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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第7章

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検証戦

 俺たちはそのままザチルの塔へと直行した。霞と陽も陽炎と朧月の試し斬りもしたかっただろうし、ちょうどいい。それにこれから試すことが俺たちの推測どおりなら、アイテムボックスの価値はさらに跳ね上がる。そして魔物の素材の流通が爆発的に上がる。


「とりあえず一階層でいいかな?」

「今回は実験なのですから構わないと思いますが、一階層だと人目が多いと思いますわ」

「あ、そっか……じゃあどうしようか」

「ソウ様、メリメリもいるし、このメンバーなら問題ないから十階層以上でいいんじゃない?」


 メリスティアのことをメリメリと呼ぶのはどうかと思う。呼ばれているメリスティア自身が拒否してないからなんとも言えないけどさ。


「霞と陽はそれで大丈夫? 今日は四狼と九狼も連れてきてないけど」


 ふたりは聖塔教が壊滅して完全に命を狙われる危険がなくなったので、護衛も兼ねていた四狼と九狼がいなくても外出を許可されるようになっている。さらに今日は俺、桜、葵、メリスティアというメンバーが一緒ということもあり四狼と九狼には完全休養を与えていた。


「はい! この間の副塔での戦いより大変ということはないでしょうから」

「陽も大丈夫だよ。危なくなったら兄様に守ってもらうから」

「フジノミヤ様、システィナ様ほどではないですが回復もお任せください」

『あちしも戦いとうございます、お館様』

『血が騒ぐでありんす、お館』


 若干一名、危険な発言をしているが、たしかにこのメンバーなら十階層あたりで問題があるとは思えないな。


「よし、じゃあ十階層から行こう」


◇ ◇ ◇


 十階層に入るとすぐに桜が【気配察知】で索敵に入る。霞と陽が先行し、曲がり角の先などを偵察。その間は葵が後方を警戒する。メリスティアは俺の近くにいて、なにかあればすぐに【回復術】を使えるように金羊蹄の長杖を手にしている。このメンバーだと俺の出番はないかも知れないけど、今日は俺も澪と雫を使ってあげるために戦闘に参加するつもりだ。


「ソウ様、右奥に反応あり。五体くらいかな? 結構多いよ」

「確認しました。タワーグリズリー二体とゴブリンナイト二体、メタルスコーピオ一体です」


 桜の声に即座に反応した霞が、あっという間に先行して魔物の種類と数を特定してくる。いつの間にそんな連携を……桜の調査に同行しているうちにかなり鍛えられているらしい。


「よし、ここで迎え撃つ。霞! 陽! ゴブリンナイトを一体ずつ頼む。これは倒してしまっていい」

「「はい!」」


 敵の隊列はゴブリンナイトが二体先行、グリズリー二体が続き、最後方にサソリがいるらしく、ふたりは朧月と陽炎を構えて突進していく。


「葵はグリズリーを足止め、今回は倒すだけが目的じゃないからこっちは瞬殺はしないように気を付けて」

「承知いたしましたわ。【氷術:氷結縛】」


 葵に操作された魔力がグリズリーの足元に到達したらしく、グリズリーの足がピキピキと氷に覆われていく。これなら力づくで突破するにしても時間がかかるだろう。


「桜は霞たちの援護、余裕がありそうならグリズリーの無力化を頼む。ちょんぱはしないでくれよ」

「了~解でっす」


 桜は基本的に自由にさせておいた方がいい。あとは最適なタイミングで最適な行動を取ってくれるだろう。


「メリスティアは俺と一緒に! 俺がサソリをやるから後ろで誰かが怪我をするようなら俺の魔力を使って【回復術】を広範囲で使っていい」

「わかりました。お任せください」


 メリスティアの返事と同時に俺も澪と雫を抜いて走り出す。追い抜きざまにゴブリンナイトと霞たちの戦闘を確認するが、陽炎の効果のせいなのかふたりずつに増えた霞と陽がゴブリンナイトを翻弄していた。しかも【敏感】で五感を研ぎ澄ませているからわかったけど、いま見えている陽は本物じゃない。本物の陽は幻影を隠れ蓑にして完全にゴブリンナイトたちの死角に潜り込んでいる。これは朧月が【隠形】を強化しているせいか?


 そして、ゴブリンナイトたちの鎧はふたりの武器をまったく防御できていない。あれも一応金属だと思うんだけがふたりが斬りつけたらその部分はすっぱりと斬れている。まあ、武器の長さと彼女たち自身のリーチが短いせいで一撃で肉を断つまではいかないが、十階層のゴブリンナイトを完全に格下扱いだ。


 次にグリズリーだが、脚を氷で固められて動けないグリズリーが忌々し気な咆哮を上げながらもがいているところだった。葵はさらに氷の範囲を広げ、グリズリーを固めつつ四肢の付け根あたりを尖らせた氷で突き刺したりして動きをどんどん沈静化させている。ちゃんと俺たちの目的を理解してあまり無駄な傷をつけないようにしてくれているらしい。もう一匹のほうは桜がからかうように飛び回りながら視界を奪ったり、耳を斬り落としたりしている。いたぶっているようで残酷に感じるかも知れないが、魔物相手に手を抜けばいつ手痛いしっぺ返しを食うかわからない。戦闘力は確実に削いでおくのが鉄則だ。

 今回は殺してしまうと塔に吸収されてしまうので、殺すのは準備ができてからにする予定。そして、俺がこれから戦うメタルスコーピオもたしかその甲殻はいい素材になったはずだし、食べることもあると聞いているから回収予定だ。


「いくよ、澪、雫」

『『あい』』


 大きな鋏を振り回してくるサソリ、今でも正直いえば魔物はちょっと怖いが、さすがにもう竦むことはない。俺の首を挟もうとする右のはさみを左手にもった雫で受ける。


「雫、【呪言】で奴に妨害効果(デバフ)を!」

『あい、離れていると届かないので斬りつけたときにやるでありんす、お館』

「了解、澪は【祝詞】で俺に支援効果(バフ)を頼む」

『あい、お館様』


 雫のほうは刀状態の効果だと斬りつけなきゃ駄目らしい。たぶん【擬人化】すれば離れていてもつかえるようになるな。それをメリスティアのスキルで広範囲化すれば、戦闘時にかなりアドバンテージを持った状態で戦うことができる。

 そうしている間に俺の体が少し軽くなり、ちょっと力が湧いてくる。これが澪の【祝詞】か……効果としては大きいものじゃないが、それでもこれは馬鹿にできない。なにより支援効果を受けているという安心感が気持ちに余裕を与えてくれる。これなら思い通りにやれる!


「雫、まずはあいつのはさみをひとつ落とすぞ」

『あい』


 魔物らしくなんのひねりもなくはさみを交互にたたきつけるだけのサソリの攻撃をあえて、雫で防御していく。そうすると、攻撃を防御するたびにサソリの動きがほんの少しずつ鈍くなっていく。雫との【共感】からつたわってくる感じでは、脱力、とか鈍重とかそんなタイプの妨害効果が重ねがけされているっぽい。

 こうなってくればこちらは楽になる。動きの鈍ったはさみの攻撃をぎりぎりでかわし、はさみの付け根あたりの可動部に澪で斬りつければ……ほら斬れた。


「メリスティア! 回収!」

「はい!」


 サソリの注意を俺に引きつけつつ、斬り飛ばしたサソリのはさみをメリスティアに回収してもらう。メリスティアにもアイテムボックスを渡してあるので回収は可能だ。


『お館様!』 

「おっと!」


 たまたまなのか狙ったのかはわからないが、メリスティアに意識を向けた一瞬の隙にサソリが攻撃を仕掛けてくる。しかも今度は不意をついて先のとがった尾を頭上から打ち下ろしてきている。素早くバックステップをしてその攻撃を避けるが【敏感】で感覚を鋭敏にして、澪の注意喚起がなければ左右からの攻撃に慣らされていて危なかったかも知れない。


 床を穿った尾を引き戻して忌々し気にはさみを鳴らすメタルスコーピオ。その残ったはさみの外側に回り込んでいくが、雫の【呪言】で動きの鈍っているサソリは俺の動きについてこれない。そのままはさみの外側から付け根を切断する。ふたつのはさみを失ったサソリががさがさと動き回りながら尾を振り回すが、死角に入りこんだ俺を止めるほどの精度もキレもない。あっさりと毒針付きの尾も根元から斬り落とした。


 サソリのやつはがさがさと動いているが、あとはまともな攻撃方法はないので残った足も次々と斬り飛ばして動きを止めておく。魔物だからその状態でもまだ死なないだろう。


「メリスティアはさみは?」

「はい、ふたつとも回収しました」

「よし、じゃあまずは俺もこいつを……」


 俺も落ちていた尾を、針に触れないようにアイテムボックスに回収する。そして、そのころには霞と陽もゴブリンナイトに圧勝済みで、二体のグリズリーも瀕死の状態だった。


「兄様、これすっごい使いやすい! ありがとう!」

「まさか私がこんなものを使うことになるなんて、本当によろしいのですか? 旦那様」

「いいに決まってるよ。それはふたりのためだけに作られた武器なんだから、逆に俺が使ったら性能を発揮できないはずだよ。それじゃあ朧月と陽炎に申し訳ない」


 武器がその力を存分に発揮できないことは、武器たちにとってはとても辛くて悲しいことだってことは刀娘たちから何度も聞かされている。閃斬だった二本の武器たちにそんな思いをさせるわけにはいかない。


「さ、じゃあこいつらを回収して外に出よう」

「主殿、どうやって回収するのですか?」

「本当は……解体しつつしまっていきたいところなんだけど、途中で死んじゃうと残りが消えちゃうからそのままアイテムボックスにいれて別の場所で解体するのがいいかな」

「これ、結構重いよ? 持ちあがる? ソウ様」


 重結の腕輪の負荷をなくせばいけるかも知れないけど、ちょっと厳しい。アイテムボックス自体は取り出し口を近づければ大きなものでも取り込めるから問題ないけど……地面にあったら難しいな。


「あ、そうか。地面になければいいのか。葵、いまからサソリに止めを刺すから、そうしたら【魔力操作】で重系統を使ってちょっとだけ浮かせてくれる? メリスティアはアイテムボックスを待ってて」

「なるほど……わかりましたわ」

「はい、浮き上がったらアイテムボックスを近づけて中へ入れればいいんですね」



 結果は大成功。無事にメタルスコーピオ一匹とタワーグリズリー二頭をアイテムボックスに回収して塔から出る。そして、外に出ても回収した魔物はアイテムボックスの中に入ったままだった。やばいな、これが世間に知れ渡ったらちょっと凄いことになりそうな気がする。まあでも、全体的に割高だった魔物素材の品は安くなるだろうし、安価に素材が手に入れば魔物素材を使った新しい技術や発明も生まれる可能性があるから、領主会議で一緒にオープンにしてしまったほうがいいかな?


 とりあえずその辺の相談込みでウィルえもんのところへ行くか。たしかギルドに解体部屋もあったはずだからこいつらの解体もお願いして、本当に外の魔物と同じように使えるのかどうかを判断してもらおう。



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