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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第6章

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戦のあと

「部屋がオレンジだ……」


 目を覚ました俺は窓から差し込む夕日で橙色に染められた部屋をみて思わずつぶやく。


「ご主人様……ご気分はどうですか?」

「ん、あぁ……システィナか」


 俺が寝ているベッドの隣に置いてある椅子に座っていたシスティナが心配そうに俺の顔をのぞきこんでくる。それを見た俺はちょっとしたいたずら心が疼きだしたので、腹筋に力を入れると瞬間的に上体を起こしてシスティナの唇をかすめるようなキスをする。


「うん、いい気分になった」

「もう! ……本当に大丈夫そうですね。安心しました」


 あっ、と小さい声を漏らして驚きの表情を浮かべたシスティナは、俺の顔を一瞬だけにらむとすぐに笑顔を向けてくる。どうやら心配をかけてしまったらしい。


「どのぐらい寝てた? 皆もちゃんと休息してる?」

「はい、大丈夫です。私とメリスティアは兵士の皆さんの治療がひと段落したところで休ませて頂きましたし、同じタイミングで霞と陽も狼たちと一緒に……ふたりはまだ寝ているかも知れませんね」


 ということは、システィナとメリスティアはほとんど寝てないな。霞と陽は寝かせておいてやろう。本当によくがんばっていたからな。


「グリィンたちは?」

「グリィンさんは『あの程度は問題なイ』とおっしゃって、さきほどまで元気だった兵士の人たちと模擬戦をしていました。黒王と赤兎は散歩に出てまだ戻ってきてません」


 グリィンはらしい(・・・)といえばらしいが……タフだなぁ。そしてあの陸馬夫婦はちゃっかりしけこみやがったな。帰ってきたら『お盛んでしたね』と言ってやる! 

 ……でもまぁ、今回は見逃してやるか。頑張ってくれたし、死ぬ危険もあった。嫁さんと無事だったことを感じあいたいというのはわからなくもない。いまの俺がまさにそうだからな。


「一狼は?」

「先ほどまで起きていたのですが、反対側で……」


 システィナに言われて、反対側の床を覗き込むと白い大きな毛玉がある。一狼にも心配かけたか。


「蛍たちは?」

「蛍さんと雪さんは撃ち漏らした魔物の掃討、桜さんは村の中を調査してます。葵さんは村の周囲をダイラスさんと回っています。どうやらこの村を開拓村として利用できないかという話になったみたいで、防壁などの確認に」

「そうか……」


 皆、元気そうでよかった。結局一番足を引っ張ったのは俺か……いやいや、バーサは俺が倒さなきゃもっと苦労していた相手だった。あの程度の俺の怪我で、皆に怪我がなかったんなら上々だ。


「ご主人様! いま、たいしたことのない怪我ですんだと思いませんでしたか?」

「うお! いつから心が読めるようになったの、システィナ」

「それぐらいわかります! それにメリスティアのおかげで大事にならなかったですが、肋骨が三本折れて、顔の半分が大火傷。左目は失明寸前でした。地球の医療知識がなければ、完全に元に戻らなかった可能性もありました」


 ちょっぴり頬を膨らませて怒っていることを主張するシスティナが可愛い。システィナが怒るくらいだから、思ったより重傷だったみたいだけど……。


「ごめん、でも実は自分のことはあんまり心配してなかったんだよね」

「ご主人様!」

「だって、死にさえしなければ絶対にうちの侍祭様が治してくれるって信じていたからね」

「え……」

「怪我ありきで動いたわけじゃないし、治してもらえる前提で戦うのはあんまりよくはないのかも知れない。だけどそう信じているから、こんなヘタレの俺でも動かなくちゃいけないときにビビらずにちゃんと動けるんだ」

「……もう、そんなこと言われたらこれ以上怒れないじゃないですか。ずるいです」


 夕日のせいなのかどうなのか頬を赤く染めるシスティナの手を握る。


「いつもありがとうシスティナ」

「はい」


 結局、俺が目覚めたのはその日の夕方だったようだ。意識を失ったのが明け方くらいだったから半日ほど眠りこけてしまったことになる。ただ、怪我のせいで寝込んだというよりは、昨日は徹夜で戦い続けていたので寝不足と疲労から寝落ちしたというのが正確なところだろう。

 寝ていた場所は信者たちが住んでいた家の一軒をまるごとうちのパーティで使っているらしい。できれば早く屋敷に帰って温泉に浸かりたいが、時間的にもこれから帰るのは難しい。出発するのは明日の朝かな。

 レイトーク軍は、数人ほど戦死者が出たようだが負傷者はシスティナたちがなんとか間に合ったらしくこの規模の戦いにしてはあり得ないほど被害が少なかったようで領主イザクから感謝されたらしい。その兵士たちは、さっき言っていた開拓村として再利用する件でしばらくここに残る。ただ、領主イザクは長く街をあけるわけにはいかないから魔術師のダイラスと明日には帰路につく。ここに残る兵士の指揮を任されたグレミロからその護衛を依頼されているようなので、それは小遣い稼ぎに受けるか。

 そんな話をしながら、システィナが地球の知識から再現して準備してくれていた薄切り肉と葉野菜を挟んだサンドウィッチとコンソメスープ的なものを食べると思わずあくびがでる。


「まだ、体力は回復しきれていないと思います。今日はこのままお休みください」

「……わかった。皆といちゃいちゃするのは帰ってからにするよ」

「はい。楽しみにしていますね」

 優しく俺を布団へと寝かせ、ちゅっとキスをしながら微笑むシスティナにおやすみと返せたのかどうかもわからないまま、俺は眠りに落ちた。

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