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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第7章

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領主会議

「さて、すみませんがお配りしたものにはまだお手を触れないようにお願いします」

「ぶふっ! やけにもったいぶりますねぇ」


 自分の前に置かれたアイテムボックスをさっそく手に取ろうとしたダパニーメの豚領主エイビズが、鳴き声のような笑いをこぼして肉を震わせる。


「失礼を承知で言わせていただきます。こちらの道具は皆さん方の常識の外にある画期的、かつ革新的、衝撃的な道具です。この存在が世の中に知れ渡れば確実に世界が変わります。そこには利を得るものと、害を受けるものが存在し、表と裏で争い事が増える可能性があります」


 発案者としては、ちょっと言いすぎじゃないかと思わなくもないが、アノークさんが領主会議で断言するくらいだから……あれ? 結構やばいものだった!


『はぁ……主殿。あれほどウィル殿やディラン殿がおっしゃっていましたのに理解していませんでしたのね』


 扉の外にいても俺との【共感】は生きているらしく葵が溜息交じりの感情を送ってくる。


『いや、だって……そんな世界に影響与えるほどとは思わないでしょ。せいぜいたくさん儲かるなぁ、くらいだったよ』

『まあ、アイテムボックスが世界に与える影響を最小限にしながらも、開発者としての最大限の利益を得るための今回の会議ですわ。しっかりと聞いておいてくださいませ』

『ははは……了解』


「へぇ、ベイス商会の会頭がそこまでいうものですか……研究しがいがありそうですね」


 インタレスの白衣領主、ウーラが舌なめずりをしている。白すぎる肌には不釣り合いなほどの赤い舌がちょっと不気味だ。


「ご期待には添えると思います。ここで私たちが考えるこの道具の普及の仕方についてご説明させていただきます。その説明を聞いたうえで、ご賛同いただければこちらの侍祭による【契約】でその内容を遵守してもらいます。この時点で【契約】を拒否されるのであれば、申し訳ありませんがご退出をお願いすることになります。もちろん目の前の道具もお渡しできません」

「ほっほっほ、ということは【契約】をすれば、これがどんな凄い道具であっても無償でもらえるということかな?」


 ルミナルタのインチキ神官領主のカミルが浅ましい視線を向けてくる。


「はい、それどころかもうひとつずつ差し上げる準備がございます」

「ほっ! 世界を変えるような道具をふたつももらえるとは……さすがはベイス商会、腹が太いのぅ」

「いえ、その理由はこれからの話を聞いていただければご理解いただけると思います。では、説明に入らせていただきます」


 一度領主たちを見回して、反対意見がないのを確認したアノークさんがゆっくりと説明を始める。


「こちらの道具は、特殊な素材と、高度な技術で作成されています。現在この道具を作成できる技師はある工房の技師だけです。そのため、作成できる数には限りがありますし、工房での直接の販売は欲に目のくらんだ者たちに襲われる危険もあるため、こちらの工房が作成したこの道具の販売に関する一切はベイス商会が取り仕切ることになります。最初は値段もつけられないため、オークションで販売します。まだ未定ですが、最低入札価格は低く見積もっても百万マールほどになると思います」


 おお、百万マールっていえば約一千万円……たっけぇ。


「うひょぉ! 高いねぇ。それだけあれば何人の美女に宝石を買ってやれるかね。それだけの価値があるようには見えないんだけどな」


 アーロンのたらし領主アムラが、大げさな仕草で肩をすくめる。いちいち金髪をはらう動作がウザい。


「そのあたりもオークションの結果が証明してくれると思います」

「……なるほどね、ごもっとも。続けて」

「はい。オークションは冒険者限定と、商人限定、無制限参加と三種類で行い、それぞれ十から二十ほどを最初は販売いたします。このオークションの告知や開催における一切もベイス商会で総力をあげて執り行わせてもらいます。オークション後は購入者が道具の有用性を広めてくれると思いますので、オークションでの価格を基に値段設定して、ベイス商会を窓口にして完全注文販売をさせていただく予定です」

「ふん、在庫として手元に置いておくのは危ないってことかい? 慎重だね」


 ジェミナザの長生き領主、ロマリナが片眉を上げて綺麗な青い瞳を見せる。


「はい、いずれ数が出回るようになればそのようなことは必要なくなると思いますが、最初は慎重にやらせていただきます」

「構わないよ、アノーク坊やがそこまでやらなきゃいけないものなんだろ。あたしに文句はないよ」

「ありがとうございます。……あと、坊やはやめてくださいロマリナ様」

「はん! あの鼻たれ小僧がいまや会頭かい。あたしが年を取るわけだよ」


 どうやら、アノークさんと領主ロマリナは面識があるらしい。それもそうか、交易都市の領主と大商会であるベイス商会の会頭、面識がない方がおかしい。ただ、二百歳を超えているだけにずいぶん昔から知っているみたいだけどね。

 アノークさんは苦笑いを浮かべながらも、咳払いひとつで気持ちを立て直したらしく説明を続ける。


「ここからが、本題です。現在この道具を作ることができる技師たちは、製法については極秘のため公開しないということを表明しています。ですが、いくら隠そうとしても秘密は漏れていくものですし、隠そうとすればするほど知りたいと思うのが人の心でしょう」

「うむ、真理だな」


 なんかしゃべらないとまずいと思ったのかレイトークの筋肉領主、イザクがもっともらしいつぶやきを漏らしている。いや、無理にしゃべらなくてもいいから。


「そこで、皆さまがたには技師の身の安全を確約していただきたいと思います。技師に対する一切の接触を【契約】で禁止させていただきます。もちろん領主から指示を受けた第三者も同じ、領主の意向を無視して勝手に動いたというような言い逃れもできないように厳しく条件を設定させていただきます。どうしても接触を持ちたい場合はベイス商会を経由していただきます」



「ぶひ! 領主たるわれらにそこまでさせるのか!」

「領主である皆さまだからこそ! そこまでさせていただきます。その意味は聡明な皆さまなら当然おわかりですね」


 人材や人脈、そして金と権力、これらをすべてを持ったうえで、もっとも悪用することが容易な立場にあるもの。本人にその気があるかないかに関わらずその条件を満たしてしまう立場にあるのが領主たちだ。その自覚がないなんてことはありえない。


「妥当な言い分だ。私は観照師としてその者の言葉を肯定しよう」


 いままでピクリともしなかったミレストルのおじさま領主が突然目を開くと厳かに宣言する。その宣言がなされると同時に不満たらたらだった豚領主は吐き出そうとしていた言葉を飲み込んで、忌々し気な顔で背もたれに沈んだ。


(システィナ、観照師について教えて)

(はい、観照というのは物事の本質を客観的に見ることです。この職にある人が肯定したことは予断の入る余地のない公正なる真実として見なされます。それに異議を唱えるということはあまりよいこととはされません)


 なるほど、っていってもよくわかんないけど、とにかく公平な感じの人なのね。となると業が0だったのもなんとなく納得だな。


「さて、皆さまに選んでもらいます。技師たちに一切干渉せず、他者にも干渉させない、技師たちの情報を漏らさない。それを【契約】してくださるのならば、目の前の道具に加えてもうひとつ同じものを贈呈させていただきます」

「それははつまり……技術提供はしないけども、こっちで勝手に調べて再現するのは構わない。その調査用に分解しちゃってもいいように、ひとつ余分に道具をくれるってことよね?」


 どこがツボに入ったのかはわからないが、白衣領主が歓喜に身震いしている。


「お渡ししたものをどのようにあつかわれても、こちらはなんら関与することはありません」

「ほっほぅ、それならば拒否する理由はないのう……最低でも二百万マールはするものを無料(ただ)でくれるというんじゃからのう。お布施としてありがたく頂戴するまでじゃ」

「ま、そうだね。そんなに凄いものなら確かに製法は気になるところだけど……いまのところそこまで価値のあるものかはわからないし、独自での調査は自由だってんだからこっちにはメリットはあってもデメリットはないし。それにそんなものがふたつももらえるなら、ここぞというときの口説きのアイテムに使えるのはでかいね」


 インチキ神官領主とたらし領主が真っ先に賛意を示す。それぞれ金と女で理由は違うみたいだが、自分たちの欲望に素直に従ったことになる。


「あたしも問題ないよ。アノーク坊やが無体をするとは思わないね」

「私も従おう」


 次に賛意を示したのは長生き領主のおばあちゃんと、おじさま領主だ。このふたりは職を見る限り、不正などには厳しそうだが、アノークさんは正直ベースで商人として真摯に対応しているから断る理由がないのだろう。


「私も勿論、【契約】します。こんな魅力的な研究対象を逃すなんてありえません!」

「…………ぶぎ! 仕方あるまい。ここで私だけが足並みを乱すわけにもいくまい」


 白衣領主はかっこうの研究対象を見逃すわけもなく、豚領主もこの場でごねるのは得策じゃないと判断して即座に尻馬に乗った。


「うむ、私も異論はないな。そこの侍祭たちと面識もあり、信頼できることはわかっているからな」

「勿論、私もです。もっとも私に関してはすでに道具の詳細を知っているので【契約】することは確約済みですが」


 そして、今回の発議に関してすでにアイテムボックスを知っているセイラはもとより、筋肉領主のイザクも当然のように賛成の意思を表明する。これで全領主から【契約】をとりつけることができる。


「ありがとうございます。それでは【契約】を執り行わせていただきます。侍祭様、よろしくお願いいたします」

主様(あるじさま)、よろしいですか?」

 

 アノークさんに声をかけられたシスティナはその言葉には応えず、すっと俺の隣に出て膝を着くと頭を下げたまま俺に許可を求める。いつもと違う雰囲気のシスティナに思わずぞくぞくしてしまうが、なるべく威厳があるように気を付けつつ……


「許可する」

「かしこまりました」


 じつはこの辺のやりとりは普通の契約者と侍祭であるように見せるための演出だ。いつもならシスティナの判断でやっちゃうし、許可を求められても『じゃ、よろしく』くらいのもの。さすがにこの場でそれはまずいと言われてしまったので体裁を整えざる得なかった。


「それでは技師の方たちをご案内してください」

「はい」


 室内に控えていた侍女が扉の向こうに待機していたディランさんとリュスティラさん、そして葵を室内に招き入れる。三人は堂々とした態度で入ってきて、アノークさんの右隣にディランさんが座り、その後ろにリュスティラさんと葵が立つ。どっしりとしたディランさんの後ろに長身のふたりが立つと、いい感じに迫力があって、場の雰囲気に負けていない。


「それでは……」


 システィナが静かにつぶやき、すっと右手を前に伸ばすと各領主の目の前に契約書が表示される。内容は侍祭しか読めない文字で書いてあるので何が書かれているかは読めないはずだ。


「内容は、ここにいる技師たちに一切干渉しない。これはあなたがたから指示を受けた第三者にも及びます。そして技師たちの素性を秘密にすること。そして、その約定と引き換えにこちらの魔道具を譲渡するというものです。もし、破った場合は重い罰がくだることになります。ご理解のうえ署名をお願いいたします」


 本来ならディランさんたちは顔をさらさずにいてもよかったと思う。だが、システィナの【契約】の際には実際の人物を見せておいたほうが確実らしい。例えば『フレスベルクの魔導具技師ディランに~』と条件付けをしても、同姓同名同職の人物がいないとも限らない。でも『いまここにいる魔導具技師ディラン』には曲解を及ぼす余地がない。この場の全員に、いま入ってきた三人がこの魔道具の作成者だという認識を与えることができる。


「かわいこ侍祭ちゃんを疑うわけじゃないけど、一応確認させてもらうよ。テリオス殿、ロマリナ殿、この契約書に不正はないかい?」

「……この契約書を肯定する」

「あたしの勘を頼りにするなって言ってるのにねぇ……たぶん問題ないよ。ほら署名、信用するかどうかはあんたらが決めな」


 読めない契約書を鵜呑みにしなかった、たらし領主は観照師のおじさま領主と、調停者の長生き領主に確認を求める。でも、観照師であるおじさま領主に意見を求めるのはまだしも、長生き領主に意見を求めるのはどうしてだろうか……【読解】上の職はわからないはずなのに。まあ長い間、豪商としてさまざまな契約に関わっているうちに不正を見抜く目があるとか思われているのかもな。

 そして、おじさま領主が肯定し、長生き領主が自ら署名したことで安心した他の領主も次々と署名をしていく。


 これでやっと、アイテムボックスをお披露目するための準備が整ったことになる。



「ご協力ありがとうございました」


 領主全員が契約書にサインをしたのを確認したアノークさんは丁寧に頭を下げる。ちなみにこの部屋にいるフレスベルクの関係者にも同じ契約をしているため、この部屋の中にいるアイテムボックスを知らない人間は全員同じ条件下にある。


「お待たせいたしました。では、目の前の道具を是非、お手に取ってみてください」


 アノークさんはなんの説明もせず、領主たちにまずアイテムボックスを手に取ることを勧めた。口で説明するよりもまずは体感してもらったほうがインパクトがあるということか? ただ、初見でなんの知識もなくモノだけを見てその性能に気が付くかどうか。この行動だけでも領主たちの性格や知識レベルのようなものが計れそうな気がする。


「待ってました!」


 まず最初になんの躊躇いもなくアイテムボックスに飛びついたのは、やっぱり白衣領主ウーラだ。それを見た他の領主たちは一瞬伸ばしかけた手を止める。危険があると思っているわけではないだろうが、得体の知れないものにわざわざ最初に触れる必要もないということらしい。


「ふむふむ、見た目はただのポーチだね……手触りも普通の革、頑丈に作ってあるけど特に変わった仕掛けがあるわけじゃないね」


 ウーラはそんな領主たちの思惑など眼中にないらしく、アイテムボックスをまずは外側から嘗め回すようにチェックしている。


「普通のウエストポーチにしか見えないが……中に何か四角い物が入っているね。ということはこっちがメインってことかい?」


 ウーラは舌なめずりをしながらポーチの蓋、チャックなんてものはないから上部を覆い隠せるようにしてある蓋を外側の下部にあるボタンで留めるようになっている。そのボタンをウーラはなんの警戒心もなく外す。


「あん? ポーチの中に箱? これがなんだっていうんだい、こんなものが最低百万マール? ……いやいや! こんな領主会議で出すようなものがそんな小物入れレベルなわけはない。だとすればこいつこそが本命……」


 ウーラの大きすぎる独り言、それを残りの領主たちは興味津々で拾っている。目を閉じて腕を組んだままのおじさま領主ですら、ほんの少しだけ体がウーラに傾いているのが笑いを誘う。


「……へぇ、不思議な素材だね。石のように見えるけど、微妙に魔力を纏っているような気もするしそのへんは帰ってから要確認か。あとはなぜか箱の入口が狭く作ってある……これじゃあ小さなものしか入れられないね。この大きさの箱に、小さなものをしか入らないんじゃ……ん? もしかして財布かい? 財布ならこの大きさでも硬貨はそれなりに入る!」


 アイテムボックスを撫でまわしながらそこまで考察したウーラが首をかしげる。


「だけど、仮にこれが財布だとして……付加価値に、『絶対盗まれない』とかっていう効果がついていたとしても百万マールってことはないね……くぅ! 埒があかないねぇ、ここまで【見て、触る】段階でまったく用途がわからない物を調べるなんて何千日ぶりだろうねぇ」


 わからないことを完全に楽しみだしたウーラはぶつぶつと呟きながら、とうとうおもむろにアイテムボックスの中に手を……


「へ?」


 ウーラが漏らしたきょとんとした声と同時に室内がどよめく。アイテムボックスに突っ込んだウーラの右手、その肘から先が見えなくなっていたからだ。あれがアイテムボックスだと知らない人がみれば、違和感だらけの奇異な光景に見えるだろう。


「ぶひ! く、喰われたぞ! こ、こいつらが作ったのは人食いカバンだ!」


 成り行きを見守っていた豚領主エイビズが、唾を飛ばしながら叫んでディランさんを指さす。


「こいつらはうまいこと俺らをおびき寄せて殺すつもりだったんだ!」


 ガタンと席を立ち、後ずさりながら周囲をあおるエイビズだが、他の領主はそんな言葉に便乗することもなく、ウーラの次の言葉を静かに待っている。


「……これ、なに? あ、ありえないんだけど! ちょっと、いったいどうなってんのよ! これ! こんなものが! どうやったら……あぁ! もう堪らない! 感じすぎちゃう! はぁぁん! もう、イっ! くぅぅぅ!」


 ウーラが悩まし気な声を漏らしつつ机に突っ伏す。えっと………………とりあえず、見なかったことにしよう。


「は! あの研究馬鹿が()ぶなんてねぇ……ずいぶんと久しぶりなんじゃないかい? こいつは驚いたね。どうやらアノーク坊やはとんでもない物を持ってきたみたいだねぇ」


 長生き領主ロマリナは楽しそうな笑声を上げると、無造作にアイテムボックスを手に取り、中へと手を差し込んだ。


「ほう……なるほどね。こりゃあ不思議だ……つまりこいつは、持ち運びできる倉庫ってことかい?」


 へぇ、伊達に長く生きているわけじゃないらしい。ウーラが調べるところを見ていたとはいっても、これだけでアイテムボックスの用途にあっさりと気が付くなんて。


「そのとおりです。いまお渡ししてあるそのポーチの中には、安宿のひと部屋分くらいの広さがあります。入れ口は小さいですが、中に入れる物によって口の広さが変わる処理をしてありますので、中の容量を越えない限りは出し入れにも問題はないと思います。そしてなにより! 中に入っているものの重量がそのポーチに加算されることはありません」

「な、なんじゃと! そいつは凄い」

「ひゅう! それはまさに冒険者にとって宝物になるね!」


 インチキ神官領主カミルが、安全が確保されたと判断してアイテムボックスを手に取ると抱え込むようにして懐へとしまいこんでいる。そして、たらし領主アムラは女が~とかいうのかと思っていたら、口笛を吹きながらアイテムボックスをいじり、思ったよりもまともなことを喋っている。冒険者の街アーロンの領主として、ふざけている場合ではないと思ったのかも知れない。


「むう、なるほどな。これならば侍祭契約を使用したのもわかるというものだ」


 イザクでもアイテムボックスの価値がわかったらしく重々しく頷いている。


「では、皆さま。ここからは余計な講釈は必要ないでしょう。わたくしどもベイス商会より皆さまがたに手土産をお渡ししたいと思います。ぜひ、そのポーチに入れてお持ち帰りください」


 そう言ってアノークさんが侍女たちに持ってこさせたのは、スイロンという地球でいうとスイカみたいな大きい果物と持ち手に無属性魔石をはめ込んだ百三十センチくらいの長杖。スイロンは今が旬らしく、とても美味しいみたいだし、杖もこれから属性付与できる無属性魔石をはめ込んだ、なかなかの物だが……つまるところ、大きさ、長さ、重さ。それらがアイテムボックスに実際に入れたときにどうなるかを体感してくれということだ。


 領主たちは言われるがままにスイロンと長杖をアイテムボックスに入れ、それぞれに驚愕の表情を浮かべている。中でも反応が著しいのはやはり、豚領主エイビズ。さかんにぶひぶひと鳴き声をあげている。次に熱心なのは意外にも長生き領主のロマリナだった。ただ前者が純粋な私欲によるものだとすれば、後者は交易都市の領主としての立場からの興味だろう。ちなみに、白衣領主のウーラはさっきから天元突破しっぱなしなので比較対象からは外れている。


 今回はアイテムボックスがあれば、塔の魔物の素材を回収できるという情報は伏せることにした。ある程度の数が世界に出回るまでは所持者の身の安全を確保するためにもまだ早いという結論だ。


 さて、それを抜きにしても領主たちにアイテムボックスはこの上もなく魅力的なものに見えたはず。しばらくは大人しく自分たちで研究をするだろうけど…………どうしても製法が解明できなかったときにどうなることやら。



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