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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第2章

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パーティ結成

パーティ結成


【前書き】

ちょっと投稿時間がずれこみました^^;

2章の雌伏編的なお話もそろそろ終わりが見えてきました。


【本文】

「これが平耳か…」


 腕枕状態で俺の胸に顔をうずめているフレイの髪を撫でながら思わず呟く。フレイの髪と同じ色の毛?に覆われた平べったい耳が髪の毛の中に埋もれている。

 今まで簡易鑑定で見た種族名の由来が見ているだけでは分からなかったので,これで疑問が解けてすっきり。さらにほどよい疲労感と共に息子もすっきりだ。

 頭を撫でていてもフレイは反応しないのでおそらく軽く眠りに落ちているのだろう。行為自体は最初こそ痛みを訴えていたがそれよりも精神的な充足感からくる快感が強かったらしくすぐに俺を受け入れてくれた。

 今回だけは暴走厳禁で常にフレイ優先で地球的に言えばスローセックスを心掛けたのだがうまくいったらしい。それに自分自身にとってもこのペースでの行為はなかなか新鮮だった。これからはたまに1晩1人の日を設けることもかなり前向きに検討しようと思う。

 そんなことを考えながら平耳を撫でていたら手がうっかりと平耳の内側に入ってしまった。


「うひゃう!」

「おぅ!……びっくりしたぁ。すいません起こしちゃいましたか」

「い,いや…構わない。だが,耳の内側は…やめて欲しい。び…敏感過ぎて変な声が出てしまう」


 敏感だということはそれだけ感じやすいということだからゆっくりと慣らしていけば…ってそんなこと考えるだけ無駄か。このままフレイをパーティとして迎え入れるつもりは今のところないし,今回のことはあくまで今宵限りと考えておいた方がいい。


「この平耳って聞こえるの?」


 何故そんなことを聞いたかというと,フレイには普通の人間が持っているような耳もちゃんと髪の中にあるからだ。この平耳が普通に耳として機能しているのなら耳が4つあることになってしまう。


「ん?あぁ。むしろ平耳族は鼻よりも耳の方が良い種族なんだ。だからいつもは聞こえすぎてしまうからこんな風に頭にくっつくように形が変化したんじゃないかと言われてる。

 人族と同じ場所にあるこの耳は疑似耳なんだ。この疑似耳で音を集めてはいるが実際にそれを聞いているのは疑似耳に向けられた平耳になる」

 

 な,なるほど…と言っても耳が2つしかない俺にはよく分からない。疑似耳で受けた音を骨伝導みたいにして平耳が拾ってるってことなのか?そうやってワンクッション入れることで聞こえすぎる音を調整しているのかね。


「ということは…直接平耳で聞くようにすればかなりの小さい音や遠くの音が聞こえる?」

「あぁ,だがそれは種族の掟で基本的に使ってはならないことになってるんだ」

「え,どうしてですか?」

「…いや,聞こうと思ったら村中の音が聞こえてしまうからな。個人の秘密も何もあったものじゃないだろ。だから私たちは対外的には絶対に盗み聞きをしないよう己を戒め,自己的には常に誰かに聞かれていても良いように誠実に対応することを心掛けているんだ」


 なるほどね。フレイの律儀な性格なんかはその辺からの影響なのか。それにしても村中って…そこまでなのか。それだけ強い力ならその能力を使わないのはもったいないな。

 街中とかは駄目でも……あ,これならいけるかもしれないな。明日ちょっと提案してみるか。


「あの…フジノミヤ殿。今日はありがとう。おかげで本当の意味で呪縛から解き放たれた気がするよ。明日から,いやもう今日からだな。またアルと2人でこつこつ頑張っていける」


 そういうとフレイは布団を身体に巻き付けつつ起き上がって夜着を探し始める。


「フレイさん?お手洗いですか?」


 このまま朝まで隣で寝ていくと思っていたので思わず問いかける。


「…夜が明ける前に貸して貰った部屋へ戻る」

「…えっとうちの仲間を気にしてる?」


 実は皆了承済みだと言ったらきっと顔を真っ赤にしてあたふたするんだろうなとちょっといたずら心が湧き上がるがそれは自粛しておく。


「まあ,それもあるが…これ以上一緒にいると……」

「…そっか。わかった」


 これ以上一緒にいるとまた依存してしまうとかそんな理由なのだろう。せっかく自立して再出発する覚悟をしたのにそれでは駄目だということか。『ソウ様の鈍感!』ん?なんとなく桜の声が聞こえたような気がするが気のせいか?


「そ,それではフジノミヤ殿。また後ほど…」


 そんなことを考えている間に夜着を纏ったフレイが部屋の出口へと向かう。


「っとちょっと待って。見送ります」


 慌てて下着だけを身につけた俺は扉の前で待つフレイの所へと歩いて行く。


「フジノミヤ殿。本当にありがとう。今日のことももちろんそうだが本来放っておけば良かったはずの私たち兄弟を助けてくれた恩は一生忘れない」

「えっと…だから私は何も知りませんよ?」


 あくまでもしらを切る俺を見てフレイはくすくすと笑いをこぼす。


「私は弟の所に薬が届いたとは言ったが……それが解毒薬だったとは一言も言わなかったんだが?」

「あ……」


 やっちまったぁ…毒のイメージが強かったからついこぼしてしまったらしい。考えてみれば確かにその会話の後でフレイが迫ってきた気がするな…そこで確信を持ったのか。まあばれたらばれたで別に問題はないんだけどね。


「えっと…対外的には秘密の方向で」

「わかっているよ。私たちの恩人が困るようなことをする訳にはいかないだろう」

「助かります」


 お礼を言っていたはずがいつの間にかお礼を言われている状況がおかしくなったのか柔らかい笑みを浮かべながらフレイが小さく頭を下げる。


「すまないな。結局またいろいろ面倒をかけてしまった」

「いえ,お役に立てたなら嬉しいですし。面倒どころか役得でした。またお願いしたいくらいです」

「本当か!…あ!いや!なんでもない…では失礼する」


 そう言ってそそくさと部屋を出て行くフレイを見送ると扉を閉め,欠伸をしながらベッドへと向かう。その途中窓の外を見ると空がうっすらと明るくなりつつある。結構な時間が経っていたらしい。


「ふあ…ぁ。それでもあと何時間かは寝られるかな」


 布団をめくってベッドに潜り込んで目を閉じようとすると,さも当然のように抱きついてくる物体がある。

 いつの間にと苦笑しつつ布団をめくる。


「へへへぇ…ソウ様一緒に寝ても良いよね」

「今日は寝るだけだぞ」

「わかってるってば」

「ん,じゃあおやすみ桜」

「ん,おやすみソウ様」


 軽く啄むようなキスをして桜を抱きしめるとそのぬくもりを心地よく感じる暇もなく眠りに落ちた。




「おはようございます,ご主人様。桜さん」

「おはようシス~」

「おはようシスティナ。フレイさんは?」

「はい。朝早くに起きてこられまして,トォルさん達を迎えに行くということで朝食も摂らずに出発されました。

お二人と合流した後,お昼過ぎくらいにこちらに来るそうです」

「そうするともうあんまり時間はないかな…」

「そうですね。軽く何かお出ししましょうか?」

「ん~そうだな…もうすぐ昼食だし,我慢するよ。蛍さんは?」

「『ちょっと出てくる』だそうです」

「はは…また修行かな。俺もしっかりやらないと蛍さんに愛想尽かされちゃうな。フレイさん達の件が片付いたら装備が出来るまでしっかり特訓しなきゃね」


 そもそもこんな時間になってしまったのは寝坊したこともあるが,起き抜けのマイサンがハッスルしていたのを見つけた桜の誘惑にあっさりと陥落した俺のせいだ。

 とは言っても気持ちよかったので後悔はしていない。


「まだ時間あるよね。ちょっとひと風呂浴びてくるよ」

「はい。そう言うと思って脱衣所に着替えとタオルを準備しておきました」


 さすがはシスティナである。俺の行動パターンを把握しているうえにそれに先回りをして的確な準備をしてくれている。その証拠にこの屋敷に来てからほとんど不便を感じたことがない。


「あ!じゃあ桜も入る!」

「はいよ。じゃあ行こうか。システィナも来る?」

「行きたいのやまやまなんですがご主人様がお戻りになられるタイミングで昼食を準備したいので我慢します。その代わり夜は御一緒させてくださいね」

「もちろん!じゃあ行ってくる。昼食楽しみにしてるからね」


 

 桜と室内風呂で汗を流し,さっぱりとして戻ってくるとちょうど食卓に昼食が並び終わったところだった。

 蛍さんはまだ戻ってなかったので3人でシスティナの料理に舌鼓を打ちお腹が膨れ,食後のティータイムを過ごしているところにフレイ達が屋敷へと到着した。



「先日はちゃんとしたお礼も出来なくてすまなかった。幸いアーリも領主が派遣した治療師に看て貰うことが出来てすっかり元気になった。だがシスティナさんの的確な回復術がなければ危なかったらしい。本当に助かった,ありがとう」

「塔の中は人が人でなくなるところ。人間同士での奪い合い,殺し合いも珍しくないのが実情です。そんな中危険を顧みず私たちを助けて下さったこと心より感謝申し上げます」


 フレイに連れられて来訪した3人をフレイと共に応接間に通すと着席を勧める前にトォルとアーリが頭を下げる。

 トォルは塔でもよく喋っていたのでなんとなく人となりは分かっていたが,重傷を負っていたアーリはほとんど喋る気力もなかったため普通に話をしているのを聞くのはこれが初めてだ。

 探索者にしては物腰も柔らかく言葉遣いも丁寧でなんでトォルなんかと一緒に探索者をしているのか不思議だ。


『トォル 業 –2

年齢:22

 種族:人族 

 職 :軽装剣士』


『アーリ・ステインベルク 業 -21

年齢:18

 種族:人族 

 職 :舞闘巫女』


 相変わらずこっちの世界の職がよくわからない。普通に剣士とか巫女でいいじゃないかと思うんだが。2人はまだましな方だが街中を何となく鑑定しながら歩いているとおかしな名前の職が普通にごろごろしている。

 職なんて実はあんまり関係なくて本人がそう思えばそれが職名になるだけという世界と言われた方がしっくり来る。


「いえ…フレイさんにも言ったことなんですが半分以上は自分たちのための行動だったのでそんなに気にしないでください」

「皆さん,立ったままというのもあれですからとりあえず座ってください」


 システィナが立ったままの面々に椅子を勧めて全員を座らせるとお茶の準備をしに台所へと下がっていく。

 甲斐甲斐しく働いてくれるのはもちろん嬉しいがなんかこき使ってるみたいだからもっと気楽にしていいと言ったこともあるが『家事は侍祭の仕事の中で最も大切な仕事なので命令でないのなら好きなようにやらせて下さい。』と言われてしまった。

 それ以来,感謝の気持ちだけは忘れないようにしようと心掛けている。


「ほら,アル。おまえもちゃんとお礼をしな」

「は,はい。この度は僕とお姉ちゃんを助けてくれてありがとうございました」


 今日我が家に押しかけてきたのは4人。フレイ,トォル,アーリ。そして最後の1人がフレイの弟だった。病み上がりのせいか線が細い印象が強い。だがフレイと同じ赤い髪とフレイ似の整った顔立ちはまさしく姉弟であり,一部のお姉様タイプから絶大な人気を得られそうだ。


「フレイさん。弟さんの体調の方は大丈夫なのですか?」


 冷えたリンプルティをテーブルに並べ俺の隣に腰をおろしたシスティナが心配して声を掛ける。


「ああ,薬を飲ませたら劇的に改善したんだ。長く寝込んでいたせいで体力は落ちているが病としては完治していると思う。今回はお礼がてら身体を動かす練習も兼ねてここまで連れてきたんだ。

 とは言ってもずっと歩かせた訳じゃなくて休憩を挟んだり負ぶって運んだりしながらね」

「そうですか。ちょっとよろしいですか?」


 そういうとシスティナは腰を浮かせて手を伸ばしてアルの額に手をかざす。きっと何らかの回復術を使うつもりなのだろう。

 俺は何の指示もしていないがシスティナがそうしたいと思ったのならもちろん構わない。

 これが普通の契約侍祭だと使用するにあたり,直接契約者の為にならない行為は契約者に直接伺いを立てて許可を得なければ何も出来ない。

 侍祭というのは大きな力を持てると同時に大きすぎる制約を背負うこの世界において一番異常な職だと思う。

 

「どうですか?」

「あ,はい…なんか身体が軽くなった気がします」

「一時的なものですが,寝たきりで身体が忘れていた元気な状態を思い出してもらうため少しだけ身体を活性化するように力を流しました。この感じを意識するようにすれば回復もいくらか早まると思います」

「はい!ありがとうございます」


 システィナはアルの頭を優しく撫でると再び腰を下ろす。


「お話の途中すいませんでした。ソウジロウ様」


 律儀に謝罪してくるシスティナの頭をぽんぽんと叩くとリンプルティを一口飲んでから改めて4人を見る。そのついでにアルも鑑定しておく。


『アルリック・ハウ  業 -3

年齢:14

 種族:平耳族 

 職 :裏方商人』


 ふむ…やっぱりアルは戦闘には向いてないか。で,裏方…何故普通に商人じゃダメなんだろう。


「で,皆さんは今後はどうする予定なんですか?」


 俺の問いかけにトォルはアーリと,フレイはアルリックと顔を見合わせる。

 その表情から察するに具体的なものは何一つ決まっていないんだろう。それならもしかしたら俺のおせっかいな提案が少しは役に立つかもしれない。


「決まってないんですね。確かにトォルさん達はバクゥさんを失った以上は今の実力じゃ1階層すら危ない。

 フレイさんは4階層までの経験と実力はありますが基本ソロのため1人で塔に入るにはいろいろ不安が残る…と」


 俺の皮肉とも言える物言いにトォル達もさすがに表情を曇らせる。バクゥの件はまだ触れられたくないデリケートな部分なのだろう。

 だが,真面目な顔で黙って見ている俺を見てアーリの口が小さく『あ』の形に開く。トォルはまだ分かっていないようだが,フレイは俺の言葉ですぐ意味が分かったらしくもじもじとトォル達の様子を伺っている。


「あのソウジロウさん。私達3人でパーティを組めばいいと言っていますか?」


 アーリの言葉に俺は僅かに笑んで頷く。トォルもそれでやっと気が付いたらしい。


「2人の経験不足をフレイさんなら補えると思います。そしてフレイさんにとっては信頼できる固定パーティに入れることはそれだけで価値があるはずです。

 最初は無理をせず1層辺りで連携などを確認する必要があると思いますが,この3人ならすぐに階層を上げることも出来ると思います」

「…なるほど。確かにそれなら。フレイとはここ何日かフジノミヤの捜索で一緒に動いて人となりは問題ないことは確実だしな」

「はい。何よりあの塔での事件を経験しているという共通項はパーティの絆を深めてくれます」

「わ,私はトォル達がいいのなら是非お願いしたい」


 もじもじとしながらフレイが希望を言ったところでこの話は決まりだ。


「3人とも新パーティ結成おめでとうございます」


 こうして俺のテコ入れで3人組の新パーティが結成された。

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