をぽかんと眺めていたメイザだが流血と共に薄れていく意識にやばいと思ったのか痺れを切らせて話しかけてくる。


「ソウジロウ様。もしかして…」


 俺と蛍さんの反省会を聞いていたシスティナが「あっ」と可愛く声を漏らした。


「多分正解。メイザが持ちかけた賭を利用して実戦の練習をね」

「な!…なんだ…て…一体どういう」


 メイザが驚きに目を見開くが既に起き上がる元気もなく視線だけを俺に向けてくる。


「何で俺がお前みたいな女に欲情すると思ったのか知らないけど、お前の賭けは俺にとって都合が良かったから乗らせてもらった」

「ど、どういうことだい!」

「そうだね…まだ桜も帰ってこないし説明してあげるか。つまり…」


 俺がメイザに説明したのは簡単な理屈だった。


 まず、それを思いついたのはメイザの勝利条件がこの屋敷から逃げ出すのを見逃して貰うことだったからだ。メイザはこの条件にしてしまったことで勝負の中で俺を殺すことが出来なくなった。なぜなら俺を殺してしまえばいくら当事者同士で賭が成立していたとしても蛍さんとシスティナがメイザを見逃すことはまずあり得ないからだ。そのくらいは2人に愛されていると自惚れてもいいはずだ。


 その辺の事情はメイザも分かっていたと思う。だからメイザのベストは俺を動けなくなるくらいまで痛めつけて負けを認めさせて俺の治療をしているうちに脱出することだろう。

 仮に俺に負けてたらどうするつもりだったのかというのは推測でしかないがメイザが性奴隷に落ちても死ぬよりマシと思っていたか、そっち系が大好きでむしろばっちこい状態のビッチだったか……もしくは侍祭の契約を破棄できるなんらかの裏技を持っていたか。その辺りじゃないかと思う。


 つまりメイザにとっては勝っても負けてもさほど損のない賭けのはずだった。メイザが誤算だったのはただ一つ。



 俺がこの上もなく怒っていたということだった。



「な…なにがそんなに気にくわないってんだい!確かにあたしは多少年はいってるが身体には金を掛けてきた。自慢じゃないがそこの女達より技術も上だ。一度抱いてくれりゃ腰が抜けるほど証明してやるさ!」

「違うんだよなぁ…確かにあなたの身体は綺麗ですよ。認めます。普通の男と女として誘惑されたらほいほい着いていったと思います」


 俺の言葉にメイザが安堵して表情が緩む。


「じゃ、じゃあ試しに一度だけでも」

「だから!…違うんですよ。もう俺はあなたを女どころか人としてすら認識出来なくなってきてるんですよ」

「え…」

「だってそうでしょう?

 俺の大事な人達をあなたは『楽しんだ後は確実に殺せ。綺麗な女だったら顔は潰せ』って手下共に指示したんですよ」

「ひ!…ぁ…」


 俺の顔を見上げていたメイザの顔が恐怖に染まる。失礼なやつだ。別に威圧をしている訳でもないのに…ただ俺はお前が言っていた言葉を思い出しただけ。そしてそんなことを言う奴を許せる訳がない。蛍も桜もシスティナもかけがえのない俺の大事な人だそれを弄んで殺した上に顔を潰せって?……そんなふざけた寝言は死んでから言え!


「だから、命の危険がない賭を受けて俺の訓練相手になってもらったんですよ。ただし俺が勝っても負けても生かして帰すつもりは全く有りませんでしたけど」

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