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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第2章

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30/203

新たなる魔剣

「これは気持ち良いですね…」

「父上,これはベイス商会で取り扱うべきではありませんか」

「そりゃあいい!出来れば職人達の慰労用に商会で1つ作ってくれると仕事もはかどると思うぜ」


 晩餐会の後に案内された露天風呂に浸かりながら風呂の魅力にとりつかれた会話をしているのはベイス商会会長のアノーク,その息子ウィルマーク,そして大工頭のゲントである。

 ベイス商会所属の大工職人全員とウィルさんとアノーク会長を招待しての晩餐会はシスティナの腕によりをかけた料理と飲み過ぎない程度のおいしいお酒で大盛況の内に終わった。お酒の量を控えさせたのはまだ湯に慣れていないこの世界の人達に泥酔状態で入浴させるのが怖かったためだ。


 晩餐会お開きの後,職人さん達を温泉へ案内した。職人さんには女性もいるしアノーク会長の笑う秘書も何人か随行していたので女性陣は室内風呂。男性職人達は露天風呂だ。

 最初はおっかなびっくりだった職人達も一度温泉に入ったらあっという間に骨抜きにされていた。たくさんの職人が疲れが抜けていくようだと口にしていたが,温泉による血行促進効果などでコリがほぐされたりしているはずなので実際疲労回復効果も出ているはずである。

 詳しい成分は分からないがどうやらこの温泉の泉質は肌に良いらしくシスティナのお肌は前にも増してツルスベになっている。そのことを桜が女性陣に伝えたところ女性陣も先を争うように風呂に飛び込んだらしい。

 満足してもらえたようで良かった。

 


「だが,このように都合よく湯の湧き出る場所など準備出来ないだろう」


 そう言ってアノークさんがタオルで顔を拭う。


「確かに温泉としては難しいと思いますが,お風呂という形自体は難しくないと思いますよ」

「本当ですか!」

「ええ,ようはお湯をたくさん入れた容れ物さえあればいいので,水魔石と火魔石をうまく併用して暖めたお湯をしかるべき場所に溜めれば沐浴場のようにお風呂に入るということを目的にした商業施設も作れると思います。

 そう言う場所を私の故郷では『銭湯』と言うんです」


 アノークさんの隣で温泉につかりながら銭湯について教えてあげるとアノークさんの顔が商売人の顔になっていた。


「確かに…湯を溜めるだけならば難しくはないか。

 ゲント!職人寮に試作の銭湯を作ることは可能か?」

「ちょっと待て…庭の一部に風呂用の小屋を建てて1階の倉庫と繋げて倉庫に魔石設備を……場所的には行けるな。魔石設備の設計なんかはそっちに任せていいのか?」


 自分たちが住んでいる職人寮の間取りなどを思い返して計算したのだろう。脳内でうまく図面が組み上がったゲントさんはにやりと不敵な笑みを浮かべている。


「構わん。あとで限界の大きさを秘書まで伝えておいてくれその範囲内でなるべく効率の良い物を設計して作らせる。ついでに必要な資材も今日中に伝えておいてもらえれば明日の午後には届くように手配しよう」

「よし!明日から何人かこっちに貰うぜ。リバル!ミナト!ジン!ターク!後は…テルとボルもだ。

 おまえらは明日から職人寮の銭湯設置を手伝え!テッツァ!他の仕事に穴開けないように奴らの抜けた分をうまく調整しとけ!」

『『『『『『わかりやした!』』』』』』


 ゲントさんから名指しで呼ばれた職人達は選ばれたことに加えて職人寮にも風呂が出来るということでかなりテンションが上がっているらしく威勢の良い返事が響く。


「親方,工期予定は?」

「この面子を集めた以上は4日はかからん。3日で十分だ」

「わかりやした。こちらは任せといてください」


 あっという間に話がまとまっていく様を見て呆気にとられつつもこの調子ならフレスベルクにベイス商会の大型銭湯がオープンするのはそう遠くなさそうだ。


「フジノミヤ様。

 昼間にお伝えしていた『魔工技師』と『魔道具技師』ですが明日,面会の約束を取り付けてあります。場所は後ほど秘書から例の地図と一緒にお受け取り下さい」

「ありがとうございます!今回みたいなことがあった時に今の装備ではちょっと心許なかったので装備の一新がどうしても必要だったので助かります」

「今回は『腕のいい』ということでしたのでフレスベルクの技師達を手当たり次第当たったのですが,その際に噂を聞きつけたのか面白い技師達が直接売り込みに来ました」


 フレスベルク中の技師達を当たってくれてたのか…本当にウィルさんにはお世話になりっぱなしだ。あまり1つのところと近づきすぎるのも良くないような気もするけどここまでいっちゃうといまさら感が強い。


「自分からフレスベルク一の技師は私だと売り込みに来たんですか。それは凄い自信ですね」

「その技師達は夫婦で魔工技師と魔道具技師をしてましてつい最近フレスベルクに工房を構えたそうです。

 ですがフレスベルクは世界中の魔工技師と魔道具技師が集まる所です。新参の技師が工房を構えたからと言ってすぐに客を獲得出来る訳ではありません」

「それはそうでしょうね…」


 何処の世界でも顧客を掴むのは難しい。どんなに料理がうまくても客の入らない店など日本にもたくさんあった。

 顧客を得るためには緻密な営業戦略が必要なのだ。


「私が見る限り腕の方は悪くはないと思います。この街でも上位に入ると言っていいはずです。

 私がわざわざ名前の売れてないこの夫婦をフジノミヤ様にお勧めするのは,名前が売れてないだけにこの夫婦には時間があるからです」

 

 時間…時間か。なるほど,さすが大商人の跡取りは実利の取り方がうまい。


「一番人気の一流技師よりも人気のないギリギリ一流技師の方が俺達の役に立つと?」


 俺の言葉にウィルさんが笑みを浮かべる。


「人気のある店の技師は顧客も多くお得意様と呼ばれるような客もそれなりに抱えています。

 私達がベイス商会の名前を使ってフジノミヤ様達を紹介したとしてもフジノミヤ様達が求めるような最良の物を時間をかけて作るような余裕はありません。

 申し訳ないですがそこまでの力は我が商会にもありません」


 ウィルさんの言っていることは良く理解できる。昔からの顧客達を袖にしてまで新参の探索者の仕事を優先すれば今までの客を失い兼ねない。

 となれば店の在庫のなかからそれなりに良い物を普通に売ってくれるだけか,弟子達を使ってお茶を濁す程度の対応が良い所だろう。それでもそれなりに満足のいくものが手に入るような気がするが…


「ですがこれから名を売ろうとしている一流になりたてくらいの技師ならばフジノミヤ様達の要望を余さず聞き取った上でそれを完全に取り込み,あわよくばそれを上回るような物を作ろうとするでしょう。

 それを持ったフジノミヤ様達が活躍すればするだけ自分たちの名前が売れることになりますから。そして彼らにはその為に費やすための時間と意欲が有り余っています」


 ウィルさんの考え方は俺にとっても物凄く納得できるものだった。そのウィルさんがこの人達ならと決めて紹介してくれるなら100%信頼しよう。


「どうやら最高の人達を見つけて貰ったみたいですね。本当にありがとうございました。

 お礼という訳ではないですが…お父上共々またいつでも温泉に入りに来てください」


 俺の半ば冗談で言ったこの温泉入浴権にアノークさんがガチで喰いついていたのがちょっと怖かった。



◇ ◇ ◇


「という訳で,明日ウィルさんが紹介してくれた技師さん達に会いに行くから各自でどんな装備が欲しいのか考えておいてほしい。

 今回は魔材装備や魔道具まで考えて装備を揃えて行こうと思う。お金の方は正直足りるかどうか分からないけどあんまり妥協しないでいこう」


 入浴会が終わって後片付けが終わった後,俺は全員をリビングに集めて明日会う技師さん達のことについて伝えた。


「私らはのことはあまり気にするな。ソウジロウとシスティナの物を優先しろ」

「蛍さん。今回は『全員分』だよ。もう二度とあんな光景はみたくないからね」

「む!……」


 蛍さんが唸って黙り込む。さすがにあの戦いでの自分の惨状を思い返せば必要ないとは言えないだろう。


「防具が蛍さんの邪魔になるというのは分かるけど…邪魔にならない範囲で検討して欲しい。蛍さんのためにとは俺なんかが言う資格はないけど俺の為にお願いします」


 俺のような未熟な弟子が師匠の戦闘スタイルにケチをつけるなんて本来ならとんでもなく失礼なことだろう。だが俺は安心が欲しかった。あの蛍さんが防具までつけているんだから大丈夫だと思い込みたかった。


「…分かったよ。ソウジロウ。お前をそこまで不安にさせてしまったのは確かに私が無様な姿を晒したせいだからな」

「ありがとう蛍さん。桜もいいよね?」

「もちろんいいよ!桜もソウ様が傷ついたら悲しいもん。ソウ様も桜のことそう思ってくれてるってことだもんね」


 良かった。取りあえずどんな装備が作れるのか分からないけど少なくともあのドラゴマンティスと互角に戦えるくらいの装備は欲しい。


「じゃあ一応全員の技能とかを改めて確認しておこうか」

「そうですね。きちんと自分の能力にあった装備を準備しないとかえって悪影響が出るかもしれませんし。じゃあ私からいきますね。


≪顕出≫」


システィナ  業: -42  年齢: 16

職 :侍祭(富士宮総司狼) 

技能


家事

料理 

育児

契約

斧槌術 

護身術

護衛術

回復術+

交渉術

房中術


特殊技能:

叡智の書


 全員に見えるようにシスティナが移動させた窓を見て驚く。システィナに新しく『斧槌術』というスキルが増え,回復術が+になっていた。

 刀じゃなくても経験を積むとスキルが強くなるのか…でも裏を返せばそれだけドラゴマンティス戦が過酷だったことの証明だろう。


「システィナはとうとう戦闘技能を得たのじゃな。これからますます楽しみじゃのう」

「うん。システィナも蛍さん達に負けないくらい凄いよ。この斧槌術って今使っているような武器にしか効果無いのかな?」

「…いえ。書で調べてみたら斧と槌両方に作用する技能のようです」

「そうなんだ。じゃあシスティナは今の武器を強化するか新しく斧や槌の武器が必要になるね」

「はい。今使っているアックスハンマーもやっと馴染んできたところなのでうまく強化出来る様なら強化したいのですが…」


 気持ちは分かる。俺だってバスターソードが折れてなければもっと一緒に戦いたかった。だが強敵相手にダメージを通せなかったという現実はそんな感傷が許されないということを証明している。


「明日その辺も確認してみよう。じゃあ次は蛍さん行くね『武具鑑定』」


蛍丸 ランク:S++

錬成値(最大)

吸精値 44

技能:


共感

意思疎通

擬人化

気配察知+

殺気感知+

刀術+

身体強化+

攻撃補正+

武具修復

光魔法+ 


「え…」

「どうしたソウジロウ。読み上げてくれぬと分からぬぞ」

「…あ,ごめん。錬成でランク上がってないのに技能のレベルが上がってたからちょっと驚いちゃって」

 

 てっきり刀達は錬成でランクを上げないと強化は出来ないと思っていたのでかなり衝撃だった。ていうことは蛍さんの吸精値がいつか最大になったとしてもそこが限界だと考えなくてもいいってことか。もちろん簡単なことじゃないんだろうけど…ここのところの蛍さんはかなり激しい鍛錬をしていたみたいだからそのせいだろう。


「ほう…それは刀術と光魔法ではないか?」

「え!確かにその通りだけど分かるの?」

「なんとなく…な。今回の鍛錬はその二つを徹底的に鍛えたつもりだったというのもあるしな」


 やっぱり蛍さんは凄い!俺もうかうかしてられないな。自分の武器が手に入ったら蛍さんにちゃんと刀術を教わらないとな。


「じゃあ蛍さんはやっぱり防具主体かな」

「うむ。後はちょっと思いついたこともある。その辺も聞いてみるとしよう」

「わかった。じゃあ次は桜いくよ『武具鑑定』」


桜  ランク:B

錬成値 31

吸精値 52

技能:


共感

意思疎通

擬人化

気配察知

隠形

敏捷補正+

命中補正

魔力補正

火魔法


「うん,桜は大きな変化はないね。装備の方針としてはくノ一が装備しているような形の薄い帷子とか籠手とかがあるといいね」

「桜は忍者頭巾が欲しい!」


 え?忍者頭巾てあのイカっぽい形の目だけ出してます的な頭巾?あれって顔を見られないようにするためだけのもので防御力的には0じゃないのか?

マジでぶれないな桜は…でも鉢金的な頭部防具は有りかもしれないのでそれも候補にいれておこう。


「じゃあ最後は俺か…≪顕出≫」


富士宮 総司狼  業:-5 年齢:17

職 :魔剣師 

技能:


言語

読解

簡易鑑定

武具鑑定

手入れ

添加錬成

精気錬成

魔剣召喚(1)


特殊技能:

魔精変換



「ご主人様…これはもしかして」

「ほう…なるほどのぅ。ここでこんな技能が発現するのか」

「これってもしかして桜の家族がまた増えるってこと?」


 俺の窓を見た女性陣が思い思いの感想を口にする。

 その声を聞きながら俺はこの世界にくる直前に聞いた神の最後の言葉を思い出していた。


『向こうで頑張ってくれたら,きっとまた会えるよ』


 あいつは確かにそう言った。こういうことだったのか…俺が頑張ってこの世界で生きれば生きるほどあの蔵にいる刀達を…


『魔剣召喚』


 俺は何の迷いもなくスキルを発動した。

 俺の中の魔力がごっそりと減っていくのと比例して目の前の空間に光が凝縮していく。

 その光は蛍さんが作り出す魔法の光とは質が違う。その光はあの神と話した空間に満ちていた不思議な光に近い。

 その光がどこからか発生し目の前に集まっていく…そして集まり切ったその光が弾けた時一本の刀が俺の目の前に浮いていた。



 その刀は俺が手に取ると宙に浮いていた不思議力を失ったらしくこの手に重厚な重さを伝えてくる。


「ふん,また随分と年増が来たものよの」

「蛍さんこの刀知ってるの?」

「あの蔵にいた者達は全て同胞のようなものだと言っただろう」

「うん,そうだったね。あの空間にいた日からまだ一ヶ月も経たないのに随分と懐かしく感じる」

「それだけ充実しているということなのではないか?」


 蛍さんの言葉に俺は頷きながら思わず口元が緩む。

 確かに可愛い侍祭様や大好きな刀達と一緒にいられるし,その刀を使って悪人を斬っても大丈夫だし,そしてなによりも夜の生活が充実しまくっている。

 これで充実してないと言ったらバチがあたる。まあこの前のように命の危険にさらされることもあるが,それでもこちらの世界に来てからは毎日が楽しくあっという間に過ぎていく気がしている。


 そしてまた新しい刀との出会い。もちろん蔵の中では見たことがあるんだろうけど鞘に納まってる状態じゃ思い出せない。

 といっても一本一本の刀の銘を知っている訳じゃないんだけどね。有名だと言われる刀の名前は大体知ってるけど鑑定のようなことは出来ないから実物を目の前にしてもそれがなんて言う刀なのかを判断出来ない。ただ良い刀は綺麗だったり格好良かったりするのでそれを楽しむのが俺の日課だった。


 俺はゆっくりと鞘から刀を抜いていく。

 日本刀特有の光沢が灯りに照らされてきらりと輝いている。これは…蛍さんの隣に飾ってあった刀だ。

 刃長が大体70㎝位か…蛍丸よりは短い。反り身の刀で刃先に行くに従ってちょっと細くなっている…この刀も綺麗な刀だった。

 蛍丸とどっちを選ぶか最後まで迷った結果蛍丸の方が長くて大きかったから蛍丸を選んだんだった。

 ただ今のところこの刀からは気持ちが伝わってこない…共感をまだ覚えてないのかもしれない。


『武具鑑定』


日光助真 ランク:C+

錬成値 21

吸精値  0

技能:


共感

意思疎通

威圧

高飛車

魔力操作

適性(闇)


特殊技能:

唯我独尊


「ぶぉ!…あのジジィ!これも国宝じゃねぇか!しかも日光東照宮にあるはずの刀をどうやってキープしてやがった!

 なんてやろうだ!肩揉むぞこのやろう!ていうか全身マッサージしてやるぞゴラァ!」


 日光助真は鎌倉時代に作られた名刀で最終的には加藤清正から徳川家康に献上されたことになっている刀だ。そして現在は徳川家康の佩刀であったことから家康の墓所であるとされている日光東照宮に保管されているはずの物である。

それなのに本物がここにあるということは東照宮の刀は偽物ってことになる。それをやったのが祖父なのか曾祖父なのかそれとも別人なのかは知らないが関わった奴ら全員に肩たたき券を腐るほどプレゼントしてあげたい。あえて言おうグッジョブと!


「あ,あの…ご主人様大丈夫ですか?何をそんなに怒っているのでしょう」

「あはははは!違うよシス。ソウ様は喜びすぎてテンションがおかしくなってるだけだから放っておいて大丈夫だよ」

「はぁ…てんしょん,ですか」


「ふむ…それにしても何も感じぬな。こんな年増なぞ使ったらすぐ折れてしまうのではないか?出来ることなら送り返して新しい刀と取り替えてもらうがよいぞソウジロウ」

 

 刀の鑑定結果を聞いた蛍さんがにやりと笑ったように見えたのは気のせいだろう。

年増…か。えっと確か日光助真は鎌倉時代くらいに作られた刀だったよな…蛍さんは鎌倉の後の南北朝時代だったはずだから…確かに蛍さんより年上だ。

 

「刀としても女としてもぴちぴちラインはぎりぎり私までじゃろ。それより年増はばばぁ扱いで充分。本人もそう思っておるから恥ずかしゅうて声も出せんのだろうよ。ソウジロウ,お前も男なら女が老いさばらえた姿を見せたくないという思いをわかってやれ。

いつまでも晒したままにするのは哀れというものだぞ」


 えっと…ずっと隣に飾られてる間に2人の間になんかあったのか?もしかしてすっごい仲悪いとか?

 ていうか蛍さんクラスの刀同士がマジでやりあったらヤバいことになるから喧嘩とかやめてほしいんだけど…


「それになソウジロウ。私はなんだかんだ言って結構戦場を渡り歩き続けてきたがこやつは早々に権力者の手に収まったせいで戦闘経験が年の割に足りんのじゃ。だから私の時と比べて今のランクが圧倒的に低い。

 蔵でさんざん年長者ぶっておったくせに地球でソウジロウに選ばれたのは私。いざこちらへ来てみたら私との能力差は歴然。それでは恥ずかしくもなるだろうさ」


『…………………………


うっきぃぃっぃぃぃぃぃぃ!!!もう我慢なりませんわ!

 黙って聞いてれば言いたい放題言ってくれますわね。年下のくせに相変わらず口が減らないですわね。あなたは!!

 そもそもわたくしは年増でもなんでもないですわ!刀はきちんと手入れさえされていれば劣化しませんのよ!それにですねわたくしはあなたみたいに野蛮じゃないだけです!

 わたくしにはあなたがその野蛮な力を身に付けるために捨ててきた淑女として気品があるのですわ!女としてなら圧倒的にわたくしの勝ちですのよ!』


 お,おぉ…そういう感じの人なのか。

 ていうか蛍さんめっちゃ笑い堪えてるし…あれは完全におちょくってるな。おそらく蔵の中でもきっとあんな感じでいつもやりあってたんだろうな。

 あんなに楽しそうな蛍さんは初めて見た。

 

 それはともかくまずは名前を変えてあげたい。どうやら女であることを宣言してるし助真とか呼ぶのは女の子らしくないし,俺も呼ぶのは嫌だ。


「えっと…いいかな?す…助真?」

『あぁ!わたくしとしたことがあんな山猿の挑発にのって主殿あるじどのとのご挨拶をないがしろにしてしまうとは!申し訳ありませんでしたわ主殿』

「あ,うん。それは別にいいよ。なんだか蛍さんも楽しそうだし…」

「くくく…あぁ,確かに楽しいのぅ。手も足も出せない年増の僻みや言い訳を鼻で笑い飛ばすのは最高じゃの」

『くっ…覚えてなさいよ山猿!わたくしが人化できるようになった暁には絶対にただじゃおきませんからね!』


 ああ!もう!話が進まん!


「蛍さん!ちょっとからかうのは後にしてくれる?助真と話したいことがあるから」


 蛍さんは笑いを堪えながら何度も頷く。助真をからかうのが本当に楽しいのだろう。


「えっとまずは,名前を付けたいんだけどいいかな?助真てどう考えても女の人の名前じゃないよね。鑑定上の名前まで変えられるかどうかは分からないんだけど,少なくとも俺が呼ぶ呼び名は別につけてあげたいんだけど」

『あら素敵ですわね。わたくしは主殿につけて頂けるならどんな名前でも構いませんわ』


 助真の了解が得られたところで…さてどうしよう。

 蛍丸は蛍自体が良い名前だったからそのまま蛍さんにしてるけど,桜は多分俺がちゃんと命名したから桜になったんだろうから鑑定上の名前も変えられるはず。

 だったらちゃんとした良い名前を考えてあげたい。

 蛍,桜と来てるから漢字1文字がいいかな…日光助真だから『光』とか?いやピンと来ないな。じゃあ蛍さんに対抗して虫つながりで『蝶』…も違うか。

 それにしても徳川家康の刀かぁ…凄いの召還したな。俺の引き運もまだまだ捨てたもんじゃない。ん?待てよ…徳川,徳川か!


「よし!助真。おまえは今日から『葵』だ」

『あおい?…葵ですか!それは本当に素敵な名前ですね主殿。有り難く拝命いたしますわ』


 聞こえて来る葵の言葉は本当に嬉しそうだ。葵の由来としては徳川家の家紋が三つ葉葵だったからそこから取っただけなんだけどね。

 でも徳川の刀として300年,幕府滅亡後もあわせれば400年以上徳川と関わってきたんだからそのアイデンティティは大事にしてあげたい。


「うん。これからよろしく頼むよ。ちょっと前にいろいろあって俺が使う武器が無くなって困ってたんだ。葵が来てくれてとても嬉しい」

『はい!おまかせくださいですわ。

 わたくしがあの山猿より役にたつことを証明してみせます』

「っていうか現状がどうゆう状態だか理解してるのかな?」

『いえ!全く!』


 ………


 うん,蛍さんがからかいたくなる理由がなんとなく分かった。


「後でおいおいこの世界のこととか,俺たちが今どういう状況なのかを教えていくけど大事なことを1つだけ」

『はい』

「つい最近,俺たちは1人残らず死にかけた」

『え?…あの山猿もですか?』

「蛍さんも桜もだ」

『桜?あぁ,あの子は桜と名付けて貰ったのですね…

 主殿,この世界はそれだけの戦いをしなければならない世界だと?』

「うん。だからもしかしたら葵にも無茶な戦いをさせてしまうかもしれないけど……

それでも黙って俺についてきて欲しい」


『……蛍』

「なんじゃ…葵」

『この子は本当に…あの刀が大好きだっただけのあの子なのかしら?』

「あぁ,間違いなくあの子はこのソウジロウだ」

『これがわたくし達のあるじなのですね』

「格好良かろう?」

『…ええ。ほんの僅かな間に立派に男になったようですわね』

「くくく…その成長過程を見逃したのはくやしかろう?」

『そう…ですわね。

…いや悔しくはありませんわ。あそこにはまだこちらに来られない同胞が幾本もいますもの。わたくしなんかは幸せ者ですわ』


蛍さんと何やら話していた葵が続けて思念を飛ばしてくる。


『主殿。わたくし葵は主殿に全てをお預けいたしますわ。思う存分使って下さいませ』

「うん,ありがとう葵。これからよろしく頼む」

「ふん,男を見る目は腐ってなかったようじゃな」


 なにやら呟いた蛍さんの言葉は取りあえず無視して…っとその前に俺の『窓』が出っぱなしだった。


「あれ?」


富士宮 総司狼  業:-5

年齢:17

職 :魔剣師 


技能:

言語

読解

簡易鑑定

武具鑑定

手入れ

添加錬成

精気錬成

魔剣召喚(0)


特殊技能:魔精変換 


 魔剣召喚が0になってる。…ということはさっきの1はレベル的なものじゃなく残り使用回数だったってことか。どういう基準で増えるのかは分からないけどスキル自体は消えてないからまたいつか使えるようになったらあの子達を呼べる。

 刀達をなるべくたくさんこっちに呼ぶというのをこの世界での目標の1つしよう。お風呂作るって目標は達成しちゃったし丁度いい。

 それはそれとして…葵のこのスキルどうやって使うものなんだろう。


「葵,自分の技能ってどんな技能なのかって自分で分かる?」

『威圧だの高飛車だの唯我独尊だの納得いかない部分は多々ありますが魔力操作というのはなんとなくわかりますわ。ちょっと見ててくださいませ』


 そういうと葵はなにやら集中し始めた。


「ええ!これって!」


 その結果はすぐに見える形になった。俺の前に黒い塊がふよふよ浮いているのだ。


『多分これが魔力なのでしょう?』


 なるほど,葵は蛍さん達より更に魔力の扱いがうまいってことか。適性というのはおそらく操作した魔力に属性を付与できるということだろう。

 なぜ闇魔法じゃないのだろう。イメージを具現化して現象を引き起こすなら闇魔法スキルにしても同じのはず…まあいいか。どっちにしろ刀のままじゃたいした効果は期待できないはずだ。

 


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