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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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冒険者ギルド

 ぱちり。


 まさにそうとしか言いようのない目覚めだった。目が開くと同時に身体のギアもすでに入っている。そんな感じである。俺の過去の中でも数える程しか経験がないようなすっきりとした目覚めである。

 窓の外はようやく陽が昇り始めた頃らしくうっすらと白い光が差し込んできている。準備や朝食の時間と移動時間を考えればちょうどいい時間帯だろう。

 と言っても俺の周囲は裸の美女達に囲まれている。右側には蛍さん,左側にはシスティナ,そして胸の上には小柄な桜。いつのまにか決まっていた定位置である。それだと寝返りを打てなくてしんどいのではないかと思われそうだが,無意識に寝返りをした時もうちの女性陣はそれに合わせて自然とフォーメーションを変えているらしく不便を感じたことはない。

 結果として柔らかくて暖かい感触だけを享受出来る。まさに王者の寝所と言えるだろう。


「んっ!ん…ソウ様,おはよ」

「おはよう桜」

「…ん?んもう!昨日もあんなにしたのに朝から元気だなぁソウ様は」


 そう言って唇を重ねてくる桜に積極的に応えながら俺は苦笑する。


「まあ朝の生理現象って意味もあるし,それに今日はあの日以来の塔探索だからね…ちょっと昂ぶってるみたい」

「ほう…頼もしいものだな。だが,その気持ちは私も分からなくもない。私も年甲斐もなくわくわくしている」

「蛍さんもか。かなり気合入れて特訓したみたいだしね」


 にやりと微笑む蛍さんと軽く口付けを交わす。


「まあ見ておれ。まあ,見せられるほどの機会があればだがな」

「皆さんあまり無理をしないでくださいね。まぁ,部位欠損くらいまでの怪我なら私が綺麗に治して見せますけど」

「システィナも言うねぇ。よっぽど新しい武器が気にいったんだね」


 左隣にいたシスティナが双子山を俺に押し付けつつ唇を重ねてくる。


「はい。魔断で増幅することで今までの回復術とは比べものにならないくらいの効果が出せますから。とは言っても誰も怪我をしないのが理想ですよ」

「分かってる。その為の新装備だしね。よし!じゃあ皆起きたことだし準備に取り掛かろうか」


「はい」

「うん」

「うむ」


 三者三様の返事と共に俺達は動き始める。俺達の士気は思った以上に高い。今日の探索はきっとうまくいくだろう。




「ちょっと早く来すぎたかな…」

「ふふふ,皆さん張り切り過ぎですよ」


 俺達は瞬く間に準備と朝食を済ませ,フレスベルク経由でザチルの塔へ向かう途中である。


「そうだ。じゃあ塔に行く前にちょっとだけウィルさんの所へ寄っていこうか。

 確か街の北端辺りに建物を購入して準備を進めてるはずだから通り道だしね」


 ザチルの塔はフレスベルクの街を北側から出て徒歩で10分程のところに聳え立っている。だからウィルさんは街の北側に大きめの建物を購入して急ピッチで準備を進めているらしい。

 先日会った時はアルのお陰で制度面等の準備もほぼ終わり,領主からの全面バックアップの約束も取り付けたとのことで近日中に発足することが出来そうだと言っていた。

 あとの問題は魔道具関係の開発と量産だったらしいが領主からのバックアップがついたことで解決しそうだと喜んでいたので超えるべきハードルは全てクリアされたということだろう。


「ソウジロウ様。先日からずっとウィル殿とこそこそやってらっしゃいますが,ウィル殿はどんな商売を始められるつもりなのですか?」


 別にこそこそしていた訳ではなかったのだけどこの世界でうまく出来るかどうかが分からなかったため先行きがはっきりするまで公にしたくなかったのは確かである。

 だが,ことここに至れば普及するかどうかは別として立ち上げ自体は問題ないだろう。


「うん,ウィルさんがやろうとしていること。それは『冒険者ギルド』だよ」


 そう,この世界に来て残念に思ったことの1つにギルドという制度がないことだった。ギルドが無い以上は当然探索者ギルドも冒険者ギルドも無い。異世界ものの定番の冒険者としてランクをあげていくという体験が出来なかったのだ。

 とは言っても無い物は無いので仕方ないと諦めていたのだが,レイトークでの事件などから探索者という人達全てが…何というか危うい立場にいることに気がついた。

 探索者という立場の人間がそれなりの数いなければ各街としても困るはずなのに彼らを支援する立場の存在が全くない。完全に個人の意志のみで成り立つ仕事だったのである。

 だからこそレイトークの領主イザクは探索者が減少することを恐れ,探索者に不利な情報を隠蔽した。


 そうであるならば探索者を支援する組織を立ち上げて初心者を育て,ベテランを優遇すればいい。

 ギルドとしては依頼の仲介料や魔石や素材の買い取り転売で利益をあげればいいし,探索者達もギルドに入ることである程度の身分の保証と身の丈にあった依頼での稼ぎを得ることが出来る。そしてギルドを街に作ることで探索者達が多く集まり街も潤うし,実力のある探索者達を領主は身近に置いておくことが出来る。


「なるほど…確かにそれは探索者達にとっては有り難い制度かもしれませんね」

「でしょ。冒険者ギルドは街中の依頼を一手に引き受けるから街の人達にも受け入れられるはずなんだ。

 例えば薬草採取や家の掃除,店番,ペットの散歩から護衛任務,討伐依頼までなんでも。まあ報酬次第ではずっと受けて貰えない依頼もあるだろうけどそれもまた醍醐味だよね」

「ということは私たちも登録するのか?ソウジロウ」

「もちろん。ウィルさんを助ける意味もあるしね。まずは俺達が冒険者ギルドがどういうモノなのかというのを実践して周囲に示してあげる必要があるかなと思うしね。

 もちろん俺達だけじゃ足りないからフレイ達にも登録してもらう予定。うまく行けばあの3人の生活も安定すると思う」

「へぇ,面白そうだね。ランクとかビシビシ上がったらどんな特典があるのか桜ちょっと楽しみかも」


 良かった。登録することに3人は特に不満は無いみたいだ。…3人?そういえば


「葵?」

『……』

「葵さん?」

『………』


 返事がないただの刀のようだ…


 とか言ってる場合じゃない!そういや最近葵の声を聞いてない。かなりほったらかしにしてた感がある。訓練の時に使ってはいたが自分のことに精一杯で話しかけたりしてあげてなかったかもしれない。


「あの…ごめんね葵さん。話しかけはしなかったけど訓練中俺がどれだけ葵さんのことを大事に頼りにしてたかは伝わってたよね」

『…もう!ずるいですわ主殿。そんな言い方されたらわたくし怒れませんわ。確かに確かにあれほど強く求められていましたもの。わたくしも久方ぶりに刀としての本能を揺り起こされて恍惚としてしまいましたわ』

「うん,でもごめん。寂しかったよね。葵ももっとどんどん話しかけてくれていいからね」

『わかりましたわ主殿。お気遣いありがとうございます』



 ふう,危ない危ない。葵も大事なパーティメンバーの1人なんだからちゃんと気にかけてあげなきゃいけなかった。そうでなきゃハーレムなんか作ってもうまくやっていける訳ない。



「あ,ここだ。すいませ~ん!フジノミヤと申しますがウィルマークさんはおられますか」


 街の北端にほど近い建物もまばらになりつつあるような区画にその建物はあった。元々は探索者向けの大手道具屋だったらしいのだが千日以上前に発生した塔からの魔物流出事件でフレスベルクの東のパクリット山から街の北側を沿って流れる川の向こうまで魔物の群れが迫ったことがあったらしい。

 その時はひとまず橋を落として時間を稼いでいる間に領主の自警団と探索者を集め,なんとか殲滅したらしいが魔物の群れにビビった店主はその店を畳んで移転した。その後は場所が北過ぎると敬遠されたり,建物が3階建ての立派な物だったため値段的にも用途的にも買い手が限定されるという事情もあってずっと空き物件だったのをベイス商会で買い上げたそうだ。


「ああ!フジノミヤ様。いいところにいらっしゃいました。

 まさに!今!最後の準備が整ったところです。もちろん,まだ看板をどうするかとか細かい作業は残っていますがいつでも冒険者ギルドを始めることが出来る様になりました。

 これもひとえにフジノミヤ様の助言の数々とこのアルリックくんを紹介してもらったおかげです」


 俺の声に反応したウィルさんが店の奥から飛び出してきて俺の手を握りながら興奮したように手を振る。


「いえ,お役に立てて光栄です。では今日からさっそく始まるんですか?」

「もちろん。…と言いたいところなんですが逆にこんなに早く終わると思っていなかったので街中に宣伝したギルドへの依頼事項の締め切りが今日までなんです。

 それに最近どうも南からの物資の搬入が遅れ気味のようでして,ギルドで販売する薬などの在庫がまだ揃ってないというのもあります。

 依頼については最初だけはギルドの職員が街中に散って依頼票を回収し,内容をその場で確認してきます。それをあそこの依頼掲示板に貼れば…というところです。

 薬の入荷関係も今日中にはなんとかなりそうですし,登録や買取等の準備は取りあえず完了したので始めようと思えば出来ますが,登録した人はきっと物珍しさに依頼を見て行ってくれるはずなので正式稼働は明日になると思います」

「そうですか。それは楽しみですね。どうですか?うまくいきそうですか」

「はい。手応えは感じています。依頼者の方からも問い合わせがかなり来ていますし,探索者達への広報もザチルの塔に領主様の布告付で何日か前から勧誘に人を出していますがこちらもかなりの数の問い合わせを頂いています」


 実際に問い合わせてきた人達が本当に利用するかどうかは分からないがまずまずの評判だということだろう。フレスベルクには入街税がないため優遇出来ないがギルドが他の街にも広がってギルドカードがあれば入街税が免除になるというような特典もこれから増えていくのでそうなれば絶対に登録者は増えていくはずである。


「ところでフジノミヤ様。みなさん立派な装備をされていますが…完成したのですね」

「はい。ウィルさんに最高の人材を紹介して頂いたおかげで想定以上に良い物が手に入りました」


 ウィルさんに笑顔でお礼を言うとウィルさんも嬉しそうに笑う。


「それはようございました。では,今日はこれから塔へと行かれるのですね」

「はい。アルの姉パーティとの約束の時間までまだ少しあったのでこちらの様子を見に来た次第です」


 ウィルさんはなるほどうんうんと意味深に頷きながら俺に輝いた目を向けてくる。


「もし良ければ冒険者ギルド登録者第一号になってみませんか?」

「本当ですか!もし良いのであれば是非お願いします!」


 記念すべき第一号になれるとか超レアじゃね!これってギルドが大きく成長してそこそこの功績を俺が残しちゃったりすればこの世界に名前が残るレベルだと思う。

 もちろん悪目立ちするつもりは毛頭ないが,ギルドが何十年も活用され続けて世界に定着したと言えるようになったころにそう言えば第一号って誰なんだ?的な感じで語られるのは悪くないしね。


「はい,こちらこそお願いします。私も実質的にこのギルドの産みの親とも言えるフジノミヤ様に是非一番最初に登録して頂きたいと思っていましたから」


 相変わらずウィルさんの好意が半端無い。まさかとは思うが一瞬,お尻が引き締まる錯覚に陥りかねないほどだ。…なんて冗談はウィルさんにあまりにも失礼だったかな。よく結婚したいってぼやいてたしね。


「では,すぐ済みますのでこちらへどうぞ。せっかくなので初めての方が登録する時の流れを実際にやってみて貰えませんか?」


 なるほど。俺の登録ついでに明日以降のシミュレーションもしてしまおうという訳か。確かにその方が合理的だし明日から作業に携わる職員にもいい練習になる。どんどん活用してもらいたい。


「わかりました。最初は…受付窓口のどこかに行けばいいですね」

「はい。ありがとうございます」



 冒険者ギルドには入るとすぐ大きめのロビーであり,右手側に2階への階段と依頼掲示板。左手側には簡単な飲食が出来るような丸テーブルがいくつかと奥にバーカウンターのようなものがある。

 待ち合わせ場所として提供できるようにあった方がいいと言った俺の意見を取り入れてくれたのだろう。

 そして広いロビーをせき止めるかのようにずらりと並んだカウンターそしてそれを区切る受付の数々だった。

さらに奥にはまだ色々な部屋などもありそうだが今はいいか。今は…


「すいません。ギルドに登録したいのですがこちらでよろしいですか?」


 俺は笑う受付嬢が座っている窓口に歩み寄ると登録に来た旨を告げた。ようはロールプレイをしてみようと思った訳だ。この世界に冒険者ギルドがあったとしたらやってみたかったとおりに。そしてそれはウィルさんのやって欲しかったことと同じはずである。


「いらっしゃいませ。登録には大銀貨1枚,1000マールがかかりますがよろしいですか?」

「はい,構いません。でももしお金が足りない場合はどうなるのでしょう」

「その場合でも登録は出来ますが仮登録という形になります。仮登録ですとギルドの各種特典は受けられません。依頼は受けられますが依頼達成時の報酬から登録料をお支払い頂く形になります。この際分割での支払いも承っております」


 あくまで特典は正式に登録が済んでからと。かといってお金がない人を登録させなくしていたら人材が確保が出来ないから仮登録と後払いのシステムを設けたという訳か。さすがウィルさん。


「分かりました。では大銀貨1枚です」

「はい,確かに。それでは登録と同時にギルドカードを作成させて頂きます」


 おぉ!ウィルさんがギルド立ち上げで一番苦労したのがこれだったって言ってたっけ。結局領主お抱えの技師を総動員して超短期間で開発したみたいだけど…それこそ湯水のように金を使ったらしい。


「ではこちらを手に持って,表示は名前だけで構いませんのでこれに重なるように窓をお出し下さい」


 受付嬢から渡されたのは半透明で弾力性のある角を丸くした四角板である。厚みは2ミリ程度,大きさはクレジットカードを2枚くっつけたサイズと同じくらいだろうか。


「わかりました『顕出』」

「はい。結構です。ギルドカードとして採用されたこの素材は今まで使い道が無くゴミのような扱いをされていたのですが魔力の波長のようなものを記録することが出来ることが今回発見されました。

 と言っても特殊な条件下のみですが」


 受付嬢に手渡したカードには確かに俺の名前が表示されている。


「ここには表示していた名前しか出ていませんが,再度窓を重ねて頂ければ表示したい部分を再度焼き直すことも可能です。

 ただし,一度焼き付けた物にはその人以外の方が窓を重ねても反応しません。今後ギルドでは身元確認において窓とカードを重ねて光らせて貰うという作業を度々お願いすることになりますのでご了承ください」


 なるほど,窓の魔力パターンを焼き付けるとそれだけで偽造防止になるのか。よく思いついたな。


「そして裏面にはギルドだけが記載を変更できるように加工がしてあります。ここにギルドの方でランクや依頼の受注状況。依頼達成回数,預かり金の額などを記載します。

 ランクについてはSSSからSS,Sが上位で,AからGまでの10段階になっています。最初はどなたもGランクから始めて頂きます。

 そして本来であれば依頼に関してもランクをつけさせて頂き,ランクに見合った物を受けて頂くようお勧めするのですが,ギルドが出来たばかりで全員がGランクのため依頼にはランクを付けず難易度を星の数で設定させて頂いています。

星が多いほど危険が大きくなると思って頂き無理のない冒険をお願いします」

「わかりました」


 受付嬢の後ろで別のギルド職員がギルドカードを受け取り光る台の上で作業をしている。あの作業台こそがギルドカードのギルド記載部分にギルドが加工をするための魔道具なのだろう。 

 依頼についてもまだ高ランクがいない状態ではランク分けによる棲み分けが出来ないため難易度だけでリスクコントロールするというのもうまい考えだ。後はギルド側でも無謀な依頼にチャレンジするような冒険者にアドバイスなどをしてあげればいいだろう。


「ではこちらがギルドカードになります。紛失された場合再発行には大銀貨3枚を頂くことになっていますので紛失や盗難にはお気を付けください。

 このまま依頼を受ける場合はあちらの掲示板より依頼票を受付までお持ち下さい。詳細を説明させて頂きます」

「わかりました。…とこんな感じですか?」

「はい。いかがでしたでしょうか?」

「とてもわかりやすかったです。これなら明日の開店も大丈夫だと思います」


 かなり綿密にシミュレートしたのだろう。相手が知識のある俺だったいうことを差し引いてもわかりやすくスムーズな応対だったと思う。

 大量に登録者が来てしまうようなことになるとうまく回るかどうか問題だが先ほどの対応をベースとすることには問題はないだろう。


「本当ですか!それは良かった。これで安心して明日を迎えられます」

「ウィルさん。今日はこれから塔へと行くんですが帰り際にもう一度寄らせて貰って何人か事前登録して貰っていいですか?」

「フジノミヤ様のご紹介ならもちろん構いません。こちらも最後の確認が出来ますし助かります」

「ありがとうございます。連れてくるのは先ほどもお話ししたアルのお姉さんのパーティです。最初の頃はせっかく依頼を貰っても誰も受ける者がいないということもあるかと思いますので…そんなときは彼らをどんどんこき使ってください。

 なるべく最初は依頼の回転率が早い方がいいでしょうから。もちろん私たちもなるべくお手伝いします」

「それは助かります。街の住民達に冒険者ギルドが役に立つというアピールをするのは早ければ早いほど良いですから」


 なるべく早くフレスベルクに冒険者ギルドという組織を定着させるためには街の住人に冒険者ギルドが役に立つと思って貰った方が早い。

 実際は探索者の支援組織ではあるが街からの依頼もギルドで仲介するのだからその依頼が早い段階で完了されるのはギルドのプラス評価に繋がるだろう。


「ソウジロウ様。そろそろ時間かと」

「わかった。じゃあウィルさん,帰りにまた寄りますのでよろしくお願いします」

「承知いたしました。お待ちしております。お気を付けて行ってらっしゃいませ」


 ウィルさんに見送られて塔への道を歩く。そんな俺の胸には首から下げられたこの世界で初めて作られたギルドカードがぶら下がっている。

 表には俺の名前だけが表示され,裏には『ランク:G』『依頼:未受理』『賞罰等』『預金額:0』などと言った情報が表示されている。

 重さは軽く,弾力性があり耐久性もありそうだ。よく10日足らずの間にここまでのものを作り上げたものだと感心しきりである。


「楽しそうですねソウジロウ様」

「システィナも帰りに作って貰おう」


 そんな様子をシスティナが微笑みつつ見ていたらしい。ちょっと子供っぽかったかと気恥ずかしいものを感じつつ照れ隠しに応える。


「はい。わかりました」

「あ,でも蛍さんたちは作れるのかな?そもそも試したこと無かったけど蛍さんと桜って窓出せるのかな?」

「ふむ。確かに試したことはなかったのう。やってみるか…『顕出』」

「あ,桜もやってみよっと。『顕出』」


 結論から言うと2人の宣言に伴いきちんと2人の前に窓は現れた。


「でもこれって…」

「これでは…でもギルドカードを作るだけなら名前だけ表示されればいいので登録だけならなんとかなるのではないでしょうか?」


『蛍  業 -

 年齢: -  

 種族:魔剣 

 職 : -

 技能: -』

『桜  業 -

 年齢: -  

 種族:魔剣 

 職 : -

 技能: -』


 2人の窓は名前と魔剣だということ以外は何も表示されなかった。俺の簡易鑑定や武具鑑定ではもっと詳しいデータが表示されるのに窓では名前以外はまともに表示されないらしい。

 だがシスティナの言うとおり,名前だけ表示させるようにすれば問題なくギルドに登録が出来そうだ。


「じゃあ2人も登録はしておこう。そうしたらパーティ登録とかも出来るから」


 パーティ登録はしておくと皆で一緒に達成した依頼がそれぞれのカードに達成数1回分として記録してもらうことが出来るらしい。他にもいくつか機能があるみたいだが今はいいだろう。


『それではわたくしも…【顕出】』

「…………葵はまだ無理か。多分擬人化してないと出せないんだと思う。擬人化出来るようになってから登録しような」

『ううぅぅぅ…またしてもわたくしばかり。悲しいですわ!』

 

 よしよしと柄頭を叩いて慰めつつ歩いていると川幅20メートルくらいの大きな川がある。そこに架けられた橋を渡りきるとザチルの塔はもうすぐである。



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