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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第1章

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添加錬成


「明日は1階層の主に挑戦して2階層に上がる。そのつもりでいてくれ」

「ちょ,ちょっと待ってよ蛍さん。そんなに急いで上に上がる必要はないんじゃない?取りあえず生活するだけの稼ぎは得られそうだし,借金の返済だって十分間に合うんだから危険を犯して階層を上げる必要はないと思うんだけど。

 そりゃいずれは上げていくことに反対する訳じゃないけど」


 詳しくは知らないがいくら光圀だってそんなに駆け足で日本中駆け巡っていた訳ではないだろう。テレビなどではむしろ団子とか食いながらのんびりだったはずだよ格さん。


「なるほど…ソウジロウの意見にも一理あるな。武器としての私の意見はどうしても前のめりになりがちかも知れぬしな。システィナはどう思う?」

「そうですね。私も実戦は始めたばかりですし,あまり急いで階層を上げて何か不測の事態が起こるのは困ります」


 そうだろうそうだろう。がんばれば1日にこれだけ稼げるんだから無理する必要はない。ゆっくり鍛えながら上がればいい。


「ですが,今日の感じですと1階層では物足りなく感じました。明日2階層に上がることには賛成です」


 ぐは!助さんお前もか!女性陣2人に手を組まれたら俺に勝ち目はない。


「はぁ…了解。でも明日塔に行く前に拠点を移そうと思ってるんでそのつもりでよろしく」

「よし。決まりだな。

 拠点の方はどこを考えているのだソウジロウ」

「う~ん。レイトークに入るならレイトークに宿を取るべきだと思うけど…システィナはなんかある?」


 街なんてミカレアとレイトークしか知らない俺にはミカレアじゃないならレイトークという意見しか出しようがない。


「…今後も塔探索を主体に生活をするのでしたら思い切ってザチルの塔のある混迷都市フレスベルクに拠点を構えるべきかもしれません」


 しばし考え込んだ後,システィナがあげた名前は行商人のウィルが言っていた都市の名前だった。


「なんでそこが拠点としていいの?混迷とかいうくらいだからごちゃごちゃしてるんじゃない?」

「はい。おそらく塔周辺の都市では最大規模の街だと思います。そのため人も物も大量に流れ込んでいます。その分物価もいくらか高いですね。

 ですがこの街は主塔のなかでも最大と言われているザチルの塔の直近にあります。

 その関係でこの街には主塔を擁する街に転送するための転送陣を1か所に集めた施設が複数街に設けられているんです」

「ほう。つまりそこを拠点にすれば全ての塔に行きやすくなるということだな」


 システィナが頷く。別にいろんな塔に入らなくてもいい気がする。でもザチルの塔ってあの看板にあったやつで,遠くに見えていたあの凄い高さの建造物…

 多分あれがザチルの塔ってことだろう。

 あれはちょっと見てみたい気がする。


「それに移住者の受け入れにも積極的みたいですのでいい物件があれば宿を取るのではなく家を借りるのがいいかもしれません。

 幸い街の中心を外れればあまり普通の街と変わらなくなるようですしお店の種類,質,量も随一です」

「悪くなさそうだな。どうだソウジロウ」


 確かに今後も装備の更新とかは必要になってくる。システィナの話では今俺達が持っているような装備よりも良い装備を手に入れるには塔所在の街に行く必要があるって言っていた。

 そしてフレスベルクならきっとその点の条件もあっさりクリアしてくれるんだろう。


「分かった。でも家を借りるにしても買うにしても元手が必要になる。だから取りあえずはレイトークに宿を取ってレイトークの塔に入って2階層で戦おう。

 お金を貯めながらフレスベルクにも様子を見に行って家を探すってのはどう?」

「ザチルの塔は人が多いので低階層は戦いにくいと聞きますので低階層のうちはレイトークに入るのは良いと思います」

「よし。では,最終的にはフレスベルクに拠点を構える前提でしばらくはレイトークで資金を貯めつつ戦闘経験を積むことにしよう」


 最後は蛍さんが締めて話し合いは終了した。

 その後はいつもの通り沐浴場で汗を流すと宿へと戻る。


 すぐにでもシスティナへのお仕置きとお礼をしようと鼻息を荒くする俺に蛍さんの拳骨が落ちた。


「ちょっと待てソウジロウ。いくつか確認がしたい」

「なんだい格さん」


 ゴン


 いたひ。


「まずは桜の鑑定じゃ」

「は~い」

 

『桜  

 ランク: D+  錬成値33  吸精値 47

 技能 : 共感  気配察知  敏捷補正  命中補正  魔力補正』



「ふむ。あれだけの戦闘をしたのにやはり桜自身の錬成値は上がらんか」

「そう言えばそうだね」

「そこでこれだ」


 蛍さんが腰のポーチから取り出したのは売らずに残しておいた魔石である。


「なるほど…それで添加錬成か」

「やってみるか?」


 これはやるしかない。これで錬成値が上がれば俺のスキルの効果がすべて判明する。

 錬成値の上げ方がわかれば手持ちの武器達を育てることも出来る。問題は使い方が間違っててスキルを使った時に武器が壊れたりしたら困るってことか。

 かといって大事な武器達のどれ一つとして練習台にして壊れてもいいなんて武器はない。


『……』

「桜ちゃん!でも…」


 悩む俺の心に桜ちゃんの気持ちが伝わってくる。それは勘違いなど挟む余地もないほどに強い想い。


『私を使って欲しい』


 だった。

 普通に考えれば錬成できなくても何も起こらないだけだと思うから大丈夫だとは思うけど、万に1つがある以上は本当は無理はしたくない。

 桜ちゃんに替えはない。地球から共にやってきた大事な仲間だ。

 でも,桜ちゃんの真摯な想いを無視する訳にはいかない。これがうまくいきさえすれば桜ちゃんも望んでいる『意思疎通』や『擬人化』への道が開かれる。


「よしやろう。桜ちゃん頼むね」


 俺は桜ちゃんを手に取り,蛍さんから魔石を受け取る。魔石は取りあえずH1個にするか。左手に鞘から出した桜ちゃんを持ち,右手に小さな魔石を持つ。


『添加錬成』


 脳内でスキルを宣言すると桜ちゃんと魔石が淡い光を放つ。なんだか力が抜けていく感じがあるけど…うん行けそうだ。右手の魔石をゆっくりと桜ちゃんに近づけていく。

 魔石は桜ちゃんの刀身に触れると硬質な音を立てることもなくスッと吸い込まれていった。


「できた!『武具鑑定』」


『桜  

 ランク: D+  錬成値35  吸精値 47

 技能 : 共感  気配察知  敏捷補正  命中補正  魔力補正』


「どうじゃソウジロウ」

「やった!桜ちゃんの錬成値が2上がってるよ蛍さん」


 これで桜ちゃんを育てられる。これでいずれ桜ちゃんと話したりも出来るようになるかもしれないし,擬人化を覚えてくれれば精気錬成も使えるようになるかもしれない。オラわくわくしてきたぞ!

 よしこのまま残りの魔石も一気にやっちゃうか。右手に残りの魔石を全部持って『添加錬成』。光った魔石を桜ちゃんに。よし!成功。


 武具鑑定ですぐさま確認した桜ちゃんの錬成値は35から50になってる。大体Hが2でGが3くらいか,多少は質とかによっても効果が違うんだろう。

 それにしても無属性の小さい魔石じゃ効果が小さいな…桜ちゃん達を育てる為なら高階層へ挑戦するのもありかもしれない。でもお金を貯めるためには魔石は売らなきゃいけないし錬成に全部を使う訳にはいかないか。


 悩ましくて頭がくらくらしてくるな。


「…ていうか本当に目がまわ」

「ご主人様!」

「ソウジロウ!」


 2人の声が遠い…あ,こりゃ駄目だ。俺はあっさりと意識を手放した。



 目を覚ますとベッドの上だった。周囲はまだ暗いので夜の深い時間だろう。


「お目覚めになりましたかご主人様」


 俺の右隣から暖かい感触と共にシスティナが声をかけてくる。


「どうやら魔力切れということらしいぞソウジロウ」


 俺の左隣には蛍さんがいる。寝る時は裸で寝る方針らしくまっぱだ。ん,魔力切れ?

 

「どうやらお前の錬成は添加錬成は魔力を精気錬成は精気を使うらしいな。まあ魔力から精気への変換が出来る以上2つの力は似通った力なのだろうがな」

「まだ魔力の扱いに慣れていないのも大きな理由ですが、魔力総量がまだ少なかったことも理由でしょう。

 身体を動かすことで体力が付くように魔力も戦闘経験を積むことで上がるようですから、いずれはもっと出来るようになると思いますよ」

「そっか,ますます魔石を錬成だけに使うのが難しくなったな。売却と錬成をうまく調整していかないとね」


 システィナが笑いながら頷く。あぁシスティナは相変わらず可愛いなぁ。


「なんか一回倒れたら目が冴えちゃったな」

「あの…ご主人様」

「ん?なに」

「その…お仕置きなさいます?」


 なさいます。

 その日はたっぷりとシスティナにお仕置きとお礼をしてから蛍さんに錬成をした。魔精変換などなくとも十分戦えるのだ。


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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ 小説1巻~3巻 モーニングスターブックスより発売中 コミックガンマ+ にてコミカライズ版も公開中
― 新着の感想 ―
[気になる点] 戦闘経験を積めば魔力が上がるとあるけど、戦闘で魔法を使わなければ上がらないよね?魔法を1つも覚えてないのにどうやって魔力を上げるの?
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