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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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44/203

コロニ村攻防戦

残酷な描写があります。

 戻ってきた桜は詳細の報告は移動しながらするとのことで俺達は再び夜道を走っている。話をしながらだと俺とシスティナは足下が不安なので蛍さんと桜が俺とシスティナの手を引きながらの低速走行である。


「そうすると、盗賊団の本隊は既に村にいないってこと?」

「うん、桜が偵察した感じだとせいぜい20人程度かな」

「それでも盗賊団としてはかなりの規模です」


 もともと3桁を超えるような盗賊団が形成されるなんてことはまずあり得ないらしい。なぜならそれだけの配下を満足させるだけの稼ぎを1つの盗賊団が稼ぎ出すことはまず無理だから。

 街道を通る商隊をちまちま襲うくらいではせいぜい10人~20人規模がせいぜいだろう。その街道を通る全ての商隊を根こそぎ奪い続ければもっと拡大出来るだろうがそんなことをすれば手強い護衛を雇われたり、近くの街から討伐隊が派遣されたりして団の存続自体が危うくなってしまう。

 それならばどうしてこの盗賊団は3桁を超えるような人員を抱えていられるのか…


「村人達はどう?」

「……う~ん。あんまり言いたくないんだけど」


 『共感』で伝わってくる桜の不快感で大体の想像は出来てしまった。だが村での状況はある意味予測していた範囲。救出等を考えれば聞いておかなくてはならない事だろう。


「構わないから言って」

「うん…まず女の人達はほぼ例外なく陵辱されてると考えていいと思う」

「ちょ、ちょっと待って下さい!例外なくって子供やお年寄りもですか!」


 システィナの悲鳴のような問いかけに桜は走りながら頷く。


「ふむ、100人以上の盗賊が攻めてきたとなればそいつらの中でも趣味嗜好は様々だろう。幼女趣味の奴もいれば年を取った者でも構わないというやつもいる。村規模では女の数は絶対的に盗賊の数に足りていないだろうから飢えた獣共は選り好みもしない。そういうことだろうよ」

「うん…今残っている20人は概ね若い女の人達を現在進行形でいじめてる。その脇に小さな子やお年寄りの女性の死体がうち捨てられてた。多分、本隊が離脱するときに残った人員で管理しきれない村人を殺したんだと思う」

「なんて酷いことを…」


 システィナの声が怒りに震える。


「と、なると男の人達は…」

「村はずれに死体が放置されてた。生き残りがいるかどうかは分からないけど難しいと思う。なんとか助けられるとすれば今生かされてる女の人達だけかな。

 多分だけどこの女の人達もあいつらが村を出て行くときには殺されちゃうと思うから助けるなら今夜しかないよソウ様」


 20人か…居残って自分たちの欲望を満たしているようなゴミに腕の立つ奴はいないだろう。不意を突いてペースを握ればなんとかなる…か?


「ご主人様。悪を斬るのが誠の旗を背負った新撰組なのですよね?」


 システィナは地球の知識をよく調べてる。確かにそれが人斬り集団新撰組のあり方だった気がする。まあ俺は人斬り集団と呼ばれるような苛烈なパーティにするつもりはないが。


「大丈夫だよシスティナ。俺もあそこにいるゴミ共は許せない。だけど無闇に突っ込む訳には行かないからどうやって攻めるかを考えていただけだから」

「はい!」

「桜、盗賊共は全員同じ場所にいるのか?」

「ううん、半分くらいは広場で近くの家を燃やして焚き火代わりにして騒いでいるけど残りの半分くらいは民家の中に女の人を連れ込んでる」

「そうか…村の建物の配置は?」

「真ん中に広場があってなんとなく囲むように家が建てられてるかな。広場の南側に村長の家らしき大きめの建物があったからだいたいはそこの中にいると思う。後はその両隣の家とか?北側の家は燃やしちゃってるから」


 なるほど、それなら……

 俺は自分の考えた作戦を皆に伝えていく。全て机上の空論的な思いつきもいいところな策である。もし蛍さん達からGOサインが出ないようならまた考えればいい。




「いいだろう。少し慎重過ぎる策かもしれんが女達が人質になる可能性を考えれば悪くない策だ」

「私も良いと思います。さすがはご主人様です」

「桜には1人だけ負担をかけることになるけど大丈夫かな」

「問題ないよソウ様。これこそ忍の仕事だもん」

「葵もいいよね」

『残念ながら今のわたくしに出来ることは主殿に思う存分使って貰うことだけですわ。主殿が武器のせいで不覚を取るようなことだけは絶対にないとお約束しますわ』

「うん、充分だよ。ありがとう葵」


 俺はぽんぽんと葵の柄を叩くと視界の中で大きくなってきたコロニ村を見る。


「よし、到着次第作戦開始だ」





「ああ!なんだてめぇらは!この村は『赤き流星』の特攻隊長のドズル様が褒美に頂いた村だ!この村の敷地に入ってるもんは全部俺様のもんだ」


 脇に抱えた裸の女の胸を力一杯鷲掴みにしながらバトルアックスを振り上げる禿頭の男。どうやらこいつがこの村にいる残党の頭らしい。

 そして今の声に反応した手下達が自分達が囲っていた女達を引きずるようにしてドズルの周囲に集まっていく。戦うには荷物にしかならない村の女達を片時も離さないのは人質としての価値があるかもしれないと狙ってのことだろう。やはり強盗殺人集団盗賊団なんていうゴミ共にはそういう狡猾さは標準装備されているということか。


「ということは今ここにいるおまえら3・・も既に俺の物だってわけだ! だが、おまえの後ろにいる上玉2人を素直に俺に差し出すならお前だけは見逃してやってもいい。

 このまま逃げ帰って布団で震えててもいいし街まで走って領主に泣きついたって構わねぇんだぜ!」


 こいつらは『赤き流星』、そして領主への情報漏洩を恐れないということはやはりこいつらも明日にはここを引き払うつもりだってことか。

 できればこの馬鹿からもっと情報を引き出したいところだが…まあいいそんなことは後でいくらでもできる。今はもうこいつらが息をしていることすら不快だ。

 既に俺の頭の中は冷え切っている。こいつらゴミを裁断して処分することになんの躊躇いもない。 


「それ以上口を開くなゴミ。腐敗臭が漏れてきて鼻が曲がる」

「…あ!なんだと?」


 ゴミの中でもドズルと名付けられた粗大ごみが何やら赤くなっているが正直どうでもいい。俺はもう早く、1秒でも早くあのゴミ共を処分したくて仕方がない。

 周囲に打ち捨てられた村人達の恐怖と無念と苦痛に満ちた眼が早くあいつらを殺してくれと懇願しているようにしか見えない。

 粗大ごみは何やらよくある脅し文句を延々と怒鳴っているようだが、取り立てて紹介するまでもないようなありきたりの言葉で雑音にしか聞こえない。


 早く…早く、早く!早く!


 それだけを頭の中で繰り返していた俺の視界の隅に ぽっ と小さな炎が灯る。


「蛍」

「5秒後だ」


 俺は目を瞑り無限とも思えるようなカウントダウンを始める。


 5



 4



 3



 2



 1


 ……


「0!」


 目を開けると同時に1剣1刀を抜き放った俺は一気に走り出す。目の前の盗賊達は汚い悲鳴を上げながら目を抑えている。


「システィナ、あいつだけは殺すな。情報が欲しい」

「はい」


 当然のように隣を走っていたシスティナに最後の指示を出すと片手で目を抑え、それでも村の女の髪を掴んだままだった盗賊の一人の髪を掴んでいた手首を葵で斬り落とす。


「ぎゃああ!」


「うるさい」


 そして次の瞬間、閃斬で首を刎ねる。最初から首を刎ねれば良かったというかもしれないがそこは俺のただの憂さ晴らしだ。

 首を刎ねた盗賊を捨て置いてすぐさま次の盗賊へと向かい、閃斬で次の盗賊の腕を斬り落とした後すぐに葵で首を刎ね、次へと向かう。

 余計な動きが多いと後で蛍さんに怒られそうだが、こいつらのしてきたことを考えれば即死させてしまうのはぬるい。少なくとも死の瞬間くらいは激痛の中で迎えるべきだ。

 だらしなく下半身を露出していた奴はイチモツを斬り落としてから腕を斬って首を落とす。後で葵に怒られそうだが入念に手入れをしてあげることで勘弁して貰おう。

 流石にこの頃になると視界が回復した盗賊が出始めるが時は既に遅い。視力が回復した3人ほどを俺とシスティナと蛍さんがほぼ同時にとどめをさして広場での戦いはあっけなくほぼ終了した。


 結局、俺の策というのは策と言うほどのものではない。

 先行して桜に建物内にいる盗賊達を1人残らず暗殺して貰い、村の人達の安全を確保した後に俺の背後から蛍さんの光魔法を最大光量、持続時間0で使ってもらっただけ。ようは某漫画の太陽○をリアルで使ってもらっただけである。

 そしてその隙をついて一気に盗賊達を制圧したのである。相手が10人程度だったから数秒の猶予でも俺達3人なら十分制圧出来た。下手に人質を前面に押し出された場合でもなんとか出来るように考えた作戦だったがうまくいって良かった。



「お疲れ、ソウ様」

「桜もね」


 いつの間にか隣にいた桜の頭を撫でながら労いの言葉をかける。間違いなく今回の緊急依頼で一番働いているのは桜だ。


「桜、システィナと一緒に村で生き残った人達を一か所に集めて治療を頼む」

「分かった。西側に集会所があったからそこに皆を誘導するね」

「システィナもよろしく頼む。回復術が必要な程の人が居なくなったらすぐ戻ってきて」

「わかりました」


 桜は自分が助けた建物の中の人達を案内しに行き、システィナは広場にいた女性達に声をかけて集会所に誘導していく。


 ふう…


「よくやったな。ソウジロウ」


 思わず吐き出した溜息に蛍さんが声をかけてきてくれた。俺の吐き出した息にやるせなさが詰まっていることに気が付いたのだろう。


「…うん、わかってる。俺達に出来る最善を尽くしたってことは」

「ならばよい。それにまだやることも残っているのだろう」

「だね。あいつを縛るのを手伝ってくれる?」

「ああ、任せておけ」


 俺は視界の隅で泡を吹いている粗大ごみと言う名のドズルを蛍さんと協力して縛り上げていく。こいつは戦闘開始直後にシスティナの魔断の石突で強烈な一撃を鳩尾に受けて意識を刈り取られていた。

 こいつを尋問して盗賊団の情報を得る。そのためにシスティナの力が必要だ。それまで亡くなった村人達をもう少しなんとかしてあげたい。

 俺は遺体を1人1人抱き上げると広場の中央に横たえて1人ずつ胸の上で手を組ませていく。汚れは出来る限り落としてあげて裸の人達には近くの建物から持ってきた布を掛けてあげる。広場にあった遺体はほとんど女性のもので男性の遺体は桜の言う通りに村外れにかなり損傷した状態で放置されていた。

 男性たちは明るい内から攻めてきた盗賊団に無駄だとは知りつつも村を囲む獣避けの柵で迎え撃ったのだろう。村や妻や子を守るために命をかけた男たちに俺は静かに手を合わせた。遺体については損傷が激しくて簡単に運べないため可哀想だが討伐隊に任せることにする。


 そんなことをしているうちにようやくシスティナが集会所から出てくる。その顔には流石に疲労の色が濃い。システィナのことだ回復薬だけでもなんとかなるような人にも回復術を惜しみなくかけていたに違いない。


「ご主人様、生き残っていた村の女性14名は一応落ち着きました。傷の治療をして簡単な食事を準備してきました」

「ありがとうシスティナ。疲れているところ悪いけど今度はこっちを手伝ってくれる?」

「はい」


 俺は縛り上げられたまま意識を取り戻さないドズルの下へシスティナを案内すると何も言わないまま閃斬を抜きドズルの右手の親指を斬り飛ばした。


「ぐ!ぎゃああああああ!いてえ!いてえ!なんだこりゃぁ!どうなってやがんだぁ!」

「システィナ。出血だけ止めて」

「はい」


 俺の指示に従ってシスティナが回復術を調整して痛みで跳ね起きたドズルの出血だけをとめる。


「が!……て、てめぇ何しやがる」

「『赤き流星』について全部話せ」

「な?馬鹿かお前!そんなこと特攻隊長の俺が漏らすわ…ぐげぇぇえええええええ!」


 俺は反抗的な態度をとるドズルに何の躊躇もなく再度閃斬を振り下ろし残っていた右手の指を全部斬り落とした。


「止血」

「はい」

「ぐあ…俺の俺の指がぁ」

「『赤き流星』について全部話せ」

「だから俺は…ぎぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいい!」


 右手を肩から斬り落とす。


「ぐがああああああ!もうやめろぉぉぉぉ!」

「止血」

「はい」

「『赤き流星』について全部話せ」 

「分かった!全部!全部話す!話すからもうやめてくれ!」


 右膝から下を斬り落とす。


「なんでじゃああああああああああああ!」

「あ、間違えた。システィナ足首まで復元」

「はい」


 そんなに早く落ちると思わなかったからつい勢いで斬ってしまった。システィナが今度は魔断の増幅を使って右足を治療していくと斬り落とされた膝からもりもりと肉芽が盛り上がりドズルの足が復元されていく。

 さすがに部位欠損を治すのはシスティナにもきつそうだが、部位欠損くらいならお任せ下さいと言っていたのは誇張でも冗談でもなかったらしい。さすがは俺のシスティナだ。

 かと言って全部治してやる必要も無いので取りあえず足首までだ。


「な!足が…生えてきた?」

「分かるだろう?正直に全て話せば…」

「あ、あぁ、ああ!話す!話すから!」


 ふん、結果として失った右腕も治るかもという僅かな希望を与える形になって縋るように完落ちしたか。まあ、これで喋ることをちゃんと喋れば足までは復元してやってもいい。

 後続の討伐隊が連行するのに足がないと不便だからな。本当はこんな奴らは殺しておいた方が後腐れがないんだがその辺はしがらみというものだろう。討伐隊を派遣した領主にも目に見える成果があったほうが喜ばれると思うしな。



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