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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第7章

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絆と秘密

 そうか……俺はまだ若いし、戦いで死にそうな目にあったことはあるけど、老衰や病気で死ぬとかは考えたことがなかった。でも、俺がどんな形であれ死んでしまえば蛍たちは残される。人と刀である以上その別れは必ずくる。


 俺はきっと人生を自由に生きて楽しんで、いつまでも若々しくて美人で可愛い嫁たちとさんざんいちゃこらして大満足のうちに死んでいくんだろうけど……残された彼女たちはどうなるんだろう。

 財産は残してやれる。屋敷も残せる。思い出も残してやれる……でもそんなものは、もし逆の立場だったならそんなものはいらない。蛍と桜がいなくなると思ったときに感じたあの気持ち、それを今度は残されたみんなが永遠に感じることになる。

 俺がいなくても、もしかしたら俺の子供がいるかも知れない。その子たちと楽しく暮らしていくという選択肢もあるとは思うが……


「ソウジロウ。仮にお前の子供や孫がいたとしても、お前の代わりにはならないぞ。勿論お前の子供たちがわれらにとっても大事な存在になりえることは間違いないがな」

「そうですわね……わたくしたちは主殿だからこそ、ともにありたいと思っているのですわ」

「うん、ソウ様のときと同じような出会いをしたとしても、きっとソウ様のように好きになることはないと思う」

「…………もう、ソウジロが一番。一番は変わらない」

「わかる気がします……私もご主人様より長く生きるつもりはありませんから」


 いやいや、システィナまでなにいってるの。もし、俺に子供ができるとしたらあなたの子供である可能性が一番高いのに…………でも、なんだろう? すっげぇ嬉しく思っている自分がいるぞ。


「とにかく! 今日はせっかくの楽しいピクニックなんだから、死ぬとか残されるとかの暗い話はやめよう。神になりたいとかは考えてないけど、塔についてはこれからも調べていくからさ。とりあえず今度その石碑っていうのを見にいこうよ。そこになにかが記されているなら俺の【読解】で読めると思うし」

「あ、そうか! ソウ様なら読めるんだ。それならもしかして……」


 桜の表情がみるみる明るくなっていく。正直そんな神になるとかどうとかは眉唾もので桜が期待しているような不老とか、不死なんて力を得られることはないだろう。でも、少しでも長くみんなと一緒にいられるようにするための方法を探しながら暮らすというのは、いい案な気がする。


「ほウ、蛍たちも長寿の種なのカ? まさか魔物が化けているわけでもなさそうだガ」


 俺たちの話を聞いていたグリィンが興味深げに目を細める。そっか、グリィンはまだ知らなかったか。それに霞と陽にもちゃんと説明してなかったな。


「うん、じゃあいい機会だし、ここにいるメンバーに隠しておく必要もないから俺たちの秘密を伝える。これは絶対に他言無用で頼む。うっかり喋っちゃいそうで怖い人はあとでシスティナかメリスティアに【契約】で禁止してもらえばいいから。それとついでに霞と陽の首輪も今日外すからね」

「「えっ」」

 

 俺の言葉にびっくりしたのか霞と陽が声をあげ、首輪を抑える。


「俺たちとの絆のひとつとして残しておきたいって気持ちは嬉しいけど、そんなものに頼らなくても、もう俺たちは仲間で家族なんだから必要ないよ。どうしてもっていうなら今度は可愛いチョーカーをプレゼントする」

「旦那様……はい!」

「うん! わかったよ兄様」


 最初こそ秘密厳守のために俺たちが首輪をお願いしていたんだけど、途中からふたりが外すことを嫌がるようになっていた。それは別に奴隷が好きだからそのままでいたかったわけではなく、俺たちと一緒にいたいから、奴隷契約という絆を手放したくなかっただけだ。

 でも、俺たちが霞と陽と一緒にいたいと思っていて、ふたりが俺たちと一緒にいたいと思ってくれるのなら、奴隷契約なんてものはいらない。


 魔力が出せない俺は自分の指を置いてあったナイフで軽く斬り、ふたりの首輪に斬った指を押し付けながら解除の言葉を唱える。するとすぐにふたりの首輪はぱちんと小さな音を立てて外れた。


「明日にでもエリオさんのところへ報告にいっておいで。命の危険がもうないこと、自分たちの仇を討てたこと、それから正式にうちで住み込みの侍女として働くことになったってこともね」

「「はい!」」


 ふたりの心からの笑顔に俺も嬉しくなって、ちょっと強めにふたりのケモ耳あたりをモフってしまった。


「あん、ずるいですわ主殿。わたくしにも!」

「あ、葵様」


 そういって俺の手から霞をひったくるようにして抱きかかえて拉致していく葵。


「む……なら雪は陽を」

「わ、雪姉様」


 負けじと陽をさらっていく雪。あっという間に手持無沙汰になった俺の手が寂しくなったのでメリスティアの頭を撫でておく。


「あ、あの……その、ありがとうございます。フジノミヤ様」


 なぜかうっとりとした顔でお礼をいうメリスティアのちょっと天然な感じが可愛い。このままメリスティアを揉みしだきたいところだが、さすがに霞と陽の前ではまずいか。


「ご主人様?」

「ああ、うん。みんなに話しておきたいことはみっつかな、ひとつは俺の出自。俺は、というか俺と蛍、桜、葵、雪はこの世界とは違う世界からきたんだ」


 きょとんとした顔をするグリィンやメリスティア、霞と陽に以前システィナに説明したときのように別の星からきたことを告げる。さすがに【叡智の書庫】があるシスティナのように、すぐに理解してもらえるとは思っていなかったが、ゆっくりと説明したら最後には納得してくれた。

 その決め手は、ときおり俺たちがこの世界では常識だと思われていることがわからずに、戸惑っている姿をなんどか目にしていたことと、お風呂の概念や新しい建築方法などの、思い付きだけでは説明できない知識の存在だったらしい。


「ふたつ目は蛍たちのこと。桜」

「はい、ソウ様」


 一狼にもたれかかっていた桜が俺の意思に呼応して刀に戻り手の中に納まる。


「見てのとおり、彼女たちは元の世界では刀という武器だったんだ。詳しい事情は俺にもわからないけど、刀たちは俺のスキルで鍛え上げることで強くなる。そのときに【擬人化】というスキルを覚えると彼女たちみたいに人の姿になることができる」


 ひょいと投げた桜が瞬時に人化して着地する。でも、これについては説明こそしていなかったけど、姿を変えるところは何度か見せていたからそういうモノだという認識があったようであまり驚いてはいなかった。それもこれも武器というものが社会的に大きなウェイトをしめるこの世界こそなのかもな。


「……そして、最後は魔剣の召喚だ」


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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ 小説1巻~3巻 モーニングスターブックスより発売中 コミックガンマ+ にてコミカライズ版も公開中
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