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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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パーティ登録

 ロビーへと戻ると既にフレイ達3人が待っていた。戻ってきてからそんなに時間が経っていないらしくロビーの隅で座り込んで休憩しているようだった。


「おうソウジ。そっちも今戻りか?」


 乱れた息を整えながらもどこか満足気なトォルの様子をみれば充実した戦いをすることができたのだろうとすぐに分かる。

 アーリとフレイの表情も若干昂揚しているように見える。


「ふん、それなりの戦いが出来たようだな」

「はい、特に大きな怪我もなく1階層から2階層の主を倒すまでを3度繰り返してきました」


 へぇ…凄いな。いくら1、2階層とは言っても階層主を6体倒したってことか。階層主なんて3人にとってはトラウマでしかないだろうに……ん?むしろだからか。

 俺達は諦めずに変種の階層主を倒したから階層主に対して恨みというか怒りみたいなものは感じても恐怖はあまり感じない。

 だが、3人は本当に命からがら階層主から逃走している。トォルとアーリはその時にかけがえのない仲間を失っているし、フレイも俺達全員を死地に巻き込んだという負い目を感じている。それはトラウマとなって階層主との戦いにおいて3人を縛る。後方に俺達が控えていた時はまだそんなことは感じなかっただろうが、改めて3人だけで階層主の前に立った時はどうだっただろうか。

 相手が変種で階落ちだったドラゴマンティスではなくても少しは足が震えたり動きが鈍ったりしたのではないだろうか。それを克服するために自分の力を信じ、何度も戦いを挑む必要があったのかもしれない。


「…考え過ぎかな」


 思わず苦笑して呟いた言葉は誰にも聞かれなかったようだ。


「ほう、ならばもう少し上でも大丈夫そうだな。無理をしないという条件で5階層までは挑んでも構わんぞ」

「そうか5階層まで…って5階層!!俺達がそんなところまで行っていいんですか師匠」

「一通り当たってみたが5階層までの魔物の強さは1、2階層とさほど変わらぬ。多少癖のある攻撃や動きをする魔物もいたが落ち着いて戦えばよい経験になるだろう」

「ちょ、ちょっと待ってくれ蛍殿。ということはフジノミヤ殿達は今日だけで5階層を突破したということなのか?」


 平耳を小さくぱたぱたしながら目を丸くするフレイにソウジロウはげんなりと頷く。確かに苦戦らしい苦戦はしなかったが気配察知によって次から次へと魔物の所に導かれ、すぐに階層が変わるため初見の敵がばんばん出てくる。

 肉体的には問題なくても緊張から来る疲労感はかなりのものだった。


「それは…なんというかさすがだな」


 俺の表情から全てを察したのだろうフレイは本当はご愁傷様と言いたいのだろう。


「さあ、皆さん。とりあえず無事に戻れたことですし予定通りウィルマーク様の所へ行きましょう。魔石の買い取りもそこでしてくれるはずですから」


 システィナの提案はもっともである。全員がそれに賛同し連なってロビーを出る。背後から聞こえて来る聖塔教の演説が妙に煩わしく感じ俺はほんの少しだけ足を早めた。




「はい。それではこちらが皆様のギルドカードになります。紛失された場合再発行には大銀貨3枚を頂くことになっていますので紛失や盗難にはお気を付けください。

 このまま依頼を受ける場合はあちらの掲示板より依頼票を受付までお持ち下さい。詳細を説明させて頂きます」


 塔から冒険者ギルドに到着後、いくつかの窓口に分かれて全員のギルドへの登録を済ませた。費用は今回俺持ちである。

 今日の魔石を買い取って貰えばトォル達でも払えるだろうが、せっかくの3人での初報酬である。全額好きなことに使って貰いたい。そのうちたくさん稼げるようになったら返して貰えばいい。


「ついでにパーティ登録をお願いします。こっちの3人と俺達4人のパーティです」

「かしこまりました。それではパーティのリーダーとパーティ名を教えて下さい」


 しまった!名前とか全く考えてなかった…俺のネーミングセンスはあんまり良いとは言えない気がする。刀達に漢字一文字で名前を付けるのとは訳が違うし。


「フレイさん達は3人で話し合ってパーティ名とリーダーを決めて下さい」


 とりあえずあっちはあっちに任せておこう。うちはどうするか…これから使い続けるならやっぱりそれなりにかっこいい名前がいいよな。


「なんか良い名前ある?」

「う~ん、『甲賀忍軍』とか『伊賀忍軍』とか?」


 いやいや忍者なのは桜だけだから。


「えっと…『ソウジロウ様と仲良し』とかいかがですか?」


 うんシスティナのネーミングセンスが壊滅的に酷すぎる。


『主殿、【国家安康】とかはどうでしょう』


 ていうかその名前を付けた人、徳川家康の名前を分けたとか言いがかり付けられて殺されてるよね。縁起悪すぎるでしょ。


「そうじゃのぅ…ソウジロウ。どうせここは異世界だ。おまえの名前から連想して『新撰組』とでも名付けたらどうだ」

「新撰組…新撰組か。幕末に刀を持って暴れ回った武装集団。確かに俺の名前は沖田総司の名前にかすってると言えばかすってるな…」


 俺自身は別に幕末マニアって訳でもないし詳しくは知らないんだけどね。でも俺の中のイメージは悪くない。刀を持って戦ってたってのも俺のパーティを考えれば有りだ。


「うん。いいかもな。じゃあ俺達のパーティ名は新撰組にしよう。こっちの人達には意味分からないだろうけどそんなのもいいよね」

「新撰組…なるほど、自警団みたいな活動とかをしていた武装組織なんですね。私もいいと思います。もちろんソウジロウ様が同じような活動をするとは思っていませんが、悪い人が嫌いなソウジロウ様に合っていると思います」


 叡智の書庫から新撰組の情報を仕入れたらしいシスティナも了解してくれる。


「桜もいいよ。新撰組には忍者はいなかったみたいだけど暗殺とか得意だったみたいだし」

『わたくしもかまいませんわ。新撰組は最後まで徳川幕府の味方でいてくれましたし』


 賛成の理由はそれぞれ違うみたいだけど各自に納得できる理由があるみたいだからよしとしよう。


「分かった。じゃあ俺達のパーティはこれから『新撰組』だ。蛍さんリーダーは誰がやる?俺的には蛍さんがやった方がまとまるような気がするんだけど」

「馬鹿を言うなソウジロウ。全ての刀達が仕えてもいいと思うのはお前以外にはおらんよ。儂がやっても大体は従ってくれるだろうが少なくとも葵が言うことを聞くとは思えんしな」

『当り前ですわ!山猿の言うことを聞くくらいなら飾られているだけの日々を選びますわ。わたくしの主は主殿だけですわ』

「ソウジロウ様。私たちはあなたがいるからこうして1つに集まれるんです。私達のご主人様はあなたしかいません」

「そうだよソウ様。桜達はソウ様に使って欲しいんだよ。あの暗い蔵の中でソウ様の笑顔だけが私達の光だったんだから」

「みんな…ありがとう。俺なんかまだまだだけど頑張るからこれからも助けて欲しい」


 思わず熱くなる目頭に気づかれない様に小さく頭を下げる俺を仲間達は黙って見守ってくれている。正直一介の高校生に過ぎなかった俺がこんなに優秀なメンバーのリーダーとか有り得ないけどみんなが助けてくれるならやっていけそうな気になるから不思議だ。


「よし!すいません。俺達はパーティ名『新撰組』、リーダは俺です。登録お願いします」

「はい。承りました。全員のギルドカードを一旦お預かりしますね」


 受付嬢に全員のカードを渡す。そう言えば3人組はどうしたんだろう。


「お、ソウジ達もやっと決まったのか。俺達はあっさりと決まったのに随分とかかったな」

「へぇ、一応聞いてやるけどどんな名前で誰がリーダーなんだ?」

「あぁ、俺達のパーティ名は『剣聖の弟子』。リーダーはアーリだ」


 ほう…リーダーがトォルじゃないところに好感が持てる。パーティ名もそれはつまり


「蛍さんの弟子ってことか」

「ああ、俺達の今があるのは師匠のおかげだからな。厳密にいえば桜師範とシスティナ先生の弟子でもあるんだけどな。

 リーダーに関してはアーリが一番冷静だし、後衛にいることが多いから指示もだしやすいだろうってことで決めた」


 なるほどな。リーダーに関しては戦闘時に司令塔の役割ってことか、ギルドなんかのやり取りなんかや依頼人との折衝なんかはトォルやフレイが出てってやるんだろう。


「我らの弟子を名乗る以上はみっともない戦いは出来ぬということはわかっているのか?」

「お、おう!わかってるぜ師匠。師匠達に恥をかかせないようにこれからも修行する」


 トォルの言葉にその後ろでフレイとアーリも頷く。それを見て蛍さんが満足気な笑みを浮かべる。本当にこの1週間で3人とも逞しくなったな。あのしごきを乗り越えたことがこんなに人間を変えるとは思わなかった。


「登録が終わりました。両方共パーティランクはDから始まります。パーティランクは個人のランクとは違ってD、C、B、A、Sの五段階になりますのでご注意ください」

「わかりました」


 受付嬢から返して貰ったカードを各自に返却しているとその様子を見ていたウィルさんが近づいてくる。


「フジノミヤ様。今日は魔石の売却の方もこちらでして頂けるとのことでしたが…」

「はい。いいですよ。ギルドでの売却は相場と比べるとどうなる予定ですか?」

「はい、どうしようか考えたのですがひとまず相場通りで買い取りをしようと思います。それを転売するだけでも十分ギルドの利益になります。魔石や素材の売却数などもランクの査定に加えることで余所に素材や魔石が流れることを多少防げると思いますし」

「そうですね。それがいいと思います。まずはギルドが探索者達にとって損にならないということを分かってもらうことが大事だと思いますから」

「はい。とにもかくにも一定数の登録者数を確保してギルドという組織を世間に浸透させるのが第一ですから。

 それではこちらの買取カウンターの方へよろしくお願いします」


 


「うお!マジか…俺達が一日で7万6千マール」

「3人で分けても2万5千マールずつですね…」

「もしあの時の私がこのくらい稼げていればあんなことにはならなかったな…」


 『剣聖の弟子』の3人が今日1日の稼ぎに目を白黒させている。今までは1階層の安い魔石を数個持って帰るのがせいぜいだったのが階層主の魔石6個に加えてその他の魔石も数十個まとめて売り払ったのだから当然売却額も桁違いになるのは当たり前だ。

 驚いている3人の脇で俺達の売却額は倍の15万マール近かったのだがそれは敢えて言わないようにしておこう。


「ありがとうございました。おかげで明日からのいい練習ができました」

「いえ、こちらこそ先にいろいろ優遇して頂いて助かりました」

「あ、ギルドで売る薬なども入荷しましたのでもし良ければ購入していってください。ギルドに登録している冒険者の方には2割引きで販売しておりますので」

「本当か!冒険者ギルドってすげぇな!おいアーリ。俺達も買って行こうぜ薬関係は探索には必須だからな」

「探索に必要な薬や道具系の販売は2階で行っていますのでどうぞ」

「よし!行こうぜフレイ、アーリ」

「あ、アーリだけちょっと話があるから残ってくれないか」


 走り去っていくトォルを渋々追いかけようとしていたアーリを呼び止めるとまさか俺から呼び止められると思っていなかったらしいアーリがきょとんとした顔をする。


「別に大したことじゃないんだ。明日からの活動について『剣聖の弟子』にちょっとお願いがあるんだ」

「あぁ。そんなことですか。言ったと思いますけど私たちはあなた達のためならなんでもやりますから、遠慮なく仰ってください」


 そう言って微笑むアーリ。その迷いのない笑みは儚げでとても綺麗だ。


「ありがとう。明日からは塔探索の時間を短めにしてしばらくギルドの依頼を消化してあげて欲しいんだ。

 冒険者が増えてある程度依頼が回るようになってくるまででいいから」

「はい、わかりました。では朝に依頼を受けるのは依頼を受けたい方の選択肢を狭めてしまうでしょうからお昼頃までは塔で探索をして、午後になってもギルドで残っている依頼の中で出来そうなものがあれば引き受けるという形にしようと思います」

「うん、それでいいと思う。明日の朝は特に登録希望者で混むと思うしね。せっかく塔で稼げるようになったのに残念かもしれないけどよろしく頼む。

 もちろん『新撰組』でも依頼は積極的に受けていく予定だけどね」


 アーリの了解を得たので俺達はウィルさんに挨拶をして先にギルドを出る。今日は3人だけで祝杯でも上げたい気分だろう。

 ついでに先輩面してアーリに大銀貨を1枚渡しておいたので3人でなら結構な食事が出来るはず。

 ギルドを出ると陽が沈んだばかりの空が徐々に茜色から夜空の色に染められていくところだった。


「さて、俺達もどっかで何か食べていく?」

「まだ時間はありますし、ちょっとお待ち頂ければ私が準備します」

「でも疲れてない?」

「いえ、侍祭の本分ですから」


 にっこり笑うシスティナは本当に苦にしてないみたいだ。


「じゃあお願いしようかな」

「はい、お任せ下さい。ご主人様」


 そんなまったりとした幸せな気分の帰り道。だが、その時間は長く続かなかった。



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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ 小説1巻~3巻 モーニングスターブックスより発売中 コミックガンマ+ にてコミカライズ版も公開中
― 新着の感想 ―
[一言] 葵の一人称を「わたくし」か「あたくし」に統一した方がいいと思います
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